JR飯田橋駅ホーム移設工事(2020年7月15日取材)

カテゴリ:鉄道:建設・工事 | 公開日:2020年08月23日18:41
JR飯田橋駅新ホーム

JR中央線飯田橋駅は急カーブ上にホームがあり、電車とホームの間に広い隙間ができることが問題となっていました。この問題を解決するため、ホーム全体を新宿寄りの直線区間併設する工事が6年に渡り行われてきました。先月この工事が完成し、新ホームと西口新駅舎の使用が開始されました。新しくなった飯田橋駅の状況を早速調査してまいりましたのでその模様をお届けします。

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JR飯田橋駅ホーム移設工事(2020年1月25日取材)(2020年3月25日作成)

■JR飯田橋駅の歴史とホーム移設工事の概要
飯田橋駅周辺の1992年の航空写真。現在飯田町駅跡地は大和ハウスや大塚商会の本社がある「飯田橋アイガーデンテラス」となっている。
飯田橋駅周辺の1992年の航空写真。現在飯田町駅跡地は大和ハウスや大塚商会の本社がある「飯田橋アイガーデンテラス」となっている。※航空写真は国土地理院地図・空中写真閲覧サービスより。

 JR中央緩行線の飯田橋いいだばしは、1928(昭和3)年に牛込うしごめ駅・飯田町いいだまち駅の2つの駅を統合して誕生しました。牛込駅は現在の飯田橋駅の新宿寄りにあり、飯田橋駅への統合後は千葉方面から来た電車の折り返し線が設置されていました。一方、飯田町駅は現在の飯田橋駅の千葉寄りにあり、統合後は東京都心で消費される紙の輸送拠点(貨物専用駅)として使用されました。その後飯田町駅は印刷工場の郊外移転や、貨物列車のコンテナ化に伴う対応の困難などにより1999(平成11)年をもって廃止となり、跡地にはオフィスビルが建設されています。また、前述の牛込駅跡地の引上線についても使用頻度の減少や、ATOS(東京圏輸送管理システム)整備に伴う中央線の信号システムのスリム化の動きもあって、1990年代後半に線路が撤去されています。

飯田橋駅停車中の電車とホームの間の隙間 ホーム下に設置されている転落検知マット(矢印の先の黒いシート状の物体)
左:飯田橋駅停車中の電車とホームの間の隙間
右:ホーム下に設置されている転落検知マット(矢印の先の黒いシート状の物体)。2014年11月27日撮影
上:飯田橋駅停車中の電車とホームの間の隙間
下:ホーム下に設置されている転落検知マット(矢印の先の黒いシート状の物体)。2014年11月27日撮影

 飯田橋駅は、牛込駅と飯田町駅の間の半径300mという急カーブ上に設けられました。このような急カーブ区間では、車体が線路の外側へ大きくはみ出して通過するため、ホームと電車の間を大きく離す必要があります。飯田橋駅の場合、この隙間が最大で33cmもあるため、乗降客の転落事故が多発しています。JR東日本ではこれまで対策として

●ホーム下の警告用回転ランプ・ブザー
●線路転落検知マット(踏むと駅内外の非常停止信号が点灯する)
●電車とホームの間の隙間に関する警告放送(列車停車中流れ続ける)


などを設置してきましたが、依然として年間10件程度同様の事故が続いています。

飯田橋駅の移設前後の位置
飯田橋駅の移設前後の位置

 そこでJR東日本では、2014(平成26)年に飯田橋駅の抜本的な安全対策としてホーム全体をを新宿寄りの直線区間へ約200m移設し、電車とホームの間の隙間を解消することを発表しました。新宿寄りのホーム移設予定地は前述の引上線跡地であるため、新規の用地取得を行う必要が無く比較的短期間・低コストでホームを移設することが可能です。この工事にあわせて既存の西口駅舎は一旦すべて取り壊し、千代田区と共同で1000m2の駅前広場を備えた新駅舎を建設します。この新駅舎には店舗も併設される予定です。なお、現在のホームの千葉寄りには東口改札がありますが、この改札口はホーム移設後も残される予定となっており、現在のホームは通路として利用されます。
 なお、新ホームの予定地は国の史跡にも指定されている江戸城外堀跡地に位置しています。このため、文化庁や有識者による委員会とも協議の上で新ホームの構造物は史跡の景観を壊さないよう十分考慮された位置・デザインとする計画とされました。(詳細は2017年10月3日作成記事「■新ホームの基本設計とホーム移設に伴う勾配緩和」節をご覧ください。

