京急蒲田駅連続立体交差化工事(2010年4月3日取材)とダイヤ改正を巡る混乱

吞川沿いの桜の花と新しい京急蒲田駅

Yahoo!ブログ時代から継続してお送りしている京急電鉄の京急蒲田駅周辺の連続立体交差化工事ですが、前回の取材から半年以上が経過したため4月に再度取材を行いました。今回はその様子をレポートいたします。なお、高架化工事の概要や事業による効果につきましては、以下でリンクしている以前作成の記事で解説しておりますのでそちらをご覧ください。

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■まもなく上り線が高架化
高架化前後の配線図
高架化前後の配線図 ※クリックで拡大

高架化後の京急蒲田駅は上り線ホームが2階、下り線ホームが3階の2層構造で、各階とも島式ホーム+切欠きホームの構成となります。現在の京急蒲田駅では空港線が上下列車とも1線を共有し、かつ本線と平面交差で分岐しているため、今以上の増発が困難となっています。高架化後は上下線のホームが完全に分離されるためこれらの諸問題が一気に解消され、来る2010年10月に予定されている羽田空港のD滑走路供用開始による利用者の増加にも十分対応できるようになる予定です。(京急の公式Webでは品川~羽田空港間の運行間隔が10分から6~7分に、横浜~羽田空港間の運行間隔が20分から10分にそれぞれ短縮されるとアナウンスされています。)
また、切欠きホームが新設される本線側は優等列車の追越しが可能となり、異種別の列車同士での乗り継ぎの利便性が大幅に向上します。
工事は2001(平成13)年から開始され、以後順調に構造物の建設も進んでいます。そしていよいよ今月16日に上り線が高架線に切り替えられることとなりました。これにより事業区間内にある合計28箇所の踏み切りで遮断時間が平均で4割減少するほか、各駅ではエレベータが新設されバリアフリー化が推進されます。これにあわせて京急と相互直通している都交通局(浅草線)、京成、北総、芝山の各線でダイヤ改正が行われる予定です。(これについては後ほど改めて詳しく触れることとします。)
なお、上記の配線図のうち、2010年5月16日の上り線高架化後の空港線内の区間に関しては以下のWebページを参考にさせていただきました。梅屋敷・糀谷の2駅の高架ホームについては暫定的に下り線ホームを拡幅して上り線ホームとして使用する模様です。

▼参考
2010年4月9日京急線工事調査(1) 京急蒲田付近連立切換口編 - おきらく娯楽工房
大森町界隈あれこれ 京浜急行の高架化 全工区統合編(第19回その3) - K&A
京急蒲田駅周辺の上り線高架化直前 (2) 糀谷・梅屋敷・大森町・平和島: やいゆえブログ

平和島駅横浜方の新旧切り替え地点を下り列車の先頭から眺める。
平和島駅横浜方の新旧切り替え地点を下り列車の先頭から眺める。

2010年4月3日訪問時点ではすでに上り線の軌道敷設やホームの各種設備の工事はほとんど終了しており、残る工事は本線の平和島~大森町間、六郷土手~雑色間、空港線の糀谷~大鳥居間にそれぞれある新旧線路の接続点の軌道敷設のみとなっていました。この3地点に関してもレールやPCまくらぎといった必要な資材はすでに搬入されており、16日の切り替えに向けた準備が着々と進められていました。

京急蒲田駅のホーム。正面の上り線ホームが使われるのもあと少しの間である。 駅の横浜方にある踏切から駅構内を見る。右へ分岐する線路が空港線ホームへ通じる。この平面交差もまもなく解消される。
左;京急蒲田駅のホーム。正面の上り線ホームが使われるのもあと少しの間である。
右:駅の横浜方にある踏切から駅構内を見る。右へ分岐する線路が空港線ホームへ通じる。この平面交差もまもなく解消される。

