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国際展示場駅~東京テレポート駅(概説) - りんかい線東臨トンネル(8)
公開日:2011年11月18日21:22

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有明第3トンネル 3km610m~4km050m(L=440m)
有明第4トンネル 4km050m~4km305m(L=255m)
▼参考
臨海副都心線の工事概要 - 建設の機械化1992年12月号3~8ページ
首都圏における新線開業 5、東京臨海高速鉄道臨海副都心線 - 日本鉄道施設協会誌1996年9月号20~31ページ
●概説
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りんかい線の国際展示場駅から東京テレポート駅までのトンネルは引き続き国道357号線の南側を並走している。この区間は途中交差する有明西運河を境に2つに大別することができ、そのうち国際展示場駅側は東雲~国際展示場間のトンネルと同様、当初からりんかい線用として新規に建設されたものである。この新規建設区間は途中で交差する豊洲・有明埠頭連絡道路を境にさらに工区が2分されており前半が「有明第3トンネル」(新木場起点3km610m~4km050m・L=440m)、後半が「有明第4トンネル」(同4km050m~4km305m・L=255m)という名称になっている。トンネルはどちらも複線の箱型トンネルで、有明第1・2トンネルと同様開削工法で建設されている。勾配は後述する既設トンネルに取り付くため東京テレポート駅方向へ一貫して下りとなっており、国際展示場駅側から5パーミル、15パーミル、8パーミルと細かく変化している。

1989年の有明第3・4トンネル予定地付近の航空写真。豊洲・有明埠頭連絡道路脇のトンネル予定地は整地されておらず水溜りになっていた。また、首都高速11号台場線(レインボーブリッジ)はようやく橋脚が建ち始めたところで、有明JCTは影も形も無い。
(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データより抜粋
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前半の有明第3トンネルは終端で豊洲・有明埠頭連絡道路と交差するが、この道路は東京港フェリーターミナルへ接続する重要なルートであることから臨海副都心の造成当初から片側3車線となっており、その大きな幅員を利用して上下水道、NTT・東京電力洞道などライフラインの埋設スペースとして既に活用されていた。さらに今後の需要増大に備え、新たな共同溝を建設する計画も進められており、りんかい線第一期区間と工事の時期が重なることになった。この新設共同溝は2本の円形トンネルが一体となったDOTシールド※1を用いる大規模なもの(幅15.9m、高さ9.4m)で、りんかい線の有明第3トンネルは既設のNTT・東電洞道とこの新設共同溝シールドトンネルに挟まれた高さ10m弱の隙間に建設することが要求された。在来線のトンネルは壁の厚みなどを考慮すると最低でも7m前後の高さが必要であり、この交差部分では上を通るNTT・東電洞道との離隔はわずか80cm、下を通る新設共同溝シールドとの離隔も2.3mと非常に狭くなっている。工事に当たっては当時はまだ地上の道路の交通量が少なかったことから、関係機関と協議の上道路を通行止めにして全面開削でトンネルを構築することとした。既設の埋設管類については掘削時に設置する横桁で吊り下げる、洞道については別途仮受け桁を作り支えるといった防護措置がとられた。また、新設共同溝シールドとの交差部分はりんかい線トンネル側の土留杭の打込み深さが確保できず、そのままでは土留壁として十分な強度が期待できなかったため、杭先端付近の地盤にJSG工法※2で改良を行った。実際の工事ではりんかい線のトンネルの掘削最中に直下を共同溝のシールドが通過することになった。このため、りんかい線側はトンネル天井付近までの深度で一旦掘削を中断し、共同溝シールドの掘進完了を待ってから本来の深さまで掘削を行うという段取りとなった。


