大阪環状線・阪和線・和歌山線・紀勢線 - 関西旅行2010(17)
公開日:2011年06月27日01:08

昨年8月の関西旅行の続きです。次は大阪環状線・阪和線を乗り継いで和歌山方面へ向かいます。今回はこの移動の途上で撮影した車両を記事にいたします。2年前にも取り上げた車両も含まれていますが、当時は夜間の撮影だったため、再度昼間に撮影したものとして取り上げたいと思います。
■まだ現役の103系


左:103系。全車体質改善工事施工済みだが先頭車両と2両目以降では窓や雨どいの形状が異なる。
右:103系。こちらは工事が全車両同じメニューで統一されている。2枚とも鶴橋駅で撮影。
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首都圏では5年以上前に引退済みの通勤型電車103系ですが、大阪ではまだ都心部で数多く走っています。
いずれの車両も車体の劣化箇所の交換や内装類のリニューアルが行われており、中でも戸袋窓の閉鎖は車体の腐食防止対策としてほぼ全車に行われています。このほかのメニューは車両の製造年・改造年によって大きく異なっており、1990年代前半に改造された車両は戸袋窓の閉鎖と内装類の軽微な交換のみにとどまるなど簡易的な改造となっています。(延命N40・NB工事)一方、1990年代後期(1996年以降)に改造された車両は車両の寿命を製造後40年に延長することを目標に、車両の内外全てを徹底的に改修するメニューとなっています。この工事は「体質改善40N工事」と呼ばれ、接客設備を中心に207・223系などの新車に近いレベルにリニューアルするものです。具体的には以下のようなメニューとなっています。
●窓枠を従来の2段窓2組構成から上部1/3のみが開くものに交換。
●車内の化粧板を全面的に交換し、天井部分は冷房ダクト部分にあわせてフラットな形状にする。
●天井にある既設の冷房ダクトを撤去し、線状の吹き出し口を持つダクトと横流ファン(ラインデリア)を新設、もしくは冷房ダクトはそのままに扇風機を撤去し扇風機の窪みに合わせたファンデリアを設置。
●照明器具(蛍光灯)はプラスチックの半透明なカバーを取り付け。
●既設の網棚・つり革を撤去し、207系と同様のステンレスパイプで構成された荷物棚を取り付け。また、つり革は天井に近い位置に取り付け場所移設。
●ドアエンジンを直動式交換(一部車両のみ)
2002(平成16)年からは車両の余命を考慮して上記のメニューを一部省略した体質改善30N工事(車両寿命を30年とする)に移行しましたが、その後は新車投入の高速化もあり2004(平成16)年を最後に工事が中止されて現在に至っています。






103系点描。
上段左から阪和線103系(前面は原形)、車内(N40工事施工だが原形に近い)、天井の扇風機。
下段左から羽衣線103系(体質改善工事施工)、207系並に更新された車内、ワンマン対応化された運転台。
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103系を使用した列車が多く見られるのが阪和線です。阪和線の普通列車は103系と205系(後述)で運行されていますが、205系の両数が103系と比較して大幅に少ないため、阪和線では普通列車=103系と見做せるほどの頻度で103系の姿を見ることができます。近年は大阪環状線など他線で余剰になった比較的新しい103系で既存の古い103系を置き換えるということも行われており、編成内でも車両の形態が異なるというのは日常茶飯事となっています。なお、取材を行った昨年夏の時点では103系のトップナンバー車であるクハ103-1がまだ営業運転に就いていましたが、先述のような理由により残念ながら去る2011(平成23)年3月12日のダイヤ改正をもって引退・廃車となりました。
なお、鳳駅から1駅だけ分岐している支線(通称「羽衣線」)でも103系が使用されていますが、こちらは体質改善40N工事に加えてワンマン運転に対応するため車体側面の車外スピーカー取り付けや運転台の機器追加などが行われています。
■余剰車両の有効活用



