京成押上線連続立体交差事業(2011年11月26日取材)
公開日:2012年01月17日15:47

京成押上線押上~八広間と四ツ木~青砥間では現在線路の高架化工事が進められています。当ブログではこの事業について2009年・2010年に取材を行いましたが、前回の取材から2年近くが経過し、進展が見られましたので昨年11月に再度取材を行いました。今回は高架橋の建設が進む京成曳舟駅付近を中心に現在の状況をお伝えします。
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■京成押上線連続立体交差事業と関連事業の概要
京成押上線はまもなくオープンする東京スカイツリーの足元にある押上駅から京成本線の青砥駅の間の全長5.7kmを結んでいます。京成押上線は、都営浅草線・京急線と直通運転も行っており、去る2010年7月に開業した成田スカイアクセスとともに羽田空港~成田空港間を結ぶ重要幹線にもなっているため、列車の運行密度は平日朝ラッシュ時間帯で最短2分、日中でも最短5分前後と極めてが高くなっています。一方、京成押上線の線路は墨田区側の京成曳舟駅前後と荒川を渡った対岸の葛飾区側の京成立石駅前後で地上を走っており、特に京成曳舟駅北側で交差する明治通り(環状4号線・都道306号線)の踏切による交通渋滞は深刻なものとなっています。このため、東京都・墨田区・葛飾区と京成電鉄では京成押上線の地上区間の高架化を行うこととし、1990年代後半から準備が進められてきました。
このうち墨田区側の事業区間は押上~八広間の1.5km(都市計画決定区間は2.3km)で、高架化後は明治通りをはじめとする8箇所の踏切が解消されるほか、線路の北側には側道が新設される計画となっています。この墨田区側の区間は1998(平成10)年2月に都市計画決定、2000(平成12)年11月には事業認可を取得しており、2008(平成20)年夏より本格的な工事が開始されています。総事業費は約310億円※で、国が43%、東京都が30.1%、墨田区が12.9%、京成電鉄が14%をそれぞれ負担することとなっています。
また、この高架化事業に並行して墨田区では京成曳舟駅周辺と近接する東武伊勢崎線曳舟駅周辺の大規模再開発事業を進めています。東武曳舟駅・京成曳舟駅の周辺は古い木造家屋が密集して建っており、交通の利便性の悪さや防災上の危険性が各方面から指摘されていました。再開発では既存の建物の高層化による集約や道路の拡幅、京成曳舟駅前への交通広場(駅前ロータリー)新設などが計画されています。再開発エリアの総面積は約5.7haで、以下の6つに分割されています。
▼脚注
※:計画当初の額で後述するとおり工期が延長されたため増額する可能性が高い。

京成曳舟駅周辺の再開発のエリア分け
(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データより抜粋
(1)曳舟駅前地区第一種市街地再開発事業
面積:約2.8ha 2001年11月26日都市計画決定
(2)京成曳舟駅前東第一地区第一種市街地再開発事業
面積:約0.4ha 2003年1月31日都市計画決定
(3)京成曳舟駅前東第二南地区第一種市街地再開発事業
面積:約0.5ha 2006年12月7日都市計画決定
(4)京成曳舟駅前東第二北地区
面積:約0.5ha 2006年12月7日都市計画決定
(5)京成曳舟駅前東第三地区第一種市街地再開発事業
面積:約0.7ha 2009年11月27日都市計画決定
(6)京成曳舟駅周辺地区
面積:約0.8ha 2009年11月27日都市計画決定
このうち、(2)は2009年に地上26階建の高層マンションの建設が完了、(1)は2011年に地上20階建の高層マンションと地上7階建の商業施設(イトーヨーカドー曳舟店)が完成し、事業が完了しました。また、(3)は地上22階建の高層マンション・図書館の複合施設が2012年度完成を目指して建設中です。これ以外のエリアも土地管理組合が相次いで設立されており、まもなく事業が本格化する見込みです。
一方、葛飾区側の事業区間は四ツ木~青砥間の2.6km(都市計画決定区間は2.2km)となっており、高架化完了後は11箇所の踏切が解消される予定となっています。この区間は2001(平成13)年1月に都市計画決定、2003(平成15)年2月に事業認可を取得しており、現在は事業に向けた用地買収が続けられています。(2008年度末時点の買収率は65%)また、葛飾区ではこの事業と並行して線路の北側に側道(鉄付3~6号)を新設するほか、四ツ木駅付近では幅16mの「区画街路4号線」の新設、京成立石駅付近では交差する「補助274号線」を幅18mに拡幅することが計画されています。総事業費は約475億円が見込まれていますが、用地買収に時間がかかっているため今後変動する可能性があります。
■2011年11月26日の状況(押上~八広間)


