新日本橋駅(概説・現地写真(地上)) - 総武・東京トンネル(8)

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■新日本橋トンネル:1km342m11~1km019m71(L=322m40)
▼参考
工事誌(総武線)379・447~456・828~833・949・950ページ
●概説

新日本橋駅位置図
(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データ(昭和54年)に筆者が加筆
「新日本橋トンネル」は総武トンネルのうち、新日本橋駅を構成する地下4層、全長およそ320mの区間である。建設時の仮駅名は地名から「本町(ほんちょう)」とされていた。馬喰町駅と違い、駅の東京寄り(中央通り地下)を東京メトロ銀座線が通ることや掘削深度が浅いことから全面的に開削工法で造られている。地上への出入口は7箇所あり、換気塔は江戸通り沿いのビルに取り込まれる形で2箇所設置している。

新日本橋駅断面図
駅自体の構造は馬喰町駅の開削部分とほぼ同じで、地下1階が改札口コンコース、地下2階が空調・トンネル換気(給気)機械室、地下3階が改札内コンコース(エスカレーターと階段の接続階)・トンネル換気(排気)機械室、地下4階がホームという構成で、線路は東京駅へ向けて1.0パーミルの下り勾配となっている。また交差する銀座線は地下2階の東京寄りを通っており、地下1階のコンコースから銀座線のトンネルの真上を通る形で三越前駅までの連絡通路が分岐している。またこのトンネルに支障する一部の換気用ダクトは地下3階へ迂回している。改札口は駅中央部の1箇所で、そこから東京方面、千葉方面の両方向にエスカレーターが設置され、ホームへ連絡している。
ちなみに、駅名が「三越前」とならなかったのは国鉄が“公共企業体”であり、特定の会社の社名を駅名に使うことを避けたためと言われている。

銀座線トンネルの補強
交差する銀座線のトンネルは1932(昭和7)年に建設された古い構造物である。もともと強度が低いうえ、コンクリートの風化が進んでいたため軽く叩いただけで表面が剥がれる状態になっており、受け替えを行うにあたり変形を防ぐための補強を行った。
銀座線のトンネルは鉄骨鉄筋コンクリート構造で、幅8.7m、高さ5.5m、鉄骨はおよそ2m間隔で並んでいる。トンネル下の地盤は軟弱な粘土層であったためまず薬液注入で地盤を強化し、その後トンネル周囲の土砂を掘削した。補強はトンネルの外枠と中柱を構成する鉄骨へX字に鋼材を追加する形で行うこととなり(図中の赤色で示した部材)、ボルトを打ち込むと強度が保てなくなると判断されたため、溶接により接合している。(外枠については鉄骨を覆っているコンクリートをはつり、内部の鉄骨を露出させて溶接している。)
補強が完了した後はトンネル下に仮の支えとなる桁(H鋼を2本組み合わせたもの)を1.5mピッチで12本埋め込み、合計1200tに及ぶトンネル重量を支えつつその下に順次新日本橋駅の躯体を建設していった。工事完了後、補鋼材や仮受け桁はそのまま残すこととし、仮受け桁と新日本橋駅の躯体の間には桁の腐食防止のためモルタルを充填している。
●現地写真(地上)
全部で7箇所ある地上出入口はビルと一体になったものが5箇所、単独で道路外に設置されたものと歩道上に設置されたものがそれぞれ1箇所ずつとなっている。

左下に6番出入口が入る十六銀行
6番出入口は「十六銀行東京支店」の建物内にある。日本橋室町界隈は日本銀行本店が近い土地柄を反映してか地方銀行の支店が軒を連ねている。十六銀行は岐阜県に本店があり、東海地方の地方銀行としては最大規模を誇る。
▼おまけ:日本銀行本店の写真
たくや870625のフォト - [風景]日本銀行(はてなフォトライフ)
換気用ダクトは6番出入口の直下を通っており、十六銀行の建物の裏手にあるこの大きなルーバーにつながっている。馬喰町駅の換気塔と違い、煙突のように直接上空へ向けて穴が開いているわけではないため、航空写真からこの存在を知ることはできない。


左:改築中の東短ビル。2008年7月6日撮影
右:完成した東短室町ビルと新日本橋駅4番出入口。2010年7月31日撮影
※クリックで拡大
4番出入口が入る「東短ビル」はビル自体の老朽化のため全面的に改築されることになり工事の間出入口・換気塔ともに使用停止となっていた。(東短ビルの換気塔は地下で十六銀行の換気塔とつながっており、換気能力の低下あるものの実際の運用上の問題は無かったようだ。)工事は2009(平成21)年4月末に完了し、現在は出入口・換気塔ともに使用を再開している。新しいビルの換気塔は従来と同じく表(江戸通り)側が吸気、裏側が排気となっているようで、ビルの裏側に回ると非常階段の後ろに巨大なルーバーが開いており、そこから地下鉄特有のカビ臭い排気が出ているのがわかる。

中央通りと1番出入口
室町3丁目交差点から見た中央通り。この下を東京メトロ銀座線が通っており、左の「JPビル」の軒下に1番出入口がある。中央通りはこの先銀座まで続いており、石を敷き詰めた舗装やガス灯風の街灯などほかの通りと比べると際立って立派なつくりとなっている。
●現地写真(地下)
次の記事に回します。
(つづく)
<更新履歴>
2010年8月21日 再開後の4番出入口の写真を追加

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