【動画有】新型スカイライナーAE形…成田スカイアクセスまもなく開業!(4)

東松戸駅に停車中のAE形

先週からお届けしている成田スカイアクセス(成田新高速鉄道・京成成田空港線)の開業前レポート。最終回の今回は現在試運転が行われている特急スカイライナーの新型車両「AE形」について概要とメカニズム面を中心に解説いたします。なお写真はすべて2010年6月12日に撮影したものです。

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■AE形の概要とデザインコンセプト
ボディー側面のロゴ。スピード感あふれる筆書きの“S”の文字が大きく描かれている。SKYLiNERの“i”の赤丸は日の丸をイメージしている。新鎌ヶ谷駅にて。
ボディー側面のロゴ。スピード感あふれる筆書きの“S”の文字が大きく描かれている。SKYLiNERの“i”の赤丸は日の丸をイメージしている。新鎌ヶ谷駅にて。

京成電鉄の特急「スカイライナー」は1978(昭和53)年の京成本線京成成田~成田空港(現・東成田)間の開業に合わせて運行を開始した有料特急列車です。同年の運行開始に際しては空港建設に反対する過激派テロによる成田空港の度重なる開港延期に加え、この列車に充当される車両(初代AE形)自体も過激派の放火に遭い丸々1編成が全焼するなどあらゆる意味で厳しいスタートとなりましたが、運行開始後は成田空港の利用者増加とともに着実に発展を続け、1991(平成3)年には念願の成田空港直下の地下駅への乗り入れが実現し、車両も最新のVVVFインバータ制御を使用したAE100形に更新されて現在に至ります。今回の成田スカイアクセス開業に伴いこの特急スカイライナーはすべて同線を経由することになり、あわせて国内の在来線では最速となる160km/h運転を行うことになるため、それに対応する車両として造られたのがこの2代目のAE形です。
このAE形の車両デザインではファッションデザイナーとして世界的に有名な山本寛斎氏が中心となりデザインおよび詳細設計が進められました。車両の外観についてはホワイトを基調に濃いブルーのラインを配することで「空港への最速の運び手」を象徴する「」をイメージ。内装についても外観と同じくブルーを基調とした色遣いとし、日暮里~空港第2ビル間の36分という短い時間の中で乗客に日本的な風情を国内外問わず楽しんでもらえるよう「透明感」「優しさ」「パブリックな空間に対する知的な配慮」を「凛(りん)」という形で総合して表しています。
なお、車両形式については「空港輸送の原点に回帰する」という意味合いから初代スカイライナーと同じ「AE形」が付与されています。

■160km/hの高速走行を実現するテクノロジー
営業運転開始前ということで内装については検証できないため今回の記事では走行機器などメカニズム面の特徴を中心に解説することとします。
このAE形では最高速度160km/hでの運転を行うことから

1、京成電鉄初のボルスタレス台車の採用
2、モーターの出力強化
3、ブレーキの強化
4、先頭車へのフルアクティブサスペンションの搭載
5、トンネル走行時の車内気圧変動を防止するためドアや換気口の気密性強化

といった高速走行への入念な対策が行われています。このうち、特徴的な1のボルスタレス台車と4のアクティブサスペンションについて技術論文を基に解説したいと思います。

●京成電鉄初のボルスタレス台車
京成電鉄初のボルスタレス台車。東松戸駅にて。
京成電鉄初のボルスタレス台車。東松戸駅にて。

これまで京成電鉄の車両ではボルスタ台車※1を使用してきました。これは京成線や京急線など走行区間に急カーブが多数存在するため、そこで必要とされる走行安定性(台車の旋回性能)を確保する目的がありました。(京急ではボルスタレス台車の車両は乗り入れ禁止となっている。)
しかし、このAE形では最高速度160km/hの高速走行を行うことからブレーキ力の大幅な強化が必要であり、モーター付きの軸を含む車輪全軸へのディスクブレーキ搭載が必須となります。このため、キャリパブレーキ装置(ブレーキディスクを挟み込む機器)や増圧シリンダの搭載が行われることとなり、搭載スペースの確保やブレーキの重装備化による重量増を勘案するとボルスタ台車の採用は困難であると判断されることから、今回京成電鉄では初となるボルスタレス台車の採用に踏み切ることとなりました。
ボルスタレス台車の採用に際しては、京成線内に散在する最小半径120mの急カーブで必要な旋回性と160km/h走行時の安定性を両立できる台車がこれまで存在しなかったことから、試験用の台車を製作し走行試験を繰り返しながら必要な技術開発を進めました。実際の試験では第1段階として2005(平成17)年7月から8月にかけて3500形3572号車にこの試験台車を装着し、夜間に京成本線京成上野~京成高砂間で走行試験を行いました。この試験で急曲線通過に最適な空気ばね・軸ばね・ヨーダンパの特性を決定した後、第2段階として同年9月から10月の2ヶ月間にわたり京成電鉄が製作した台車回転試験機で高速安定性の検証を行いました。これら試験の結果が反映されたのが上の写真のAE形の台車(写真は電動台車のSS170M形)です。

