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国際展示場駅 - りんかい線東臨トンネル(7)
公開日:2011年11月07日19:09

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国際展示場駅 3km510m
▼参考
臨海副都心線の工事概要 - 建設の機械化1992年12月号3~8ページ
首都圏における新線開業 5、東京臨海高速鉄道臨海副都心線 - 日本鉄道施設協会誌1996年9月号20~31ページ
●概説
より大きな地図で 東京臨海高速鉄道りんかい線東臨トンネル を表示
国際展示場(こくさいてんじじょう)駅は新木場駅起点3km510m地点(3km402m~3km610m)に設けられている地下駅である。駅名が示す通り東京国際展示場(東京ビッグサイト)の最寄り駅となっており、駅の北側は新木場駅・東雲駅と同様国道357号・首都高速湾岸線がぴったり並行していることから、駅前ロータリーは南側に設置されている。なお、当駅の東側には新交通ゆりかもめの有明駅があり、駅前ロータリーを共有するなど事実上同一駅として扱われている。駅の開業はゆりかもめの有明駅の方がわずかに早い(1995年11月)。

現在の国際展示場駅付近の1989年の航空写真
(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データより抜粋
前回の記事でも解説したとおり、国際展示場駅前後のトンネルは当初からりんかい線用として新規に建設されたものである。1989(平成元)年の航空写真を見ると当然のことながら現在駅になっている敷地は完全な更地で、地下にトンネルを埋めたような形跡も見られないことが確認できるほか、冒頭の参考文献2誌に記載の図でもこの区間は新規に工事が行われたことが記されている。ちなみに、本記事作成時点でのWikipediaの国際展示場駅のページには
国際展示場駅 - 1 駅構造 当駅部分は旧・日本国有鉄道(国鉄)京葉貨物線のトンネル(駅設置計画なし)として建設され、ほぼ完成していた。しかし、りんかい線転用のためトンネルを一旦解体し、駅部分と前後トンネル部分を新たに建設した。 引用元:国際展示場駅 - Wikipedia |
とあるが、これは誤りであることがわかる。Wikipediaの編集履歴を見ると少なくとも2004年頃からこのような記述になっていたようであるが、市販の書籍でりんかい線の構造物について詳しく書かれているものは極めて少なく、どこから降って湧いた内容なのかは今のところ判明していない。(次の東京テレポート駅と混同しているという可能性もあるが、Wikipediaのページには出典が示されていないため真相は不明である。)

国際展示場駅の断面図 ※クリックで拡大
国際展示場駅の駅施設は地下の線路が地表面下10m前後と浅い場所を通っているため、駅舎・改札口は全て地上1階に配置されており、地下1階が機械室、地下2階(一般への案内上は地下1階と表現されている)がホームとなっている。
地上の駅舎は建設当時はまだ珍しかったテフロン膜を使用した膜屋根構造を採用しており、ドーム状の高い天井による開放感と自然光を豊富に取り入れることによる省エネルギー化を実現している。駅舎の中央にある改札口は東京ビッグサイトでのイベント開催に備えてかなり広い面積を確保しており、自動改札機も10台以上設置している。また、地上の改札口と地下のホームを結ぶ昇降設備も階段2箇所・エレベータ1機に加え、エスカレータを計8機設置するなど1面2線の地下駅としては破格の規模を有しており、東京ビッグサイトでのイベント開催時の利用客急増に対して十分なキャパシティを確保している。
地下2階のホームは島式の1面2線で、長さが10両編成対応の205m、幅は最大で10mとなっており、線路は駅手前の有明第2トンネルから続く形で大崎方へ向かって5パーミルの下り勾配となっている。
●現地写真

