新木場駅~東雲駅 - りんかい線東臨トンネル(4)

東京臨海高速鉄道りんかい線東臨トンネル ~時代に翻弄されたもうひとつの京葉線~
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新木場駅~東雲駅の構造物

▼参考
臨海副都心線工事誌 - 日本鉄道建設公団東京支社2003年9月 293ページ
臨海副都心線の工事概要 - 建設の機械化1992年12月号3~8ページ
首都圏における新線開業 5、東京臨海高速鉄道臨海副都心線 - 日本鉄道施設協会誌1996年9月号20~31ページ


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りんかい線新木場~東雲(しののめ)間は全線高架橋となっている。この区間は全線が国道357号線・首都高速湾岸線と並行しており、線形は半径850mのカーブと8パーミルの下り勾配が1箇所ずつ入るほかはすべて直線と極めて良好である。りんかい線の構造物に関しては市販の書籍、インターネット上などに様々な情報が存在するが、この高架区間に関して言及しているものはほとんど無く、京葉線との関連性についてはイマイチよくわかっていない。実際はどうなっているのだろうか?

りんかい線工事開始前(1989年)の新木場~東雲間の航空写真
りんかい線工事開始前(1989年)の新木場~東雲間の航空写真
(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データより抜粋

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上の写真はりんかい線着工前、1989(平成元)年の航空写真である。右側が新木場駅方面、左下が東雲駅方面で、中央には国道357号線と首都高速湾岸線が通っている。ここで国道の南側(下)に注目すると、まっさらな高架橋が途切れながら続いているのが確認できる。途切れているのは新木場駅側から曙運河、地下鉄有楽町線、三ツ目通り、辰巳運河とそれぞれ交差する地点である。
一方、りんかい線の着工後に発行された雑誌記事によると、地上区間のうち上記の桁が途切れている部分は新規に工事を行ったことが記されている。つまり、この未施工部分以外の高架橋は京葉線用として建設されたものを流用したものなのである。また、雑誌記事には新規に工事を行った部分の橋梁名が新木場駅側から「曙運河橋梁(B)」、「営団地下鉄線路橋(Bi)」、「第2辰巳架道橋(Bv)」、「辰巳運河橋梁(B)」であることが記されている。
以下、新設された各橋梁について解説する。

1、曙運河橋梁(新木場起点0km402m・L≒100m)
国道357号線から見た曙運河橋梁。左奥のカーブを描く橋梁はJR京葉線夢の島橋梁。 橋脚に埋め込まれている銘板
左:国道357号線から見た曙運河橋梁。左奥のカーブを描く橋梁はJR京葉線夢の島橋梁。
右:橋脚に埋め込まれている銘板

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曙運河橋梁新木場起点0km402m(工事誌による)の地点に設置されている全長約100m橋梁で、3径間(運河中に橋脚が2基存在する)の構成となっている。橋桁は鋼製の箱桁で、架設は既設の高架橋上で桁を組み立て、架設機を使用して規定の位置に桁を移動させるという手法がとられている。両岸の橋脚には橋梁の名称、設計荷重、杭長さなどが書かれた銘板が嵌め込まれているが、着工が昭和59年10月1日、竣工が昭和60年5月31日であることから、この銘板は京葉線用として高架橋が建設された際設置されたものと考えられる。
なお、橋梁上の線路は前後の区間と同じバラスト軌道となっており、列車内からはどこがこの橋梁なのかを知ることは難しい。上り線側には新木場駅の場内信号機が設置されている。



2、営団地下鉄線路橋(新木場起点1km147m・L≒85m)
南側から見た営団地下鉄線路橋の全景 橋脚の梁に書かれている仕様
左:南側から見た営団地下鉄線路橋の全景
右:橋脚の梁に書かれている仕様

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営団地下鉄線路橋新木場起点1km147m(現地の表記による)に設置されている全長約85mの橋梁で、その名の通り東京メトロ(旧営団地下鉄)有楽町線の線路を跨ぐために設置されているものである。有楽町線の線路と言ってもこの付近は既に地下に入っており、正確には「トンネルを跨ぐ橋梁」といえる。橋梁の全長はおよそ85mの2径間で、新木場方3分の1くらいの地点には地下のトンネルを避ける形で幅の広い門形橋脚が建っている。架設はスペースに余裕があったことから、地上で組み上げた桁をクレーンで吊り上げて規定の位置に移動させる手法がとられた。桁は曙運河橋梁と同じ鋼製の箱桁である。銘板にある設計荷重(活過重)K-12、S-16となっており、前出の曙運河橋梁の橋脚にある表記とは異なっている。K荷重は蒸気機関車を前提にした設計荷重であるため、蒸気機関車が消滅して久しい現状を反映してコストダウンを図ったものと思われる。橋梁上は曙運河橋梁と同じくバラスト軌道となっている。

