貨物列車逆走・・・EB装置はなぜ働かなかった?

※この記事はYahoo!ブログから移行したものです。

昨日のニュースにこんなものがありました。

<JR東海道線>居眠りで貨物車500メートル逆走 静岡(毎日新聞)

静岡県島田市のJR東海道線で8日未明、JR貨物の下り貨物列車(27両編成)の男性運転士(53)が居眠りし、上り坂を走っていた列車は自然停車したあと約500メートル逆走していたことが分かった。(中略)報告が遅れた理由について「運転士の事情聴取に時間がかかったため」と説明している。

以下全文はhttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070821-00000149-mai-soci(リンク切れ)


500mの逆走の後、貨物列車の運転士が気づき非常ブレーキを掛け列車を止めました。後続列車の急行「銀河」はわずか220mのところまで迫っており、間一髪のところで難を逃れたといってよいでしょう。鉄道の設備・運転に関する法令に以下のようなものがあります。

鉄道に関する技術上の基準を定める省令

第104条  列車は、退行運転をしてはならない。ただし、列車が退行する範囲内に後続列車を進入させない措置その他列車の安全な運転に支障を及ぼさない措置を講じた場合は、この限りでない。


過去には実際に運転士の居眠りで逆走した列車が、後続列車に衝突し乗客に負傷者が出た事故もあり、今回も一歩間違えば大事故になる恐れがあったといえます。
最大の原因はもちろん居眠りをしてしまった運転士にあります。しかし別の原因として、事故をシステム側(車両側)で防ぐことができなかったということもあります。

EB装置がなぜ働かなかった?


電気機関車のEB装置の例。丸で囲んだバーがEBリセットスイッチ。
(碓氷峠鉄道文化むらEF30 20 2006年9月2日撮影。)

運転士1人での乗務が基本となる電気機関車やワンマン運転を行う列車では運転席に「EB装置Emergency Brake=緊急停止装置)」を設置することが義務付けられています。関係する法令は以下の通りです。

鉄道に関する技術上の基準を定める省令

第79条
3 車両の運転に使用する乗務員室には、動力車を操縦する係員が運転操作不能となった場合に、列車を自動的に停止させることができる装置を設けなければならない。


EB装置は走行中に1分以上何の操作も行わないとブザーが鳴り、5秒以内に力行(マスコン)・ブレーキ・警笛・砂まきなどの操作を行うか、運転席のパネル上にある「EBリセットスイッチ」(棒状と押しボタンの2種類がある)を操作しなかった場合直ちに非常ブレーキが作動するシステムです。これによりもし運転士が急病などで意識を失っても列車が暴走することなく安全に停止できるというわけです。最近では回送時に車掌の乗務を省くために大都市圏の電車にも設置するケースが増えています。(JR東日本209系後期車以降、JR西日本207系以降の電車など)また、私鉄の電車ではマスコンハンドルにスイッチを組み込み、ハンドルから手を離すと非常ブレーキが作動する「デッドマン装置」が同様の役割を果たしています。

▼参考
緊急停止装置 - Wikipedia


今回の事故では上り坂で列車が自然停止した後、500m逆走したということで、1分以上無操作で列車が暴走したことは確実と見てよいでしょう。すなわち、設置が義務付けてあるEB装置が正しく動作しなかったというわけです。EB装置自体の故障なのか、運転士が故意に無効にしたのかは定かではありませんが、今回の件が重大な規則違反であったことは揺るぎ無いことです。
列車を運転しているのが人間である以上、ミス(ヒューマン・エラー)を完全に撲滅することは不可能です。したがってシステム側でそれをバックアップするような構造でなくてはならず、今回のような事故が二度と起きぬよう早急な原因究明・対策を求めたいところです。具体的には予期せぬ逆走時には自動的に非常ブレーキが動作する、または運転士が居眠りをしていることを機器が検知できるようなシステムを導入すべきということです。
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