東雲駅~国際展示場駅 - りんかい線東臨トンネル(6)

東京臨海高速鉄道りんかい線東臨トンネル ~時代に翻弄されたもうひとつの京葉線~
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未着工だった京葉線台場トンネル新木場側坑口

▼参考
臨海副都心線の工事概要 - 建設の機械化1992年12月号3~8ページ
首都圏における新線開業 5、東京臨海高速鉄道臨海副都心線 - 日本鉄道施設協会誌1996年9月号20~31ページ

東雲駅の途中から下り勾配となったりんかい線は駅を出てもそのまま下り続け、都道304号と交差する直前で地下(東臨トンネル)に入る。前回までに新木場駅から東雲駅にかけての高架橋は運河・道路を跨ぐ一部の橋梁を除いて京葉線用として建設されたものであることを示したが、東雲駅から先の構造物はどうなのだろうか?

結論から先に言ってしまおう。

東雲駅から国際展示場駅の先(有明西運河)までの構造物は、そのほとんどが当初からりんかい線用として新規に建設された構造物であり、京葉線として計画された当時には存在しなかったのである。上記の参考文献2つにそう書いてあると言えば済んでしまう話であるが、ここは当ブログの定番である航空写真でより詳しく検証することとしたい。

東雲~国際展示場間の1989年の航空写真
東雲~国際展示場間の1989年の航空写真 ※クリックで拡大(900*649px/305KB)
(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データより抜粋

上の写真は1989(平成元)年に撮影された現在の東雲駅から国際展示場駅に相当する範囲の航空写真である。現在とは全く違う風景のため色々と当惑させられると思うが、順を追って比較をすると画面下は現在東京ビッグサイトが建っている敷地である。当時はようやく埋め立て後の整地が完了した程度で一面の更地となっており、周辺道路の形状も現在とは異なっていた。現在は首都高速湾岸線と直交する形で合流している10号晴海線などは当然のことながら影も形も無い。また、ビッグサイト予定地右側の岸壁も現在とは大幅に位置が異なっており、現在に至るまでの間にさらに追加で埋め立てが行われ、相当な地形の改変を受けていることがわかる。
そして、肝心のりんかい線の構造物はどうだろうか?右上の国道357号線の下に並行する細い高架橋がそれであるが、東雲駅予定地の左側で晴海通り(都道304号線)と交差した後150mほど進んだところ(「?」とつけた矢印の先)で何と唐突に途切れてしまっているのである。そこから先はどうやら用地だけは確保したようであるが、京葉線の台場トンネルの文献にあったような上下線でずれたトンネル入口は見当たらず、トンネル本体が建設された痕跡は存在しない。つまり、東雲駅の西側にある東臨トンネル入口から先の構造物は新規に建設されたものなのである。

有明第1トンネル 2km820m~3km100m(L=280m)・有明第2トンネル 3km100m~3km402m(L=302m)

▼参考
臨海副都心線の工事概要 - 建設の機械化1992年12月号3~8ページ
首都圏における新線開業 5、東京臨海高速鉄道臨海副都心線 - 日本鉄道施設協会誌1996年9月号20~31ページ

●概説

より大きな地図で 東京臨海高速鉄道りんかい線東臨トンネル を表示

東雲駅の西側から国際展示場駅までの新規に建設されたトンネルは地下鉄では一般的な2径間の開削トンネル(上下線間に中柱が1本ある箱型トンネル)で、トンネル坑口は新木場駅起点2km820mの地点にあり、新木場側約280mが「有明第1トンネル」、国際展示場駅までの残り約300mが「有明第2トンネル」という名称となっている。トンネルと既設の高架橋との擦り付け区間コンクリートの桁橋や盛土高架を併用している。勾配は京葉線時代に連続10パーミルの下り勾配で計画されていた区間に国際展示場駅を追加することになり、駅設置に必要な緩勾配区間※1を確保する必要があったことや、走行する列車が高性能の電車列車中心であることから、前述の高架橋との擦り付け区間から有明第1トンネルの終点までが15パーミル、有明第2トンネルが5パーミルの下り勾配となっている。トンネルの建設は一般的な鋼矢板や鋼管杭などの土留め壁で掘削範囲を仕切り、その内部を掘削するという手法で取られたが、工事終了後は周辺地盤の沈下からトンネルを保護するため地表に近い部分を除いて土留め壁を存置している。
なお、有明第1トンネルはその構造体のほとんどが地表に露出しており、事実上騒音防止のためのシェルターとして機能しているが、これは当初の開発計画で原地盤よりも相当に高く盛土を行う予定となっており、将来的に構造物全体が盛土の中に埋設されるという前提の下建設されたためである。

▼脚注
※1:一般に停車場(駅)構内の勾配は5パーミル以下にすることが規定されている。これに合致しない停車場では車両が自然に動き出すことによる事故を防止するため車両の留置・分割併合を禁止したり、車両のブレーキ性能に特別な制約が設けられる。



●現地写真
晴海通り(都道304号)を跨ぐ東雲架道橋。 下り列車の前面展望。東雲駅の先は半径1000mのカーブとなっている。 東雲架道橋の先はトンネルへ向けて10パーミルの下り勾配となっている。
左:晴海通り(都道304号)を跨ぐ東雲架道橋。
中:下り列車の前面展望。東雲駅の先は半径1000mのカーブとなっている。
右:東雲架道橋の先はトンネルへ向けて10パーミルの下り勾配となっている。

