北総線の改良工事と運賃問題…成田スカイアクセスまもなく開業!(2)

カテゴリ:鉄道:建設・工事 | 公開日:2010年06月25日00:05
印旛日本医大駅2番線に停車中の北総7500形羽田空港行き。現在、この線路からは上り方向へ進出できなくなっている。2008年11月2日撮影

来る7月17日(土)に開業が予定されている成田スカイアクセスのレポートの続きです。2回目の今回は北総線の改良工事を、過去に撮影した写真も交えながら解説いたします。さらにトピックとして北総線の高額運賃解消を巡る動きについても触れたいと思います。

▼関連記事
成田スカイアクセスの概要…成田スカイアクセスまもなく開業!(1)(2010年6月24日作成)

■北総線の改良工事
成田スカイアクセスの列車が通過する北総線では列車本数の増加や特急「スカイライナー」の最高速度130km/h運転に対応させるため、2007(平成19)年から各施設の改良工事が行われました。具体的な工事の内容は以下の通りです。

●東松戸駅・新鎌ヶ谷駅・小室駅のホーム増設
東松戸・新鎌ヶ谷・小室の3駅はいずれも2面4線のホームのうち1面のみが暫定的に建設された状態となってました。これは将来の千葉ニュータウンの居住人口増加にあわせて設備を拡張することとし、建設にかかるコストを削減する目的がありました。成田スカイアクセス開業後は特急スカイライナーや一般特急(詳細は次回解説予定)など途中駅を通過する優等列車が多数運行され、速度の遅い普通列車の待避駅が必要となるため今回ホームの増設が行われました。

上りホーム着工前の東松戸駅。現在の上り本線の路盤のみが構築されていた。2006年5月21日撮影 上りホームの構造物の大半が完成した状態。2008年11月2日撮影
左:上りホーム着工前の東松戸駅。現在の上り本線の路盤のみが構築されていた。2006年5月21日撮影
右:上りホームの構造物の大半が完成した状態。2008年11月2日撮影

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新上り線への切替準備中。左が京成高砂方、右が印旛日本医大方での様子で切替前の線路は下り線側へ強引にカーブさせていたことがわかる。2008年11月2日撮影 新上り線への切替準備中。左が京成高砂方、右が印旛日本医大方での様子で切替前の線路は下り線側へ強引にカーブさせていたことがわかる。2008年11月2日撮影
新上り線への切替準備中。左が京成高砂方、右が印旛日本医大方での様子で切替前の線路は下り線側へ強引にカーブさせていたことがわかる。2008年11月2日撮影
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上りホーム使用開始後の東松戸駅。試運転中の特急「スカイライナー」が入線。2010年6月12日撮影
上りホーム使用開始後の東松戸駅。試運転中の特急「スカイライナー」が入線。2010年6月12日撮影

東松戸駅高架橋自体が3線分(現在の下り2線と上り本線)しか建設されていなかったため、新たに上り線ホームと上り副本線の高架橋が建設され、2009(平成21)年2月より供用が開始されました。新設ホームの意匠は既存のホームとほぼ同一ですが、軌道については既存の下り線で採用されているスラブ軌道ではなくPCまくらぎを使用したD型直結軌道が採用されており、現在の上り本線に関しては建設時に準備されていたスラブ固定用の突起が支障となったためこれ切除しています。

上りホーム着工前の新鎌ヶ谷駅。現在上りホームはホーム床面のみの状態。2006年5月21日撮影 上りホーム完成後。屋根などの意匠は既存のホームとほぼ同一。なお、この時点では4線ある線路のうち、外側2線が再整備のため本線との接続が切られており使用不可となっていた。2008年11月2日撮影
左:上りホーム着工前の新鎌ヶ谷駅。現在上りホームはホーム床面のみの状態。2006年5月21日撮影
右:上りホーム完成後。屋根などは既存のホームとほぼ同一。なお、この時点では4線ある線路のうち、外側2線が再整備のため本線との接続が切られており使用不可となっていた。2008年11月2日撮影

