阪急西宮北口駅と今津線高架化工事 - 関西旅行2010(12)

カテゴリ:遠征旅行記関西旅行2010 | 公開日:2011年02月09日22:19
神戸線ホームに停車中の7000系

昨年8月の関西旅行の続きです。
2日目(8月24日)は午前中にJR東西線の調査を行った後、阪神本線、阪急今津線、神戸線、甲陽線の順に周りました。今回はその中から高架化工事が行われていた阪急今津線西宮北口駅について解説いたします。

▼関連記事:「関西旅行2010」1つ前の記事
阪神三宮駅改良工事 - 関西旅行2010(11)(2011年1月22日作成)

■西宮北口駅の今昔
1974(昭和49)年の西宮北口駅付近の航空写真。左上の十文字に線路が交差している部分が神戸線と今津線のダイヤモンドクロス。右下にあるのが阪神西宮球場。
1974(昭和49)年の西宮北口駅付近の航空写真。左上の十文字に線路が交差している部分が神戸線と今津線のダイヤモンドクロス。右下にあるのが阪急西宮球場。
(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データ(昭和49年)より抜粋

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西宮北口駅阪急神戸線阪急今津線が交差する拠点駅となっており、梅田方には車両基地も併設されています。西宮北口駅ができたのは1920(大正9)年の神戸線梅田~上筒井間が開業したときで、その後現在の今津(北)線にあたる西宝線西宮北口~宝塚間が1921(大正10)年に開業、さらに1926(大正15)年に現在の今津(南)線西宮北口~今津間が開業し、乗り入れ路線が現在と同じ形態となりました。この当時は現在の今津(北)線と今津(南)線は直通運転をしていましたが、当時の建設技術では現在のような立体交差を設けることは困難であったことから、直交する神戸線と平面交差する形で運転を行っていました。阪急電鉄のような都市高速鉄道においてこういった大規模な平面交差を設けることは極めて稀なことであり、「西宮北口のダイヤモンドクロス」として全国的にも有名なものとなりました。
一方、駅の外では1937(昭和12)年に駅の南東に阪急西宮球場(阪急西宮スタジアム)が建設され、プロ野球阪急ブレーブス(現在のオリックス・バッファローズの前身)の本拠地として1988(昭和63)年の球団譲渡まで使用されました。

▼脚注
※:車両基地への分岐線には複分岐器(同一地点から3方向に分岐するポイント→写真)など珍しい設備も見られる。

現在の西宮北口駅(Yahoo!地図情報)

当初、平面交差だった西宮北口駅ですが、高度経済成長期以降は都市化の進展による利用者の増加、それに伴う列車の増発により交差する列車同士の信号待ちが常態化し、ダイヤ上のネックとなりました。加えて、神戸線の長編成化のためホームの移設・延伸を行うことになり、1984(昭和59)年をもって今津線は南北に分断されダイヤモンドクロスは廃止されました。さらに、2002(平成14)年には駅の南東にあった阪急西宮球場が閉鎖、解体され西宮北口駅の2つのシンボルがともに消滅しました。球場跡地では再開発が行われ、2008(平成20)年にショッピングモール「阪急西宮ガーデンズ」が開業しています。
なお、かつての西宮北口駅の歴史や風景はこの阪急西宮ガーデンズの5階に設けられた「阪急西宮ギャラリー」で見ることができます。また、ダイヤモンドクロスのレールの一部は阪急西宮ガーデンズの北側にある公園に保存されています。(今回は公園内でイベントが行われていたため撮影できなかった。)

阪急西宮ガーデンズと西宮北口駅への連絡橋。 阪急西宮ガーデンズ5階「阪急西宮ギャラリー」に展示されているダイヤモンドクロスの模型
左:阪急西宮ガーデンズと西宮北口駅への連絡橋。
右:阪急西宮ガーデンズ5階「阪急西宮ギャラリー」に展示されているダイヤモンドクロスの模型

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■今津線高架化、しかし南北の再接続はならず…
神戸線との連絡線上に仮設された5号線ホームに停車中の今津線6000系
神戸線との連絡線上に仮設された5号線ホームに停車中の今津線6000系

