近江鉄道 - 関西旅行2010(23)

彦根駅構内の車両

昨年の関西旅行4日目(8月26日)の記事の続きです。午前中長浜鉄道スクエアを見学した後は北陸線・東海道線で彦根駅まで戻り、そこから近江鉄道に乗車しました。

近江鉄道の概要


近江鉄道は滋賀県の中心にある琵琶湖の東側に路線を持つ民鉄です。路線は東海道線・北陸線が接続する米原駅から草津線・信楽高原鉄道が接続する貴生川駅に至る「近江本線」、近江本線の高宮駅から東側にある多賀大社へ至る「多賀線」、近江本線の八日市駅から分岐して東海道線の近江八幡駅に至る「八日市線」の3路線から構成されており、全長は59.5kmを誇ります。近江鉄道の開業は1898(明治31)年と古く、多賀線の位置を見てもわかるとおり古くは多賀大社への参拝客を運ぶという使命も担っていましたが、現在はもっぱら地域内のローカル輸送をメインに運行されており、(カーブが多いため?)走行時にガチャガチャと音を立てて走ることから地元では「ガチャコン電車」という愛称で親しまれています。また、近江本線の高宮~五箇荘間は東海道新幹線と並行していますが、これは新幹線のほうが後から建設されたもので、近江鉄道の脇に高架橋を建設するにあたり、鈴鹿山脈や伊吹山が車窓から見えくなることから補償金の一部が「眺望料」として国鉄から支払われたという逸話が存在します。

▼参考
近江鉄道グループ
近江鉄道名物の「ガチャコン電車」に乗って琵琶湖へ、鉄道ファン垂涎の「彦根鉄道資料館」に立ち寄る| nikkei BPnet 〈日経BPネット〉(リンク切れ)



近江鉄道の車両

現在の近江鉄道は埼玉県所沢市に本社を持つ西武グループホールディングス(西武鉄道)の系列会社となっており、使用されている車両の一部は西武鉄道から譲渡されたものを改造もしくはその廃車体の部品を利用したものとなっています。また、近江鉄道では新しい車両を導入する際、原則として新造ではなく自社に存在する旧車両の改造扱いとして法律上の手続きを行っており、書類上は昭和初期に車両が現在も走っているという珍しい状態になっています。なお、彦根駅構内にある彦根工場では日常的な車両のメンテナンスのほかに車両の製造や大規模な改造工事も手がけており、後述する西武鉄道の譲渡車両は未改造の状態で引き渡された後この彦根工場で近江鉄道仕様へ改造されています。
以下、今回見ることができた3形式について解説したいと思います。

●220形
彦根駅構内に留置されている220形(左)。右は部品取り用として放置されている旧西武401系。
彦根駅構内に留置されている220形(左)。右は部品取り用として放置されている旧西武401系。

220形は1990年代前半に製造された近江鉄道完全オリジナルの車両です。車体は廃車した200形の台枠(車体の床面に相当する部分)と西武701系のドア・窓・台車などの部品を組み合わせて作られており、車体の長さはいわゆる旧型国電と同じ17mの3ドアで、動力装置は西武701系の発生品である空気ばね台車(FS-40)に近江鉄道の廃車車両から流用した吊りかけ式駆動のモーター(MT-15)・制御器(CS-5)を使用しており、見た目にそぐわない重々しい走行音を聞くことができます。反面、車内は近江鉄道では初めて冷房を装備するなど近代的なシステムとなっており、車両の新造に多くの費用をかけられない地方私鉄ならではの工夫を垣間見ることができます。
この220形は全部で6両あり、主に多賀線や八日市線の区間列車に使用されています。また、一番最初に製造された221は工事用列車の牽引車として使用されています。

▼参考
交友社「鉄道ファン」1991年12月号

●700系「あかね号」
彦根駅に停車中の700系「あかね号」
彦根駅に停車中の700系「あかね号」

700系近江鉄道の創立100周年を記念して1998(平成10)年に西武401系を改造して誕生した車両です。車体の筐体こそ西武401系の流用品ですが、先頭部は鋭角的な流線型に、車内はクロスシートに大きく改造されており、一目見ただけでは東京を走っていた通勤電車とは想像できない見付けとなっています。車内のクロスシートは背もたれが動かして向きを替える転換クロスシートですが、これは同時期に行われたJR東日本185系(特急「踊り子」)のリニューアルで発生した座席を流用したものとなっています。この700系は「あかね号」の愛称を持っており、後述する800系と共通運用で一般の列車に使用されているほか、イベント列車としても活用されています。

▼参考
交友社「鉄道ファン」1998年8月号

●800系
豊郷駅に停車中の800系 連結面の車体切り欠き
左:豊郷駅に停車中の800系
右:連結面の車体切り欠き

※クリックで拡大

800系は700系と同じく西武401系を改造して誕生した車両です。車内はワンマン運転対応の設備が追加された以外は西武401系時代と大きな変化は無く、ロングシートとなっています。一方、先頭形状は西武401系の長方形の窓(国鉄103系低運転台車に近い)を廃し、220形と同じ上半分を全てガラスとしたいわゆる「額縁スタイル」となっています。
なお、近江鉄道の路線には急カーブが散在しており、西武401系の車体寸法のままでは車両限界を侵してしまうため、対策として連結面側の車体すそを斜めにカットする改造が行われています。(700系も同じ)

冒頭の写真の通り彦根駅構内にはこのほかにも様々な車両が留置(放置?)されていますが、現在は運用に就いていないことや資料が乏しいことから今回は詳しい解説は見送ることとしました。彦根駅構内の一部は「鉄道資料館」定期的に一般開放されていますので、機会があれば再度取材を行いたいと考えております。

次回は某コミック・テレビアニメの舞台になったあの場所を訪問します。

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(つづく)
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