新日本橋駅~東京駅入口 - 総武・東京トンネル(10)


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■室町トンネル:1km019m71~0km482m84(L=536m87)
▼参考
工事誌(総武線)379・520~522・524~531ページ

●概説
新日本橋駅から中央線・山手線・京浜東北線・新幹線の高架下までの区間は「室町トンネル」という。ほかの駅間のトンネルと同様単線シールド2本で建設されており、線形は上り線が半径420m、下り線が半径470mでそれぞれカーブし、勾配は東京駅へ向かって5.5パーミルの下りとなっている。また、ここでも複数種類のセグメントを使い、地圧・セグメント応力・ひずみなどの測定を行っている。


室町トンネル位置図
(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データ(昭和54年)に筆者が加筆

この区間は千葉方から順に日本橋川(新常盤橋・首都高速都心環状線)、首都高速八重洲線八重洲トンネル、JR線(当時は国鉄)線高架(中央・山手・京浜東北・東海道引上の計9線)と多数の重要構造物と交差する。そのためこれらの補強が行われた。

1、新常盤橋
当時の新常盤橋は大正時代に造られた3連アーチ橋である。沈下による損傷を防ぐため、橋脚周りに仮設の桟橋を造り、そこから薬液注入による地盤強化を行った。

2、首都高速都心環状線(C1)
首都高速都心環状線の橋脚基礎は河床にケーソンを埋め込んだものである。トンネルはこの基礎に10m以下の距離まで接近するため、変形防止対策として基礎の全周にモルタル杭を隙間なく打ち込んだ。

3、首都高速八重洲線(Y)八重洲トンネル
室町トンネルは首都高速八重洲トンネルの約7m下を通過する。沈下防止のため薬液注入による地盤強化を行った。

4、JR線高架
JR線高架は中央線・京浜東北線・山手線の6線が1910(明治43)年に造られたレンガアーチ橋、東海道引上線(当時は上野までつながっていた)の2線が1925(大正14年)に造られた鉄筋コンクリート高架となっている。前者についてはレンガの風化や関東大震災によるクラックなどが見られたため、アーチの内側にコンクリートを巻くもしくは一時的に鋼製アーチを仮設する対策がとられた。また、後者については老朽化はさほど進んでいなかったが、橋脚基礎杭が新設トンネルに支障するため、その切断にあたり橋脚基礎どうしをコンクリートの横梁(はり)でつなぎ不等沈下を防止している。

また、JR線高架の先で下を交差する東京メトロ(当時は営団地下鉄)半蔵門線は総武快速線開業直前の1972(昭和47)年2月に建設が決まった。(※)半蔵門線の工事はその年の6月から開始されることとされたが、すでに室町トンネル内では軌道敷設が完了しており、それらに影響を与えることなくトンネル下部への薬液注入と二次覆工の設置を行うことが要求された。既設の構造物への影響は最小限にとどめるよう努めたが、それでもケーブルダクトとなっている側道を一時撤去する必要があるなど、時期的に非常に厳しい条件下での施工となった。
当時、都内ではほとんど休みなしに地下鉄建設が行われており、このように計画が重なることはもはや当たり前となっていた。後述する「銭瓶トンネル」でも東西線に関して同様の問題が起きている。

※半蔵門線の建設は行われたものの、実際にこの区間に電車が走り始めるのは実に15年以上後の1989(平成元)年1月26日であった。その理由は九段下・神保町付近の民有地で用地買収が非常に難航したためである。

●現地写真

新常盤橋交差点(左)と常磐橋から見た新常盤橋(右)

3連アーチ橋だった新常盤橋は、1988(昭和63)年の東北新幹線建設に伴う道路レイアウト変更にあわせ、架け替えられた。新しい橋はごく一般的な鋼製橋梁で、言及すべき特徴もない。


高架下から新常盤橋方向を見る

左の円を描いているコンクリート高架が東海道線引上線、右の道路上空にかかっているのが東北新幹線である。左の前に自販機の置かれた高架が「基礎を横梁でつないだ」ものであるが、その横梁は地下に埋まっており地上からはごく普通の高架橋にしか見えない。


JR線高架の大手町側

上の写真の位置から左に進んでJR線の反対側に出たところ。上空に被さるのは1995(平成7)年に重層化された中央線の高架で、この橋脚も室町トンネルと重複する部分は杭の打ち込みができないため基礎どうしを横梁でつないでいる。その奥に見えるレンガアーチ高架は、この写真ではよくわからないが内面に補強用のコンクリートが巻かれている。手前の交差点の直下を通る半蔵門線のトンネルは室町トンネルを避けるためV字を描くように深くなっているが、それでもトンネルどうしの間隔はわずか2.7mしかない。

■銭瓶トンネル::0km482m84~0km344m66(L=138m48)
▼参考
工事誌(総武線)379・388~390ページ

●概説

銭瓶トンネル位置図
(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データ(昭和54年)に筆者が加筆

JR線の高架を過ぎた地点から永代通りの少し先までは「銭瓶トンネル」といい、ここから先は東京駅構内の扱いとなる。総武快速線に乗って東京駅へ入る直前、ガクンと大きく揺れる地点だ。ここから東京駅までは折り返し用のポイントが複雑に入り組む線路配置となっている。トンネルはJR線高架の脇を通る都道の下に開削工法で建設しており、千葉方は地下1階にNTTとう洞、地下2~3階に銭瓶幹線下水(直径1800mm)が通り、東京方では東京メトロ東西線と交差している。また、室町トンネルの換気所も兼用しており、地下2~3階に送風機、脇を通るJR線の高架橋内に排気口・吸気口・作業用階段を設置している。


東西線交差部分の概念図



東西線との交差部分は営団地下鉄に施工を委託した。委託した時点ですでに東西線の工事が開始されていたため、東西線のトンネル工事が完了したあと、東西線坑内から改めて杭を打ち込んで銭瓶トンネルの部分を建設している。総武快速線の軌道深さをできるだけ浅くするため、東西線トンネルの床は少し厚くしてあり銭瓶トンネルの天井と兼用させている。また、銭瓶トンネルはこの部分のみ中柱を設置した。(電車内からも確認可能)

●現地写真

高架下の換気口

排気口は山手線内回り・外回りの線路間、吸気口は都道側の高架下に設置している。排気口については電車内から位置は確認できるものの、サイズがあまりにも小さく一瞬で通過してしまうため撮影は不可能であった。JR線の高架下は居酒屋など飲食店が並んでおり、吸気口周囲はそれらと配色をあわせて目立たないようデザインされている。


銭瓶幹線下水のマンホール?

道路上にはこのように「東京下水道・おすい」と書かれた少し大きめのマンホールが設置されており、工事誌の図面にもほぼ同位置に「特殊人孔」と書かれている。おそらく銭瓶幹線下水のメンテナンス用に設置されたものだろう。このサイズだと内部は階段になっているのではないだろうか?


東西線大手町駅東改札。正面にJR東京駅への通路へ通じるエスカレータと階段が見える。

銭瓶トンネルは東西線大手町駅東改札(東西線ホームの一番西船橋寄り)の下を通っている。杭は線路階から打ち込んだため、特に痕跡は見られない。だが、改札口の目の前から東京駅丸の内北口までの地下通路が延びているため、勘の良い方ならこの直下に総武快速線が通っていることを見抜けるだろう。

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