副都心線の特徴・その他 - 地下鉄副都心線全線全駅レポート(14・終)

※この記事はYahoo!ブログから移行したものです。




東京地下鉄副都心線のすべての駅のレポートが終わりました。今回は締めとして副都心線のその他の特徴や開業当初に多発したトラブル、副都心線を取り巻く将来について書こうと思います。

利用しやすい駅を目指して・・・
副都心線は21世紀の鉄道にふさわしい、利便性・快適性を追求したつくりになっています。

●大型ディスプレイ


大型ディスプレイ(千川駅)

各駅の改札口には大型のプラズマディスプレイが設置されています。このディスプレイは東京メトロのPRのほか、運行情報が随時流されており、利用者が一目で現在の遅延・運転見合わせの状況などを知ることができます。なお、このシステムの開発は日立製作所が行っています。

●ステーションカラー・パブリックアート


各駅駅名板(千川~明治神宮前駅)



北参道駅のベンチ

各駅には固有のステーションカラーが定められ、この色を駅構内の装飾に使用しています。これにより、利用者は今時分がどの駅にいるのかを区別しやすくなっています。また、各駅改札口付近には芸術家が制作したパブリックアートが設置されており、従来は機能優先で無機質になりがちだった地下鉄駅に新たな彩を加えるほか、待ち合わせの目印などにもなる「ランドマーク」的な役割も果たしています。
ちなみに、7月10日(木)まで外苑前駅(銀座線)近くの「クレアーレ青山アートフォーラム」でこのパブリックアート原画の展覧会が行われています。

●発車メロディー
従来東京メトロでは電車発車時の合図音に通称「営団ブザー」と呼ばれる単音のブザーを使用していました。しかし、けたたましく響き渡るこのブザー音は当然のことながら全ての人に快く受け入れられていたわけではなく、副都心線では発車の合図音に5~10秒程度のメロディーを使用しています。メロディー自体は南北線でも採用されていますが、副都心線では駅ごと・方向ごとに違う曲を使用しており、ステーションカラーなどと並んで駅の特徴になっています。メロディーの制作はJR東日本の発車メロディーも手がけた「株式会社スイッチ」が行いました。(この記事「参考」のリンク先に曲名一覧があります。)

ワンマン運転の実現
副都心線は最近の新線鉄道では主流となっているワンマン運転(車掌が乗務しない)を行っており、運転士への負担の低減、安全性向上のための対策が施されています。

●ホームドア


幅が異なるホームドア

ワンマン運転では運転士が運転席に座ったままドア開閉を行うため、通常の方式では十分な安全確認ができません。このためワンマン運転を行う小竹向原~渋谷間の全駅にホームドア(正しくは可動式ホーム柵)を設置しています。しかし、副都心線に乗り入れてくる車両にはもともとホームドア設置を前提とした設計がなされておらず、ドア位置がずれている車両があります。このため一部のホームドアの幅を広くすることで車両ごとのドア位置のずれを吸収しています。また、カーブ上にある駅では電車とホームの間を埋めるため停車中にホーム下からステップが張り出すシステムが設置されています。

●自動操縦
ホームドアの開口幅はおよそ2mしかありません。このため、停車時は電車のドアとホームドアの位置を厳格に合わせる必要が出てきます。このため副都心線では運転操縦を全自動で行うATO(自動列車運転装置)が導入されています。副都心線の場合、停止位置の精度はおおむねプラスマイナス45cm以内を目標としています。

問題山積の直通運転
すでにニュースでもご存知のとおり副都心線は開業から4日間を中心に大幅なダイヤの乱れが発生しました。特に酷かったのが最初の平日となった16日(月)で、この日は朝ラッシュ時に最大35分の遅れが発生し、終電近くまでダイヤの乱れが続くという事態となりました。メトロ側の公式発表によれば「混雑」が主たる原因とされていますが、実際の原因はまだ他にもあります。

1、車両の複雑さ
副都心線は和光市~小竹向原間を有楽町線と共用していますが、ここで問題となるのがで副都心線乗り入れ対応/非対応の車両が混在していることです。乗り入れ各社とも現時点では車両の副都心線対応化が終わっておらず、非対応の車両は副都心線に入れることができません。また、この対応/非対応の車両では搭載機器の構造が大幅に異なるうえ、分岐駅となる小竹向原駅ではこれらの切替作業が必須となり、乗務員が不慣れだったことも手伝ってダイヤ乱れに拍車をかけることになりました。

