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京急蒲田駅連続立体交差化工事(2011年10月29日取材)
公開日:2011年12月21日23:35

東京都大田区の京急蒲田駅付近では来年度の完成を目指して連続立体交差事業(線路の高架化)が行われています。当ブログでは2006年よりこの事業についてお伝えしていますが、前回の取材から1年余りが経過したため10月末に再度取材を行ってまいりました。今回も京急蒲田駅を中心に高架化される各駅の状況についてお届けいたします。
■京急蒲田駅高架化工事の概要
京急蒲田駅付近連続立体交差事業は京急本線平和島~六郷土手間4.7kmと京急空港線京急蒲田~大鳥居間1.3kmを高架化するものです。この事業により、京急蒲田駅前の国道15号線(第一京浜)、環状8号線をはじめとする大田区内の京急線の踏切28箇所が廃止され、交通渋滞の解消、安全性の向上、地域の分断の解消など様々な効果がもたらされることが期待されています。また、着工前の京急蒲田駅は本線と空港線の分岐駅でありながら2面3線の極めて狭小な設備となっており、単線の空港線は増発が困難であるという問題を抱えていました。羽田空港では昨年新しいD滑走路や国際線ターミナルの供用が開始され、京急蒲田駅の利用者数も今後増加が見込まれることから京急蒲田駅の高架化にあたっては上り線が2階、下り線が3階にそれぞれホームを持つ二重構造とし、空港線の上下線を完全に分離することとしました。また、ホームを前後に延長することで本線側についても待避線を新設し、優等列車の追い抜きが可能になるなど高架化よりも余裕のあるダイヤ構成が可能となる予定です。
工事は2001(平成13)年から開始され、用地買収を待たずに現在線の真上に高架橋を建設ができる「直接高架工法」を最大限に利用した結果、2010(平成22)年5月に上り線の高架化が完成し、区間内にある踏切の遮断時間が約4割減少しました。現在は下り線の高架化工事が進められており、2012(平成24)年度には完成する予定です。総事業費は約1650億円となっており、国が660億円、東京都が460億円、大田区が200億円、京浜急行電鉄が330億円をそれぞれ負担することとなっています。
■2011年10月29日の状況
ここから先は2011年10月29日に取材した京急本線各駅の工事の状況についてお届けします。
●大森町駅


左:大森町駅の上り(高架)ホーム。2010年の高架化完成時から変化はない。
右:大森町駅の下り(地上)ホーム。ホームが進行方向右に移動した。(2010年10月訪問時と比較)
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大森町駅は地上の旧上り線の軌道の撤去と前回行われていた高架橋橋脚基礎の地中梁の構築が完了し、下り線のホームが進行方向左側から右側に移設されました。これにより、高架化工事に伴う構内踏切の廃止以来別々となっていた上下線の改札口が再度一体化されています。今後、旧下り線ホームの跡地では高架の下り線ホームへ上がる階段などが整備されるものと思われますが、今回訪問時は具体的な構造物の構築は行われておらず、未供用の高架の下り線ホームでも特段の工事は行われていませんでした。

上下線で一体化された大森町駅の改札内コンコース ※クリックで拡大(3枚合成/44.2KB)
●梅屋敷駅


左:梅屋敷駅の上り(高架)ホーム。大森町駅と同様高架化完成時から変化はない。
右:梅屋敷駅の下り(地上)ホーム。旧上りホームは完全に撤去された。(2010年5月訪問時と比較)
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梅屋敷駅も地上の旧上り線のホームの撤去が完了していますが、高架の上り線ホームへ上がる階段などは骨組みの一部が出来上がっているのみで、2010年5月訪問時と比べても大きな変化はありません。高架のホームも下り線のホームを暫定的に拡幅して上り線ホームとして使用している状態で2010年5月時点と大きな変化はありません。
●京急蒲田駅


左:京急蒲田駅の2階ホームに新設された案内カウンター
右:京急蒲田駅の羽田空港方面専用発車案内板
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京急蒲田駅は2010年5月の上り線高架化の時点で3階の下り線ホームの建設も済ませており、前回と比較しても高架橋の構造物自体に大きな変化はありません。この高架の上り線ホーム上には今回駅員が常駐する案内カウンターと羽田空港方面の列車専用の発車案内板が新設されています。
2010年の上り線高架化以降、京急蒲田駅から羽田空港方面に向かう列車は都営浅草線から直通してくる「エアポート快特」が通過となり、品川・横浜両方向から来る「エアポート急行」のみが停車しています。この「エアポート急行」は京急蒲田駅の配線の都合上、品川方面からの列車が地上の1番線、横浜方面からの列車が高架の4番線からそれぞれ発車しており(詳しくは2010年の上り線高架化時の記事を参照)、到着するタイミングによってはホームを移動しての乗換えが必要となっています。2010年の上り線高架化時には駅構内の主要な通路の床面に列車の発着番線を示すペイントが施されましたが、工事中であるが故通路が大変複雑かつわかりにくい構造となっており、利用者の相当な混乱を招いたことは容易に予想できます。今回新設された案内板は直近の羽田空港行き列車がどちらのホームから発車するのかを簡潔に案内しており、案内カウンターとあわせて利用者の混乱を防止する目的があるものと思われます。


