カテゴリ:建設史から読み解く首都圏の地下鉄道 > 京葉線新東京トンネル
坑口付近~東越中島立坑(現地写真) - 京葉線新東京トンネル(5)
公開日:2009年12月20日00:07

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■東越中島トンネル:3km587m92~4km568m52(L=980.60m)
▼参考
京葉線工事誌 519~553・650~675ページ
●概説
→前回の記事を参照
●現地写真
(すべて2009年8月16日撮影)



左:越中島換気所建屋の裏側に回ったところ。越中島貨物駅の機回し線はここで終わっている。
中:東京都立塩崎保育園。この日は日曜日で静かだった。
右:雑草に埋もれる東京都専用線の廃線跡。この土地は現在も都有地となっている。
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東越中島トンネルは江東区越中島3丁目の東越中島立坑から掘進が開始された。したがって、塩浜トンネル末端の越中島換気所は到達立坑となる。シールドトンネルの終点は、換気所脇にある都立塩崎保育園への影響を最小限にするため可能な限り新木場側へ延長されており、換気所手前の土被りは工法上限界となる4.5mとなっている。
前々回の塩浜トンネルの項で触れた越中島貨物駅の機回し線は換気所脇で車止めになっており、その先は東京都専用線の廃線跡となっている。この廃線跡は現在も東京都の所有地となっているが、細長く利用しづらい土地の形であるため荒地のまま放置されており、訪問時は真夏であったこともあり雑草で完全に埋まっていた。


左:東越中島トンネルと三つ目通りの交点付近。頭上を通るのは首都高速9号深川線。
右:東京都専用線の廃線跡はさらに続く。左の建物は都営汐浜二丁目アパート。
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東越中島トンネルはこの東京都専用線の廃線跡の下に斜めに進入し、三つ目通りと交差する。左の写真を見ると路面が不自然に波打っているように見えるが、これは三つ目通りがこの先にある汐枝橋へ向けて水平から上り坂に変化する地点であるためで、路面自体に異常はない。この道路直下にあるNTT洞道の土留め壁撤去が新東京トンネル全体の中で最も難工事となったが、残念ながら地表面にその苦労をうかがわせる痕跡は一切残っていない。

浜崎橋上から見た富士倉庫運輸の1号倉庫
東越中島トンネルは三つ目通りの先も少しだけ廃線跡の下を進んだのち、半径400mでカーブしながら富士倉庫の敷地内へ入る。トンネルに支障したため、アンダーピニング(受け替え)を行ったのは写真右端の低い建物の部分であるが、上層の躯体自体には手を加えていないため地下にトンネルが通っていることをうかがわせる物は特に見られない。

正面が平久運河に架かる浜崎橋。トンネルは左のガソリンスタンドの地下を通り浜崎橋の左側をかすめた後、右に見えるマンション2棟の間へ進む。
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平久運河の護岸。トンネル通過に伴い改修された部分はこのように張り出しがある。
富士倉庫の地下を過ぎるとトンネルはガソリンスタンド(現在はJOMO)の地下を通り、平久運河に架かる浜崎橋の袂をかすめる。ガソリンスタンドは地下にガソリンを貯蔵するタンクが埋設されており、京葉線工事誌にはトンネル建設時にタンクの沈下防止のため坑内から薬液注入を行ったとの記述がある。
その先の平久運河は護岸の基礎杭がトンネルに支障したため護岸を全面的に改築しており、トンネル真上に当たる改修された護岸には他の部分に無い張り出しが見られる。また、平久運河の両側には川面に近づけるようテラスが設置されているが、この部分は重量制限の関係なのかそれが途切れている。

左下がトンネル建設時に改修された平久運河の護岸。トンネルは画面中央右のマンション2棟の間へ進む。※クリックで拡大

マンションの反対側に回ったところ。トンネルが通る部分は平屋のエントランスロビーになっている。
平久運河の先にあった農林水産省深川倉庫はトンネル完成後に全て廃止され、現在跡地には「ニュートンプレイス」というマンションが建っている。このマンションは8棟の建物で構成されているが、地下に東越中島トンネルが通る敷地中央部は公園や重量の軽い低層棟(エントランスロビー)になっている。トンネルはこの付近から半径1200mのカーブとなっており、Googleマップなどの航空写真を見ると建物がトンネルを避けて曲線を描くように配置されていることから、トンネルの通過位置が容易に推測できる。
▼参考
Googleマップ 東京都江東区塩浜1丁目4の航空写真


左:トンネル真上に建つ「クロースタジオ」。
右:汐浜運河側から見たところ。トンネルが地下にある部分は特殊な構造になっている。また、手前の護岸には平久運河と同じ張り出しが見られる
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マンションの敷地を抜けると東越中島トンネルは浜園橋の脇に建つレンタルスタジオ「クロースタジオ」の地下を通り汐浜運河と交差する。この「クロースタジオ」はトンネル上部にも建物があり、この部分は基礎杭が打てないためトンネルにギリギリ支障しない位置に太い柱を打ち込み、その上部にX字に筋交いを設けて補強した箱形の躯体を載せる独特な構造となっている。イメージとしては鉄道橋や道路橋で多くみられるトラス橋梁に近いといえるだろうか。
また、隣接する汐浜運河は平久運河と同じく護岸を改修しており、トンネル真上に当たる部分の護岸には平久運河と同じ張り出しが見られる。そして、この汐浜運河のすぐ先がシールドの発進立坑となった東越中島立坑である。

汐浜運河の北側護岸。こちらはテラスがあるため、張り出しは見られない。ちなみに、この漁船はいつもここを係留場所にしているようで、Googleマップの航空写真にも写っている。画面中央やや左に見える白い建物が東越中島立坑。
(つづく)
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