新日本橋駅~東京駅入口 - 総武・東京トンネル(10)

最終更新日:2021年2月5日
総武・東京トンネル~大深度地下鉄道のパイオニア~(クリックすると目次を表示します)
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■新日本橋駅~東京駅入口のルート
新日本橋駅~東京駅入口のトンネル位置図
新日本橋駅~東京駅入口のトンネル位置図

 新日本橋駅を出ると、引き続き江戸通りの下を左にカーブしながら進む。神田川支流である日本橋川と交差すると、山手線などJR各線の高架橋を斜めに横断し、高架橋西側の都道の下を通って東京駅へ入っていく。この区間は地上の高架橋を境に2つの構造物にわかれている。近接する重要構造物としては、新常盤橋(江戸通り)、首都高速都心環状線、国電高架橋、営団地下鉄東西線・半蔵門線などがある。

■室町トンネル:1km019m71~0km482m84(L=536m87)
工期:1969(昭和44)年11月~1971(昭和46)年7月

●概説
 新日本橋駅の端からJR線高架橋西側までの537mの区間は「室町トンネル」という。地上の江戸通りに合わせて全体が半径450m前後のカーブになっており、上り線のトンネルは後述する通り東京駅入口のポイントに直結しているため銭瓶トンネルに斜めに取り付いている。新日本橋駅と東京駅の間は高低差があまりないため、勾配は東京駅に向かって5.5‰の下り勾配と小さくなっている。
 室町トンネルの前半は江戸通りの下であるため、交差する構造物は無いが、後半は日本橋川に架かる新常盤橋や首都高速、地上・地下を走る鉄道各線など多数近接・交差する構造物が存在する。

①新常盤橋
 総武快速線建設当時の新常盤橋はコンクリート製の3連アーチ橋だった。基礎は松杭で、アーチ橋本体の沈下および杭周辺を経由した漏水を防止するため、松杭の下に薬液注入を行った。

②首都高速都心環状線・八重洲線
 首都高速都心環状線は3スパンが連続した鋼製箱桁で、橋脚は日本橋川の河床にケーソン工法で作られている。室町トンネルはこの橋脚まで10m以下の距離まで接近することから、橋脚をモルタル杭で取り囲み、荷重をトンネルよりも深い場所に逃がすようにした。
 また、日本橋川の右岸の下では東京駅八重洲口の下を通って銀座方面に通じる首都高速八重洲線の建設が進められていた。室町トンネルと八重洲線は7mまで接近するため、薬液注入による地盤強化を行った。
 新常盤橋・首都高速都心環状線橋脚の防護イメージを下図に示す。

新常盤橋の沈下・漏水防止対策 首都高速都心環状線橋脚のモルタル杭防護
左(1):新常盤橋の沈下・漏水防止対策
右(2):首都高速都心環状線橋脚のモルタル杭防護


③国電高架橋
 新常盤橋を過ぎると、江戸通りから外れて国鉄(現在はJR)中央線・山手線・京浜東北線および東海道線東京駅と東北本線上野駅を結んでいた通称「回送線」の下を斜めに横断する。高架橋は神田駅側から順に「大手町高架橋」「常盤橋架道橋」「銭瓶町橋高架橋」の3つにわかれている。
 大手町高架橋・銭瓶町橋高架橋は中央線・山手線・京浜東北線が載るアーチ橋と回送線が載るコンクリート高架橋の2種類にわかれている。アーチ橋は大正時代に建設されたもので、大手町高架橋が鉄筋コンクリート、銭瓶町橋高架橋がレンガ(一部コンクリート)となっていた。いずれも強度には問題ないが、経年および関東大震災の影響で亀裂・目地切れ・漏水など発生していた。このため、アーチの内側に鋼製アーチ取り付けもしくは鉄筋コンクリートの巻き立てにより補強を行った。鋼製アーチは沈下が発生しても追従できるよう、根元とアーチ頂部の3か所にヒンジがある3ヒンジアーチと呼ばれるタイプが採用されている。一方、回送線の高架橋は戦後建設された鉄筋コンクリート製だったが、基礎が浅かったことから基礎どうしをコンクリート製の地中梁により連結し不等沈下を防止した。
 常盤橋架道橋はこれら2つの高架橋の間に架かる鋼製ガーダー橋で、桁下の道路内にも細い支柱が立っている。不等沈下防止のため、これらの支柱どうしをX字型の鋼材で連結した。

④営団地下鉄半蔵門線
 室町トンネル完成直後の1972(昭和47)年2月には、新たに常盤橋架道橋直下で営団地下鉄半蔵門線(11号線)が下を交差することが決定した。半蔵門線は単線シールドトンネル2本で、室町トンネルとは2.7mの距離まで接近する。掘進時の沈下を防止するため室町トンネル下の薬液注入と二次覆工による補強が必要となった。この時点で総武快速線開業まで残り半年を切っており、6月からは試運転が開始される予定となっていた。薬液注入にあたっては軌道敷設が完了している床面に穴を開けられないため、 床下への注入時は反対側のトンネルから長尺ボーリングを行った。二次覆工は鋼製リングと厚さ30cmのコンクリートで、設置にあたり線路両側のケーブルダクトを一度壊す必要があった。

