東京メトロ東西線南砂町駅改良工事(2021年4月23日取材)

新ホームへつながるトンネルが見え始めた南砂町駅

東京メトロ東西線は、沿線での宅地開発の進行により混雑が著しくなっています。この問題を解決するため、現在線路の増設や拡幅などの大規模改良工事が各所で進められています。その1つである南砂町駅の2面3線化工事について4月に再調査を行ってまいりました。新ホームのトンネル構築と既存トンネル側壁の撤去が進む現地の様子をお伝えします。

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東京メトロ東西線南砂町駅改良工事(2020年9月19日取材)(2020年10月18日作成)

■東京メトロ東西線の混雑緩和対策
2010年から2017年にかけて導入されたワイドドア車両15000系 シールドトンネルを解体してホームが拡幅される木場駅
左(1):2010年から2017年にかけて導入されたワイドドア車両15000系
右(2):シールドトンネルを解体してホームが拡幅される木場駅


 東京メトロ東西線は東京都のJR中央線中野駅から都心部を貫通し、千葉県のJR総武線西船橋駅まで至る全長 30.8kmの地下鉄路線です。中野駅からはJR中央線の三鷹駅まで、西船橋駅からはJR総武線の津田沼駅(平日朝夕のみ)と東葉高速鉄道の東葉勝田台駅までそれぞれ相互直通運転を行っています。
 東西線は、元々中央線・総武線の混雑緩和のためのバイパス路線として計画されました。千葉県側の浦安市・市川市内のルート周辺は当時人家もまばらな湿地帯だったことから、全線が高架橋で建設されました。東西線開通によりこれらの地域では都心への利便性が飛躍的に向上したことから、急速に宅地開発が進むことになります。結果、1990年代以降東西線では総武線を上回る激しい混雑が常態化するようになります。そのため、民営化前の営団地下鉄時代より

●全列車の10両編成化による定員増加
浦安以西各駅停車の「通勤快速」の新設による混雑平準化
ワイドドア車の導入による乗降時間短縮
●CS-ATC化による運転間隔の短縮(最短2分)

を行ってきました。しかし、これらの対策が完了した2010年代に入ってからも混雑状況は好転せず、混雑率は国内最高となる199%(木場→門前仲町7:50~8:50)を記録し続けました。そこで新たなメニューとして

(1)ワイドドア車(15000系)の増導入(2017年完了)
(2)門前仲町駅のホーム拡幅(2013年完了)
(3)南砂町駅の2面3線化:線路容量の増大(2027年度完成予定)
(4)茅場町駅のホーム拡張:東西線ホームを延長・階段増設・停車位置変更・日比谷線ホーム拡幅(2022年度完成予定)
(5)木場駅のホーム拡幅:ホーム上の混雑解消(2025年度完成予定)
(6)九段下駅折り返し機能向上:引上線の平面交差解消(2025年度完成予定)


が立案され、各計画とも鋭意工事が進められています。(注:完成予定年度は東京メトロ中期経営計画「東京メトロプラン2021」(リンクは記事末尾)による。)この東西線混雑緩和対策にかかる総投資額は1,200億円にのぼり、会社を挙げた一大プロジェクトとなっています。

▼脚注
※1:新型コロナウイルス感染拡大後は首都圏の各路線とも通勤客が激減しており、来年以降数値が大きく変わる可能性がある。


■南砂町駅2面3線化工事の概要
1989年の南砂町駅付近の航空写真
1989年の南砂町駅付近の航空写真
※本図は国土地理院Webサイト「地理院地図Vector(試験公開)」で公開されている「年代別写真:1988~1990年」に加筆したものである。>


