京急蒲田駅連続立体交差化工事(2010年11月20日取材)



昨年5月に上り線の高架化が完了した京浜急行電鉄の京急蒲田駅ですが、その後下り線の仮設高架化が行われるなど工事に進捗がありましたので11月に再度取材を行いました。今回は京急蒲田駅を中心にその状況を解説したい思います。

■京急蒲田駅高架化工事の概要


京急蒲田駅付近連続立体交差事業は京急本線平和島~六郷土手間4.7km京急空港線京急蒲田~大鳥居間1.3kmを高架化するものです。この事業により、京急蒲田駅前の国道15号線(第一京浜)、環状8号線をはじめとする大田区内の京急線の踏切28箇所が廃止され、交通渋滞の解消、安全性の向上、地域の分断の解消など様々な効果がもたらされることが期待されています。また、着工前の京急蒲田駅は本線と空港線の分岐駅でありながら2面3線の極めて狭小な設備となっており、単線の空港線はこれ以上の増発が困難であるという問題を抱えていました。羽田空港では昨年新しいD滑走路や国際線ターミナルの供用が開始され、京急蒲田駅の利用者数も今後増加が見込まれることから京急蒲田駅の高架化にあたっては上り線が2階、下り線が3階にそれぞれホームを持つ二重構造とし、空港線の上下線を完全に分離することとしました。また、ホームを前後に延長することで本線側についても待避線を新設し、優等列車の追い抜きが可能になるなど高架化よりも余裕のあるダイヤ構成が可能となる予定です。
去る2010年5月16日には上り線が本設高架化が完了し、区間内に存在する踏切の遮断時間が約4割削減されました。以後は下り線の高架化に向けた工事が進められており、2012(平成24)年度には使用開始となる予定です。総事業費は約1650億円となっており、国が660億円、東京都が460億円、大田区が200億円、京浜急行電鉄が330億円をそれぞれ負担することとなっています。

※本事業については昨年5月に作成した記事においてより詳しく解説しておりますのでそちらもあわせてご覧ください。

▼関連記事
京急蒲田駅上り線高架化(2010年5月16日取材)その1(2010年5月19日作成)
京急蒲田駅上り線高架化(2010年5月16日取材)その2(2010年5月20日作成)

■2010年11月20日の状況

●平和島~大森町
平和島駅下りホームから見た上り線の高架線取り付け部分 地上の大森町駅下りホームから品川方面を見る。上り線の軌道は撤去済み。
左:平和島駅下りホームから見た上り線の高架線取り付け部分
右:地上の大森町駅下りホームから品川方面を見る。上り線の軌道は撤去済み。

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品川方・横浜方にある上り線が新設高架橋から既設の高架橋に取り付く部分はいずれも仮設の高架橋となっており急なS字カーブが挟まっているため速度制限が設けられています。この部分は5月訪問時と比べ特に変化はありませんでしたが、このアプローチ部分から地上に降りる部分の旧上り線の線路は大半が撤去されており、近いうちに本来の直線の高架橋および下り線の高架橋の建設が開始されるものと思われます。

●大森町駅
大森町駅地上。上り線の撤去後では橋脚の地中梁の構築作業が行われていた。 大森町駅下りホームから横浜方面を見る。駅間の旧上り線の軌道は放置されている。
左:大森町駅地上。上り線の撤去後では橋脚の地中梁の構築作業が行われていた。
右:大森町駅下りホームから横浜方面を見る。駅間の旧上り線の軌道は放置されている。

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大森町駅構内は旧上り線の線路が全て撤去され、跡地では高架橋橋脚の地中梁の構築作業が行われており、あちこちで溶接の火花が飛んでいるという状況でした。高架の上りホームへ向かう通路は5月訪問時と同様地上の旧上り線ホームを経由する形態となっており、上下線で改札口が独立しています。大森町駅から先の駅間の旧上り線は踏切にかかる部分のみ線路が撤去されており、放置されたレールには早くも錆が浮き始めていました。

●京急蒲田駅
京急蒲田駅の地上下り線ホーム。旧上り線の施設は全て撤去され、作業スペースとなっている。
京急蒲田駅の地上下り線ホーム。旧上り線の施設は全て撤去され、作業スペースとなっている。

京急蒲田駅は前後の踏切を含め旧上り線の施設が全て撤去されており、跡地は作業スペースとして利用されています。また、昨年5月の上り線高架化完成時に暫定的に供用が開始された中2階部分の拡張も行われていました。この中2階は今回訪問時点では仮設通路がある駅中央の一部分のみ完成していましたが、その前後の橋脚にも同一の高さに床版を追加するためと思しき突起が見られることから、将来的にはこの中2階を駅全体に拡張して改札口を設置するものと思われます。

