補遺 - 地下鉄副都心線全線全駅レポート(16)

※この記事はYahoo!ブログから移行したものです。


去る2009年3月、東京地下鉄株式会社(以下、東京メトロ)より副都心線の建設史(公式資料)が発行されました。(国立国会図書館にもすでに収蔵されています。)そこで、今回は「補遺」という形でこの建設史から得られた新たな情報を記事にしたいと思います。

デザイン等に関すること
●千川・要町駅のデザインコンセプト・ステーションカラー
副都心線では全ての駅に固有のデザインコンセプトとステーションカラーが定められていますが、有楽町線との並走区間である千川・要町の2駅については昨年6月の開業時には一切情報がなく、不明となっていました。今回発行された建設史を見たところ、以下のように記述されていました。

・千川駅
デザインコンセプト:やすらぎ×木立のある風景
ステーションカラー:マロングラッセ(幹色)

・要町駅
デザインコンセプト:都会×将来への期待
ステーションカラー:卵色(たまごいろ)

信号システム・設備に関すること
●ATC・ATOについて
副都心線は保安装置として有楽町線や東京メトロの他の路線と同じ新CS-ATCを使用しています。このATCは25~80km/hまで5km/h刻みで信号を出すことができるほか、線路の終端部分ではブレーキパターンによる制御を行うなどその場の状況に見合ったきめ細かい速度制御ができるため、運転間隔を詰めることが可能です。副都心線では最短2分0秒間隔の運転を想定したシステム構成がなされています(回送列車運行・遅延回復のため閉塞割り自体は1分50秒間隔に対応)。
一方、ワンマン運転(自動操縦)に必要なATOですが、これについて乗り入れを行っている東武鉄道・西武鉄道両社が「自社の運行に不要な設備である」として車両改造の費用負担を拒否しました。そのため、苦肉の策として「使用権は東京メトロのみにある」という条件をつけ、東京メトロがその整備費用を負担しています。2012年から乗り入れが予定されている東急電鉄については、車両新造と同時に搭載(一部は改造で搭載)する方針を採っているため現在のところ費用負担について問題は発生していません。

●停止位置の精度
副都心線はホームドアが設置されているため、駅の停車もATOにより自動で行われています。この停止位置の精度は当初プラスマイナス45cm以内といわれていましたが、建設史によると「調整のため当面の間プラスマイナス55cm以内とする」となっており、10cmほど精度が悪化しています。開業直後に多発した停止位置不良による大幅な遅延はこの影響があるものと思われます。

●ホームステップ


北参道駅のホームステップ

北参道駅など電車とホームの間に隙間ができる場所にはホーム側からステップ出て隙間を埋めるシステムが完備されています。このホームステップは建築限界を侵すため、動作中はATCに停止信号(01信号)が出て電車が発車できないようなシステムになっています。(先日ワンマン運転が開始された丸ノ内線も同様のシステムとなっています。)

トンネルの構造に関すること
●池袋~雑司が谷間で深いところを通る理由
池袋~雑司が谷間は今後建設される環状5号線の地下を通っています。環状5号線は途中で都電荒川線と交差するため地下方式が予定されており、副都心線はそれを避けた地下30m付近の深いところを通っています。雑司が谷駅がシールド工法で建設されたのは、都電荒川線や周辺住宅地への配慮の他にこの道路の予定部分を避けたためということがわかりました。また、出典が不正確だった東池袋付近の新駅計画についても建設史にはきちんと記述されています。(該当区間はトンネルを解体できるようダクタイルセグメントを使用しています。)なお、Wikipediaなどには「深いところを通っているのは東北新幹線の新宿延伸に備えたため」という記述が見られますが、これについて建設史に特に言及はありませんでした。

●高田中間ポンプ室
昨年のレポートで雑司が谷~西早稲田間の最低地点にポンプが設置されていることをお伝えしました。建設史によるとこのポンプ室は「高田中間ポンプ室」と称し、高戸橋交差点直下のA・B線の間にあり、地上が交通量の多い交差点であることからシールドトンネル内から挿入した鋼管を支保工とした非開削工法で建設されたとのことです。

●西早稲田駅がシールド工法で建設された理由
西早稲田駅は雑司が谷駅と同じくホーム部分もシールド工法で建設されています。建設史によると、これは上部にNTTの通信ケーブル用トンネル(渋谷駅手前まで並行)と下水道が通っているためです。建設史によると下水道に関しては駅に対して斜めに横断しており、駅建設で通常用いられる開削工法が不可能であったといってもよいでしょう。

●西早稲田~新宿三丁目のシールド工法


西早稲田駅の水中到達(左)と東新宿駅の引上げ(右)のイメージ

西早稲田~東新宿間のトンネルはシールドマシンが西早稲田駅でUターンする形でB線(池袋方面)→A線(渋谷方面)の順に建設されました。この到達部分はちょうどトンネルの中央を帯水層が横切っていたため、到達部分に水槽を設けてシールドマシンを水中に押し出すという特殊な工法が用いられました。一方、東新宿~新宿三丁目間のシールドトンネルは西早稲田~東新宿間と同様東新宿駅でUターンする形でB→A線の順に1つのシールドマシンで建設されましたが、東新宿駅はB線が地下6階、B線が地下5階となっているため、Uターンの際はジャッキを用いてシールドマシンを6.3m持ち上げるという方法が用いられました。

●新宿三丁目~渋谷間のシールドトンネル
新宿三丁目~渋谷間の駅間はA・B線が1つのシールドトンネルに収まる形となっています。この区間では鉄道のシールドトンネルでは最大となる幅1.6mのセグメントが使用されており、建設中は変形防止のためトンネルを外側から加圧する特殊な装置が使用されました。

新宿三丁目駅の変化


新宿三丁目駅の出入口で開始された工事

先日、副都心線新宿三丁目駅の中央付近にある地上出入口(無番※)の先で工事が行われているのを確認しました。これはこの先、JR新宿駅南口で行われている甲州街道跨線橋の架け替え工事に関連して、新宿駅南口からこの出入口まで地下道が整備するためのものです。完成時期はまだ明らかになっていませんが、工事が開始されたことから数年以内には開通するものと思われます。

※2008年6月14日の開業日に記念乗車券の発売ブースが設けられた場所

▼参考
東京地下鉄道副都心線建設史 - 東京地下鉄株式会社 2009年3月
新宿駅南口地区基盤整備事業 - 東京国道事務所

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