 南砂町駅は1969年の営団地下鉄東西線東陽町~西船橋間延伸時に開業しました。開業当時駅の真上には、洲崎川という運河があったことに加え、洲崎川自体が北側にある砂町ポンプ所(1990年3月廃止)の排水路も兼ねていたことから、川を埋め立てることもできませんでした。そこで、南砂町駅については陸上で分割して作ったトンネル筐体を埋める「ケーソン工法」により建設されました。運河が真上にあることから出入口の設置場所も制限を受け、改札口はホーム両端のみのコンパクトなレイアウトとなりました。
 開業時は周辺が工場ばかりだった南砂町駅ですが、都内のその他の地域と同様1990年代以降再開発により高層マンションが多く建設されました。このため、南砂町駅の乗降客数は約6万1千人(2019年度)と10年間で約1.5倍増加しており、駅構内の混雑が激しくなっています。東京メトロでは、東西線全体の混雑緩和も兼ねて南砂町駅の南側にもう1面ホームを増設し、2面3線化する大規模改良を行うことを2011年に決定しました。

南砂町駅の改良前の構内図 南砂町駅の改良後の構内図
南砂町駅の改良前(左)と改良後(右)の構内図(実際は直線ではなくカーブしている)

 南砂町駅の2面3線化は、駅前後の区間を含む440mについてトンネルを外側に拡大し、南側にもう1面島式ホームを増設します。これにより、現在の2番線(中野方面行き)は線路の両側にホームが付く上下線兼用ホームになります。これにより、朝ラッシュ時は先行列車が駅を出ないうちにもう1本ある線路に後続列車を進入させる「交互発着」が可能となり、遅延の抑制が実現できます。また、東西線は荒川や江戸川といった長大橋梁があるため、荒天時は強風による速度規制・運転見合わせがしばしば発生します。現状では地上区間が運転見合わせになった場合、東陽町駅で折り返す必要がありますが、南砂町駅が2面3線化されると当駅で折り返しが可能となるため、運転区間を1駅延長できるようになり利用者への影響が低減されます。
 なお、トンネルの改築は列車を運行しながら行うため、現在のトンネル躯体を包むように新しいトンネルの躯体を構築します。このため、1番線(西船橋方面行き)についても線路を外側に移設できるため、現ホームについても幅が6mから9mに拡張されます。また、駅の両端はポイントがあるためトンネル内に中柱を設けられず、トンネル天井が厚くなります。東西線は当駅のすぐ東で線路が地上に出るためホームが浅い位置にあり、天井が厚くなると地下1階の階高を十分確保することができません。そこで、現在ホーム両端にある改札口はどちらも廃止し、新たに駅中央の線路上部に改札口を集約します。この際階段やエスカレータもホーム全体に分散するよう再配置し、懸案となっていた構内の混雑の緩和も合わせて実現されます。

■新ホーム用トンネルが出現
 南砂町駅改良工事は2013年夏から開始され、当初は2020年度までの完成が予定されていました。しかし、運河跡地の立地ゆえに着工後地中に予想外に大量の廃材が埋まっていることが判明し、その撤去に2年もの期間を要することになりました。さらに、地盤が極度に軟弱だったことから周辺の地盤改良や掘削に伴いトンネル全体が沈下・浮き上がる現象が発生し、安全対策が必要となったため工期が2027年度へ大幅に延長されることになりました。詳細は前回の記事「■トンネルの沈下・浮き上がりによる工事の中断の項目をご覧ください。
 このように紆余曲折はあったものの、掘削完了後は順調に新ホーム用のトンネル構築が進んでいます。今回は4月23日(金)に調査した現地の様子をお伝えします。

駅中央の地上を交差する丸八通りから中野方面を見る。最上部のトンネル天井部分が完成した。 階段・エスカレーター用の開口部と思われる傾斜付きの穴
左(1):駅中央の地上を交差する丸八通りから中野方面を見る。最上部のトンネル天井部分が完成した。
右(2):階段・エスカレーター用の開口部と思われる傾斜付きの穴