■西口新駅舎・新ホームが完成
取り壊し前の旧西口駅舎。
旧西口駅舎とホームの間にあったスロープ。
工事期間中設けられた西口仮駅舎。
左:取り壊し前の旧西口駅舎。
右上:旧西口駅舎とホームの間にあったスロープ。2016年6月11日撮影
右下:工事期間中設けられた西口仮駅舎。2017年8月17日撮影
上:取り壊し前の旧西口駅舎。
中:旧西口駅舎とホームの間にあったスロープ。2016年6月11日撮影
下:工事期間中設けられた西口仮駅舎。2017年8月17日撮影

 JR飯田橋駅のホーム移設工事は2014年から始まりました。新ホーム予定地上空には西口駅舎があり、ホームとの間はなだらかなスロープで接続されていました。ホームの移設にあたってはこれらの施設が支障となることから、線路に隣接する公園を利用して仮設駅舎が設けられ、2016年8月より使用を開始しました。仮設駅舎使用開始後旧西口駅舎は全て取り壊され、跡地で新ホーム並びに新しい西口駅舎の建設が進められました。そして2020年7月12日(日)にこれらの新施設が完成し、使用が開始されました。


完成したJR飯田橋駅西口新駅舎
完成したJR飯田橋駅西口新駅舎

 新しい西口駅舎は2階建てで、旧駅舎よりも床面の高さが幾分高くなったため10段ほどの階段があります。エレベーターは牛込橋から見て駅舎右端の奥にあり、細いスロープで接続されています。駅舎の外観は黒を基調としたデザインとなっており、周囲に存在する江戸城の石垣に溶け込むよう配慮されています。
 なお、牛込橋から見て左側の植え込みになっている部分には今後江戸城史跡に関する解説コーナーが設けられることになっています。

西口改札。右側のガラス張りの部分はみどりの窓口。 改札内のホームへ降りるエスカレーター。
左:西口改札。右側のガラス張りの部分はみどりの窓口。
右:改札内のホームへ降りるエスカレーター。
上:西口改札。右側のガラス張りの部分はみどりの窓口。
下:改札内のホームへ降りるエスカレーター。

 駅舎内は天井が木目調、壁や床はベージュのタイル張りになっています。照明は電球色になっており、温かみのある雰囲気となっています。牛込橋から入って突き当りに改札口があり、その右側には東口からみどりの窓口が移転してきています。みどりの窓口の広さは東口にあった頃とさほど変わっていません。改札を入るとホームへ降りる階段などが並んでいます。

新駅舎使用開始当日にオープンしたNewDays。 8/25に改札内にオープン予定のおむすびこももち。
左:新駅舎使用開始当日にオープンしたNewDays。
右:8/25に改札内にオープン予定のおむすびこももち。
上:新駅舎使用開始当日にオープンしたNewDays。
下:8/25に改札内にオープン予定のおむすびこももち。

 着工時のプレスリリースにも記載されていた通り、西口新駅舎内には合計5店舗の商業施設が入居予定となっています。施設名は「エキュートエディション飯田橋」で、このうち改札外のコンビニ“New Days”は新駅舎使用開始当日の7月12日にオープン済みとなっています。また、8月25日(火)には新たに改札外にベーカリー「Le Grenier à Pain(ル・グルニエ・ア・パン)」、改札内に「おむすびこももち」の2店舗がオープン予定となっています。また、現在のところテナントは未発表ですが今後2階にも2店舗が開設される予定です。



