カテゴリ:建設史から読み解く首都圏の地下鉄道 > 京葉線新東京トンネル
越中島駅(概説) - 京葉線新東京トンネル(8)
公開日:2009年12月28日01:23

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■越中島駅:2km635m08~2km947m08(L=312.00m)
▼参考
京葉線工事誌 704~742・965・966ページ
工期:工事誌に記述なし(隣接工区の工期より1987(昭和62)年~1989(平成元)年前後と推測される。)
●概説
全長622.04mの越中島トンネルを抜けると京葉線は越中島駅に入る。この越中島駅は建設中の仮称が「西越中島駅」となっていたが、駅周辺住民の強い要望により京葉線新東京トンネル坑口付近に以前から存在する「越中島駅」(貨物駅)を「越中島貨物駅」に改称し、当駅の名称を「越中島駅」とすることになった。

越中島駅の位置(赤線が駅本体、緑線が地上出入口、黄線が換気塔を示す。)
(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データ(平成元年)に筆者が加筆
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越中島駅は幅22mの特別区道144号線地下に開削工法で建設された。駅の寸法は全長312m、幅16.97m、地表面からの深さは16.39mの2層構造で、両端15mは隣接するシールドトンネルの発進・到達・回転立坑となることから、幅、高さともに拡大している。また、東京方面に向かって3.0パーミルの下り勾配となっている。最近都内で開業した地下鉄駅の中ではかなり浅い部類に属するが、これは都心部から外れた場所にあり他に交差する路線がなかったためである。(当駅の西側で交差する都営大江戸線は2000(平成12)年開業。ただし、隅田川をくぐる急勾配上にあるため駅は設置されなかった。)
建設に際しては区道の両側が東京商船大学の敷地であり作業スペースがほとんど取れなかったため、やむを得ず交通規制(車道の一部占用)を行い工事を進めることとなった。しかし、この区道144号線は昼間の交通量が最大2千台/hと極めて多いことから、管轄する都や警察から昼間は常時4車線を確保すること(=交通規制はできない)という指示がなされたため、地上を使用する工事はすべて夜間(20時~翌6時)に行っている。また、換気塔や地上出入口に関しても建設時と同様の理由で敷地が十分確保できなかったため、区道ギリギリの場所に必要最小限の大きさで造られている。(Wikipediaによると区道の両側にある東京商船大学から土地の提供が受けられなかったのは駅名に大学名を入れなかったためとされているが、工事誌にはこれに関する記述は特に無かった。)

越中島駅の構造
現在の越中島駅のホームは島式で、幅は8m、長さは20m車10両分の205mで両端には非常階段を設置している。「じゃあ、残りの105mは何に使われているんだ?」とお思いになるかもしれないが、答えは簡単。将来ホームを15両分に延長するための予備スペースとして残してあるのだ。
京葉都心線の建設が行われていたのはバブル景気絶頂期の1980年代末。当時、宅地開発は地価が暴騰する都心部を避け、首都圏外延部へと爆発的な広がりを見せていた。その様子はまさに「拡散」と言うにふさわしく、都心から数十km、場合によっては100kmを超える遠く離れた場所にまで一戸あたり数千万円もするような戸建て住宅が立ち並ぶのも珍しくはなくなっていたのである。(千葉県内におけるその極端な例が「チバリーヒルズ」と呼ばれた外房線土気駅周辺の戸建て住宅群であろう。)このように郊外で宅地開発が進むと、必然的に都心とアクセスする交通手段が求められることになる。しかし、千葉県と東京都心を結ぶメインの鉄道路線であった総武線は京葉線建設開始時点で既にパンク状態であり、新たな通勤客の受け皿となるのは京葉線しかないということになる。(逆にいえば京葉線の旅客線化は総武線の救済が目的であった。)一方で、京葉線の沿線でも宅地開発は急速に進んでおりこれらの通勤客が一気に京葉線へ押し寄せた場合、これまでの総武線における経験から10両編成でも容量オーバーとなるのが明白であった。
京葉線はもともと貨物線として計画されていたことから、地上区間はどの駅も15両編成の列車に対応できる有効長を持っており、多少の改良を加えれば列車の増結は容易である。よって、後からの改修が非常に困難な都心線の地下駅については地上区間に合わせて15両分のスペースを確保しつつ10両分のホームを建設しておくことで、建設費の削減と将来の拡張性を両立させることとなったわけである。ちなみに、当然のことであるが都心線の残る2つの地下駅である八丁堀、東京の両駅についても、ホームを15両分に延長できるスペースを確保している。
(つづく)
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