海老江駅~御幣島駅(現地写真) - JR東西線(22)

JR東西線 前人未到の深さで大阪中心部を貫いた地下鉄道のすべて
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■淀川シールド 6km105m~8km430m(L=2325m)
  姫里換気所 7km520m

▼参考
JR東西線(片福連絡線)工事誌 - 日本鉄道建設公団1998年 57~59・223~248ページ・断面図
特集「平成9年開業新線」Ⅱ.JR東西線(片福連絡線) - 日本鉄道施設協会誌1997年7月号13~24ページ

●概説
前回の記事を参照。

●現地写真(地上)
国道2号線中海老江交差点。JR東西線は直進する国道2号線の地下を進む。 中海老江交差点付近にある共同溝の点検口。シールド立坑に通じているものと思われる。
左:国道2号線中海老江交差点。JR東西線は直進する国道2号線の地下を進む。
右:中海老江交差点付近にある共同溝の点検口。シールド立坑に通じているものと思われる。

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海老江駅を出たJR東西線淀川シールドは34パーミルの急勾配で下りながら引き続き国道2号線の地下を進む。地上は片側2車線の道路となっており、中海老江交差点を過ぎてからわずかにカーブするものの、淀川へ向けてひたすら北西へ進むという線形となっている。途中、中海老江交差点付近の歩道上には大きな鉄格子が付いた地下へ降りる開口部がある。工事誌の断面図では対応する位置に「共同溝海老江立坑」なる構造物が描かれており、この開口部はそこへ通じるものであると考えられる。ここから発進した共同溝のシールドトンネルはJR東西線の淀川シールドと併走しながら淀川を横断し、後述する姫里換気所に到達するわけである。

淀川小橋 淀川大橋
左:淀川小橋
右:淀川大橋

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中海老江交差点を過ぎると国道2号線は淀川堤防へ向けて緩い上り坂となる。坂を上り切ると淀川堤防の手前に淀川小橋と称する古ぼけた短い橋が現れる。これは現在は埋め立てられた中津運河に架かっていた橋である。中津運河は大阪市北区の大川(旧淀川)の分岐点付近から淀川と並走し、福島区のJR西九条駅付近にある正連寺川・六軒家川に注いでいた運河で、元は淀川の支流である「中津川」の一部であった。この中津運河は昭和40年代に埋め立てられたものの、現在も淀川小橋のように遺構が随所に残されているほか、下流の一部は阪神高速の2号淀川左岸線の建設用地として活用されている。淀川小橋に関しては工事誌に特に記載はなく、地下のトンネル建設に伴う補強の有無等は不明である。

▼参考
日々是・・大阪 :旧中津川跡

淀川左岸から見た淀川大橋
淀川左岸から見た淀川大橋

淀川小橋を過ぎると淀川堤防と交差し、その先は淀川大橋となる。淀川大橋の直下から先、姫里換気所までJR東西線淀川シールドは4.6パーミルの下り勾配となる。
全長724mの淀川大橋は新淀川開削に伴い、1926(大正15)年に建設されたものである。新淀川開削前当地に存在した中津川には江戸時代から「野里渡」と呼ばれる渡し舟が存在し、その後も私費で橋が架けられるなどこの付近は古くから川の両岸間で往来が活発であった。大正期になると都市化の進展によりその需要は急速に増大したため、国と府主導のもと架けられたのがこの淀川大橋である。橋の構造は両端の高水敷が輸入鋼材を利用した鋼板桁、中央の低水敷がワーレントラスとなっており、橋脚の一部は大阪特有の軟弱地盤に対応して地下20mを超える深さまで井筒基礎が埋め込まれるなど、建設当時としては最新鋭の技術を駆使した大規模橋梁であった。JR東西線建設に際してはシールド掘進前に軽微な補強を行った以外特に手を加えておらず、実際の橋梁を見ても最近追加されたと思しき部材は特に見当たらなかった。

▼参考
大阪の橋の地図:淀川大橋(よどがわおおはし) - 大阪橋ものがたり(大阪市都市工学情報センター)

