カテゴリ:建設史から読み解く首都圏の地下鉄道 > りんかい線東臨トンネル
品川埠頭~天王洲アイル駅 - りんかい線東臨トンネル(17)
公開日:2012年01月23日18:55

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■天王洲トンネル 7km071m~7km652m(L=581m)
▼参考
臨海副都心線工事誌 - 日本鉄道建設公団東京支社2003年9月 120・121ページ
●概説
より大きな地図で 東京臨海高速鉄道りんかい線東臨トンネル を表示
品川埠頭地下で東臨運輸区(八潮車両基地)の入出庫線と分岐したりんかい線の本線は地上の道路に沿って西へ進む。ここから先、大崎駅までのトンネルは全て当初からりんかい線用として新規に建設された構造物である。この品川埠頭から天王洲アイル駅までのシールドトンネルは「天王洲トンネル」(新木場起点7km071m~7km652m・L=581m)という名称で、トンネルは上下線が別の単線シールドトンネルとなっている。平面線形は品川埠頭の分岐部分を出てわずかな直線区間を経た後、南西にある天王洲アイル駅へ取り付くため半径300mの急カーブで西から南へ90度針路を変える。一方縦断線形は交差する京浜運河の土被り確保や地上の構造物の基礎を避けるため、品川埠頭を出ると25パーミルの下り勾配となり、運河直下で一転して15パーミルの上り勾配に変化するV字型となっている。品川埠頭以西のりんかい線の線路は貨物列車の走行を考慮しない電車専用線の設計であるため、この先もこのような急峻な縦断線形が続くこととになる。
天王洲トンネル近接構造物一覧 画像版
発進部からの位置 | 交差構造物(全て基礎杭) | 交差状況 | 離隔 | |
水平 | 鉛直 | |||
104m | 東海道貨物線 | 側部近接 | 7.1m | 1.5m |
114m | 新幹線回送線 | 側部近接 | 7.1m | 1.5m |
169m | (株)石川組倉庫 | 直下横断 | 0 | 0.9m |
269m | 品川区東品川清掃作業所 | 直下横断 | 0 | 3.9m |
462m | 京浜運河護岸 | 直下横断 | 0 | 1.0m |
509m | 東京モノレール羽田空港線 | 直下横断 | 0 | 1.9m |
544m | 首都高速1号羽田線 | 側部近接 | 1.0m | 1.4m |
天王洲トンネルのシールド掘進は上り線が1999(平成11)年9月、下り線が同年10月にそれぞれ品川埠頭トンネル端の立坑を発進し、2000(平成12)年4月に天王洲アイル駅北側の立坑へ上下線同時に到達した。この天王洲トンネルは全長が600m弱と短い割には数多くの重要構造物と交差しており、中でも京浜運河近傍に建つ株式会社石川組の倉庫の基礎杭は最小で90cmの位置まで接近している。また、掘削深度に分布する東京礫層には高水圧の被圧地下水が含まれていた。このため、シールドマシンには安定性に優れた泥水加圧式シールドを使用し、トンネル壁面を構成するセグメントはコンクリート製を基本としつつ、重要構造物に近接する区間では強度が高いダクタイル鋳鉄製のものを使用している。
●現地写真(地上)


左:品川埠頭トンネル換気塔
右:換気塔の脇から天王洲アイル駅方面を見る。2枚とも2011年7月23日撮影
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天王洲トンネルの発進立坑は前回の記事で解説した品川埠頭トンネルの換気塔前の道路下に設けられた。シールドをできるだけ早い時期に発進させるため、品川埠頭トンネルの建設の際は他の部分と隔壁で仕切り、先行して完成させたことは前回の記事でお伝えした通りである。立坑自体は工事終了後に埋められており、コンテナ置き場の一角にある換気塔以外に関連する地上構造物は存在しない。
立坑を出たシールドトンネルは地上の道路に沿って真西に進み、東海道貨物線(通称:大汐線・休止中)・東海道新幹線大井車両基地回送線と交差する。両線とも道路との交差部分はスパンが長い桁橋となっており、橋脚基礎とシールドトンネルが直接干渉することは無かったようである。高架橋と交差した後はそのまま京浜運河の東側に建つ(株)石川組東京店の倉庫2棟の下を通る。今回取材時は2棟ある倉庫のうち1棟にスポーツ用品メーカーの「PUMA」のチーターの絵が描かれており、同社が貸切で使用していた模様だった。

