近鉄 - 関西旅行2010(16)
公開日:2011年05月27日21:44

しばらく中断してしまった昨年夏の関西旅行のレポートの続きです。
今回からは3日目(8月25日)の内容となります。3日目は前日からの続きで午前中にJR東西線の調査を行った後、午後はわざと遠回りなルートをとりつつ和歌山電鉄貴志川線を訪問し、その後大阪まで戻って宿泊地である京都へ向かうという行程でした。まずはその「遠回り」の途中で乗車した近鉄電車について簡単に触れることとします。
■近畿地方を幅広くカバーする民鉄
近畿日本鉄道(近鉄)はその名のとおり近畿地方(名阪間)に路線を持つ民鉄です。その守備範囲は京都府・大阪府・奈良県・三重県・愛知県の2府3県にまたがり、総路線数は25路線、総延長508.1kmに及ぶ、日本では最大規模を誇る民鉄となっています。この守備範囲の広さに加え、地下鉄2路線と他民鉄1社と直通運転を行っていること、さらに歴史的な経緯から標準軌(1435mm)、狭軌(1067mm)、鋼索(ケーブルカー)の3種類のフォーマットを持つことから、普通列車から特急列車、観光用鉄道まで多種多様な車両を見ることができるのが特徴です。
今回はこの中から30分弱というわずかな滞在時間の中で見ることができたごく一部の車両について触れたいと思います。
■今回撮影した近鉄の車両
1、特急車両


左:23000系「伊勢志摩ライナー」
右:22000系「ACE」
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近鉄の特急列車は各線で運用可能な汎用型の車両と運用路線を特定の路線に特化した車両の2種類が存在します。
左の23000系は近鉄が開発した三重県の志摩スペイン村へのアクセス列車「伊勢志摩ライナー」として1994(平成6年)に登場した車両で、当初は大阪上本町~賢島(志摩線)・近鉄名古屋~賢島の区間で重点的に運行されていました。現在は近鉄特急の汎用車両として各線で運行されています。
右の22000系は平成以降の近鉄特急の標準形車両として1992(平成4)年に登場しました。最高速度は130km/hにアップし、汎用車両であることを示す「ACE(Advanced Confort/Common Easy/Express)」の愛称を持っています。


左:12200系
右:12410系「サニーカー」
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近鉄では平成時代に登場した特急列車が大多数となる一方、昭和40年代に登場した古い車両を現在も見ることができます。
左の12200系は高度経済成長期の近鉄特急の運行拡大に合わせて1969(昭和44)年に登場した車両で、一時は近鉄特急最大の両数となる166両の大所帯を誇りました。当初は車内でビュッフェ営業を行っており、「スナックカー」と呼ばれていましたが、後期製造の車両からは定員増のため客室化されました。
右の12410系は12200系のコンセプトを受け継ぎつつ、当初より4両編成で製造された車両です。4両編成を前提にした設計となったことで車内設備を各車両に効率よく分散させて配置することができ、居住性が高まっています。
2、通勤車両


左:3220系(京都市営地下鉄烏丸線五条駅)
右:9020系
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通勤車両に関しても近鉄では最新型から昭和40年代に投入された古い車両まで様々な車種が運用されています。
3220系・9020系は近鉄の次世代の通勤車両「シリーズ21」で2000(平成12)年から製造が続けられています。「シリーズ21」は運用線区に合わせて5種類の車種が存在しますが、3220系・9220系はともに奈良線・京都線向けの車両で、前者は京都市営地下鉄烏丸線への直通運転、後者は阪神なんば線への直通運転にそれぞれ対応しています。この形式のみ車両の概観は他の近鉄の車両とは異なり、車体の上半分がグレー、下半分がホワイトで境目に黄色いラインが入るという構成となっています。


左:1230系
右:5800系
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左の1230系は1989(平成元)年に登場した通勤車両で、1981(昭和56)年に登場した1400系から続く近鉄の通勤車両標準の車体にVVVFインバータ制御の駆動を組み合わせた形態となっています。搭載している機器は近鉄の標準機区間全線での運用を考慮しており、路線間の車両転用が容易にできるようになっています。
右の5800系は1997(平成9)年に登場した通勤車両で、外観は1230系とほぼ同じですが、様々な列車種別での運用やラッシュとデータイムの間にある着席需要・立席需要へ柔軟に対応するため、ロングシートとクロスシートを切り替えて使用できる可変座席を採用しており、「L/Cカー」と呼ばれています。車両中央の扉間には2人がけの座席が3基設置されており、ラッシュでは全ての座席を窓に沿うよう配置して6人がけのロングシートとして運用、データイムでは1基毎に前後方向に向くよう配置してクロスシートとして運用します。クロスシートでは座席の回転も可能で、優等列車の長距離運用にも対応することができます。
なお、この5800系の製造に先立つ1996(平成8)年には、2610系(後述)の一部車両で可変座席のテストが行われました。この可変座席は同年の通商産業省(現・経済産業省)の「グッドデザイン賞(輸送機器部門)」に鉄道車両の座席としては初めてノミネートされています。


左:8000系
右:2610系
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左の8000系は奈良線新生駒トンネル開通に伴い、同線の車両限界が拡大されたのに合わせて登場した通勤車両で、近鉄の同形式の車両群の中では最大の両数を誇りました。車体はコーナーに丸みを帯びた形状で、近鉄の初期の通勤車両の標準的な外観となっています。2006(平成18)年からは老朽化に伴い廃車が開始されています。
右の2610系は大阪線・奈良線の急行用の通勤車両として1972(昭和47)年に登場した車両です。急行用の車両であったことから車内は当初固定式のクロスシート・トイレが設置されていましたが、クロスシートに関しては後年ロングシートに改造されました。一部車両は前述の通り、ロング・クロス可変座席車両(L/Cカー)のサンプルとして改造されており、現在もそのままの仕様となっています。
▼参考
鉄路の名優|近鉄企業情報
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(つづく)
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