駅前ロータリーから見た国際展示場駅の駅舎。2011年10月29日撮影
国際展示場駅の駅舎は中央に高さ17mに及ぶドーム状の膜屋根を用い、周囲の風景から目立たせることで地域のランドマークになるよう意識されている。膜屋根のデザインは「飛翔感」をテーマにしており、屋根を両端に向かって徐々に高くすることでそれを大胆に表している。駅付近の道路は国際展示場駅建設時に全て再整理が行われており、前出の航空写真で駅予定地付近にあった道路は一部を除き現存しない。現在の駅前は中央にタクシープールを持つ大きなロータリーとなっており、東京ビッグサイトへ向かう交通手段の集結点として機能している。2011年現在乗り入れているバス路線は以下の通り。
<国際展示場駅の路線バス>
1番乗り場
虹01系統:浜松町駅(ターミナル)行き
2番乗り場
門19系統:門前仲町駅行き
リムジンバス
羽田空港第1・第2・国際線ターミナル行き
なお、駅舎の西側には隣接してコンビニ
※サンクスは2012年2月18日に一旦閉店し、同年4月3日にローソンとして再オープンした。(2012年4月12日追記)


左:有明コロシアム側から見た国際展示場駅の駅舎。
右:新木場方にある換気塔。2枚とも2011年5月5日撮影
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国際展示場駅の北側は国道357号線に面しているが、国道側は周囲よりも地盤の高さが低いため、ロータリー側では地中に隠れていたトンネルの側壁の一部が露出している。地下駅で必要となる換気塔は駅の両端にあり、大崎方のものは上部に赤いオブジェを載せることで駅舎のデザインの中に取り込むことに成功している。
左側の写真は国道の反対側の有明コロシアム側から撮影したもので、駅舎の左には新交通ゆりかもめの有明駅とがん研究所有明病院が、右には東京ベイ有明ワシントンホテルがそれぞれ見える。


左:駅舎中央にある改札口。
右:改札内。ドーム状の高い天井が特徴。2枚とも2011年5月5日撮影
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駅舎内は中央に十数台の自動改札機が整然と並び、左側に窓口と自動券売機、右側に喫茶店(ドトール)が入る配置となっている。自動改札機の台数に比べ、券売機の台数が極端に少ないが、これは昨今のICカード乗車券(Suica・PASMOなど)の急速な普及を反映したものだろう。改札口を入ると目の前にエレベータシャフトが現れ、その左右にホームへ向かうエスカレータが3機ずつ、その奥に階段とエスカレータ1機が並ぶというレイアウトになっている。階段・エスカレータの周囲はかなりのスペースがあり、東京ビッグサイトでのイベント開催時の利用客集中に対して十分な滞留スペースを確保している。
改札口と改札内のコンコースを覆うテフロン膜の屋根は13%の透過率があり、昼間は基本的に自然光のみで明るさを確保している。夜間は膜屋根の付け根部分に埋め込まれた投光器(250Wメタルハライドランプ(水銀灯の一種))で膜屋根を照らして駅舎内に反射させており、天井の梁部分には照明器具を一切設置しないことでメンテナンスフリー化を図っている。
▼参考
東京臨海副都心線国際展示場駅の照明設備 - 第30回照明学会全国大会講演論文集(リンク先CiNii)


左:地下2階のホームと70-000形電車。
右:ホーム端から新木場方面を見る。坑口が近いため外光が射し込む。2枚とも2011年5月5日撮影
※クリックで拡大
地下2階のホームは下り線側が半径1800m前後でカーブしており、ホームの幅は中央部が最大で両端に向かって若干狭くなるという一般的な構造である。内装は床・壁・天井全てが白を基調にしたものとなっており、特徴点は少ない。ホーム上の柱は全て丸柱となっており、両端の階段からホーム端までの間は中央1本のみ、それ以外の部分は左右に2本となっている。ホーム前後のトンネルは新木場側・大崎側ともにコンクリートの角柱が狭い間隔で並んでおり、ホームの延長は考慮されていないようであった。

●駅データ
駅名:国際展示場(こくさいてんじじょう)
住所:東京都江東区有明2丁目5-25
乗車人員(降車客を含まない):23,267人(2010年、東京臨海高速鉄道ホームページによる)
Web:国際展示場駅|りんかい線
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