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新鎌ヶ谷駅は開業当初から2面4線のホーム全てのの高架橋が建設されていましたが、上り線側のホームについてはホーム基礎のみが施工された状態で留置線として使用されていました。上り線ホームとして使用するのに当たっては東松戸駅と同様ホーム上の営業に必要な設備(階段・屋根・照明・放送設備など)の整備や駅前後の線路の配線変更が行われ、2007年11月より供用を開始しました。ホーム部分の軌道は東松戸駅とは異なり以前と同じバラスト軌道となっています。

上り線の片面ホーム(画面右)が増設された小室駅。2010年6月12日撮影
上り線の片面ホーム(画面右)が増設された小室駅。2010年6月12日撮影

小室駅についてもも上り線のホームの新設が行われ、従来から使用されてきた島式ホームは下り列車線用となりました。新設ホームは前記の2駅とは異なり、本線側のみの片面ホームとなっており上り線については当駅で優等列車の追い抜きなどができない構造となっています。

なお、以上3駅では上り線ホームの増設に伴い副次的に駅前後の本線にあった急カーブが解消されており以前よりも高速での通過が可能となっています。

●印西牧の原駅の配線変更
印旛日本医大寄りのポイントが増設された印西牧の原駅。下り列車の前面展望。2010年6月12日撮影
印旛日本医大寄りのポイントが増設された印西牧の原駅。下り列車の前面展望。2010年6月12日撮影

印西牧の原駅は上下線がともに島式ホームの2面4線の構造ですが、このうち内側2線の印旛日本医大寄りについては当駅の東方にある車両基地のみに通じる配線となっておりこのままでは優等列車の追い抜きが不可能でした。このため、印旛日本医大寄りにある本線から車両基地方面へ向かう片渡りポイントを両渡りに交換し、内側2線から印旛日本医大方面へ出入りできるようにしました。

●印旛日本医大駅の折り返し線新設
ホームから見た使用開始直後の印旛日本医大駅折り返し線。レールの表面に光沢があることから既に一部列車が使用していることがわかる。2008年11月2日撮影
ホームから見た使用開始直後の印旛日本医大駅折り返し線。レールの表面に光沢があることから既に一部列車が使用していることがわかる。2008年11月2日撮影

駅の上を通る陸橋から見たところ。この時点では成田空港方面へ通じる外側2線の軌道は未完成だった。2008年11月2日撮影 同じ地点の現在の様子。外側2線の軌道敷設も完了し、内側の折り返し線には頻繁に北総線の電車が入線している。線路の両側では北千葉道路の建設も進行中。2010年6月12日撮影
左:駅の上を通る陸橋から見たところ。この時点では成田空港方面へ通じる外側2線の軌道は未完成だった。2008年11月2日撮影
右:同じ地点の現在の様子。外側2線の軌道敷設も完了し、内側の折り返し線には頻繁に北総線の電車が入線している。線路の両側では北千葉道路の建設も進行中。2010年6月12日撮影。

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前回の記事で述べたとおり成田スカイアクセス開業後も北総線の列車は引き続き印旛日本医大駅止まりとなるため、印旛日本医大駅の成田空港寄りの上下線間に折り返し線が2本新設され、2008年から使用を開始しました。これにあわせて当駅の京成高砂駅寄りにあった両渡りポイントが片渡りに変更されており、2番線から上り方面へは直接進出できなくなっています。成田スカイアクセスの試運転開始以降は、印旛日本医大駅のホームの占有時間を短縮するため北総線の列車の大半がこの引き上げ線を使用して折り返しています

以上の改良工事を配線図で示すと以下の通りとなります。
北総線の配線変更を示した図
北総線の配線変更を示した図
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●その他改良工事
C-ATSと1号型ATSの境界を示す標識が設置された小室駅の出発信号機。 「成田空港方面」の文字をテープで隠している発車標。2枚とも2010年6月12日撮影
左:C-ATSと1号型ATSの境界を示す標識が設置された小室駅の出発信号機。
右:「成田空港方面」の文字をテープで隠している発車標。2枚とも2010年6月12日撮影

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このほか、北総線内では成田スカイアクセスの開業に備えて以下のような施設の改良工事が行われました。

