カテゴリ:建設史から読み解く首都圏の地下鉄道 > 《番外編》JR東西線
北新地駅のホームドア - JR東西線(32)
公開日:2011年10月19日00:10

※クリックすると目次ページを表示します。
2011年3月、JR東西線北新地駅でJR西日本の在来線では初となるホームドア(可動式ホーム柵)の使用が開始された。8月末に大阪に行く用事があり、その際このホームドアについて取材を行うことができた。1年余りにわたって連載を続けてきたJR東西線のレポートは、このホームドアに関する解説で締めくくることとしたい。
▼関連記事
北新地駅(概説) - JR東西線(12)(2011年1月6日作成)
北新地駅(現地写真) - JR東西線(13)(2011年1月14日作成)
設置の背景
北新地駅は大阪・梅田駅の南側にあり、1日あたりの利用者数(乗車人員)は約5万人となっている。駅周辺は大阪で有数の歓楽街となっており、夜間は飲酒後に帰宅するため当駅を利用する客も多く、2008年度からの3年間でホームから転落する事故が15件起きている。
このようなホームからの転落事故防止には可動式ホーム柵などホームドアの設置が極めて有効である。2006(平成18)年に制定された「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー新法)」に関連する省令ではホームドアに関して
移動等円滑化のために必要な旅客施設又は 車両等の構造及び設備に関する基準を定める省令 第24条の6 発着するすべての鉄道車両の旅客用乗降口の位置が一定しており、鉄道車両を自動的に一定の位置に停止させることができるプラットホーム(鋼索鉄道に係るものを除く。)にあっては、ホームドア又は可動式ホームさく(旅客の円滑な流動に支障を及ぼすおそれがある場合にあっては、点状ブロックその他の視覚障害者の転落を防止するための設備)が設けられていること。 |
というように事実上設置を義務化している。しかし、既存の駅ではホームの構造がホームドアの設置に対応したものになっていない場合が多く、設置に多額の費用がかかることや、停車する車種によりドアの位置が異なっており、現存する画一的なホームドアの開口部では対応できないなどの諸問題がある。このため、上記の省令についても既存の駅については努力義務にとどまっており、ホームドアの設置はほとんど進んでいない。
しかし、JR東西線北新地駅は建設が新しく、軽微な改修でホームドアが設置可能なホームの構造(強度・寸法など)となっていたこと、車両に関しても4扉の車両に容易に統一可能であったこと、地下駅のため雨による車輪の空転・滑走に伴う停止位置の誤差がほとんど発生し得ないことなどから元来ホームドアの設置に適した環境が整っていた。また、首都圏では東京メトロ丸ノ内線をはじめとする地下鉄各線やJR山手線など既設路線へのホームドア設置も試みられるようになり、ホームドアを後から追加する際に必要なノウハウも蓄積しつつあることや、視覚障害者の相次ぐ転落事故が報道され、ホームドアのない駅に関して「欄干のない橋」という批判が日増しに高まっているという社会情勢にも後押しされ、2010(平成22)年5月のJR西日本の定例社長会見で北新地駅へのホームドア設置が発表されることとなった。設置に必要な費用は約3億5千万円で、このうち2億円は公費(国と大阪市が1億円ずつ負担)によりまかなわれている。
北新地駅に設置されたホームドアの詳細


左:北新地駅のホームドア。
右:ホームの京橋方1両分は使用しないため柵で封鎖された。
※クリックで拡大
北新地駅のホームドアは2011年3月27日より使用が開始された。設置されたホームドアは高さ130cmの可動式ホーム柵で、ドア部分には利用客が事前にホームと電車の隙間を確認できるよう窓が設けられている。ホームドアは8両分(165m)のホームのうち7両分(140m)に設置されており、配置は4ドアの207・321系に合わせたものとなっている。京橋方の余った1両分のホームはステンレスパイプの柵で仕切られ入れなくなっており、これに合わせて上下列車の停止位置がホームの尼崎方の端に合わせるよう変更されている。このホームドア設置により、2011年3月12日のダイヤ改正で3ドア8両の223系6000番台が直通快速の運用から外れたのは前回の記事で触れたとおりである。


