福知山線脱線事故から1年

※この記事はYahoo!ブログから移行したものです。



上:ATS-Pの速度照査用(これはポイント用)地上子。ここから曲線までの距離との速度情報を与える。
下:ATS-Sの速度照査用地上子。地上子の間隔を変えることで設定速度を変える。

死者107名の未曾有の大惨事となったJR西日本福知山線脱線事故から1年がたちました。背景に複雑な事情がからみ謎が多い事故なだけに原因の究明にはまだまだ時間がかかりそうです。

昨年4月25日午前9時18分頃JR福知山線を走行中の快速電車が、塚口ー尼崎間にある半径300mの曲線に制限速度の70km/hを大幅に超える115km/h前後の速度で突入し、電車が曲がりきれずに線路際のマンションに突っ込んでしまったものです。これまでに明らかになったのはJR西日本が私鉄との競争を意識しすぎるあまり、余裕のないダイヤを組んでいたこと、運転のミスを補完するATSについて、大幅に予算を削減したため十分な過速度対策があまりにも不十分だったこと、ミスを犯した乗務員に対して「日勤教育」と称して懲罰的な処置を行ったことです。


事故の半年前、大阪に行った際一緒にいた友達が「大阪って(電車の)運転乱暴だね」といわれたのを覚えています。当時は確かにラッシュ時でなくても列車は常に4,5分遅れており、必然的に急加速、制限速度ぎりぎりでの運転、そして急減速を要求される状況になっていました。その半年後にこのような大事故としてそれが明るみになったのには非常に残念でなりません。事故後JR西日本はダイヤに余裕を持たせたと強調しますが、実態はさして変わっていないようです。鉄道は「安全」が基礎に成り立っているわけで利益を優先するあまりその基礎が揺らいでしまっては信用を失うばかりです。

ATSについては新形のATS-Pの整備が究極の対策となりますが、その設置はJR西日本では大阪環状線や阪和線などほんの一部にとどまっています。(首都圏ではほぼ全線設置済み。)しかし、何も高価なATS-Pでなくとも旧式のATS-S(W)を活用して過速度防止対策は可能です。(上写真参照)これさえ設置していないというところにもJR西日本の安全を軽視した経営が現れています。事故後、JR西日本に限らず多くの鉄道事業者で曲線に対する安全対策の見直しが行われており、JR西・東日本管内でも速度照査用地上子がかなりの箇所に設置されました。

乗務員に対する教育については外部の人間には正確な情報を得るすべがないというのが現状で、詳細は判明しません。確かにミスを犯した乗務員を再教育することは必要です。これは鉄道に限らずあらゆる分野でいえることです。しかし、少なくともそれは単なる懲罰によって乗務員自身を萎縮させてしまうような教育であってはいけないのです。

こうした中でもJR東日本では工事のミスにより線路が歪み、列車の安全運行に支障が出る事故が発生しています。工事の速さを追求したがために施工の安全性がおろそかになっていたようです。鉄道に対する信用は今も揺らぎ続けています。この厳しい世の中を生き抜いていく企業であるためには速さを追求するよりも、きちんとした安全を確保することがまず先ではないかとわたしは考えます。これは人間の「欲求」という分野で考えても自然な流れであるはずです。

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