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りんかい線は東雲駅を出た直後に晴海通り(都道304号)※2と交差する。ここに架かる東雲架道橋京葉線用として建設された当時に架設されたもので、他の橋梁とは構造や設計荷重などが異なっている。東雲架道橋を過ぎると、線路は半径1000mのカーブを描いて進路を若干南寄りに変え、10パーミルの勾配で東臨トンネルへ向けて下っていく。高架橋と国道357号西行きとの間の土地はコインパーキングとして利用されており、高架橋の様子を道路上からでも確認することができた。

▼脚注
※2:ただし、新木場~東雲間の第2辰巳架道橋と同様、晴海通り自体は北側の東雲交差点で終点となっており、架道橋下は港湾道路の一部となっている。

京葉線時代の高架橋とりんかい線の新規建設区間の接続部分。高架橋の構造が異なっている。 線路の反対側にはりんかい線の保線基地がある。
左:京葉線時代の高架橋とりんかい線の新規建設区間の接続部分。高架橋の構造が異なっている。
右:線路の反対側にはりんかい線の保線基地がある。

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東雲架道橋から150mほど進むと京葉線用として建設された高架橋と当初からりんかい線用として新規に建設された高架橋の接続部分が現れる。新規に建設された高架橋はコスト削減のため設計荷重が小さく抑えられており、高架橋の幅も縮小されている。接続部分の高架橋は現物合わせて強引に寸法を合わせたような形状となっており、外から見るとかなりの違和感がある。なお、国道と反対側の線路脇にはりんかい線の設備のメンテナンスを行う保線の作業基地があり、敷地内には3階建ての事務所も存在する。

下り列車の前面展望。両側のよう壁がせり上がりそのままトンネルへ突入する。 トンネル坑口手前のよう壁を外から見たところ。
左:下り列車の前面展望。両側のよう壁がせり上がりそのままトンネルへ突入する。
右:トンネル坑口手前のよう壁を外から見たところ。

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新規建設区間に入ると見た目ではわかりづらいが勾配が10パーミルから15パーミルに変化し、トンネルへ向けて高度を下げていく。トンネル坑口の100mほど手前になると線路脇のよう壁が急激に高くなっているが、これは建設当時周囲に盛土を行う計画となっており、その計画地盤に合わせてよう壁を建設したためである。実際には盛土は行われず、壁だけがそびえ立つという不自然な状態となっているが、騒音低減や部外者の侵入を防止する役割も果たしており一概に無駄であるとは言いがたい。

トンネル上部で交差する都道からトンネル坑口を見下ろす。 トンネル坑口上部にある東臨トンネルの扁額。
左:トンネル上部で交差する都道からトンネル坑口を見下ろす。
右:トンネル坑口上部にある東臨トンネルの扁額。


都道304号線(支線)と交差する直前(新木場駅起点2km820m地点)で天井が付き、完全な箱型トンネルとなる。坑口の国道側には不自然な張り出しがあるが、これは排水ポンプのようである。トンネル坑口上部には「東臨隧道」と書かれた扁額(へんがく)が埋め込まれている。揮毫(きごう)したのは1979(昭和54)年から4期にわたり東京都知事を務めた鈴木俊一である。
りんかい線第一期区間の建設が行われていた当時はすでに都市博開催が決定しており、鈴木氏は長年の夢が叶う喜びに浸りながらこの文字を記したに違いない。しかし、開催目前の1995(平成7)年の都知事選で都市博中止を公約に掲げた青島幸男氏が圧倒的得票数で当選を果たし、その夢はもろくも打ち砕かれることとなった。扁額の文字に込められた思いとそれが実現しなかった歴史を思うとなんとも複雑な気分にならざるを得ない。

延々と続く保護盛土。 国道側から見た地表に露出するトンネル躯体。
左:延々と続く保護盛土。
右:国道側から見た地表に露出するトンネル躯体。

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トンネルとなったりんかい線は角乗り橋南交差点の直下を横切り引き続き国際展示場駅へ向けて高度を下げていく。坑口が地盤面と同じ位の高さだったため、完全にトンネルとなった後もトンネル本体が地表に露出する状態が延々と続く。国道に面した北側はトンネルの側壁が露出しており、内部を列車が通過する際は音や振動が感じられる。また、側壁に勝手に杭やボルトを打ち込まれては困るため、金網と東京臨海高速鉄道の管理地であることを示す看板が掲出されてる。一方、南側は国土交通省の東京臨海広域防災公園となっており、トンネル上部もそれに合わせて盛土・緑化がなされているが、やはり勝手に建物を建設されたりしないよう柵で仕切られておりトンネル上部に立ち入ることはできない。

トンネルは防災体験学習施設そなエリア東京の一角の地下を横切る。 都道484号線・新交通ゆりかもめと交差すると国際展示場駅。手前の草地の下をトンネルが通る。
左:トンネルは防災体験学習施設そなエリア東京の一角の地下を横切る。
右:都道484号線・新交通ゆりかもめと交差すると国際展示場駅。手前の草地の下をトンネルが通る。

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東京臨海広域防災公園の敷地内には体験学習施設「そなエリア東京」がある。トンネルはこの施設の手前で完全に地下に入る。この付近が有明第1トンネルと第2トンネルの境界のようである。施設の脇の地下を通過すると上空に新交通ゆりかもめが通る都道484号線と交差し、国際展示場駅に至る。上を交差する都道は地下のトンネルが将来盛土することを前提にした設計になっているためか、構造上特別な配慮はなされていないようで通常の盛土となっている。

りんかい線前面展望・2/7 東雲→国際展示場 - YouTube 音量注意!

(つづく)
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