左:目立つよう改修された停止目標
右:運転士側のホームドア開閉ランプ
※クリックで拡大
今回のホームドア設置は試験的な意味合いが強いものであるため、車両側に改造が必要なTASC(定位置停止装置)などの設置は行われておらず、停車やドアの開閉の操作は全て乗務員が手動で行っている。ホームドアを設置したことにより停止位置の許容誤差が非常に小さくなったため、先頭車両の停止目標を電照式にしたり、運転士の目線の高さに相当する壁面に停止目標までの残距離を示すラインを設置してオーバーランを防止している。また、ドアが完全に閉まっていない状態での誤出発を防止するため、運転士側にもホームドアの開閉状況を知らせるランプが設置されている。
写真だけではわかりづらいため、動画も撮影した。
JR東西線北新地駅ホームドア開閉シーン - YouTube 音量注意!
なお、このホームドアは2011年度中に隣の大阪天満宮駅にも設置される予定となっている。その後は利用客の流動への影響などを検証しつつ、地上駅を含む他路線への普及を検討することとしている。ちなみに、JR神戸線の六甲道~灘間に新設が予定されている「まや駅(仮称)」は将来のホームドア追加を見据えた構造で建設されるそうである。
▼参考
バリアフリー - 国土交通省
JR神戸線六甲道~灘間新駅計画 - 日本鉄道施設協会誌2011年3月号
▼関連記事
ホームドア設置目前!東京メトロ丸ノ内線(2006年10月3日作成)
副都心線の特徴・その他 - 地下鉄副都心線全線全駅レポート(14・終)(2008年7月2日作成)
山手線ホームドア導入と課題(2008年7月18日作成)
山手線ホームドア設置工事とE231系改造の現況(2010年4月5日作成)
山手線恵比寿駅ホームドア使用開始(2010年6月26日取材)(2010年9月19日作成)
スポンサード リンク
カテゴリ:《番外編》JR東西線の記事

JR東西線(インデックスページ)
2011/11/02 15:52

北新地駅のホームドア - JR東西線(32)
2011/10/19 00:10

JR東西線の車両 - JR東西線(31)
2011/10/07 23:50

JR東西線その他の特徴 - JR東西線(30)
2011/09/23 18:14

尼崎駅 - JR東西線(29)
2011/09/06 18:57

加島駅~尼崎駅 - JR東西線(28)
2011/08/23 21:58

加島駅 - JR東西線(27)
2011/08/10 21:26

御幣島駅~加島駅(現地写真) - JR東西線(26)
2011/08/05 18:26

御幣島駅~加島駅(概説) - JR東西線(25)
2011/08/04 22:13

御幣島駅(現地写真) - JR東西線(24)
2011/07/27 20:47
<<<新しい記事:みなとみらいの片隅にある廃線跡@携帯
古い記事:野田市のマンホール>>>
最新記事 

相鉄線内の様子 - 相鉄・東急新横浜線開業(1)
2023/09/27 18:55

西武新宿線中井~野方間地下化工事(2023年3月19日取材)
2023/08/27 18:08

葛西臨海公園のひまわり
2023/08/10 12:15

X(旧Twitter)コンテンツ不具合とモバイル投稿カテゴリ復活について
2023/08/02 12:01

まもなくリニューアルされる青梅鉄道公園
2023/07/27 13:15

相鉄線星川駅高架化工事完成(2017年下り線高架化から現在まで)
2023/07/13 18:53

東京都西東京市(旧田無市)のマンホール
2023/06/30 21:20

羽田空港アクセス線建設工事2023②大汐線改修区間の現状
2023/05/31 17:38

羽田空港アクセス線建設工事2023①前史
2023/05/24 18:15

「未来へのレポート」は15周年を迎えます -皆様への感謝と次の目標-
2023/05/17 12:00
月別アーカイブ
全記事タイトル一覧
お知らせ
各記事ページ下部にあるSNSボタンの仕様が古く、一部サービスで不具合を起こしていたため修正しました。(2023.08,12)2021年以前の記事について、記事のレイアウトの一部やURLを最新記事と同様になるよう修正を進めています。古いURLでアクセスされた場合変更後のURLに自動転送されます。(2023,04,19)
過去のお知らせ一覧
公式X(旧Twitter)