※クリックで拡大

2層構造となる京急蒲田駅はすでに下り線となる上層階の桁の架設も完了しており、外見上はこれで「完成形」といえる状態となっています。今後のステップとしては高架下の駅施設の施工などがありますが、これらの工事は地上を走っている現在線を高架化しない限り進めることはできないため、下り線が高架化される2014(平成26)年までは仮の設備でしのぐことになりそうです。
なお、この京急蒲田駅付近では高架化と同時並行する形で駅の南側を通る国道15号線(第1京浜)と環状8号線の交差点の立体交差化が行われていますが、空港線の踏切付近については高架化工事が完了するまで本格的な工事が行えないためこの部分以外の区間で工事が進められています。

国道15号線(第1京浜)の踏切。2層構造の高架橋がほぼ完成している。
国道15号線(第1京浜)の踏切。2層構造の高架橋がほぼ完成している。

踏切の反対側から京急蒲田駅を見る。(2枚合成)
踏切の反対側から京急蒲田駅を見る。(2枚合成)
※クリックで拡大

■「エアポート快特」を巡り大田区と京急が大揉めに
5月16日ダイヤ改正後の停車駅(抜粋)
5月16日ダイヤ改正後の停車駅(抜粋)

さて、前述の通り今月16日の上り線高架化にあわせて京急と乗り入れ各社においてダイヤ改正が行われる予定となっています。しかし、この改正を巡って現在京急電鉄と大田区が大揉めになる事態となっています。
発端となったのは本ダイヤ改正において予定されている「エアポート快特」という種別の列車の停車駅変更です。この列車は東京都心と羽田空港の間を行き来する利用者をターゲットに品川~羽田空港間をノンストップで走る(京急蒲田駅を通過とする)もので、本ダイヤ改正であわせて新設される「エアポート急行」と併せ、これまでより利便性が向上することがPRされています。しかし、ここで黙っていなかったのが京急蒲田駅が位置する大田区です。大田区では本事業に対し200億円を負担していることを理由に京急蒲田駅を通過する「エアポート快特」の新設に強い反発を示し、本ダイヤ改正の内容が区に伝えられた直後の去る4月23日には予定されていた関係者による新駅の見学会を急遽中止したほか(24日の公募による見学会は予定通り開催)、30日には区議団が京急に対し通過ダイヤの撤回を求める申し入れを行いました。しかし、5月7日夕方に京急は公式Web上において「エアポート快特」の新設を含む本ダイヤ改正に関するプレスリリースを公表し、現時点ではこのままダイヤ改正を「強行するものと見られています。これを受けて同日、大田区の区長、区議会長、京急蒲田駅通過反対区民協議会代表の3者連名で抗議声明を発表する一方、京急との連携が不十分だったことからこのような結果を招いたとして区議会が区長の責任追及を行う動きも出ており、土壇場になって事態は混迷を極めています。

なお、当ブログは公式資料などを基に「事実のみを正確に伝える」ことを目標としているため、今回のダイヤ改正に関して現時点でこれ以上の言及を行うことや、ダイヤ改正自体の是非について論じることはしません。今後事業に関係する機関などから新たな情報が発表された場合は順次追記もしくは新たな記事にて解説する予定です。

▼参考
都市高速鉄道 京浜急行本線(平和島駅~六郷土手駅間)及び同空港線(京急蒲田駅~大鳥居駅間)の連続立体交差事業について - 京浜急行電鉄(PDF)
大田区ホームページ:京急立体交差事業の概要
大田区ホームページ:京浜急行線の連続立体交差事業と関連する街路事業
5月16日(日)ダイヤ改正を実施します - 京浜急行電鉄|報道発表資料(2010年5月7日発表)
大田区ホームページ:京急ダイヤ改正に対する大田区の対応について(京急蒲田駅通過問題対策本部の設置及び抗議声明の発表等)(2010年5月7日発表)
京急蒲田駅が通過駅に格下げ 大田区庁舎内ゴタゴタ - MSN産経ニュース(2010年5月7日20:25配信)