●現地写真
新常盤橋交差点から東京駅方向を見る。 下流の常盤橋から新常盤橋を見る。現在は日本橋川の1スパンで越える桁橋になっている。
左(1):新常盤橋交差点から東京駅方向を見る。
右(2):下流の常盤橋から新常盤橋を見る。現在は日本橋川の1スパンで越える桁橋になっている。


 3連アーチ橋だった新常盤橋は、東北新幹線東京延伸に伴う江戸通りの線形変更のため1980年代に架け替えられている。新しい橋は日本橋川の河床に橋脚が無い1スパンの鋼製桁になっており、これといった特徴はない。

大手町高架橋のレンガアーチ。室町トンネル建設時に取り付けられた補強用の鋼製アーチが残されている。
大手町高架橋のコンクリート高架橋は上野東京ラインへの転用にあたり鋼板による耐震補強が行われた。
常盤橋架道橋。支柱どうしをつなぐX字型の補強材は室町トンネル建設時に追加されたもの。
左:大手町高架橋のレンガアーチ。室町トンネル建設時に取り付けられた補強用の鋼製アーチが残されている。
右上:大手町高架橋のコンクリート高架橋は上野東京ラインへの転用にあたり鋼板による耐震補強が行われた。
右下:常盤橋架道橋。支柱どうしをつなぐX字型の補強材は室町トンネル建設時に追加されたもの。
上:大手町高架橋のレンガアーチ。室町トンネル建設時に取り付けられた補強用の鋼製アーチが残されている。
中:大手町高架橋のコンクリート高架橋は上野東京ラインへの転用にあたり鋼板による耐震補強が行われた。
下:常盤橋架道橋。支柱どうしをつなぐX字型の補強材は室町トンネル建設時に追加されたもの。

 新常盤橋の先で室町トンネルはJR各線が走る高架橋の下を斜めに横断する。最初に重なる大手町高架橋のレンガアーチの内側には、地下のトンネル建設時に設置された鋼製3ヒンジアーチが残されている。鋼製アーチとレンガアーチの間は確実に荷重を伝達できるようモルタルが詰められているのがわかる。一方鉄筋コンクリート製の高架橋は補強が地下のみで完結しているため見た目ではごく普通の高架橋にしか見えない。この上を通っていた回送線は、総武快速線開業後の1983(昭和58)年に東北新幹線東京延伸のため神田駅付近で線路が分断され、残った線路はしばらくの間留置線として使用されていた。その後2000年代に入りこの分断区間を復活させる工事が行われ、2015(平成27)年より「上野東京ライン」として東海道線と東北・高崎・常磐の各線が直通運転するようになった。(上野東京ラインの建設プロジェクトについては弊サイト内にある記事を参照されたい。)
 その先にある常盤橋架道橋は、室町トンネル建設時に道路内に建つ支柱間をX字の補強材で連結した。補強材はかなり大きなサイズになっており、支柱とはリベットで強固に接合されている。橋台については特に加工はされておらず、オリジナルのレンガを現在も見ることができる。

高架橋西側は中央線が重層化され風景が一変している。
高架橋西側は中央線が重層化され風景が一変している。

 JR線の高架橋反対側は、1995(平成7)年の北陸新幹線開業に伴う東京駅ホームのレイアウト変更により大幅に構造が変化している。一番西側にあった中央線は新幹線ホームの増設用地を捻出するため3階にホームが移転した。この際既存のレンガアーチ高架橋は1線分(旧中央線下り)が取り壊されており、断面が露出しているところがある。高架下は大半が店舗に利用されており、室町トンネル建設に伴う補強個所はほとんど確認できなくなっている。重層化された中央線の高架橋は室町トンネルの交差部分で杭が打てないため、トンネル上部に地盤改良を行ったうえで直接基礎としている。

東京メトロ半蔵門線大手町駅ホーム端から押上方面を見る。室町トンネルをアンダーパスするため35‰の急勾配で下っている。
東京メトロ半蔵門線大手町駅ホーム端から押上方面を見る。室町トンネルをアンダーパスするため35‰の急勾配で下っている。

 常盤橋架道橋の下では、室町トンネルのさらに下を東京メトロ半蔵門線が交差している。半蔵門線大手町駅のホーム端から押上方面を見ると、室町トンネルをアンダーパスするため線路がV字型の急勾配になっているのが確認できる。なお、この区間の半蔵門線は1978(昭和53)年にトンネルが完成していたが、実際に電車が走り始めるのはそれから10年後の1989(平成元)年までずれ込んだ。これは九段下駅付近で建設反対運動が発生し、用地買収が極めて難航したためである。

