常磐線利根川橋梁架け替え工事(2010年9月5日取材)

カテゴリ:鉄道:建設・工事 | 公開日:2011年01月12日23:55
常磐線利根川橋梁を渡る651系「ひたち」。20年以上に渡りこの橋梁を行き来してきた同車も先日ついに置き換えが発表された。

常磐快速線の撮影地としても有名な天王台~取手間の利根川橋梁では現在老朽化した橋梁の架け替え工事が行われています。今回は鉄道関係の専門雑誌と現地調査の内容を合わせてこの工事についてレポートしたいと思います。

■常磐線利根川橋梁の概要と架け替えの経緯


常磐線利根川橋梁は千葉県と茨城県の県境を流れる利根川に架かる全長964mの鉄道橋です。常磐線利根川橋梁は利根川の治水事業の進展と常磐線の輸送力増強に伴う線増により架け替え・増設が繰り返されており、快速上り線、快速下り線、緩行上下線という構造の異なる3本の橋梁が架けられています。この中で最も古いのは快速上り線の橋梁で、1963(昭和38)年に利根川の改修事業に伴い架けられた4代目のものとなります。この橋梁は1963年架橋は言うものの、その桁の一部は1920(大正9)年に架設された曲弦プラットトラス橋を補強して流用したもので、架橋から実に90年もの年月が経過しています。また、快速下り線の橋梁は1958(昭和33)年に架設された並行弦ワーレントラス橋で、こちらも架橋から半世紀以上が経過しています。(参考までに緩行線は1980年代に架設された複線のトラス橋である。)
このように長い年月使用された桁にはこれまで腐食や列車の繰り返し荷重による疲労亀裂といった老朽化による損傷が多数発生しており、発見される都度補修が行われてきました。また、橋梁両端のガーター橋の橋脚・橋台は川の中に位置する橋脚と異なり、原地盤に直接基礎を置いている構造となっています。このうち、上野方の橋台・橋脚では地盤が軟弱であることから建設以来沈下が続いており、これまで数回橋桁と軌道の扛上が行われるなど維持管理に苦慮しているほか、大規模地震時の液状化による橋梁そのものの倒壊も懸念されています。このため、JR東日本ではこの常磐線利根川橋梁の全面的な架け替えを行うこととし、2009(平成21)年11月から工事が開始されました。

■常磐線利根川橋梁架け替え工事の計画
新橋梁の位置
新橋梁の位置
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常磐線の新しい利根川橋梁は現在の快速線と緩行線の間に架設される計画となっています。現在、快速線は橋梁の上野方で半径1000mのS字カーブとなっており100~110km/hの速度制限がありますが、常磐線は特急列車が最高速度130km/hで走行することから、今回の架け替え工事にあたっては新橋梁への取り付け曲線をできるだけ緩くし、速度制限が掛からないような設計としています。このアプローチ部分は全長が約0.5kmで、補強盛土または鉄筋コンクリート製の高架橋とする計画です。一方、土浦方は現在と同様橋梁から2面4線の取手駅へ直接接続する形態となります。
次に、橋梁部分の詳細についてです。新設される橋梁は緩行線と同様の上下線が一体となった下路トラス橋で、騒音防止と強風対策のため有道床桁が採用されます。橋脚の配置は

1、河川全体の阻害率を5%未満とする。
2、基準径間長を72.5mとする。
3、近接する緩行線の橋梁との離隔が25mと基準径間長以下となるため、新設橋脚は流路方向に対し、緩行線の橋脚と同一線上に配置する。


の3つの条件を満たすこととし、緩行線の橋梁より3径間少ない9径間のスパン割りとなります。なお、今回橋梁が新設される場所は明治時代の橋梁があった場所で、地中にはその基礎の一部が残存しており、新橋梁建設の支障となります。しかし、河川内で作業ができるのは渇水期となる11~5月の7ヶ月間しかないため、橋脚の基礎は高水敷(河川敷)が場所打ち杭、低水敷(普段水が流れている部分)は桟橋を仮設して井筒基礎を構築することとし、旧橋脚基礎を取り囲むように杭や矢板を配置することで旧橋脚基礎の取り壊し量を極力少なくするよう配慮されています。
なお、トラス橋は高水敷2径間連続低水敷3径間連続の構造となります。
工期は2009(平成21)年から2019(平成31)年までの延べ10年間となっており、以下のようなスケジュールが予定されています。

2009年4月~:準備工事
2009年11月~2010年5月(第1渇水期):橋脚施工
2010年5月~:上野方アプローチ部分の建設開始(2012年11月まで)
2010年11月~2011年5月(第2渇水期):橋脚施工+高水敷の橋梁架設(前年に橋脚が完成した部分)
2011年11月~2012年5月(第3渇水期):高水敷の橋梁架設
2012年2月~:軌道敷設・電気設備施工(完成した部分から)
2012年5月~2013年3月(出水期):・低水敷の橋梁架設(トラベラークレーン使用)
2013年秋:上り線切替
2014年秋:下り線切替

