京王線調布駅地下化工事(2011年1月15日取材)と複々線化の概要

国領駅前の踏切

京王線調布駅付近では来年度の完成を目指して、線路を地下化する工事が進められています。当ブログでは2008年からこの工事について取材を続けておりますが、去る2011(平成23)年1月15日に再度取材を行いました。今回はこの地下化工事と、2009年に発表された笹塚~つつじヶ丘間の複々線化について解説いたします。

京王線調布駅付近連続立体交差事業の概要


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事業個所周辺の地図(Googleマップ)

京王線調布駅付近連続立体交差事業京王線柴崎~西調布間2.8kmと京王相模原線調布~京王多摩川間0.9kmを地下化するものです。この事業により18箇所の踏切の廃止と8箇所の都市計画道路が立体交差化が行われ、交通渋滞や地域分断の解消、鉄道・道路双方の安全性の向上、騒音の低減などが実現します。また、調布駅は京王線と相模原線の分岐駅となっていますが、相模原線の上り線は京王線下り線と平面交差をして分岐・合流する形態となっており、駅手前での信号待ちによる停車・遅延が常態化しています。地下化完了後の調布駅は下り線が地下2階、上り線が地下3階という3層構造となり、平面交差が解消され現在よりも余裕のあるダイヤ構成が可能となる見込みです。完成は2012(平成24)年度の予定です。
なお、この事業は道路整備の一環として東京都が事業主体となり国庫補助の下進められています。総工費は約1150億円で、東京都が425億円、調布市が75億円、京王電鉄が650億円をそれぞれ負担することになっています。

国領~調布間の地下化のイメージ 調布~西調布・京王多摩川間の地下化のイメージ
左:国領~調布間の地下化のイメージ
右:調布~西調布・京王多摩川間の地下化のイメージ

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地下化に伴い建設されるトンネルは駅間がシールド工法、駅部分が開削工法(布田駅は線路がシールド工法、ホームが開削工法)でそれぞれ建設されます。駅間のトンネルを建設するシールドマシンは国領~調布間、調布~西調布・京王多摩川間で各1機ずつとし、調布駅構内でUターンさせることで工期短縮とコスト削減を実現しています。掘進の順序は以下の通りです。

●国領~調布間
1、国領駅→調布駅(京王線上り:左図のトンネル
2、調布駅→国領駅(京王線下り:左図のトンネル

●調布~西調布(鶴川街道)・京王多摩川(品川通り)
1、鶴川街道開削部→調布駅(京王線上り:右図のトンネル
2、調布駅→品川通り開削部(相模原線上り:右図のトンネル
3、品川通り開削部→調布駅(相模原線下り:右図のトンネル
4、調布駅→鶴川街道開削部(京王線下り:右図のトンネル

▼参考
調布駅付近連続立体交差事業|京王グループ
中心市街地街づくり事業 - 調布市ホームページ
調布市民放送局
→線路下の状況を撮影した動画が公開されている

▼関連記事
京王電鉄調布駅地下化 (2008年3月18日)
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京王線調布駅付近地下化工事(2009年7月11日取材)(2009年12月4日作成)



2011年1月15日の状況

トンネル本体の建設は昨年までにほとんどが完了しており、現在はトンネル内で駅ホームの構築や軌道敷設などの建築工事が続けられています。

踏切から見た国領駅のホーム 同じ踏切から調布駅方面を見る。画面右にあったシールド工事の防音ハウスは全て撤去された。
左:踏切から見た国領駅のホーム
右:同じ踏切から調布駅方面を見る。画面右にあったシールド工事の防音ハウスは全て撤去された。

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国領駅は着工前、片面ホーム2面2線で線路の下に改札口を持つという構成でしたが、工事の進捗に伴い2007(平成19)年に橋上駅舎となり、2008(平成20)年3月に下り線が、同年7月には上り線が仮線にそれぞれ移動し、島式ホーム1面2線の構成となりました。前回取材時点と比べ、地上部分に大きな変化はありませんが、地下では工事が着々と進められており、現在は地下2階の軌道敷設・ホーム構築が完了しているほか、地下1階のトンネル躯体の構築・仕上げが行われています。また国領駅手前の地上~地下をつなぐU字型よう壁の構築も完了しています。
一方、国領駅~調布駅間のシールドトンネル掘進も完了したことから、前回取材時点では国領駅の西側にあったシールド工事用の防音ハウスも全て解体・撤去されました。

