西武池袋線石神井公園駅高架化工事(2011年1月9日取材)

石神井公園駅高架ホーム

2007(平成19)年に着工した西武池袋線練馬高野台~石神井公園間の高架・複々線化工事ですが、前回の取材(2010(平成22)年2月)からおよそ1年が経過しましたので、1月に再度取材を行いました。今回は前回の取材直後に高架化された上り線ホームを中心にその状況をお伝えいたします。

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■西武池袋線高架・複々線化の概要と歴史


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西武池袋線の高架・複々線化は地下鉄8号線(有楽町線)との相互乗り入れ計画が発端となって開始されたもので、桜台~練馬高野台間5.2kmの工事は2003(平成15)年までに完了しています。残る練馬高野台~大泉学園間2.4kmについては交差する東京外郭環状道路(東京外環自動車道)との調整のため計画策定に手間取っていましたが、2005(平成17)年に都市計画変更の手続きが行われ、2007(平成19)年から本格的な工事が開始されました。
この区間は練馬~練馬高野台間と同様に石神井公園駅までの複々線化と高架化による連続立体交差化が並行して行われることとなっています。前半の練馬高野台~石神井公園間については着工時点ですでに複々線化に必要な2線分の用地買収が完了しており、完成時に上り2線が使用する高架橋を一度に建設して、昨年2月に切替が行われました。ただし、練馬高野台駅構内は配線の都合上、高架化された上り2線がそのまま接続できる構造とはなっていなかったため、練馬高野台~石神井公園間の上り線は現在に至るまで一旦1線に合流した後、再度2線に分岐するという配線になっています。一方、石神井公園~大泉学園間については高架化工事に必要な用地が半分程度しか確保できていません。そのため、工事区間を東西2区間に分け、東側半分を1期区間として先行して高架化することとしました。このため、途中の地上へのアプローチ部分は将来の取り壊しが容易な構造で建設されています。(詳細は昨年3月作成の記事を参照。)練馬高野台~石神井公園間を含む1期工事は2011(平成23)年度の完成を予定しており、区間内にある6箇所の踏切が解消され交通渋滞の緩和と輸送力強化が実現する見込みです。また、石神井公園~大泉学園間の2期工事区間はさらに3年先の2014(平成26)年度の完成予定となっており、この区間でも踏切3箇所が解消される予定となっています。

■2011年1月9日の状況

●下り線ホーム(地上)
地上に残る下り線ホーム
地上に残る下り線ホーム

高架化工事着工前の石神井公園駅は上下兼用の中線を持つ2面3線のホームと留置線2本がある構造でした。上り線の高架ホームは留置線の跡地に建設されており、上り線高架化直前の昨年2月時点では下り線は中線の使用を停止し、下り線が1面1線、上り線が1面2線の運用となっていました。上り線高架化後は北側のホーム1面が取り壊され、跡地に下り線の高架橋の建設が進められています。1面の下り線ホームは半分が仮設の柵で仕切られており一部幅が狭くなっています。この地上下り線ホームは引き続き線路の下を横断する仮設の地下通路に改札口を持つ形態となっています。

●上り線ホーム(高架)
北口ロータリーから見た高架上りホーム 高架下にある上りホームへの改札口
左:北口ロータリーから見た高架上りホーム
右:高架下にある上りホームへの改札口

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高架化された上り線ホームは昨年2月の取材時点ですでにほとんどが完成しており、今回訪問時もに大きな変化はありませんでした。新ホームの外観は周辺の風景と調和するよう、極力シンプルなデザインとなっていますが、北口ロータリーに面した部分は大きなアーチ模様がアクセントとして描かれています。これは地元の小中学生を対象に行ったデザインコンテストの結果を反映したものです。また、高架橋側面を覆う風防は駅構内に自然光が入るよう全面ガラス張りとなっていますが、マンションに近接する部分については住民のプライバシーに配慮し、細かい模様を貼り付けて直接見渡せないようになっています。
この高架上り線ホームの改札口は高架下に設置された仮設の改札口1箇所となっており、下り線とは完全に独立した形となっています。

