二ヶ領用水(神奈川県川崎市)の桜(2010年4月3日取材)

カテゴリ:公園・風景 | 公開日:2010年04月30日23:58
二ヶ領用水の桜

季節モノは早めに…ということで今回は4月3日に訪問した神奈川県川崎市の二ヶ領用水の桜についてお伝えしたいと思います。

■二ヶ領用水宿河原堰の桜

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二ヶ領用水は現在の川崎市域に広がっていた農地へ多摩川から引水するために建設された人工の水路です。1597(慶長2)年、当時の代官であった小泉次太夫が徳川家康の命を受けて約14年の歳月をかけて完成させたもので、神奈川県内では最も古い人工の水路となっています。「二ヶ領」の名称は当時の川崎領と稲毛領の境を流れていたことからつけられたもので、流域の60村、最盛期には2850haの水田を潤し、コメの収穫量は飛躍的に伸びたと記録されています。この二ヶ領用水のうち、上流の多摩川との分水口(宿河原堰)付近からJR南武線の久地駅付近までの2kmの区間は両岸におよそ400本の桜が植えられており、毎年春にいっせいに花を咲かせ地元の人たちを楽しませています。
今年は皆様ご承知の通り桜の開花は平年どおりでしたが、その後の天候がめまぐるしく変化していたためいつ満開になるのかわからず出かける時期の選定に大変苦労しました。このとき自宅周辺の桜の花は日当たりが良かったこともありほぼ散ってしまっている状態でしたが、大学への通学途中に電車内から見える桜の木はまだ大半がつぼみという状況だったのです。今回採りあげる二ヶ領用水の桜はまだ大半がつぼみという気もあったものの、全体的には8分咲き程度といった開花状況でした。

宿河原駅近くの二ヶ領用水。桜が川の上を覆い尽くしている。
宿河原駅近くの二ヶ領用水。桜が川の上を覆い尽くしている。※クリックで拡大


「こんな写真も撮れます。」桜の脇を南武線205系電車が通過
「こんな写真も撮れます。」桜の脇を南武線205系電車が通過
※クリックで拡大(1280×960px)

水面近くまで降りられるようになっている。
水面近くまで降りられるようになっている。

今回歩いたのはJR南武線宿河原駅から二ヶ領用水を下流(溝口方面)へ向かって進むというルートです。(このようなルートにした理由は後述します。)桜の木は用水路の両側に数メートル間隔で植えられており、訪問時は水路上を白い花が覆い尽くすという状況でした。水路の両側は水面まで近づけるようテラス状になっており、地元に住んでいる人たちがレジャーシートを広げて花見を楽しんでいました。桜の本数は宿河原駅周辺が最も多く、駅前の商店街から川沿いにかけて屋台がいくつか出店していました。

久地駅近くの二ヶ領本川との合流点
久地駅近くの二ヶ領本川との合流点

東名高速と交差すると桜並木は終わり、護岸も垂直に切り立った一般的な都市河川に変わります。そして久地駅の手前で二ヶ領本川と合流します。

■久地円筒分水
久地円筒分水(2枚合成)
久地円筒分水(2枚合成)
※クリックで拡大(1000×428px)

二ヶ領本川をそのまま下流へ進んでいくとこのような円形の池のような施設が現れます。これは「久地円筒分水」と呼ばれているもので、その名の通り二ヶ領用水の水をこの付近一帯の農地へ分水するために設置されたものです。

当初、二ヶ領用水の水はこの付近に設置された分水樋で久地二子堀、六ヶ村堀、川崎堀、根方堀の4方向に単純に分割されていました。しかし、この方式では流体工学的な特徴から分水樋口の幅を一定にしても流量により水路の水位によって分水される流量が変化してしまうという欠点があり、江戸時代末期の1821(文政4)年の溝口騒動をはじめとする水利権を巡る争いを散発させることとなりました。
この欠点を解消するべく、1914(昭和16)年に既設の分水樋のやや下流、平瀬川と交差した直後の地点にに円筒分水が建設されました。この円筒分水では、まず平瀬川との交差地点の手前に設けられた取水口で二ヶ領用水の水の一部を取水し、平瀬川の下をくぐる伏越し管(逆サイフォン)を通じて二重になっている円筒の中央に水を噴出させます。そして内側の円筒で一旦水面の波立ちを抑えたのち、4方向に決まった比率(川崎堀38.471m、六ヶ村堀2.702 m、久地堀1.675 m、根方堀7.415 m)で分割された外側の円筒に水が流入し、各方向に常時決まった流量が分水されるという仕組みになっています。なお、円筒分水手前の取水口で取水されなかった余剰水はそのまま平瀬川に合流して多摩川へ戻るという流路になっています。

周辺の都市化が進んだ現在は農業用水としての役目は無くなったこの久地円筒分水ですが、その歴史的価値の高さから1998(平成10)年には国の登録有形文化財に指定され、周辺は川崎市が公園として整備したうえで大切に守られています。今回訪問時は周囲に植えられた桜の花が満開となっており、水面に花びらが降り注ぐ美しい光景が見られました。

ちなみに、この久地円筒分水から先も溝の口駅方面へ遊歩道は続いており、こちらはしだれ桜の名所として知られています。今回は時間の関係で津田山駅へ向かったため周りませんでしたが、次のシーズンに訪問される方は是非そちらにも行かれることをお勧めします。

▼参考
二ヶ領用水久地円筒分水 - 川崎市教育委員会文化財案内
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コメント


二ヶ領用水は人工の水路だ。油のものやごみ等を水路に流すと悪臭が漂い、住んでる人に迷惑をかける。水路は汚染のないようにしないと鳥や魚も棲めないな。悪臭が漂うと暗渠にしないとダメなんだ。
2010/05/09 15:15 | URL | 投稿者:タクロウ [編集]
Re:
タクロウさま>

二ヶ領用水の原水である多摩川も高度成長期とは比較にならないほど浄化が進んでいます。今後は上流域における下水道のさらなる普及や不法投棄の積極的な取締りなど以前のような汚染を再発させない取り組みが必要だと思います。そうしないと都区内の中小河川のような「臭い物には蓋をする」暗渠化といった最悪の歴史を繰り返すことになりかねませんから。
2010/05/10 00:39 | URL | 投稿者:takuya870625(管理人)
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