当サイトの画像の無断転載の確認とその対応
公開日:2012年01月25日18:48
私、takuya870625が運営するサイト※1では2007年4月よりクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを導入し、適切な権利保護と利用促進を両立できる著作権管理を行ってまいりました。しかしこの度、大変残念なことにこのライセンスで規定された範囲を逸脱する方法で、私のサイトの内容が転載・盗用されている事例を多数発見いたしました。今回はこのような事例を発見するに至った経緯と対応について述べながら、当サイトの内容の利用方法について再確認することと致します。▼脚注
※1:このブログに加え、はてなフォトライフ、Yahoo!ブログで私が開設しているページ。(左メニューにある「takuya870625's site」を参照。
■無断転載が発覚したきっかけ

Google画像検索のドラッグアンドドロップ検索機能
去る2011年6月よりGoogleの画像検索に新たな機能が追加されました。ここで追加されたのはGoogle ChromeまたはFirefox3.0以降のブラウザでGoogle画像検索を利用する場合、検索フォームにマウスで画像を直接ドラッグアンドドロップして検索できるという機能です。(InternetExplorerの場合、画像のパス・URLを入力して検索が出来ます。)この機能は自身のコンピュータ上にある画像のみならず、Webページ上にある画像でも機能します。
この画像検索の機能は意外なほど優秀で、元の画像を拡大・縮小したのみならず、明るさ・コントラストを調整したものでもほぼ正確に探知し、検索結果として表示します。この機能がリリースされた際、私は自身のサイトにクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを適用していることもあり、どの程度利用されているのか調査したくなり、はてなフォトライフやブログ上からランダムに画像を選んで検索機能をテストすることとしました。
その結果に私は驚愕しました。

検索結果の例。ご覧の通り企業による無断転載にも俊敏に反応し検索結果に表示する。
(注:ここでは報復措置のリスクを避けるため、会社名・URLにボカシを入れている。)
上記の画面キャプチャをご覧頂いてもわかるとおり、検索結果には私のサイトの画像が相当数転載されていることが示されていました。当サイトは「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス『表示-非営利-継承』」(以下、CC-BY-NC-SA)の規定を採用しており、転載はこれらの条件に沿ったものであると期待していました。しかし、実際に検索結果に示されたページを確認したところ、この規定に添う形で利用されているのはわずか1件で、それ以外のページでは画像に私のサイトが出所である旨を示したものは一切なく、明らかな著作権侵害でした。
個人のページについてはある程度ラフな扱いをしていることもあり、自浄効果を期待して見逃すつもりでいたのですが、さらに調査を進めると企業のWebサイトでも同様の行為が行われていることが少なくないことが発覚しました。企業のページはそもそもほとんど営利目的であり、CC-BY-NC-SAには合致せず※2、私に許可を取ることなく利用することは出来ませんが、過去5年間私は1社からも使用申請は頂いたことはありません。これらの転載画像の中には画像に埋め込まれているEXIF情報※3がそのままとなっており、「当社はあなたのサイトから画像をパクリました」と暗に示しているものも見受けられ、企業のWeb担当者の知的財産権に関する知識・能力が決定的に欠如していることを一目で見破ることが出来る例も存在します。「ネット上にある文章や画像に著作権がある」という基本中の基本が全くわかっていないのです。
コンプライアンス(法令順守)が叫ばれているこのご時世で、平然と企業のWebページでこのような違法行為が行われていることには大変な驚きと果てしない失望を覚えました。現在のところ確認できている件数は個人・企業を合わせると40件はゆうに超えます。このような事情から、このままでは当サイトの内容が無制限に転載利用可能(著作権フリーの素材)であると誤解されかねないため、これらの無断転載・盗用行為についてサイト管理者に対応を要請することにしました。
なお、本記事では非営利目的の転載の場合を「無断転載」、営利目的の転載の場合を「盗用」と表現します。これは営利目的の無断転載の場合、無断転載して得られた金銭が一切私に還元されないため、窃盗に準ずる経済的な被害が発生していると考えられるためです。
▼脚注
※2:CCで言う「非営利」の定義については様々な論争があるが、上記の通り無断転載した画像で商業活動(金銭を得る)をしている以上、私はこれを「営利目的である」と判断した。
※3 EXIF情報:JPEG・TIFF形式の画像に埋め込まれており、写真を撮影する際使用したカメラの機種、シャッター速度、感度などが記録されている。