有楽町線のトンネル入口。壁で囲まれており、中の様子は良くわからない。 りんかい線と交差する直前にある換気口と思しき構造物。
左:有楽町線のトンネル入口。壁で囲まれており、中の様子は良くわからない。
右:りんかい線と交差する直前にある換気口と思しき構造物。

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ちなみに、東京メトロ有楽町線はこの橋梁の200mほど手前で地上から地下に入っている。トンネル入口の周囲は2mほどの壁で囲まれているが、これはこの付近の土地が満潮時に海面下となるゼロメートル地帯であるため、洪水や高潮でトンネル内に水が浸入するのを防止するために設置されているものである。トンネルが地下に入った先の地上部は僅かな荒地をはさんで全面的に駐車場として利用されている。地下のトンネルはりんかい線と交差する直前で開削トンネルからシールドトンネルに変化しており、この境界部分には換気口兼資材搬入口らしき構造物が存在する。道路側には開口部があるが、浸水防止のためハンドル付きの鉄扉で封鎖されている。

3、第2辰巳架道橋(新木場起点1km295m・L=54m)
国道357号線から見た第2辰巳架道橋 橋脚に埋め込まれている銘板
左:国道357号線から見た第2辰巳架道橋
右:橋脚に埋め込まれている銘板

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第2辰巳架道橋は営団地下鉄線路橋の80mほど先、新木場起点1km295m(現地の表記による)に設置されている全長54mの橋梁である。橋梁の下には三ツ目通り(ただし、三ツ目通りは橋梁北側の辰巳交差点で終点となっており、南側は港湾道路である)が通っている。桁の構造や架設の方法は前述の営団地下鉄線路橋と同じである。橋脚には京葉線用として建設された当時に設置された銘板と並んでりんかい線建設時に新たに設置された銘板が取り付けられており、表記されている橋梁名は前者が「第2辰巳高架橋、後者が「第2辰巳架道橋となっており若干異なっている。

なお、この橋梁を過ぎるとりんかい線は次の辰巳運河橋梁まで8パーミルの下り勾配となる。

4、辰巳運河橋梁(新木場起点2km783m・L=185m)
国道357号線から見た辰巳運河橋梁。 橋脚の表記。進入防止の金網と架線の高圧電気に関する注意書きが追加されている。
左:国道357号線から見た辰巳運河橋梁。
右:橋脚の表記。進入防止の金網と架線の高圧電気に関する注意書きが追加されている。

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辰巳運河橋梁新木場起点2km783m(現地の表記による)に設置されている橋梁で、全長はこれまでの橋梁では最も長い185m、3径間となっている。架設にあたっては桁を海上輸送して現地に搬入する手法がとられた。これは陸上輸送にした場合、桁の全長が長いため分割して搬入し、現場で溶接組み立てを行う必要があり、品質を確保できない可能性があったためである。しかし、海上輸送においても運河の北側・南側ともに桁下高さの低い道路橋が架かっており、大型クレーンの使用は不可能であった。このため、桁を台船に載せて海面が下がる干潮時に道路橋の下を通過させて現地に搬入した。現地到着後は桁と台船の間に挟んだジャッキ(100トン×4基)により桁を最大で4.5m上昇させ、架設位置まで移動させた後ジャッキを縮めて所定位置に固定した。架設は両岸→中央の順に1線分ずつ行われ、運河の底面までが浅い両岸側の桁の架設の際は運河内に仮設の橋脚を設置して桁を台船から水平移動させて行った。
橋梁の外観は曙運河橋梁とほぼ同一であるが、橋梁全体の高さが低く北側に近接する国道357号線の橋との距離が小さくなったため、橋脚には侵入防止用の金網と架線に高圧電気が流れていることに関する注意書きが設置されている。

橋梁以外の部分はコンクリート製の桁橋となっている
橋梁以外の部分はコンクリート製の桁橋となっている

なお、上記の4つの橋梁以外の高架橋は昭和50年代に京葉線用として建設されたもので、いずれもコンクリート製の桁橋となっている。一般に鉄道の高架橋は柱・梁・床が一体となったラーメン構造が採用されることが多い中で桁橋を採用したのは、地盤沈下の影響を考慮したためであると考えられるが、京葉線用の高架橋を流用した区間に関しては資料がほとんど無く、詳しいことはは不明である。何か情報をお持ちの方がいらっしゃれば是非お寄せいただきたい。

りんかい線前面展望・1/7 新木場→東雲 - YouTube 音量注意!

(つづく)
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