▼脚注
※1:ボルスタ付き台車は台車枠と車体の間に「ボルスタ(枕梁)」と称する部品が付いておりこのボルスタの中心にある軸により車体と台車枠が連結され、カーブ通過時の回転運動を可能にしている。上下方向の揺れを吸収するばねは車体・ボルスタ間もしくは台車枠・ボルスタ間のどちらか一方に入る。
一方、ボルスタレス台車では台車と車体が空気ばねを挟む形で直接連結されており、回転運動は空気ばねが変形することで吸収している。

●先頭車へのフルアクティブサスペンションの搭載
新幹線のフルアクティブサスペンションとAE形のフルアクティブサスペンション
新幹線のフルアクティブサスペンションとAE形のフルアクティブサスペンション

このAE形では乗り心地の向上のため、空力的な影響を受けやすい先頭車に私鉄では初となるフルアクティブサスペンションが搭載されました。フルアクティブサスペンションは台車と車体の間に動力源(アクチュエータ)を置き、車体が揺れようとするのとは反対向きの力を与えることで揺れを抑制するもので、JR東日本の新幹線E2系・E3系などですでに実績があります。このAE形では最高速度は160km/hと新幹線よりも走行速度が低いため、小型・低出力のアクチュエータを使用することで応答性向上や圧縮空気の消費量削減※2を実現しているほか、車体に設置する振動センサの数も削減し、シンプルな機器構成としています。また、新幹線のフルアクティブサスペンションでは動作中にアクチュエータの動作を優先させるため、左右動ダンパの特性が切り替え可能となっていましたが、このAE形ではアクティブサスペンションの非動作時や車輪摩耗時の乗り心地維持のため左右動ダンパの特性は通常と同じ固定式となっています。これらの工夫により乗り心地向上を実現しつつ従来の新幹線のフルアクティブサスペンションと比較して大幅なコストダウンを図っています。
なお、余談ですがこのスカイライナーと競合関係にあるJR東日本の特急「成田エクスプレス」の新型車両E259系でも先頭車にフルアクティブサスペンションが採用されています。

▼脚注
※2:現在営業運転を行っているフルアクティブサスペンション搭載車両ではいずれも空気圧で動作するアクチュエータが搭載されている。これはブレーキ系統などで圧縮空気が使用されているためそれを利用できるためである。なお、最新のE5系・E6系でもこの装置は搭載されているが、最終的な営業速度が320km/hとなることから応答性向上のため電気式(ローラーねじ式)のアクチュエータが採用された。

▼参考
京成電鉄AE形 - 交友社「鉄道ファン」2009年8月号(通巻580号)10~17ページ新車ガイド
住友金属工業「京成電鉄新型特急AE形用台車の開発とアクティブサスペンション」 - 鉄道車両と技術No.157(2009年9月)
E5系新幹線用台車 - 鉄道車両と技術No.157(2009年9月)
京成電鉄85年の歩み - 京成電鉄1996(平成8年)

■成田スカイアクセスの運行計画
日暮里駅に設置されている成田スカイアクセス開業のカウントダウンボード。2010年6月26日撮影
日暮里駅に設置されている成田スカイアクセス開業のカウントダウンボード。2010年6月26日撮影

この成田スカイアクセス(京成成田空港線)は来る2010年7月17日に開業します。開業日の7月17日には京成線全体のダイヤ改正が行われます。現行のダイヤとの主な変更点は以下の通りです。

●特急「スカイライナー」は全列車が成田スカイアクセス経由に
現在京成本線経由で運転されている特急「スカイライナー」は全列車が成田スカイアクセス経由となる。停車駅は上野、日暮里、空港第2ビル、成田空港で160km/h運転を行うため車両は全列車ともAE形となる。運転間隔はおおむね20分。

●「アクセス特急」(成田空港ー羽田空港)の新設
成田スカイアクセスを経由して成田空港~上野・羽田空港間を直通する一般特急「アクセス特急」が新設される。成田スカイアクセス線内の停車駅は京成高砂、東松戸、新鎌ヶ谷、千葉ニュータウン中央、印旛日本医大、成田湯川、空港第2ビル、成田空港で都営浅草線・京急線内では「エアポート快特」として運行する。成田空港~羽田空港間の所要時間は1時間43分で運転間隔は朝ラッシュ時20分、そのほかの時間帯は40分。

●「シティーライナー」の新設
現行の京成本線経由の特急スカイライナーは「シティーライナー」に列車名を変更し、新たに青砥に停車する。車両は現行と同じAE100形を使用する。運転間隔はおおむね60分。

なお、「アクセス特急」には今回の成田スカイアクセス開業に合わせて製造された通勤型車両3000形7次車(3050形)が専用車両として使用される予定です。

▼参考
成田スカイアクセス開業!!7月17日(土)京成線ダイヤ改正 - 京成電鉄(PDF)
新型車両3050形の本線試運転を開始しました - 京成電鉄(PDF)

最後に新型スカイライナーの試運転の動画をご覧いただきながら4回にわたりお送りしてきた成田スカイアクセス開業前のレポートを締めくくりたいと思います。3050形およびAE形の車内の様子については成田スカイアクセスの開業後できるだけ早い時期に取材を行う予定ですのでどうぞご期待ください。



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