 駅中央の地上を交差する丸八通りの西側では、新ホーム用のトンネル掘削が完了して最上階(地下1階)天井まで完成しています。完成した天井には出入口や換気口になると思われる開口部が所々にあります。特に新ホーム側(南側)には階段またはエスカレーター用と思われる傾斜の付いた巨大な開口部があり、道路からもその存在が目立ちます。

西船橋寄りにあった防水ハウスは解体された
西船橋寄りにあった防水ハウスは解体された(2020年9月19日の同じ場所の様子

 西船橋寄りの新砂あゆみ公園跡地では、前回地下のトンネル解体のためクレーン付きの建屋(防水ハウス)が設置されていました。トンネル解体終了に伴い今回この建屋は撤去されており、以前の覆工板だけの状態に戻っています。

ホーム中野寄りではB線側の側壁取り壊しが進む ホームの先は仮支柱の形状が違う
左(1):ホーム中野寄りではB線側の側壁取り壊しが進む
右(2):ホームの先は仮支柱の形状が違う


 地下のホームでは引き続き新ホームが建設されるB線側のトンネル側壁を取り壊す作業が続いています。前回の西船橋寄りに続き、中野寄りでも取り壊しが完了して防護板が撤去され、現ホーム上から新ホームへ通じるトンネルが見えるようになった箇所が出てきました。B線上部の天井コンクリートは撤去した側壁とホーム上の柱で支える構造になっており、側壁を単に撤去してしまうと天井が崩落してしまうことから、鉄製の仮支柱を噛ませています。ホームの先は新ホームへの線路の分岐部分が作られることから、仮支柱がパイプを使った簡素なものになっており、今後天井のコンクリートを撤去するものとみられます。

1番出口に通じる階段天井に開けられた穴
1番出口に通じる階段天井に開けられた穴

 この側壁撤去部分に隣接して設けられている1番出口側の改札口へ上がる階段では、天井の化粧板が数か所取り外されています。外された個所をよく見るとトンネル天井のコンクリートにコア抜きで穴が開けられています。前記した通り、改良工事完成後の南砂町駅は改札口が駅中央に集約される計画となっており、中野寄りのホーム端にある階段は非常口として残されるものの、その先の改札口と1番出口は廃止されることになります。天井に開けられた穴は地下1階の改札階部分のトンネルを撤去するための準備(中間杭を通すための穴)であると思われます。

ホーム西船橋寄りの先はトンネル解体が完了した
ホーム西船橋寄りの先はトンネル解体が完了した

 最初に既存トンネルの撤去が行われた西船橋寄りのホームの先では、作業の終了に伴い線路防護用の機材が全て撤去されました。今後は新ホームへ向かう線路の敷設などの工事が行われるものとみられます。

南砂町駅改良工事は、その特殊な立地条件と構造ゆえに1つ1つ安全を確認しながら作業を進めており、時間を要しています。トンネル側壁の撤去も同様にしばらく時間がかかるものと思われますが、1、2年以内には新ホームの使用が開始されるものと予想されます。引き続き現地の状況に注目してまいります。

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▼参考
中期経営計画 東京メトロプラン2021|東京メトロ
事業計画|東京メトロ
南砂町駅の改良工事を分かりやすくご紹介します 「メトロ・スナチカ(工事インフォメーションセンター)」 平成26年3月25日(火)オープン - 東京メトロ(PDF/483KB)
輸送サービスの改善篇 | 安全。安心。メトロの目
東西線建設史 | メトロアーカイブアルバム
列車遅延解消のための地下鉄駅2面3線化計画-東京メトロ東西線南砂町駅- - トンネルと地下2012年8月号27~32ページ
東西線南砂町駅2面3線化改良計画について - 土木学会地下空間シンポジウム論文・報告集第18巻119~122ページ
東西線南砂町駅改良工事における地中障害物の撤去 - 基礎工2017年2月号32~36ページ
南砂町駅における線路・ホーム増設の大規模改良 -東京地下鉄東西線南砂町駅改良土木工事- - 土木施工2019年11月号113~116ページ
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