■無断転載への対応事例
無断転載・盗用の対応要請に当たっては元来規定しているCC-BY-NC-SAの大義名分の下、これに極力近い使用条件となるよう以下の様に要請内容を変えることにしました。
●非営利目的(ノンアフィリエイトの個人のブログなど)の場合
転載した画像の脇にCC-BY-NC-SAであることを示すか、撮影者が「takuya870625」であることを明記するもしくは当サイトへのリンクを明記すること。
●営利目的(企業のWebサイトなど)の場合
盗用した画像を一旦削除し、必要であれば再度私に使用申請を行い許可を得ること。
前者は個人のブログがほとんどで、無断転載される画像のジャンルも多岐にわたっています。これらのページは連絡先が無く、やむを得ず運営会社に対応を依頼したものを除きほぼ100%作者本人の手により私のクレジット追加などの対応をしていただいています。厳密に言えばCC-BY-NC-SAであることを表示して頂くのが望ましいのですが、主たる目的が使用状況の把握ということもあり、これ以上の対応を求めるつもりはありません。
一方、後者は主に不動産業者による駅・公共施設の画像の盗用がメインです。中には事業拠点の目の前に駅があるにもかかわらずわざわざ私のブログの画像を盗用するなどの例もあり、相当に手を抜いてサイト制作を行っていることがうかがわれました。営利目的での利用はそもそも認めていないため、これらの盗用については削除することを原則として要求していますが、こちら側が強い態度で削除を要請しないと無視するという場面もあり苦慮しました。以下はその例です。(なお、訴訟など報復措置のリスクを避けるため、企業名や日時は架空のものとしています。)
A社(不動産業者)
●7月20日
画像の無断転載を発見。直ちに問い合わせフォームより無断転載であることを指摘し、削除を要請。問い合わせフォームは500文字までしか入力できず、要求について十分書けなかった。
●7月27日
1週間経っても返答・及び削除などの対応が無いため、掲載ページを管理する支社のメールアドレスに直接要求内容を送信。メールには無断転載画像の掲載ページと転載元と思われる私のサイトのページのURLを併記した。
●7月3日
さらに無視されたため、前述の支社に加え、本社のメールアドレスに「5日以内に一切対応が講じられない場合、無断転載が行われている旨を私のブログで公表する」と明記し送信。翌日には該当画像はグレー1色の画像に差し替えられたが、結局メールに対する返信・謝罪などは一切無かった。
B社(不動産業者)
●11月9日
画像の無断転載を発見。直ちにメールで無断転載であることを指摘。前回と同じくメールには無断転載画像の掲載ページと転載元と思われる私のサイトのページのURLを併記した。
●11月16日
1週間経っても無視されたため、私のサイトに掲載している画像と企業側が自社のページに掲載している画像(編集あり)を比較したPDF文書を添付して再度メールを送信。翌日には該当画像が別のものに差し替えられたが、やはり返信・謝罪は一切無かった。
どちらの場合も比較的規模が大きい企業であったことから、該当画像を削除することは業務上不利となるだけでなく、企業側が個人対企業の立場を利用して逃げ切ろうとした可能性も考えられます。(簡単に言えば個人のことを馬鹿にしているということ。)
こういった場合、無断転載であることを具体的に証明することが必要であると考えれられます。また、現代のネット社会では最近の「ステルスマーケティング騒動」に代表されるとおり、ネット上での評判がそのまま業績に結び付くことから、わざと信頼を落すような行為をほのめかし、譲歩を引き出すというのも方法の1つとなりうるようです。ただし、たった1枚の画像の無断転載を根拠に相手側の企業を目の敵のごとく叩き潰そうとする行為は、逆に名誉毀損で訴えられるリスクもあり十分慎重にならなければなりません。
■著作権侵害の蔓延に関する考察
今回のような企業による著作権侵害は実のところ当サイトに限ったことではなく、以下のように様々な場所で蔓延しているようです。
▼参考
淡水プランクトンのページ - ご利用に当たって - 無断転載
四畳半の住人 - 盗用サイト検証
無断転載パクリブログ事件のまとめ | Webクリエイターボックス
このように一般の企業で著作権侵害が蔓延してしまっている理由を私は以下のように考えました。
1、知的財産権に関する教育の欠如
小・中・高校など学校教育で著作権に関する教育が活発化したのは、個人でも簡単にインターネットで情報を発信できるようになり、著作権侵害が問題となったここ10年位の間です。
▼参考
著作権教育の実践事例 - 社団法人著作権情報センター
現在企業の最前線で活躍している30~40代の人たちはこのような教育が開始される以前に学校を卒業してしまっており、弁護士など法律の専門家は別として著作権を含む知的財産権に関する知識が十分身についていない状態で社会に出ていることが予想されます。一度社会に出てしまうと知的財産権に関する知識を習得するには自発的にその手の講習会に参加したり、資格(知的財産管理技能士、弁理士など)を取るなどの活動をしない限り、正しい理解を深めることは困難です。このような「無知」が「ネットの文章や画像は自由に使ってよい」という間違った考え方を広め、今回のような事態を招いているものと考えられます。