左:有明第3トンネルの交差部分の立体図
右:交差部分の埋設物の防護措置・地盤改良の状況
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一方、有明第4トンネルは有明西運河の直前で臨海副都心の整備に合わせて建設中の有明給水所の脇を通過している。給水所は地下式で掘削深度は地下20mと大きく、りんかい線の有明第4トンネルと給水所側の工事で使用している土留壁の離隔は4mしかなかった。実際の工事はりんかい線側が後追いの形となっており、そのままりんかい線のトンネルを掘削しようとすると給水所側の土留壁にかかる圧力が不均一となり、変形などを生じる恐れがあった。このため、りんかい線の有明第4トンネルと給水所土留壁の間の地盤にJSG工法による地盤改良を行ったほか、りんかい線のトンネル本体の掘削範囲にも部分的に同じ改良を行い、工事途中の地中梁としての機能を持たせながら掘削を行った。
▼脚注
※1 DOT(Double-O-Tube)シールド:2機の泥土圧式シールドマシンが一体になったもの。京葉線京橋トンネルで用いられたMFシールドと原理的には同じだが、泥土圧式であるためカッターディスクを同一平面状に配置できるため、構造簡素化や掘進時のヨーモーメント発生が無く有利である。
※2 JSG工法:地盤にセメント系の硬化剤と圧縮空気を超高圧で吹き込み、回転しながら引き上げることにより掘削と地盤改良を同時に行う。
▼参考
DOT工法 | 工法技術 | 大豊建設
JSG工法 | 深層混合処理工法 | 小野田ケミコ
台場第1トンネル 4km305m~4km525m(L=220m)
有明立坑 4km530m付近
台場第2トンネル 4km530m付近~4km795m付近(L≒265m)
▼参考
臨海副都心線の工事概要 - 建設の機械化1992年12月号3~8ページ
首都圏における新線開業 5、東京臨海高速鉄道臨海副都心線 - 日本鉄道施設協会誌1996年9月号20~31ページ
●概説
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有明西運河から先、13号地内※3のりんかい線のトンネルは昭和50年代に京葉線台場トンネルとして建設されたものを流用している。この区間は有明西運河の直下が陸上で造ったトンネル躯体を埋め込む「ケーソン工法」、それ以外の部分が単線シールドトンネル2本で建設されており、前者は「台場第1トンネル」(新木場起点4km305m~4km525m・L=220m)、後者は「台場第2トンネル」(同4km530m付近~4km795m付近・L≒265m )という名称となっている。また、両トンネルの境界となる有明西運河の右岸には「有明立坑」(同4km530m付近)が設けられている。勾配は東京テレポート駅の先が東京港をくぐる海底トンネルとなっていることから、東京テレポート駅の直前まで一貫して10パーミルの下りとなっている。また、単線シールド区間は上下線の間隔が広がるため、下り線側が緩くカーブしている。

1979年の有明西運河付近の航空写真。現在の台場第1トンネルのケーソンが今まさに運河の中に埋め込まれようとしている。
(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データより抜粋
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京葉線台場トンネルの13号地側は昭和50年代に工事が行われた。1979(昭和54)年の航空写真を見ると有明西運河では現在りんかい線台場第1トンネルとして使われているケーソン本体が今まさに運河の中に埋め込まれようとしていることが確認できる。写っているケーソンのサイズから運河の中のトンネルは全体を4~5個に分割して建設されたものと推測される。また、ケーソンの工事が行われている運河の右岸(写真では左)には同じく工事中の有明立坑の穴が確認できる。シールドトンネル用の立坑としてはずいぶん規模が小さいが、これは到達立坑であるためである。現在りんかい線の台場第2トンネルとして使われているシールドトンネルは東京テレポート駅の先の13号地立坑(後日別記事で解説)から発進したものであり、到達側の有明立坑からはトンネル建設に必要な資材の搬入は行わなかったものと思われる。なお、運河の東側の陸地には工事用の作業基地らしきものが広がっているが、これがトンネル工事のためのものなのか否かは資料が無いため不明である。

1989年の有明西運河の航空写真。下に写っている青海橋は臨海副都心開発に伴い道路のレイアウトが変わったためわずか5年後の1995年に廃止となった。(橋自体は現在も放置されている。)
(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データより抜粋
こちらは10年後の1989(平成元)年の写真である。工事が完了したため運河の中の資材や陸上の作業基地が全て撤去されているのは当然のことであるが、有明立坑は意外にも特にフタなどはされず穴がそのままむき出しになっているように見える。一般にトンネルの立坑の地上に設けられる建物はトンネル本体(土木工事)とは工事が別扱い(建築工事)になることが多く、トンネルが未完成のまま工事が凍結されたこの有明立坑ではフタをする建物が建設されなかったのだろう。
▼脚注
※3 13号地:現在一般に「お台場」といわれているエリアの造成中の名称。住所では江東区青海、港区台場、品川区東八潮に相当する。地区内にある首都高速湾岸線の臨海副都心出入口は2007(平成19)年まで「13号地出入口」の名称を残していた。ちなみに10号地は現在の有明、12号地は現在の新木場に相当する。
(つづく)
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