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中央線連続立体交差事業(2012年1月28日取材)
公開日:2012年02月08日20:27

中央線三鷹~立川間では連続立体交差事業(高架化工事)が行われています。線路の高架化自体は2010年11月に完了していますが、区間内にある各駅では駅施設の仕上げなどの残工事が続いています。今回は2面4線化工事が行われている武蔵小金井駅と2面3線化工事が行われている国立駅の状況についてお伝えします。
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中央線連続立体交差事業(2011年1月15日取材)(2011年8月11日作成)
■中央線連続立体交差事業の概要とこれまで
中央線連続立体交差事業はJR中央線三鷹~国分寺間(6.2km)・西国分寺~立川間(2.8km)と西武多摩川線武蔵境駅(0.8km)を高架化し、18箇所の踏切を解消・9箇所の都市計画道路を立体交差化するものです。JR中央線は朝ラッシュ時の運転間隔が日本一短い1分50秒となっており、「開かずの踏切」による交通渋滞が深刻な問題となっていました。この区間の高架化に向けた準備は1980(昭和55)年に開始され、30年の時を経て2010(平成22)年11月に全区間の高架化が完成しました。高架化された各駅には高架下を通る自由通路が整備され、線路による街の分断が解消されたほか、ホームへ上がる階段にはエスカレータ・エレベータが併設され、駅施設のバリアフリー化が実現しています。

仮線と高架化のイメージ
高架化工事は現在線の北側に工事用の仮線を新設し、そこに線路を移動させて開いたスペースに高架橋を建設するという方法が取られています。第1回目の仮線切替の際には事前に作成されていた信号機器の結線図が間違っていたため、予定時間で工事が終わらず14時頃まで列車が運休する異常事態が発生しました。その後も横断距離が伸びた踏切で渡りきれない人が続出するなど多数の問題が噴出し、マスコミ報道の格好の餌食になるという場面もありましたが、以降は施工管理の徹底や仮設歩道橋の追加などもあり、目だったトラブルはなく高架化が完了しています。


高架化工事に伴い解体された武蔵小金井駅と国立駅の旧駅舎。関東では2・3番目に古い駅舎だった。
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工事終了後の仮線跡地では側道の整備が進められています。さらに、武蔵小金井駅南口では大規模再開発「アクウェル武蔵小金井」(武蔵小金井駅南口第1地区再開発事業)が行われており、こちらは2009(平成21)年3月に街開きが行われました。
なお、高架化と側道新設は道路整備の一環として東京都が主体となり事業が進められています。総事業費は約1710億円で、国(自動車重量税・ガソリン税を財源にした国庫補助)・東京都・沿線6市が約1430億円、JR東日本が約280億円を負担しています。
<中央線連続立体交差事業の歴史>
1980年 事業に向けた調査を開始
1994年5月 都市計画決定
1995年11月 事業認可取得
1999年3月 着工
2007年7月 三鷹~国分寺間下り線を高架化
2009年1月 西国分寺~立川間下り線を高架化
2009年12月 三鷹~国分寺間上り線を高架化
2010年11月 西国分寺~立川間上り線を高架化(全区間の高架化完了)


高架化前後の配線図(上が着工前、下が完成後。)
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高架化に合わせて、区間内の各駅では現在の列車ダイヤに最適化するよう構内配線の変更が行われています。
●武蔵境駅
上下線間にあった西武多摩川線の車両引渡し用の中線を隣の東小金井駅に移設し、対向式ホーム2面2線のみとする。
●東小金井駅
武蔵境駅から移設した中線を加えた対向式ホーム1面1線+島式ホーム1面2線とし、中線で乗降と通過待避の両方を可能にした。
●武蔵小金井駅(後述)
対向式ホーム1面1線+島式ホーム1面2線から島式ホーム2面4線とし、上下線とも通過待避を可能にした。駅の西方にある留置線(旧武蔵小金井電車区)の通路線は4線全てに接続する模様。
●国立駅(後述)
向式ホーム1面1線+島式ホーム1面2線の構成は変わらないが、待避線と上り本線の位置を入れ替え、中央の線路は上下兼用の中線とした。中線は駅東方にある武蔵野線新小平駅方面へ向かう短絡線(国立支線)にも接続する模様。駅西方で接続していた鉄道総合技術研究所へ向かう引込み線は高架化工事の途中で廃止されたため設置されない。
■2012年1月28日の状況
●武蔵小金井駅