姫里換気所換気塔。側面に小さなルーバーがあるが、換気口本体は屋根にある。
姫里換気所換気塔。側面に小さなルーバーがあるが、換気口本体は屋根にある。

淀川大橋を過ぎると、国道2号線は地平レベルまで降りるため緩い下り坂になる。この下り坂が終わる野里交差点付近にあるのが姫里換気所である。換気所本体は国道2号線の地下にあり、換気塔は道路の東側に設置されている。換気塔の主たる排気部は屋根にある(屋根全体が排気口になっている)が、側面にも小さなルーバーが開いている。また、1階に相当する高さには換気塔内部へ出入りできるよう小さな扉が設置されているが、この付近は標高が海抜下となるゼロメートル地帯であるため、扉を強固に密閉できるよう回転式のハンドルが設置されている。換気塔の外壁は周囲が住宅や小規模な商店であることから、それらと調和するよう茶色いタイルを全体に貼っている

換気塔にあるハンドル付きの扉 換気塔前の道路上には共同溝に通じると思われる蓋が多数設置されていた。
左:換気塔にあるハンドル付きの扉
右:換気塔前の道路上には共同溝に通じると思われる蓋が多数設置されていた。

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なお、換気塔前の道路上には地下へ通じる開口部(鉄格子)や配電盤が多数設置されているのが確認できた。これは姫里換気所と一体で施工された建設省共同溝の立坑へ通じるものであると思われる。淀川下をシールドトンネルでくぐった共同溝は、ここから再び開削トンネルとなり地下の浅い部分を通るようになる。

引き続き国道2号線は北西へ向けて進む
引き続き国道2号線は北西へ向けて進む

国道2号線は姫里換気所付近で若干カーブしているが、その後も引き続き北西へ向かってほぼ直線で進んでいる。道路の周囲はマンションが増えてくる。ここから先、JR東西線の淀川シールドは御幣島駅の手前まで33.5パーミルの急な登り勾配となる。

大野川跡に架かる国道2号線の歌島橋。 大野川の跡は公園・サイクリングロードになっている。
左:大野川跡に架かる国道2号線の歌島橋。
右:大野川の跡は公園・サイクリングロードになっている。

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姫里換気所から600mほど進むと、次の御幣島駅の建設中の仮称であった「歌島橋駅」の由来にもなった歌島橋を渡る。
この歌島橋の下にはかつて大野川という川が流れていたが、戦後周辺に進出した工場から出された排水により急激に汚染が進んだことから昭和40年代に全区間が埋め立てられた。当初、跡地には高速道路を建設する計画となっていたが、当時西淀川区内では西淀川公害訴訟に代表される深刻な大気汚染が発生しており、高速道路の建設はその大気汚染をさらに悪化させるが自明であった。このため、周辺住民により激しい反対運動が起こされ、最終的に遊歩道の建設に計画が変更され、1979(昭和54)年に完成した。黒く煤けた歌島橋の欄干は当時の大気汚染によるものであろうか?
この歌島橋を過ぎると、JR東西線淀川シールドは半径254mの急カーブで進路を北に変え、大阪天満宮駅の東側から並走してきた国道2号線と別れてみてじま筋(大阪府道10号線)の地下に入り、御幣島駅に達する。この国道2号線とみてじま筋が交差する歌島橋交差点の地下にはJR東西線と同時並行で建設された地下駐輪場・地下横断歩道があるが、これについては次の御幣島駅と関連が深いため、そちらで詳しく触れることとする。

▼参考
大阪市 西淀川区 西淀川区の名所
西淀川公害とは | あおぞら財団付属 西淀川・公害と環境資料館
大野川緑陰道路の教材づくり研究会 - あおぞら財団ホームページ

●現地写真(地下)
海老江駅ホーム端から淀川シールドを見る。防水扉本体は収納位置の関係でが見えない。 御幣島駅ホーム端から淀川シールドを見る。こちらは防水扉本体が見える。
左:海老江駅ホーム端から淀川シールドを見る。防水扉本体は収納位置の関係でが見えない。
右:御幣島駅ホーム端から淀川シールドを見る。こちらは防水扉本体が見える。

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淀川シールド本体は地下区間のため列車内以外から見ることはできないが、淀川下を横断することから両端の海老江・御幣島の両駅ホームからはトンネル入り口に防水扉が設置されているのを確認できる。海老江駅側の防水扉はホーム側に回転して収納されており通常は扉本体を見ることはできないが、扉に合わせてトンネルの開口幅が狭くなっていることから扉があることは確認できる。一方、御幣島駅側は扉が壁面側に回転して収納されており、ホーム上から扉本体を視認することが可能である。(ただし、照明が無いためかなり暗い。)

(つづく)
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