西宮北口駅の周辺は1995(平成7)年1月に発生した阪神・淡路大震災で被害が大きかった地域でもあります。震災後は復興事業として駅の南側を中心に大規模な区画整理が行われており、兵庫県立芸術文化センター(2005(平成17)年完成)や大規模な商業ビルが建設されています。この区画整理には駅の南側を通る都市計画道路球場前線の整備も含まれていますが、整備に当たっては地上を通る阪急今津(南)線の踏切が大きな支障となっていました。このため、2007(平成19)年から32億円の費用と3年間の工期かけて2本ある線路(複線)のうち営業運転に使用する1本を高架化する工事が行われました。2本ある線路を両方とも高架にしないのは車両の入れ替えのため神戸線との連絡線を残す必要があるためです。このため、高架化完成後も引き続き踏切は残りますが、通過列車は朝夕に数本運行される入出庫列車のみとなるため道路交通への影響はほとんど無い見込みです。
なお、前述の通り今津線は駅の構造の変更により1984年に南北に分断されましたが、そのとき建設された橋上駅舎には将来の今津線の高架化と南北の再接続を見込んだ設計がなされており、駅舎の柱の一部を高架橋の橋脚として利用できるよう太くするなどの準備が行われていました。しかし、今回の今津(南)線の高架化では今津線の南北間での旅客流動が少ないことや、高架橋建設のコストなどを勘案して現在の橋上駅舎と同レベルの2階にホームを建設することになりました。このため、今後今津線の南北同士が再度接続される可能性はほぼなくなったことになります。

橋上駅舎から見た工事中の今津線高架ホーム。左端で現駅舎と接続する。 改札内コンコースの今津線高架ホームへの通路ができると思しき地点には仮囲いが設置されていた。 阪急西宮ガーデンズへの連絡橋から見た今津線の高架橋
左:橋上駅舎から見た工事中の今津線高架ホーム。左端で現駅舎と接続する。
中:改札内コンコースの今津線高架ホームへの通路ができると思しき地点には仮囲いが設置されていた。
右:阪急西宮ガーデンズへの連絡橋から見た今津線の高架橋

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今回訪問時はすでに高架橋の躯体構築と軌道敷設がほぼ完了しており、橋上駅舎との接続工事が行われていました。西宮北口駅の橋上駅舎は改札内となる乗り換えコンコースの周囲を改札外コンコースが取り囲むという少々変わったつくりとなっていましたが、今津線はこの橋上駅舎と同レベルに建設されたため、既設の改札内コンコースと接続するにあたり、周囲を取り囲んでいる改札外コンコースの一部が分断されることとなりました。このため、去る2010(平成22)年12月5日の今津線高架ホーム使用開始にあたっては、改札外コンコースを1階に迂回させることになり、地上を通る今津線と神戸線の連絡線上に踏切(名称:西宮北口南踏切 )が新設されました。現在の鉄道では省令により踏切の新設が原則として認められていませんが、今回のケースでは省令中に併記されている以下の但し書きに該当するため例外的に踏切の新設が認められました。

鉄道の技術上の基準を定める省令

第39条 鉄道は、道路(一般公衆の用に供する道をいう。以下同じ。)と平面交差してはならない。ただし、新幹線又は新幹線に準ずる速度で運転する鉄道以外の鉄道であって、鉄道及びこれと交差する道路の交通量が少ない場合又は地形上等の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。


この踏切がある連絡線は前述の通り通過する列車の本数は非常に少ないため、踏切の存在が利用客の移動を妨げることはほぼ無いと見てよいでしょう。このほか、12月の今津線高架ホームの使用開始時には分断された改札外コンコース上と今津線ホーム南端の2箇所に改札口が新設されました。後者は阪急西宮ガーデンズへの連絡橋に直接接続しており、駅とのアクセスが以前より改善されています。

駅構内の中央にあるカリヨンの鐘。暑さ対策のためドライミスト(水を噴霧し、気化熱により気温を下げる装置)が設置されていた。
駅構内の中央にあるカリヨンの鐘。暑さ対策のためドライミスト(水を噴霧し、気化熱により気温を下げる装置)が設置されていた。

▼参考
西宮北口駅|阪急電鉄 鉄道情報ホームページ
西宮北口駅今津方面ゆき新高架ホームを12月5日(日)より供用開始します - 阪急電鉄公式Web ニュースリリース(PDF)
西宮市ホームページ:阪急今津線高架事業
兵庫県/(阪神南地域)阪急今津線高架化事業
神戸新聞|阪神・北摂|阪急今津線南線が高架化 乗り換えスムーズに
asahi.com(朝日新聞社):阪急今津線、ダイヤモンドクロス復活ならず 高架化でも - 社会

▼関連記事:「関西旅行2010」
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阪神三宮駅改良工事 - 関西旅行2010(11)(2011年1月22日作成)

(おまけ)
世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団(=SOS団)待ち合わせ場所
地下駐輪場を建設中だった北西口前の公園跡。「遅刻したら罰金よ!」

(つづく)

<2011年2月10日追記>:文章内の一部に「阪急」とすべきところ「阪神」と入力している箇所がございました。お詫びして訂正いたします。ご指摘ありがとうございました。 このエントリーをはてなブックマークに追加
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