京成日暮里駅新ホーム(2009年10月10日取材)


新設された3階のホームを出る3000形電車

京成線の都心側の拠点駅である日暮里駅は来る2010年7月の京成成田空港線(愛称:成田スカイアクセス)の開業に向け、駅施設の改良工事が行われています。当ブログのYahoo!ブログ版でも2006年10月と2008年2月の2回この改良工事についてお伝えしましたが、昨年10月にこの工事のメインである新ホームの建設が完了し供用が開始されましたので、その様子をお伝えしたいと思います。

■成田国際空港へのアクセス鉄道の歴史
現在、東京都心と千葉県成田市にある成田国際空港(以下、成田空港)の間を結ぶ鉄道路線はJR総武・成田線の特急「成田エクスプレス」と京成電鉄の特急「スカイライナー」の2ルートがあります。しかし、いずれも所要時間は最短で51分と、世界の国際空港の中でも有数の不便さとなっており、関西国際空港や中部国際空港といった国内の国際空港との競争力確保、さらに成田国際空港の世界的な地位向上に対して大きな懸念材料となっています。
このようにアクセスが悪い空港になってしまった理由としては成田空港開港時に計画されていた成田新幹線建設の失敗があります。成田新幹線は東京駅と成田空港を結ぶ鉄道路線として1971(昭和46)年に制定された整備新幹線基本計画の中に盛り込まれましたが、沿線自治体の建設反対運動が非常に激しく着工できたのは東京駅の連絡通路の一部(これについては現在当ブログにて連載中の「京葉線新東京トンネル」の中で追ってお伝えする予定)と成田空港入口付近の路盤のみに過ぎませんでした。その後は暫定的にでも成田空港と都心のアクセス路線を確保する必要があるという観点から、1991(平成3)年には出来上がっていた成田新幹線の路盤を利用して空港直下に在来線であるJR成田線と京成線を延長、「成田エクスプレス」と「スカイライナー」がこの新駅に乗り入れるようになり現在に至ります。


現在の成田空港アクセスの主役である2列車
左:JR東日本253系「成田エクスプレス」(2008年2月15日・下総中山駅)
右:京成電鉄AE100形「スカイライナー(右)」(2006年6月10日・江戸川駅)

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しかし、前述のような所要時間の長さを放置することは今後の空港発展に大きな悪影響を及ぼすという見方は変わらず、在来線開業後もこれに代わるアクセス路線整備の検討が続けられていました。その結果、現在千葉県印旛郡の印旛日本医大駅で止まっている北総鉄道線を成田空港まで延伸し、「スカイライナー」をこの新線に移行させることでスピードアップを図ることとなります。そもそも北総鉄道線の小室以東は前述の成田新幹線に並行する通勤路線として整備されており、区間全体を通じて線形が極めて良い(最高速度130km/h走行が可能)という特徴を持っています。これに加え、新たに建設する区間については在来線最高速度である160km/h走行が可能な設計とすることで、東京都心と成田空港の間の所要時間を現在より15分短縮したを最速36分で結ぶこととしました。
工事は順調に進んでおり、昨年5月には新路線(京成成田空港線)での160km/h走行に対応する新型スカイライナーの第1編成が完成。先月16日には京成電鉄より開業予定が2010(平成22)年7月であることや、新路線の愛称名が一般公募により「成田スカイアクセス」に決定したことなどが発表されました。

■日暮里駅は下り線ホームを3階に移設

京成日暮里駅の拡張と日暮里・舎人ライナーの開業に合わせて拡張されたJR日暮里駅コンコース

この成田スカイアクセスの開業に伴い、京成線の都心側の実質的なターミナル駅である日暮里駅は今後利用者が急激に増加することが予想されます。しかし、京成日暮里駅は地平に設置された島式ホーム1面を上下線で兼用する形となっており、このままでは激増する利用客を捌ききれません。このため、下り線ホームを高架化し、上下列車の乗客を完全に分離することとなり、2005(平成17)年頃に本格的な工事が開始されました。日暮里駅ではこれと同時期に新交通日暮里・舎人ライナーの整備も行われており、JR東日本側でも乗り換え客の増加に対応して駅舎を大幅に拡張する工事を進めるなど、日暮里駅に乗り入れる鉄道全社をあげた一大プロジェクトともいえる様相を呈しました。その後、2008(平成20)年3月30日に日暮里・舎人ライナー開業を迎え、JR側の改良工事もほぼ同時期に終了し、残るは京成の新ホーム建設のみという状態となりました。その新ホーム建設についてもほぼ工事が完了したことから、去る2009(平成21)年10月3日より供用が開始され、京成線の下りホームは地平から3階に移設されました。


新設された3階ホーム。左のスカイライナー専用ホームは同列車の利用者専用である。

新設された3階のホームは下り線の線路の両側にホームがあり、東側の1番線は特急「スカイライナー」専用、西側の2番線が通勤列車用となっています。このうち、スカイライナー専用ホームである1番線は2階にある専用改札口を経由しないと入れない構造になっています。いずれのホームも将来の10両編成への増結[※脚注]に備えて上野寄りに2両分の未使用部分があります。(現在は柵で仕切られていて入れない。)なお、3階のホームと2階の改札口コンコースはエスカレータ・エレベータのみで連絡されており、階段は設置されていません。これはこのホームが下り線専用であり、朝ラッシュ時に乗客が極度に集中する上り線ほどの混雑を考慮しなくてよいと判断されたためと思われます。


左:JR線との乗り換え改札口
右;改札口の右側に新設された発車案内

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乗り換え客の増大に備え、JR線との連絡改札口も大幅に拡張されました。また、改札口の左側にはJR線からの乗り換え客向けに直近の発車列車と停車駅・追い越しの有無などを表示する大型のプラズマディスプレイが新設されています。


上り列車専用となった地上ホーム0番線

今回の下り線高架化に伴い、従来の地上ホームは上り線専用となりました。3階ホームが1・2番線となったため、この地上ホームは0番線に改番されています。(3番線とならなかったのは3番以降をJRが使用しているため。)今後は不要になった下り線の線路の撤去と跡地を利用したホームの拡幅、高架橋建設に伴い仮設となっていた各種設備の復旧がなされる予定です。


ちなみに、都心側のターミナルであるこの日暮里駅の改良が進む一方、空港側のターミナルである空港第2ビル・成田空港の両駅についても利用者の増加に備えてホームを増設する改良が行われています。このうち、空港第2ビル駅については新ホームが完成し、2009年11月14日より供用が開始されました。新路線の試運転は今年春頃から開始される予定となっており、新型スカイライナーがこのホームを発着する日も間近に迫ってきています。

▼脚注
※:京成電鉄ホームページにある新型スカイライナーの解説でも「編成:8両(6M2T)将来の10両編成化を想定」との記述がある。なお、京成上野駅については1976(昭和51)年の改良時に10両編成への対応工事を済ませている。

▼関連記事
日暮里駅が大きく変わる。 (2006年10月20日作成)
日暮里駅改良工事2008年 (2008年2月11日作成)

▼参考
京成電鉄85年の歩み - 京成電鉄1996年
京成電鉄(公式Web)
京成電鉄・2010年デビュー!新型スカイライナー・成田空港まで36分
→京成電鉄公式Web内の新型スカイライナースペシャルサイト
トップページ/成田高速鉄道
→新設区間(印旛日本医大~成田空港)の整備主体である成田空港鉄道アクセス(株)の公式Web

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