左:下り列車の前面展望。手前のプレートガーター橋の下は東武亀戸線。
右:京成曳舟駅ホームから押上方面を見る。
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2008年に着工した押上~八広間の高架化工事は一般的な高架化工事と同様、現在線に隣接して仮の線路を敷き、開いた土地で高架橋の建設を進めていく「仮線方式」を採用しています。下り線の仮線切替は2009(平成21)年8月29日、上り線の仮線切替は2010(平成22)年8月7日にそれぞれ完了しており、現在は旧上り線の跡地で高架橋の建設が進められています。
押上駅側の新旧接続点は東武亀戸線をオーバークロスする橋梁付近で、ここから先は上り線の南側でブルーのネットで覆われた建設中の高架橋が点々と見られるようになっています。左の写真で線路左側に見えるマンションは墨田区が進めている再開発で建設されたもので、ここから南側は東京スカイツリーまで延々と高層ビル群が続くという異様な光景が広がっています。


左:上下線とも仮設ホームに移行した京成曳舟駅。
右:同じ地点の2010年2月6日の状況。仮上りホームは全くの未完成の状態。
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前回訪問時の京成曳舟駅は下り線の仮線切替が終わり、旧下り線跡地で上り線の仮線の敷設に向けた準備が進められている状態でした。今回訪問時は上り線の仮線切替が終わり、旧上りホームも全面的に撤去されて跡地では高架橋の建設に向けた準備が進められている状況でした。なお、京成曳舟駅の仮設ホームは旧ホームと同じ対向式ホーム2面2線で、改札口はホームの両端にあり、上下線のホームを結ぶ改札内通路が存在しない点も旧ホームと同じ構成となっています。
なお、墨田区が公表している行政資料の図では京成曳舟駅のホームに相当すると思われる線路敷の幅が広い区間が現在よりも押上駅寄りに描かれています。高架化後は道路の交差によるホームの設置位置の制約を受けないことから、京成曳舟駅のホームは現在よりも押上駅寄りに移設される可能性があります。


左:京成曳舟駅北側の明治通りの踏切。
右:同じ地点の2009年5月4日の状況。下り線の脇で仮線の敷設が進行中。
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前回訪問時、この高架化区間にある踏切は下り仮線、旧下り線、上り線の3線と交差する形になっており、着工前と比べ横断距離が伸びていました。今回訪問時は仮線が隣接する形にまとめられ、旧上り線の軌道の撤去も完了したことから、横断距離は従来並みに戻っています。なお、京成曳舟駅北側で交差する明治通りの踏切は特に交通量が多いことから、事故防止のため踏切の遮断と連動した信号機が設置されています。


京成曳舟~八広間の下り列車の前面展望。引き続き高架橋の建設が進む。
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京成曳舟駅の先も引き続き旧上り線の跡地で高架橋の建設が進められており、上下線の線路上には重機が乗り入れられるよう木材が敷き詰められています。八広駅手前の既設高架橋へのアプローチ部分は暫定的に下り線側を拡幅して仮線を設置しており、八広駅との接続部分は急なS字カーブとなっているため75km/hの速度制限があります。使用されなくなった旧上り線の高架橋の一部は新しい高架橋と接続するため大半が取り壊されています。
この京成押上線押上~八広間の高架化工事は当初、2012(平成24)年3月の完成が予定されていました。しかし、様々な事情から今回お伝えしたとおり全体的に工事が遅れており、去る2011年12月に完成が5年延期されることが決まりました。また、四ツ木~青砥間の工事も2013(平成25)年の完成が予定されていましたが、用地買収に時間がかかっていることから完成が延期されることが確定的となっています。ただし、今回確認したところでは用地買収は8~9割程度まで進んでいると思われることから、今後1、2年程度で高架橋建設に必要な仮線敷設に取り掛かれるものと思われます。
21世紀に相応しい都市鉄道に変貌を遂げつつある京成押上線の行方を今後も追ってまいります。
▼参考
京成電鉄押上線(押上駅~八広駅間)連続立体交差事業 - 東京都都市整備局
京成押上線連続立体交差事業|葛飾区
まちづくり・住まい>まちづくりマップ>京島・東向島地域 墨田区公式ウェブサイト
すみだ区報2009年8月11日号 墨田区公式ウェブサイト
すみだ区報2010年7月21日号 墨田区公式ウェブサイト
京成押上線立体交差事業の事業期間が5年間延長へ-議会報告 - 墨田区議会議員 おおこし勝広のホームページ
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