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JR東西線の車両 - JR東西線(31)
公開日:2011年10月07日23:50

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JR東西線は全線が地下線であるほかに、前回の記事で述べたとおり特殊な設備がいくつか設置されている。このため、乗り入れる車両もその設備に対応した特定の車種に限定されている。今回は現在JR東西線で使用されている207系・321系と過去に使用されていた223系6000番台について解説する。
207系

JR神戸線を走行中の207系。2010年8月23日須磨駅にて撮影
207系は国鉄分割民営化で発足したJR西日本が最初に設計した通勤電車で1991(平成3)年に第1編成がデビューした。当時多数残存していた101系や103系など国鉄から引き継いだ古い車両の老朽取り換え、そして建設中だった片福連絡線(JR東西線)で使用することを前提にしており、JR西日本では初めて駆動方式にVVVFインバータ制御を採用し、大出力のモーターを使用することにより片福連絡線に散在する30パーミルを超える急勾配の登坂性能と最高速度120km/hの高速性能を両立している。車体は一世代前の205系と同じ軽量ステンレスだが、通勤電車としては初めて幅を2950mmに拡幅し、通勤電車として要求される収容力も確保した。編成は量産先行車を除きすべて4両+3両の構成となっており、2010年に片町線(学研都市線)の京田辺以東の駅ホームが7両編成対応に延長されるまでは切り離して運転を行っていた。
この207系は10年以上にわたり製造が続けられたことから、製造年によりかなり仕様が異なっている。以下に各番台の相違点を簡単に一覧にする。
●0番台
1991年に製造された量産先行車のみ7両固定編成で、それ以外は中間にも運転台が入る4両+3両の形態で製造された。制御方式はパワートランジスタ(PTr)素子を用いたVVVFインバータで、前段にチョッパ制御を組み合わせており、201系のような一定周波数の音に209系のような変調音が重なる独特な走行音を聞くことができる。モーターの出力は155kW。
●1000番台
1994(平成6)年から製造された編成で、当初は2両+6両の8両編成となっていたが、1997(平成9)年のJR東西線開業時に組み替えを行い、全て4両+3両の形態になっている。この過程で一部車両は0番台と編成を組むことになり、該当する編成は全車番号が500が加算されている。制御方式はゲートターンオフサイリスタ(GTO)素子を用いたVVVFインバータで、モーターの出力は200kWにアップされた。
●2000番台
2002(平成14)年に製造された編成で、搭載機器は223系2000番台をベースにしたものに変更されている。制御方式はトランジスタの進化形である絶縁ゲート形バイポーラトランジスタ(IGBT)素子を用いたVVVFインバータで、補助電源の静止形インバータ(SIV)と一体の箱に格納されており、補助電源側インバータの故障時には駆動側のインバータ1群を補助電源用として代用することにより通常通り運転を継続することができる。モーターの出力は220kW。
なお、側面のラインカラーは当初JR西日本のイメージカラーである青色であったが、この207系は2005(平成17)年に発生した福知山線脱線事故の事故車両であり、被害者やその遺族から事故を思い出させるとの指摘があったため現在は全編成とも紺色とオレンジ色の組み合わせに改められている。


左:207系の車内
右:常磐線に投入された207系900番台。2007年9月9日柏駅にて撮影
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車内は各番台ともほぼ共通となっている。内装はアイボリー・白を基調にしており、座席は量産先行車を除き下が空洞の片持ち式となっている。また、乗降ドアの上部にはドア開閉時に鳴動するチャイムとLEDの案内表示器が設置されている。車端部には天井のベンチレータが廃止された代替として大型の開閉窓が設置されており、車両間をつなぐ貫通路は偏って設置される異例の構成となっている。
なお、「207系」という名称の車両は国鉄末期に900番台として常磐緩行線にも導入されているが、こちらは205系をベースとした車体と各車両にメーカーが異なるVVVFインバータを搭載した試作的要素の強い車両であり、本記事で主題としているJR西日本の207系とは事実上別形式であると見て差し支えない。なお、この900番台はE233系2000番台の導入に伴い2010年に全車両廃車となっており現存しない。
▼参考
特集「4扉通勤形電車の軌跡」 - 交友社「鉄道ファン」1998年5月号42ページ
321系

JR神戸線の321系。2010年8月23日須磨駅で撮影
321系は製造開始から10年以上が経過した207系の後継形式として2005(平成17)年から製造が開始された。車体は207系を基本としつつ、曲面を多用した形状となっており、前面は黒色のエリアを拡大し窓も若干拡大された。また、ステンレス部材同士の接合にはレーザー溶接が使用されており、強度の向上と平滑度の高い美しい仕上がりとなっておる。駆動方式は207系と同じくVVVFインバータ制御であるが、1両に2つある台車のうち片方をモーター無しとする「0.5M 0.5T」システムを採用し、車両ごとの構造の統一によるコストダウン、耐故障性の向上、重量の均一化による走行安定性向上などの効果を得ている。これらの機器は現状では207系と同じ120km/hまでの対応であるが、軽微な改造により130km/hに対応できるよう準備がなされている。また、編成内の機器監視を行うモニタ装置は伝送速度が1kbit/sから10Mbit/sに大幅に高速化され、将来の機器増設などの拡張にも十分対応できる構成としている。
車内は207系よりも若干暗めの色遣いとなっており、天井中央には前述のネットワークの高速化を活用した液晶ディスプレイによる案内装置が設置されている。
この321系は当初東海道・山陽線(JR京都・神戸線)系統に導入されていたが、当初からJR東西線系統の運行も視野に入れた設計がなされており、途中からパンタグラフを2基に増設するなどの対応を行い、2008(平成20)年からJR東西線・片町線での運行を開始している。
▼参考
1.西日本旅客鉄道(株)殿 321系通勤電車 - 近畿車輛技報Vol.12(PDF)
223系6000番台(過去に乗り入れていた車両)

JR宝塚線223系6000番台。2011年8月31日大阪駅で撮影
223系は1994(平成6)年の関西国際空港開港に合わせて阪和線に導入された車両で、その後は東海道・山陽線に導入され新快速の130km/h運転を実現している。
223系6000番台は東海道・山陽線の新快速で使用されている2000番台と同一構造であるが、既存の221系と共通運用で両形式同士の連結運転も行うことから走行性能を221系並に固定しているため、番台区分を6000番台として区分している。先頭車の貫通扉と乗務員室扉にはこれを示すため、オレンジ色の二重線が追加されている。この6000番台は網干総合車両所と宮原総合運転所の2箇所に配置されており、後者の配置車両は2008年のおおさか東線放出(はなてん)~久宝寺間が開業するのにあわせて、新設された「直通快速」(関西本線(大和路線)~おおさか東線~片町線(学研都市線)~JR東西線)に充当するため新製されたものである。前者の配置車両はパンタグラフが1基しかなく、JR東西線の走行には対応できないため、直通快速の運行には後者の配置車両のみが用いられた。
2008年から223系6000番台で運行されてきた直通快速であるが、次の記事で解説するJR東西線北新地駅のホームドア(可動式ホーム柵)新設に伴い、3ドアの223系はJR東西線内での運行が不可能となったため、去る2011(平成23)年3月のダイヤ改正でJR東西線系統から撤退した。
▼参考
223系最新事情 - 交友社「鉄道ファン」2008年4月号77~80ページ
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