 新宿寄りに移転した新ホームは島式1面2線で、引上線の跡地を利用していることから新宿方面へ向かって幅が狭くなる形状になっています。(ホーム幅は最大7.5m、最小5m)ホームがある場所は完全な直線ではありませんが、カーブ半径は900mまで緩和されており、電車とホームの隙間は従来の半分以下の15cmまで縮小されました。
 ホーム床面の点字ブロックは3月にホーム増設工事が完成した千駄ヶ谷駅などと同様にホームドア設置を前提にしたレイアウトになっています。ホームの屋根は快速線側にある江戸城石垣や土塁などの景観との調和を図ったデザインとなっており、骨組みは目立たないよう黒色とし、ホームから土塁が観察しやすいよう快速線側は角度が大きくとられています。また、駅のホームとしては珍しく電球色の照明が採用され、照明の光がホームの外に過度に漏れ出さないようカバーが取り付けられています。

ホームと駅舎を結ぶ設備 ホームと駅舎を結ぶ設備 ホームと駅舎を結ぶ設備
ホームと駅舎を結ぶ設備

 西口新駅舎とホームの間は階段2箇所、エスカレーター2機(上下)、エレベーター1機(15人乗り)で接続されており、スロープで段差がなかった旧駅舎時代と同様バリアフリー化が図られています。

<i>ホーム移転に合わせて信号機も移設された。</i>
ホーム移転に合わせて信号機も移設された。

  ホームの移転に合わせて、新ホームの途中にあった閉塞信号機(西行き(三鷹方面)の第24閉塞信号機と東行き(千葉方面)の第4閉塞信号機)が進行方向に向かって数十m移設されました。また、ホーム移転にした分飯田橋駅の着発時刻が西行きは+1分、東行きは-1分修正されています。

東口への連絡通路となった旧ホーム
東口へ降りる階段から先のホームは閉鎖された
東口千葉寄りの階段は閉鎖された
左:東口への連絡通路となった旧ホーム
右上:東口へ降りる階段から先のホームは閉鎖された
右下:東口千葉寄りの階段は閉鎖された
上:東口への連絡通路となった旧ホーム
中:東口へ降りる階段から先のホームは閉鎖された
下:東口千葉寄りの階段は閉鎖された

 使用を終了した旧ホームは線路側に柵が取り付けられ、東口との間をつなぐ連絡通路に転用されました。線路側の柵は現時点では鉄パイプを組み合わせた簡易的なものとなっており、今後本格的なものに作り替えられるものと思われます。連絡通路として使用されているのは東口三鷹寄りの階段・エスカレーターまでで、そこから先のホームは完全に閉鎖されています。この部分は信号設備なども使用停止になっていることから、今後撤去されるものと思われます。

■今後は
踏板が撤去された仮西口駅舎への階段
踏板が撤去された仮西口駅舎への階段

 新ホーム・新西口駅舎の完成により、仮西口駅舎へ通じる階段は踏板が撤去されました。仮西口駅舎は千代田区から借地して建設されているため、今後は撤去されます。また、現時点では時期は明言されていませんが、新ホームの床面を見るとわかる通りホームドアの設置も予定されています。一部仮設状態となっているホーム床面の仕上げと並行してこれらの工事も進められることになります。引き続きこれら最終仕上げの状況についても注目してまいります。

▼参考
JR中央線飯田橋駅ホームにおける抜本的な安全対策の着手について - JR東日本(2014年7月2日発表)(PDF/202KB)
飯田橋駅がより安全に、より便利になります~新ホーム、新西口駅舎および歩行者空間の供用開始について~(2020年6月16日発表)(PDF/1.2MB)
JR飯田橋駅、急カーブを解消した新ホーム・新西口駅舎で営業開始。構内レポート - トラベル Watch
中央線飯田橋駅改良計画-列車とホームの離隔解消対策- - 日本鉄道施設協会誌2017年1月号84~87ページ
中央線飯田橋駅改良 - 日本鉄道施設協会誌2017年3月号55~57ページ

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