1、抑速信号の導入
最高速度の向上に伴うブレーキ距離の確保のため、京急線で使用されている制限速度が100km/hの抑速信号(緑と橙の点滅)を導入した。これに伴い、大部分の3灯式信号機を点滅現示が可能な4灯式信号機に交換したほか、一部区間で閉塞区間の変更(信号機の移設)も行われた。

2、停車場近傍区間のC-ATS化
安全性向上とスピードアップのため停車場(構内に分岐がある駅)を対象に自動列車停止装置(ATS)を1号型ATSからC-ATSに更新した。ATSの切替地点には標識が設置されている。なお、京成・北総のC-ATSは以前当ブログで解説した京急のものとは若干動作が異なり、保安装置の切替や信号機の現示変化など何らかのアクションがあると必ずベルが鳴る仕様となっており、運転台のLEDモニタの表示も異なる。

3、高速運転に向けた軌道改良
高速運転に対応させるため、一部区間でレールの重量化(60kgレール化)や継ぎ目の溶接・伸縮継目の挿入によるロングレール化が行われた。また、松飛台駅構内など一部のカーブ区間ではカント(線路の傾き)を増量し、制限速度が引き上げられた。なお、最高速度の引き上げに伴い各カーブの入口には新たに制限速度を示した標識が新設されており、100km/h以上の速度制限も多数見られる

4、防音壁の増設
成田スカイアクセス開業後の北総線は現在よりも列車本数が増加するため高架区間の一部で防音壁の増設・かさ上げが行われている。

5、旅客案内設備の更新
列車の種別や行き先が多様化するため、ホームへのLED案内表示機新設・交換が行われた。なお、一部駅では既に「成田空港方面」の文字が入った案内表示板が設置されているが、成田スカイアクセスがまだ開業していないため上からテープを貼って隠している。

▼参考
成田空港への新しい鉄道アクセス線の開業に向けて「成田新高速鉄道プロジェクト」 - 日本鉄道施設協会誌2010年1月号48~51ページ
北総線観察記@エムサ菌総合研究所
高砂第一保線区日報  【特集】2009年度の北総鉄道の動き

■北総線の高額運賃解消に向けた動き
現在の北総線は同じ千葉県内を走る東葉高速鉄道と並んで全国でも屈指の高額な運賃(初乗り200円)となっています。このような高額な運賃の背景には建設時の用地取得費が高額となったことや利用客の大半を占める千葉ニュータウンの居住人口が当初予測を大幅に下回ったという一種の政治的な失敗があります。(これに加え、高額な運賃によりさらに利用者数が伸び悩む悪循環に陥っているとも言われている。)
成田スカイアクセスの開業に伴い、北総鉄道には多額の線路使用料が入ることになるため、沿線自治体ではこれまで運賃値下げの請願を続けてきました。これを受けて2009年11月、沿線自治体(千葉県・沿線6市(市川・船橋・松戸・鎌ヶ谷・印西・白井の各市))と鉄道会社(京成電鉄・北総鉄道)がそれぞれ年間3億円ずつを拠出し、北総線の運賃を平均で5%値下げすることが発表されました。
しかし、この対応に対して白井市の市議会が「単に沿線自治体が肩代わりするだけでは高額運賃問題の根本的な解決にならない」として市の補助金2600万円の拠出を認めない事態となっています。来る7月の成田スカイアクセス開業時の運賃値下げは既に国への申請を行ってしまっているため、今年度一杯は運賃の値下げが行われることになりますが、白井市議会の動向次第では来年春の再値上げの可能性もあり、今後の運賃値下げの継続が危ぶまれています。

▼参考
白井市:北総鉄道に関連する主な記事
「北総線」運賃5%値下げへ : 住宅・不動産ニュース : ホームガイド : YOMIURI ONLINE(読売新聞)(2009年11月6日)
北総鉄道:高額運賃問題 北総線、再値上げも 社長「補助金不支出なら」 /千葉 - 毎日jp(毎日新聞)(2010年5月6日)

次回は成田スカイアクセスの線路新設区間である印旛日本医大~空港第2ビル間と空港第2ビル・成田空港両駅の改良について解説する予定です。

(つづく) このエントリーをはてなブックマークに追加
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