武蔵小金井駅の現在と完成時の配線図
武蔵小金井駅は最終的に上下線で島式ホームを1面ずつ持つ2面4線の配線となる計画ですが、用地幅の関係で一番北側の4番線(上り本線)は地上の線路を撤去し終わらないと建設できません。このため、2009年(平成21)12月の上り線高架化完了から現在までは3番線(上り副本線)を暫定的に本線として使用しています。


左:軌道敷設まで完了した武蔵小金井駅の4番線(上り本線)
右:ホーム中ほどには第3場内信号機も設置済み
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前回訪問時(2011年1月)は地上の線路の撤去が完了し、4番線の高架橋の橋脚建設が進められていました。今回訪問時はその高架橋が全て完成し、4番線は軌道敷設、ホーム床面の建設、線路側の壁面・屋根の構築まで完了していました。ホーム中ほどには点灯していない第3場内信号機も設置されており、残る工事はホーム床面の仕上げと架線の敷設程度となっています。


左:ホーム端から東京方面を見る。
右:ホーム端から高尾方面を見る。こちら側は現在と比べて大幅に配線が変わることが確認できる。
(2010年4月3日の同じ場所の状況)
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武蔵小金井駅前後の上り線は高架橋の建設に時間がかかることから、本線に準じた構造で3番線に接続する上り本線が敷設されています。このため、4番線の使用開始に際してはこの部分で大規模な線路の切替工事が必要となります。
今回訪問時は使用中の本線に掛からない線路の大半が敷設されており、東京方は駅の外れにある上り本線の取り付け部分を3番線側から4番線側に入れ替え、2・3番線に接続する両渡り分岐器(ポイント)の一部を交換する程度で済む状態になっています。一方、高尾方は駅の西方にある留置線の通路線があるため、4番線への切替時に使用する分岐器の一部が敷設できていません。作りかけとなっている4番線の線路には下り線と同じく両渡り分岐器が設置されていることから、4番線の使用開始時には現在ある3番線の分岐器の大半を撤去して、通路線から3番線・4番線双方に出入り可能は配線に改められる模様です。


駅の外から見た武蔵小金井駅。4番線の高架橋完成に伴い、北側の壁面も完成した。
(前回訪問時の状況(1)・前回訪問時の状況(2))
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4番線の高架橋の完成に伴い、未完成だった駅北側の屋根や壁面も全て完成しました。屋根・壁面の構造は既に完成している南口とほぼ同様で、アーチを描く骨組みや透明なガラスを多用した現代的なデザインとなっています。高架下の駅舎入口と駅前のバスターミナルの間には地上線時代に仮設ホームを設置していた大きな空間が残っており、今後は狭隘なバスターミナルの拡張スペースに充てられるものと思われます。
●国立駅

国立駅の現在と完成時の配線図
※武蔵野線接続部分は正確な配線ではない。
国立駅は最終的に対向式ホーム1面1線+島式ホーム1面2線の配線となり、外側(1・3番線)が上下本線、内側(2番線)が上下兼用の中線となる計画です。また、国立駅の東側では上下線の間から武蔵野線新小平駅へ向かう国立支線が分岐しており、中線はこの線路に直接進出入できる配線となる模様です。武蔵小金井駅と同様、この国立駅も用地幅の関係で上り本線の高架橋が建設できず、2010年11月の上り線高架化時には中線を暫定的に上り本線として使用しています。