2、画像検索の存在

左がYahoo!の画像検索、右がGoogleの画像検索
Yahoo!JAPANやGoogleなどの検索エンジンには画像検索機能がありますが、これらの検索の中には画像の掲載元ページへのリンクが非常に小さく記載されているものがあり、間接的に利用者の著作権に対する意識を希薄化させている可能性があります。左はYahoo!の画像検索で、表示されるのは掲載元ページと同じサイズの画像で、掲載元ページへのリンクは下部に小さく記載されているのみであり、掲載元に一切アクセスすることなく画像のダウンロードが可能です。一方、右のGoogleの画像検索の場合、表示される画像は縮小されたものであり、画像を選択したのと同時に背景全体に掲載元ページ(リンクにもなっている)が表示され、著作権に関する注意を促す記述もあるなど、Yahoo!と比べれば適切な表示方法といえます。今回無断転載を発見するきっかけとなった画像検索ですが、皮肉にも無断転載を助長している可能性もあるのです。
3、「まとめサイト」の出現
最近の新しい傾向としてネット上にある文章や画像を収集して共有する「まとめ」系のサイトの出現があります。まとめサイト自体は以前から「ネット上から拾った画像集」や2ちゃんねるの内容を転載したブログ(いわゆるコピペブログ)などが存在しましたが、最近出現したものはTwitterの発言をまとめる「Togetter」やネット全体を対象とした「NAVERまとめ」などその範囲を大幅に拡大したものが多くなっています。これらのサイトは「キュレーション」といい、事実上他者の著作物を転載したもので成り立っているため、著作権法上定義されている「引用」や「編集著作物」となりうるか疑問が呈されているほか、転載した内容を利用して広告収入を得ていることに対する強い批判があります。また、このようなサイトは無断転載とみなされるのを回避するため、通常は転載元へのリンクが添えられていますが、前述の画像検索と同様その文字が見づらいなどの事例もあり、著作権に対する意識を希薄化させる一因となっている可能性があります。
▼参考
ASCII.jp:NAVERまとめへの広告配信停止から見えて来るもの
4、企業における知的財産のスペシャリストの不在
産業財産権(特許・商標・意匠・実用新案)が他社との競争上重要となる製造業では、国の政策的な後押しもあり近年知的財産管理の専門部署を置く例が増えています。こういった企業では自社の知財管理はもちろん、他社の権利侵害に対しても敏感となっているため、自社のホームページで他のWebサイトから無断転載した内容を掲載するということは起こりにくいものと考えられます。一方、サービス業の場合メーカーが生産したものを売るだけの存在であるため、知財専属の担当者がいないなど自他共に知財管理が疎かになりやすいと考えられます。今回、不動産業者を中心に当サイトの画像の無断転載が多発した背景には、このような企業の知財管理のいい加減さがあるといえるでしょう。
■今後の対応について
今回の事件は当サイト側の著作権に関する案内が不十分であったことも一因であると考えられることから、以下の通り各サイトの表記を改善することとしました。
●当ブログ
1ページにまとめていた注意事項のページを「全般」「著作権」「筆者の連絡先」「プライバシーポリシー」の4つに分割し、より詳しい記述となるよう改めた。また、著作権のページについては具体的な事例も示した。(なお、注意事項のページ体裁の変更は広告掲載に際しても必要になったものである。)
●はてなフォトライフ
タイトルに「画像素材サイトではありません」の文言を追加。ただし、連絡先などの文字はシステム上追加できないのでそのままである。
なお、Yahoo!ブログに残しているページは近日中に閉鎖・削除を予定しているため特に変更は行っていません。
今後は引き続き明確な著作権侵害である企業の無断転載を中心に対応を行う予定です。3回以上警告しても削除に応じないなど極めて悪質であると判断される場合はこのブログ上で企業名を公表します。また、被害の状況によっては使用料の徴収なども検討します。
また、上記のようなページ体裁面での対応に加え、著作権保護に関する解説ページの作成等、著作権侵害防止の啓発も考えております。
日ごろ、当サイトをご利用いただいている善良な読者の皆様にとっては、まさに「釈迦の耳に説法」といえる感情ばかりのお見苦しい記事となり申し訳ありませんでしたが、流石に黙認するのも限界といえる状況となったことから、今回報告をさせていただきました。引き続き、当サイトの内容の権利保護と利用促進にご協力をお願いします。
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カテゴリ:ネット論の記事

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