国領~布田間の状況(上り列車の前面展望)。シールド工法のため地上で特に作業は行われていない。 布田駅構内の状況。
左:国領~布田間の状況(上り列車の前面展望)。シールド工法のため地上で作業は行われていない。
右:布田駅構内の状況。

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国領~布田間のトンネル建設は全面的にシールド工法を採用しているため、地上では特に作業が行われている様子はありません。なお、2008(平成20)年5月に不発弾撤去が行われたのは左写真のカーブ付近です。(画面左の線路と住宅の境付近。現在は埋め戻されており痕跡は無い。)
布田駅は国領駅と同様2007年に駅舎が地下から橋上に移設されましたが、それ以降地上に大きな変化はありません。しかし、国領駅と同様地下の工事は着々と進められており、現在は線路部分を構成するシールドトンネルとホーム部分を構成する開削トンネルの連結(シールドトンネルの切り開き)や軌道敷設が完了し、ホームの構築などが行われています。

調布駅構内の様子。 相模原線の工事終点付近。奥に見える緑色の陸橋が品川通りの仮設立体交差。
左:調布駅構内の様子。
右:相模原線の工事終点付近。奥に見える緑色の陸橋が品川通りの仮設立体交差。

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調布駅も国領・布田の両駅と同様着工前は地下に駅舎がありましたが、工事の支障となるため2008年に橋上駅舎に移転しました。こちらも地上については前回取材時点と大きな変化はありませんが、地下はトンネルがほぼ完成し、軌道敷設やホームの構築などが行われています。
また、京王線の鶴川街道踏切付近と相模原線の品川通り仮設陸橋付近にそれぞれあるの地上~地下の接続部分も工事は順調に進んでおり、仮受けされた線路の下にはU字形よう壁が完成し、軌道敷設が行われています。

笹塚~つつじヶ丘間の連続立体交差・複々線化も決定

連続立体交差化と複々線化のイメージ。(明大前~桜上水間) 連続立体交差化と複々線化のイメージ。(上北沢~千歳烏山間)
連続立体交差化と複々線化のイメージ。左が明大前~桜上水間、右が上北沢~千歳烏山間。

2009(平成21)年11月、東京都が京王線笹塚~つつじヶ丘間(延長8.0km)の連続立体交差と複々線化について発表しました。この事業は都市高速鉄道10号線(都営新宿線)の延長部分として扱われているもので、区間内にある25箇所の踏切を廃止するとともに線路を複々線化することで限界に達している線路容量を増やし、混雑緩和を図るものとなっています。ここで注目すべき点は現在線の連続立体交差化を高架化で行い、複々線化(線増部分)は高架橋の地下に複線のトンネルを新規に建設することにより行うという点です。これは計画当初と異なり、現在は国の指針で高架化を行う際に沿線の日照確保のため線路の北側に側道を設けなければならないことになっており、複々線分の高架橋を建設すると膨大な用地買収が必要となってしまうため、それを避ける狙いがあるものと考えられます。
計画では線増部分線路は代田橋駅の直下から地下に入り、桜上水駅付近までは複線シールドトンネルで進み、その後は仙川駅付近までは単線シールドトンネルを2段に重ねた構造となる予定です。また、現在発表されている計画図では簡略化されているためか、地下の線路に途中駅が一切描かれておらず、線増部分(急行線)に途中駅が設置されるかは不明となっています。なお、同様の計画は京王線の北側を並行するJR中央線にも存在しますが、中央線は三鷹駅まで複々線化が完了していることから、事業に対するプライオリティは京王線のほうが高く、早期の実現の可能性が高いといえます。
現在は事業開始に向けた環境影響評価(環境アセスメント)が行われており、今年1月には沿線自治体に環境影響調査準備書が送付され、住民向けの説明会などが行われています。事業年数は約14年とされており、鉄道関係で今後の推移が注目される事業の1つとなっています。

▼参考
現在手続き中の主な都市施設(道路、鉄道等) - 東京都都市整備局
京王線連続立体交差化・複々線化 環境影響評価準備書|東京都
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