国立駅の上り線ホーム(2番線)。以前と比べ、わずかながら幅が広がっている。
前回訪問時の国立駅は上り線の高架切替直後だったこともあり、上り線ホーム3番線側は全くの未完成であり、階段も東京方の1箇所しか出来上がっていないなど暫定供用的な要素が多いものとなっていました。今回訪問時は3番線の高架橋の床面が大方完成しており、2・3番線を仕切る工事用の仮設柵も3番線側に移動し、ホームの幅がわずかながら広がるなど着々と工事が進められていることが確認できました。


左:ホーム端から東京方面を見る。左の地上線跡では3番線(上り本線)の高架橋建設が進む。
右:ホーム端から高尾方面を見る。やはり隣で3番線の高架橋建設が進む。
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国立駅の上り線は武蔵小金井駅とは異なり、駅前後の線路が完成時の形で敷設されています。東京方は完成時に2番線(中線)から国立支線に向かう線路(分岐の直進側)があるため、それを上り本線として利用しています。一方、高尾方は直進する本線から分岐する中線の線路を本線としたため、全列車が分岐器の分岐側を通過する配線となっています。このため、上り列車は国立駅の停車・通過に関わらず駅進入時に60km/hの速度制限が掛かります。
今回訪問時は前回地上の旧上り線の撤去が行われていた場所で3番線(上り本線)の高架橋の建設が進んでおり、床面のほとんどが完成していました。今後は防音壁の設置や軌道敷設などが行われるものと思われます。
なお、前回訪問時は機能が停止されていた東京方の2番線用の場内信号機と2番線高尾方の出発信号機は今回点灯しており、使用可能な状態となっていました。


左:上り線ホーム中央にある仮設階段の入口。
右:階段を下りると北口へ向かう通路に出る。左へ分岐すると高架下のコンコース・南口へ通じる。
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高架橋の建設の進展に伴い、上り線ホームでは高尾方の階段の使用が開始されました。この階段は本来の幅よりも狭い暫定供用となっており、その容量不足を補うためホーム中央に仮設の階段が追加されています。この仮設の階段は北口改札へ向かう通路へ接続しています。この通路は地上ホーム時代から改札内コンコースとして使用されていた地下通路の一部で、途中に高架下のコンコースに接続する通路が新たに分岐しています。


左:高架下のコンコース。北口へ向かう通路は2番線(上りホーム)の階段脇に移設された。
右:地上ホーム時代から使われている通路の一部は2番線へ向かう仮設通路に転用されている。
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高架下のコンコースは前回訪問時と大きな変化はありませんが、前述の通り北口改札へ向かう通路の接続位置が変わり、前回訪問時に北口改札へ向かう通路として使用されていた地上ホーム時代の地下通路は2番線の高尾方にある階段の専用通路となっています。地下通路の途中には地上ホームや北口改札へつながっていた跡が残されています。
今回確認できた工事中の箇所のうち、武蔵小金井駅についてはかなり進んでいることから、順調に行けば夏頃までには使用が開始できるものと思われます。武蔵小金井駅の4番線完成後は上下線で同時に通過待避が可能となり、現在よりも余裕のあるダイヤ構成が可能になるものと思われます。また、高架化完成により、国立駅周辺では踏切による渋滞が解消され、自動車の移動時間が平均で3割減少し、消防車・救急車の現場への到着時間も短くなったことが報告されています。現在はJR東日本・沿線自治体の間で高架下の空間の利用方法について検討が行われており、今後更なる街の快適性・安全性向上が期待されます。
▼参考
JR中央線(三鷹駅~立川駅間)の高架化による効果|東京都
JR中央本線(三鷹~立川間)他連続立体交差事業の概要 - 小金井市
鉄道連続立体交差 |武蔵野市
JR中央本線(三鷹駅から立川駅間)ほか連続立体交差事業|国分寺市
国立駅周辺まちづくり|国立市公式ホームページ
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中央線連続立体交差化事業(2009年7月11日取材)(2009年11月16日作成)
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