左:和歌山線105系。103系時代の運転台をそのまま使用している。
中:同じ編成の反対側。211系に近い形状の運転台を増設した。
右:最近では青緑1色に塗り替えが進行中。いずれも和歌山駅にて撮影。
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次は和歌山駅で見かけた和歌山線105系です。105系は元々地方のローカル線の電化時に低コストで新車を投入するべく開発された車両で、113・115系の3ドア車体を基本にしつつ、1両単位で増解結を可能にするため、電動車を2両1組から1両で完結する形に改良した形式となっています。国鉄末期の増備に際しては当時の厳しい財政事情を考慮して、首都圏の常磐緩行線・営団地下鉄(東京メトロ)千代田線直通の203系導入に伴い余剰になった103系1000番台を改造して105系として活用することとなりました。改造にあたっては103系1000番台の先頭車側はそのままに、隣接する電動車の車端部を切断して運転台を取り付けており、編成の前後で形状が全く異なる実に特異な車両となっています。103系をもとにした車両であるため4ドアとなっており、車内はトイレが追加されているものの、座席は常磐線時代のロングシートのままとなっており、103系と大差ない設備となっています。
和歌山地区で使用されている車両は103系からの改造車がほとんどで、経年との関係から冷房はついているものの、床置き形の簡易冷房となっており、103系と異なり戸袋窓の閉鎖もほとんど行われないなど長期の使用は考慮されていない模様です。現在はコスト削減のため、車体をクリーム色+赤いラインから青緑1色へ塗り替える工事が進んでおり、かつての常磐線を思わせるような外観に変化しつつあります。
■少数派の201系・205系


左:おおさか東線201系。放出(はなてん)駅にて撮影。
右:阪和線205系1000番台。和歌山駅にて撮影。
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103系の後継車両である201系・205系は首都圏では大量に導入されましたが、大阪地区では比較的少数の導入に留まりました。201系は元々東海道・山陽本線(JR京都線・神戸線)系統の普通列車用に導入された車両で、現在は同線の車両が207系などに変わったこともあり、編成を7両から6・8両に組み替えたうえで大阪環状線・大和路線などで使用されています。全車ATS-Pを搭載していることから左の写真のようにおおさか東線(2008年開業)の中を往復する運行にも充当されています。首都圏では今月中旬の京葉線を最後に引退した201系ですが、大阪地区では全車が103系と同じ体質改善工事を受けており、当分の間活躍が見込めると考えてよさそうです。
一方、205系は201系と同じく東海道・山陽本線用に導入された7両編成と初めから阪和線用に導入された4両編成の2種類が存在しています。後者は駆動装置を強化して最高速度を110km/hにアップしており、フロントガラスが拡大されるなど車体にも変化が見られます。全車の7両編成については201系と同じ理由から、一時阪和線に移籍していましたが、現在は一部車両が再度東海道・山陽本線に戻って運行されています。この際、車体の塗装が従来の青色のラインから207・321系と同じ紺色とオレンジ色の組み合わせに変更されています。
■阪和線系統の車両


左:223系2500番台。和歌山駅にて撮影。
右:281系「関空特急はるか」。鳳駅にて撮影。
今回乗車した阪和線系統では数少ないJR西日本オリジナルの車両となるのが223系と283系「関空特急はるか」です。いずれも1994(平成6)年の関西国際空港開港時にデビューした車両です。
223系は東海道・山陽本線系統に導入されていた221系を基本に、荷物の多い空港利用者の乗車に配慮して座席配置をクロスシート1列+2列の配置としたものとなっています。利用者の増加に合わせて車両を増備しており、後期に製造された車両では車内のサービス電源(冷房・照明)用の静止形インバータが故障した際、駆動用のインバータを代替として使用できる仕組みを導入したり、将来の他線転用に伴う短編成化を考慮して、車端部の構造体をボルト締結として運転台が容易に追加できるようにするなど独特な工夫も見られます。この223系は主に大阪中心部から関西国際空港へ向かう「関空快速」や和歌山方面へ向かう「紀州路快速」で使用されており、大阪環状線京橋・阪和線天王寺~日根野間は両列車を連結して運行しています。
281系「関空特急はるか」は京都駅(一部米原駅)を始発に東海道線(JR京都線)、梅田貨物線を経由して大阪環状線を半周し、天王寺駅駅から阪和線に入る特急列車で、首都圏における「成田エクスプレス」と同様の性格の列車となっています。車内は普通車が片側2列の回転リクライニングシート、グリーン車が1列+2列の回転リクライニングシートとなっており、成田エクスプレスで当初使用されていた253系の座席が回転不可でリクライニング機能すら無かったこととは対照的です。この関空特急はるかは当初全列車が6両編成でしたが、利用率の高さから現在は一部列車が3両を増結した9両編成で運行されています。
▼参考
車両案内:JRおでかけネット
交友社「鉄道ファン」
1992年1月号 特集「205系通勤形直流電車」
1999年8月号 223系2000・2500番台
2006年5月号 特集「究極の標準形通勤電車103系」
2011年8月号 最後に残った103系【1】
など
▼関連記事
103系1200番台(2005年12月5日作成)
→103系1000番台とほぼ同一仕様で営団地下鉄(東京メトロ)東西線に乗り入れていた車両。
JR西日本各線 - 関西旅行2008(7)(2008年12月16日作成)
→2008年取材時の記事
▼関連記事:「関西旅行2010」
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(つづく)
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