品川方の多摩堤通りの踏切。 踏切内の旧上り線のレールは撤去されている。
左:品川方の多摩堤通りの踏切。
右:踏切内の旧上り線のレールは撤去されている。

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駅の品川方にある多摩堤通りの踏切も他の踏切と同様旧上り線のレールは撤去されており、今回訪問時は暫定的にゴムのブロックで撤去跡を埋めている状態でした。この踏切はカーブにかかっているため線路のカント(遠心力を打ち消すための傾き)の影響で大きな段差が発生していますが、2012年の下り線高架化が完成するとこのような状態も解消されることになります。

第一京浜(国道15号線)踏切。 踏切から空港線羽田空港方面を見る。こちらも旧上り線の軌道は放置されている。
左:第一京浜(国道15号線)踏切。
右:踏切から空港線羽田空港方面を見る。こちらも旧上り線の軌道は放置されている。

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空港線京急蒲田~大鳥居間は昨年5月の記事でお伝えした通り高架上り線と地上下り線の単線並列となっており、第一京浜と交差する踏切も引き続き使用されています。踏切を通過する列車の本数は高架完成前と比較して約半分になったことから、踏切の連続遮断時間はこれまでの6分12秒から3分に半減し、第一京浜の渋滞の長さも780mから340mと大幅に短縮したことが京急電鉄のWebページにて報告されています。
なお、上り線高架化前の空港線はこの踏切のみ単線となっており、踏切のすぐ東側の両開きポイントから先は複線となっていました。使用されなくなった旧上り線は本線と同様踏切にかかる部分を除いてそ残存しており、単線・複線を分ける両開きポイントも駆動用のモーターを含めそのままの状態となっています。

環状8号線の仮設高架を駆け上がる新1000形エアポート急行新逗子行き 下り線の仮設高架化により踏切が消滅した環状8号線
左:環状8号線の仮設高架を駆け上がる新1000形エアポート急行新逗子行き
右:下り線の仮設高架化により踏切が消滅した環状8号線

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京急本線は京急蒲田駅の南側で交通量の非常に多い環状8号線と交差しています。この部分は踏切解消の緊急度が特に高いことから、昨年5月の上り線本設高架化以前から仮設の高架橋を建てて先行して上り線のみ高架化を完了していました。上り線の本設高架化後は下り線がこの仮設高架橋を利用することになり、昨年9月26日に切り替えが行われました。これにより京急蒲田駅の南側では環状8号線を含む4箇所の踏切が完全に解消されました。(京急本線と環状8号線が交差する踏切は環状8号線最後の踏切であり、本事業の完成によりこの道路から踏切は完全に消滅した。)

アンダーパスの工事が本格化した第一京浜
アンダーパスの工事が本格化した第一京浜

なお、京急蒲田駅の南側では駅の高架化と同時並行する形で第一京浜と環状8号線が交差する南蒲田交差点の立体化(第一京浜のアンダーパス化)が行われています。現在は上下線間を拡大した上で地下の掘削に向けた土留壁(地中連続壁)の構築が行われています。

●京急蒲田~雑色~六郷土手(動画)


YouTube - 京急快特京急蒲田→京急川崎前面展望(下り線仮設高架化後)音量注意

京急蒲田駅以南については今回、時間の都合により列車内から見ることにいたしました。
1分10秒付近までが環状8号線の仮設高架の通過で、高架線上は急カーブになっている箇所があるため速度制限が設けられています。高架橋を降りると最高速度(120km/h)まで加速し、1分30秒付近雑色駅を通過します。この付近もやはり旧上り線の線路は踏切部分を除いて残されています。2分丁度から先は六郷土手駅へ向かって上り勾配となり、右手から仮設高架の上り線が合流してきます。

この京急蒲田駅高架化工事は2006(平成18)年のレポート開始から今年で5年目となります。今後も引き続き進捗状況について適宜取材を行い、ブログ上で解説していく予定です。どうぞご期待ください。

▼参考
鉄道事業【京急電鉄】
ニュースリリース【京急電鉄】 - 京急蒲田駅付近連続立体交差事業の上り線高架化に伴い 国道15号の渋滞長が約6割減少しました。
ニュースリリース【京急電鉄】 - 京急蒲田駅付近連続立体交差事業の進捗に伴い、20川崎国道事務所公式Web10年9月26日(日)始発から 環状8号線の踏切がなくなります。
大田区ホームページ:京急立体交差事業の概要
京急蒲田駅付近連続立体交差事業と京急線の羽田アクセス改善について - 国土交通省関東地方整備局東京空港整備事務所Webページ(PDF)
国道15号 蒲田立体交差 - かわこく現場レポート平成22年10月(PDF) - 国土交通省川崎国道事務所公式Web

▼関連記事
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