2、分合流駅・小竹向原駅の配線の複雑さ
小竹向原駅は駅紹介の記事でも述べたとおり、4方向の路線を分合流する重要な拠点駅です。しかし、この駅には平面交差という現在の運行形態をとる上で大きな問題があります。



小竹向原駅の配線図

図のとおり2番線から副都心線へ、1番線から有楽町線に出て行く場合はいかなるルートを取ったとしても必ず平面交差が発生します。したがって、ここで一旦遅れが発生すると交差する列車同士が発車を待つことになり、その後に数分間隔で続いてくる列車へ雪だるま式に遅れが広がっていくという悪循環につながります。
地下駅であるため、今後の立体交差化などは困難であり、当面の対策としては早期の全車両副都心線対応化や場合によっては平面交差する運行(西武―副都心線・東武―有楽町線)の一部制限を行う必要があるかもしれません。

3、車両・設備の不具合の頻発
17日(火)の遅れは和光市付近に集中して停車した列車が一斉に加速したため変電所のブレーカーが切れたことが原因でした。ただ、これはどの鉄道でも起こりうるもので(実際、全国的に見ると年に数件同様の事故は起きている。)、通常の電力使用量から考えると変電所の容量を上げることも非現実的であり、これは仕方が無いものと考えています。
問題なのはそれ以外の設備故障が異常に多いことです。この中でATOの精度、特に駅停車時に軽微な停止位置のずれを起こすことがかなりありました。開業前の試運転では車両に巨大な水タンクを積んで乗客が乗った状態を再現するのですが、それは乗客が移動しないなど条件に「仮定」が入ることが避けられず、その差分が開業後の運行で現れたものと考えられます。現在は調整が進み、停止位置のずれは収束しつつあるようですが、副都心線では駅の途中で勾配が変化する場合もあり(新宿三丁目・渋谷など)、停止位置精度の確保は困難が予想されます。

このほか、16日(月)には指令が東新宿駅の進路設定を誤り、各駅停車の列車を通過線に入れるというトラブルも発生しました。こうしてみると副都心線は個々のシステムの関連性が考慮されないまま無理に開業を急いだように思えます。この背景には東京メトロが来年度以降の株式上場・完全民営化を予定しており、これを遅らせるわけにはいかないという意識が社内全体にあったからだと考えられます。
4年後の東急東横線乗り入れではさらに運用が複雑化します。場合によっては乗り入れ区間の再検討(渋谷駅で運行を分断するなど)を考える必要があるかもしれません。最近の鉄道は会社間の競争よりも乗り継ぎ・直通の利便性などネットワーク性を重視する傾向がありますが、これが時として大きな輸送混乱を招く場合もあることを鉄道会社は十分熟知しておく必要がるでしょう。

街を変える原動力に


渋谷駅ホーム入口の路線図

昨日6月30日(月)、東京都・渋谷区・鉄道会社で作る「渋谷駅街区基盤整備検討委員会」が渋谷駅の再開発計画を明らかにしました。内容はその5日前に作成した渋谷駅の駅紹介記事で触れたとおりで、具体的には

●東横線地上ホームを撤去し、埼京線ホームと山手線ホームを並列化し、両ホームを島式化
●銀座線ホームを東口バスターミナル上空に移転し島式ホーム化
●東急百貨店東横店の移転と現店舗の廃止
●バスターミナルの再配置、駅前広場の大幅拡張、地下街・通路の再編
●国道246号線の拡幅

などとなっています。工期は20年以上ともいわれ、今後渋谷の町は大きく姿を変えることになります。この事業は副都心線開業・東急東横線乗り入れ開始がきっかけとなっており、言い換えれば「副都心線が街を変える原動力となった」といっても過言ではありません。また、東池袋地区など副都心線開通を木に再開発が計画されている地域はこのほかにも複数存在します。前述のとおり東京メトロは来年度以降を目処に株式上場・完全民営化されるため新規の地下鉄建設はこの副都心線が最後となりますが、副都心線は今後その名に恥じない「副都心どうしをつなぎ、変える」という重要な役割を担い続けるに違いありません。今後の発展に期待したいと思います。





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