<2010年5月9日追記>
読者の方よりご指摘いただいた内容の修正を反映させました。ご指摘をいただいた方には感謝いたします。
なお、この記事は後半に述べている「ダイヤ改正をめぐる問題」の動きを受けて製作途中だったものの内容を大幅に変更して急遽アップしたものです。したがいまして、調査不足により不正確な記述となっている部分が多数あるものと思われます。今後も間違いや新たな情報(可能であればその情報の出所も)等がございましたら、コメント等(非公開でも結構です)でどんどんお寄せください。みなさまのご協力をお願いいたします。

<2010年5月14日追記>

京急の公式Webで公開された駅構内図を元に配線図を修正しました。5月16日切替時点では梅屋敷駅の高架ホームは下り線用のホームを一時的に拡幅して上り線ホームとして使用する模様です。(情報をお寄せいただいた読者の皆様には御礼申し上げます。)

(更新履歴)
2010年5月8日 11:05 配線図を一部修正
2010年5月9日 00:34 ダイヤ改正に関する内容を一部修正
2010年5月14日 15:45 梅屋敷駅の配線図を修正 このエントリーをはてなブックマークに追加
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コメント

踏切解消まで我慢
京急蒲田駅周辺は工事が進んでる。踏切を立体交差にしないと交通渋滞が大きな問題になる。毎年1月2日と3日に往路と復路の関東大学駅伝が行われ、京急羽田線の踏切は選手の通過でかなり時間がかかったな。立体交差になるまでには駅伝選手は我慢するしかないな。
2010/05/10 22:45 | URL | 投稿者:タクロウ [編集]
負担金割合
エアポート快特に関しての記事において、当該工事の性格や負担金割合が正確に報道されていません

特に渋滞解消を目的とした高架化工事、増発の為の線路等の設備増加工事はまったく違う工事です。

それぞれの工事ごとの負担割合を事実として掲載してはいかがでしょうか?

2010/05/17 09:57 | URL | 投稿者:たぬたぬ [編集]
Re: 踏切解消まで我慢
タクロウさま>
2008年の箱根駅伝では復路で選手が踏切の溝で足をとられて負傷するという事故も起きています。最近は京急の配慮(駅伝開催中は特別ダイヤを編成)により踏切で選手が待たされるということは滅多になくなりましたが、協議進行の安全確保のめんからもできるだけ早い完全高架化が必要だと思います。
2010/05/17 18:00 | URL | 投稿者:takuya870625(管理人)
Re: 負担金割合
たぬたぬさま>
ご指摘の通り、踏切解消のための高架化工事については「道路整備」の一環として国の国庫から補助されており、その財源は主に自動車重量税やガソリン税といった道路特定財源が充てられています。一方、着発線の増設といった運行改善に向けた設備は羽田空港へのアクセス改善を目的とした国土交通省の「駅総合改善事業」の一環として国・東京都・大田区に加え関係が深い自治体である神奈川県・横浜市・川崎市が財政的な補助を行っており、費用的に見れば全く目的が異なる工事が混在していることになります。

詳しい資料については現在調査中なのですが、現在見つかっている資料では両者の予算をひとまとめにして公表しているものが多く(大田区の事業積立金の内訳など)、双方の事業を費用の割合や金額の面において完全に分けて解説するというのはかなり困難であると考えられます。(内部資料的には「このポイントは増設線用だから駅総合改善の予算で。」といった使い分けがなされているものと思われますが、そういった細かい情報は通常まず開示されません。)
恐らく大田区役所や都庁に行けばこういった資料を閲覧できるのかもしれませんが、個人、しかも都内に住んでいるわけではない者ですのでそこまで現在進行中の事業についてそこまで綿密な調査を行うのは時間的・経済的に不可能に近いといわざるを得ません。(言い訳になってしまい恐縮ですが、1両日中に昨日取材した新上りホームの記事をUPする予定ですのでその中で可能な限り詳しく触れたいと思います。それまでしばらくお待ちください。)
2010/05/17 18:40 | URL | 投稿者:takuya870625(管理人)
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