■銭瓶トンネル:0km482m84~0km344m36(L=138m48)
銭瓶トンネルの位置図
銭瓶トンネルの位置図
国土地理院Webサイト地理院地図提供の航空写真に加筆


 室町トンネルの上下線が国電高架橋西側に出ると、トンネルの形状が上下線一体の箱型となり東京駅に入っていく。このトンネルは実質的に東京駅の一部であるが、工事資料では「銭瓶ぜにかめトンネル」という名称が別途付与されている。トンネルの長さは約138mで、勾配はなく、3層構造の開削トンネルとなっている。トンネルは上から1層目が電電公社(現NTT)から施工を受託した通信ケーブル用洞道、2層目がトンネル換気送風機室と排水を行う銭瓶ポンプ所、および東京都下水道局が新設する銭瓶幹線下水道(直径1.8m)、3層目が線路である。
 地上は道路となっており、換気塔を設置する場所が無かったため、吸気口は中央線高架下、排気口は山手線内回り・外回り(現在は京浜東北線南行と上野東京ライン北行)の線路間に設置した。また、吸気口に隣接して送風機のメンテナンス時に使用する階段、路上に銭瓶幹線下水道の資材搬入・点検に使用する特殊人孔(大型マンホール)を設けている。

東西線交差部分のトンネル一体化イメージ
東西線交差部分のトンネル一体化イメージ

 銭瓶トンネルと近接する構造物としては銭瓶幹線下水道の他に営団地下鉄東西線がある。東西線は本レポート最初の記事でも触れたとおり、総武線の混雑緩和対策として総武快速線と同時並行で建設が進められていた。そこで、東西線のトンネル床と銭瓶トンネルの天井を1枚のコンクリートで兼用することとした。東西線は総武快速線よりも早い1966(昭和41)年10月に竹橋~大手町間が開業することから、その下層となる銭瓶トンネルについては東西線建設時に上層のトンネルを支える杭を予め埋め込んでおくという準備を行った。この構造故に銭瓶トンネルは東西線との交差部分のみ線路間に壁がある。

●現地写真
中央線高架下にある銭瓶トンネル吸気口
中央線高架下にある銭瓶トンネル吸気口

 前述の通りJR線高架橋西側は中央線の重層化に伴い大幅にレイアウトが変化しているが、銭瓶トンネル換気口は現在も建設時とほぼ同じ位置にある。吸気口は高架下の道路側に開いており、開口部はゴミなどが入らないよう金網が設置されている。周りは飲食店が並んでいるため、開口部の周囲はレンガ調の装飾が施され周囲の風景に溶け込むよう配慮されている。排気口についても建設時と位置が変わっていないが、駅間中央の高速走行区間であるため車窓から確認するのは困難である。

新大手町ビル前に銭瓶幹線下水道特殊人孔
新大手町ビル前にある銭瓶幹線下水道特殊人孔

 永代通りと交差する丸の内一丁目交差点の歩道上には銭瓶幹線下水道に通じる特殊人孔(大型マンホール)が設置されている。マンホールは蓋が複数枚に分割された長方形になっており、パイプなど大型の資材の搬入も可能となっている。

東京メトロ東西線大手町駅東改札口。奥に東京駅総武地下コンコースへ通じる通路が伸びている。 総武快速線上り列車から見た銭瓶トンネル。矢印の部分が東西線との交差部分で線路間に壁がある。
左(1):東京メトロ東西線大手町駅東改札口。奥に東京駅総武地下コンコースへ通じる通路が伸びている。
右(2):総武快速線上り列車から見た銭瓶トンネル。矢印の部分が東西線との交差部分で線路間に壁がある。


 銭瓶トンネルは東京メトロ東西線大手町駅の西船橋寄り端にある東改札の真下を交差している。改札口の横からはJR東京駅総武地下コンコースへ通じる地下通路が分岐している。通路の階段とその直近にある地上出口(B4・B5)は東西線開業時に開設されたもので、総武快速線開業時にさらに通路を先まで延伸した格好となっている。トンネルが一体構造のため、真下を総武線の電車が通過する際は振動がはっきりと感じられる。
 銭瓶トンネルの線路階は東京駅の到着番線を振り分けるポイントが設置されている。上り線は室町トンネルが銭瓶トンネルに対して斜めに取り付いており、1・2番線に進入する電車はポイントの分岐側(制限速度40km/h)を走行するため大きく揺れる。東西線との交差部分のみ線路間に壁が設けられており、ポイントはこの部分を避けて設置されている。

▼参考
東西線建設史 | メトロアーカイブアルバム
半蔵門線建設史(渋谷~水天宮前) | メトロアーカイブアルバム
景観を考慮した中央線重層化工事の設計・施工 - コンクリート工学 32巻12号(1994年12月号)

総武快速線・横須賀線前面展望・3/5 新日本橋→東京 - YouTube

(つづく)

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