品川埠頭橋から見た京浜運河。トンネルは中央やや右の倉庫(黄色の↓)から画面左端の白い建物の下を通過する。2011年7月23日撮影 ※クリックで拡大(1200*333px/64.7KB)
石川組倉庫の下を通過すると天王洲トンネルは京浜運河の下をカーブしながら斜めに横断する。運河の対岸は1980年代後半に再開発が行われたエリアで、高層のオフィスビル3棟とホテル1棟からなる「シーフォートスクエア」が建っている。トンネル建設の際はトンネル側が運河の護岸の基礎杭を避けるようなルートを取ったため、護岸にはトンネルの建設に伴う改修の跡は存在しない。また、都心部の河川などと異なり、運河の護岸は水面近くに遊歩道が整備されている区間がほとんど無いため、護岸にトンネル交差を示す表記類があるかについてもわからなかった。京浜運河と交差すると、トンネルは運河の西側にある品川区東品川清掃作業所の下を斜めに横断し、天王洲アイル駅に到達する。
●現地写真(地下)


左:天王洲トンネル入口
右:天王洲トンネル入口直後の直線区間
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次に、毎度おなじみ下り列車の前面展望によるトンネル内の様子の解説である。撮影は前回までと同じ2011年7月であるが、品川埠頭から先の区間は節電期間中も常時照明が点灯されており、前回までのように光源を失ってピンボケが続くということは無くなった。
左の写真は品川埠頭の入出庫線分岐点を通過した直後の地点で、トンネルが四角形の開削トンネルから円形のシールドトンネルに変化していることがわかる。開削トンネルとシールドトンネルの境界は開削トンネル側のほうが幅が狭い(=このままではシールドマシンが入らないように見える)が、これはシールドトンネルの工事終了後に仕切り壁を後付けしたためと思われる。この境界部分には階段や梯子などは見られず、これを見ただけでは地上の換気塔が非常脱出口として使用できるかはよくわからない。右の写真はその先のシールドトンネルに入ったところで、わずかながら直線となっていることがわかる。頭上をよく見ると入出庫線分岐点の上部にある品川変電所に対応して、架線のエアセクション(電力供給区間の境界:光が反射している白と赤の小さな板)があることが確認できる。


左:カーブ区間の始まり。見通しが悪いため、中継信号機がいくつも設置されている。
右:壁面がダクタイルセグメントに変わる。
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わずかな直線区間を過ぎると、トンネルは半径300mの急カーブを描きながら京浜運河の下を横断する。この急カーブのため、天王洲アイル駅のホーム手前にある信号機の見通しが確保できないため、左の写真の通りトンネル内には中継信号機(3つランプが付いた円形の機器)が多数設置されている。そして勾配が下りから上りに変化すると右の写真の通りトンネルの壁面の材質がコンクリートから金属に変化する。この勾配の変曲点は谷底であるため、必然的にトンネル内に湧出する地下水が溜まることになるが、建設が新しいことからトンネル自体の防水は厳重になされており、床面付近に細いパイプを置いて天王洲アイル駅へ向けて排水するだけで済んでいるようである。(なお、右側の壁面に見える太いパイプはトンネル内での火災時に地上から消火用水を送水するためのものである。)


左:天王洲アイル駅のホームが見えてくるとカーブ半径が800mになる。
右:天王洲アイル駅との接続部分。
※クリックで拡大
天王洲アイル駅に近づくとカーブ半径が300mから800mへ大きくなり、勾配も15パーミルの上りから8パーミルの下りへと変化する。そしてまもなく天王洲アイル駅に到着する。こちらは到達立坑であるため、駅側の方がトンネルの幅が狭くなっている。
りんかい線前面展望・4/7 東京テレポート→天王洲アイル - YouTube 音量注意!
(つづく)
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