左:地上の旧上り線跡では中2階の建設が進行中。(2010年10月訪問時と比較)
右:旧上りホームの一部は現在も改札内通路の一部として使用中
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前2駅と同様、地上の旧上り線ホームは撤去がほぼ完了し、跡地では将来改札口となる中2階床面の建設が引き続き行われており、今回訪問時はそのほとんどが完成していました。この中2階は2010年の上り線高架化時に一部が完成し改札内通路の一部(2階ホームへ上る階段の踊り場)として利用されており、中2階下の一部も2階の上り線ホームと西口改札口・仮設地下改札口を接続する通路として利用されています。


左:旧上り線の線路とポイントが撤去された空港線(2010年10月訪問時と比較)
右:第一京浜には将来駅舎とロータリーを接続する歩道橋が建設された(2010年10月訪問時と比較)
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駅構内の線路の配線は前回訪問時と比べ大きな変化はありませんが、前回残存していた空港線の旧上り線の軌道は今回完全に撤去され、第一京浜(国道15)号の踏切直前にあった両開きポイントの速度制限も撤廃されています。ただし、空港線は京急蒲田駅の入口が半径100m前後で直角にカーブしており、ポイント撤去によるスピードアップはほぼ不可能です。
この空港線の踏切の脇には以前から第一京浜を跨ぐ歩道橋がありますが、これとは別に今回やや南側の京急蒲田駅前交差点付近に第一京浜を跨ぐエレベータ付きの歩道橋が建設されました(今回取材時はまだ未供用)。この歩道橋は今後京急蒲田駅の高架化の付帯事業で第一京浜の東側に整備される駅前ロータリーに接続するものです。駅前ロータリーは空港線の線路と大田区産業プラザPiOの間に整備される計画で、現在その場所は高架化工事の作業スペースとして利用されています。この駅前ロータリーは将来的には今回建設された歩道橋に加え、前述の踏切脇の歩道橋を改築する形で整備される歩行者用デッキで京急蒲田駅中2階の改札口と接続される計画となっており、現在と比べ路線バスなど他の交通機関との結節機能が大幅に強化される予定です。

下り線の取り付け高架の建設が進む京急蒲田駅横浜方。
京急蒲田駅の3階ホームへ向かう取り付け部分は本線の品川方(下り線)と空港線(上り線)が2010年5月の上り線高架化時点で既に完成していたのに対し、本線の横浜方は地上の作業スペースの問題のためか橋脚の一部が構築されたのみにとどまっていました。今回訪問時、この部分では高架橋の建設が進んでおり、3階ホームから降りてくるスロープの形状がわかるようになっていました。
●雑色駅


左:雑色駅の地上にある上り線の改札内コンコース。柵の向こう側が下り線の線路とホーム。
右:雑色駅の上り線(高架)ホーム。2010年の高架化完了時から変化はない。
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雑色駅は2010年5月の上り線高架化時に上下線のホームを連絡していた地下通路が廃止され、以後は上下線で改札口が独立した状態となっています。先の3駅と同様、地上の旧上り線ホームは撤去が完了しており現在は上り線の軌道跡に改札口と上り線ホームの階段を接続する通路が設置されています。下り線ホームについては今回も変化はなく、未供用の高架の下り線ホームでも特に工事は行われていません。
この京急蒲田駅の連続立体交差事業は来年度の下り線高架化完成が予定されており、その後は2014(平成26)年度まで関連街路の整備が行われることになっています。高架橋本体はおおむね形が出来上がったことから、今後は高架橋に並行する側道や駅前ロータリーの整備についても観察していきたいと考えております。
▼参考
[京急蒲田駅付近連続立体交差事業]の進捗に伴い、上り線を高架化します - ニュースリリース【京急電鉄】
京急蒲田駅付近連続立体交差事業と京急線の羽田アクセス改善について - 国土交通省関東地方整備局東京空港整備事務所Webページ(PDF)
大田区ホームページ:交通事業
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