切替~2019年:旧橋梁撤去

■2010年9月5日の状況

架け替え工事は2009(平成21)年に着工されています。着工後は当初の予定通り渇水期にあわせて橋脚の構築が行われており、昨年9月訪問時は上野方半分の橋脚が完成した状態でした。工事自体は台風・秋雨シーズン真っ只中の9月ということもあり全面的に休止されており、11月の工事再開を待っているという状況でした。

取手駅快速上り3・4番線ホーム端から利根川橋梁を見る。今後は中央の空間に新しい橋梁ができる。 河川敷から快速線と緩行線の間の堤防を見る。今後ここには新橋梁の橋台ができる。
左:取手駅快速上り3・4番線ホーム端から利根川橋梁を見る。今後は中央の空間に新しい橋梁ができる。
右:河川敷から快速線と緩行線の間の堤防を見る。今後ここには新橋梁の橋台ができる。

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現在の取手駅の上野方は快速上り線がS字状に大きくカーブしながら緩行線と離れて利根川橋梁に取り付いています。新橋梁が完成すると、現在とは逆に快速下り線がカーブしながら橋梁へ入る形となります。取手駅の快速線ホームは内側2線が待避・折り返し線となる島式ホーム2面4線の構造で、ホームから利根川橋梁までの間には折り返し用のX字ポイントが入る複雑な構造となっており、新橋梁の供用開始に際しては現在と比較して線形が大幅に変わることから、これらを全面的に移設・交換する必要があります。
カーブが終わると線路は堤防を越えて利根川の高水敷に出ます。すでに橋梁周囲の堤防は柵で囲われ立入禁止となっており、今後この部分では新橋梁を支える橋台が建設されることになります。

高水敷から橋梁を見上げる。中央に見える快速上り線のアーチ形のトラス橋は大正時代に造られた。 対岸にはすでに橋脚が完成していた。
左:高水敷から橋梁を見上げる。中央に見える快速上り線のアーチ形のトラス橋は大正時代に造られた。
右:対岸にはすでに橋脚が完成していた。

※クリックで拡大

堤防の内側では上野方から橋脚の建設工事が行われており、緩行線と快速線の間に立つと対岸に完成したコンクリート製の橋脚を見ることができました。橋脚の形状は緩行線の橋梁と同じ角が取れた長方形様で、当初の計画通り川の流れを妨げないよう流路方向に向かって緩行線の橋脚と新橋梁の橋脚が同一線上に並ぶ配置となっています。
なお、左写真の画面中央に並んでいるアーチ形のトラス橋が1920(大正9)年に架けられたもので、現在は快速上り線が使用しています。

河川敷から橋梁を眺めた後は取手駅に戻って今度は上り列車の先頭から橋梁を渡る様子を見てみました。

橋梁入口(取手側)、ガーター橋部分(高水敷部分)
橋梁入口(取手側)、ガーター橋部分(高水敷部分)

上り列車は取手駅を出るとすぐに利根川橋梁を渡り始めます。今回は取手駅折り返し(4番線発)の列車で撮影したため、この時点ではまだ列車の後部がポイントを抜けておらず35km/hの低速で走行しています。奥に見えるトラス橋は上り線が大正時代に作られたもの、右側の下り線が1958(昭和33)年に作られたもので形状が異なるのが確認できます。

トラス橋部分(低水敷部分)
トラス橋部分(低水敷部分)

トラス橋に入ると列車の後部はポイントを抜けるため再加速しはじめます。上り線のトラス橋の骨組みは全面的にリベット(鋲)で組み立てられており、このことからも古い年代に作られた橋梁であることが窺い知れます。

トラス橋部分(上野側)
トラス橋部分(上野側)

上野側の高水敷に入ると再びガーター橋に戻ります。よく見るとこの付近の橋桁は微妙に上下にうねっており、未だに沈下が続いていることを物語っています。新橋梁の橋脚基礎は現在の橋梁とは異なり、地中深くの固い地層まで杭が打ち込まれており、今後このような問題は発生し得ないものと思われます。


新橋梁の使用開始は2年後の2013(平成25)年の秋に予定されています。完成後は全面的にトラス橋となるため、現在のような見通しは得られなくなる見込みで、常磐線の有名撮影地が1つ消えることになります。常磐線については先日、新型特急車両E657系の導入が発表されました。消えゆく車両と消えゆく撮影地…記録されたい方はお早めに。

▼参考
吉川・滝澤・水野・土屋 - 常磐線利根川橋梁改良(計画) - 日本鉄道施設協会誌2010年7月号50~52ページ
常磐快速線利根川橋りょう改良その1工事を受注 - 東鉄工業株式会社トピックス(PDF) このエントリーをはてなブックマークに追加
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