高架上りホーム
高架上りホーム

高架化された上り線ホームは切り替え直前の地上ホームと同様島式1面2線の構成です。ホームを覆う屋根は一部に半透明の布を使用しており、ガラスの風防とあわせて駅構内に日光が入るようになっています。また、ホーム下の改札口からホームへの連絡階段には上下のエスカレータ・エレベータを完備しており、バリアフリー対策は完全なものとなっています。さらに、階段・エスカレータの壁面からホーム端までは2m以上の距離を確保しており、車いすの通過や優等列車接続の際の乗車待ちの列にも対応できるようになっています。高架化された区間の軌道は最近の新線建設では主流の防振ゴムを組み込んだ直結軌道で、駅前後の区間も含めて騒音防止のため消音バラストが散布されています。
なお、1月訪問時点では写真の通りすでに隣の下り線ホームも建設が進んでおり、ホームの屋根・床面が出来上がっているという状況でした。高架化完成時には下り線ホームも島式となり、合計2面4線の構成となる予定ですが、来る4月に予定されている下り線高架化(後述)では島式ホームの片面のみを使用する暫定供用となる模様です。

高架化工事着工前。 上り線高架化直前。 上り線高架化後。上下線間に引き上げ線が入るようだ。
ホーム端から大泉学園駅方面を見る。
左:高架化工事着工前。2007年5月4日撮影
中:上り線高架化直前。2010年2月6日撮影。
右:上り線高架化後。上下線間に引き上げ線が入るようだ。2011年1月9日撮影。

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駅の大泉学園方は上下線の間にもう1本行き止まりの線路が入る模様です。現地を見る限りではこの引き上げ線は10両分の長さは確保できていない10両分は一応確保されている模様で、下り線の高架化完成後の区間運転用(池袋~石神井公園間?)に使用するものと思われます。

●練馬高野台~石神井公園(既設高架へのアプローチ区間)
石神井公園駅高架上りホームから練馬方面を見る。
石神井公園駅高架上りホームから練馬方面を見る。

練馬高野台~石神井公園間は高架化工事着工前から複々線(4線)化が可能な用地が確保されていたため、昨年2月の上り線高架化時に2線分の高架橋が一度に建設されています。上り線高架化後は地上上り線跡地に下り線が使用する単線分の高架橋を継ぎ足す工事が行われており、今回訪問時にはすでにほとんどが完成していました。下り線の2線化は現在使用している地上下り線の跡地を利用して行うため、しばらく時間がかかるものと思われます。

石神井公園駅の先にある急行線・緩行線の振り分けポイント 練馬高野台駅入口の状況
上り列車の前面展望
左:石神井公園駅の先にある急行線・緩行線の振り分けポイント
右:練馬高野台駅入口の状況

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練馬高野台~石神井公園間のほぼ中央には急行線(複々線の外側線)と緩行線(内側線)を相互に渡るポイントが設置されており、現時点で上り線はここで一旦1線に収束したうえで、練馬高野台駅手前で再度2線に分岐する構造となっています。下り線側もこれと同じ位置に造りかけのポイント(左写真の右端に見えるレール)があることから、下り線についても同じ構成になるものと思われます。なお、工事中の高架下り線は練馬高野台駅の下り急行線のみに接続するような配置となっていることから、3本ある線路のうち中央の線路は複々線完成時まで下り緩行線専用もしくは上下線で兼用になるものと思われます。

西武池袋線桜台~大泉学園間の配線図
西武池袋線桜台~大泉学園間の配線図 ※クリックで拡大

■今後の予定

この石神井公園駅の高架・複々線工事ですが、下り線の高架橋建設が順調に進んでいることから来る2011年4月17日より下り線が高架化される予定となっています。下り線高架化後の石神井公園駅は改札口が高架下の1ヵ所に統合されるほか、地上の下り線跡を横切る形で新設される通路を使用して地上で駅の南北を行き来できるようになります。下り線の高架化後は地上の線路跡でもう1線分の高架橋建設が行われ、練馬高野台~石神井公園間の複々線化が完了することになります。

▼参考
池袋線連続立体交差事業・複々線化事業のご案内:西武鉄道Webサイト

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※この記事の内容は3月11日の東北関東大震災発生よりも前に作成しております。地震以後は運行ダイヤの変更、資材不足、東京電力の計画停電等の影響により工事のスケジュールの大幅な変更が見込まれます。最新の情報につきましては西武鉄道のホームページ等をご覧ください。

※2011年12月12日:駅西側の留置線について修正
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