天王洲アイル駅~品川シーサイド駅 - りんかい線東臨トンネル(20)

東京臨海高速鉄道りんかい線東臨トンネル ~時代に翻弄されたもうひとつの京葉線~
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■東品川トンネル 7km872m~8km856m(L=984m)
▼参考
臨海副都心線工事誌 - 日本鉄道建設公団東京支社2003年9月 156~163ページ
超近接併設シールド施工によるセグメントへの影響について - 土と基礎2002年7月号(リンク先CiNii)

●概説

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天王洲アイル駅を出たりんかい線は、隣の品川シーサイド駅まで天王洲通り(特別区道31号)の下を進む。このトンネルには「東品川トンネル」(新木場起点7km872m~8km856m・L=984m)という名称が与えられており、全て上下線が別となった単線シールドトンネルとなっている。。平面線形は天王洲アイル駅直後に半径1800m、品川シーサイド駅直前に半径1000mの緩いカーブがあり、縦断線形は天王洲アイル駅構内からの続きで8パーミルの下り勾配でスタートし、東品川橋(天王洲南運河)の少し先で18.1パーミルの上りこう配に変化、そして品川消防署東品川出張所(新木場起点8km500m付近)から先が14.1パーミルの下り勾配となっている。
東品川トンネルの掘削に用いられたシールドマシンは泥水加圧式で、掘進は品川シーサイド駅側から開始された。上り線は2000(平成12)年8月、下り線は同年10月にそれぞれ発進し、上り線は翌2001(平成13)年4月、下り線は同年5月に天王洲アイル駅に到達している。(下り線は上り線に150m遅れて掘進。)途中、品川消防署東品川出張所付近ではトンネルの上部に東京電力の送電線を収めた洞道があり、天王洲アイル駅直前では東品川橋(天王洲南運河)と交差する。

東電洞道の鋼矢板撤去のイメージ
東電洞道の鋼矢板撤去のイメージ

1つ目の東電洞道(東電第2洞道第3特殊人孔)は数方向に分岐する立坑状の構造物で、工事に先立つ事前調査でその下部にある支持杭兼用の鋼矢板が東品川トンネルの断面と重複することがわかり、撤去する必要が生じた。鋼矢板は埋め立て地の軟弱地盤における支持杭の役割を担っていることから、ただ撤去するだけでは洞道全体が変形する恐れがあるため、撤去前に地上から洞道の下に地盤改良を行い、鋼矢板に代わる支持体を形成した。その後、洞道脇に仮設の立坑を掘削し、そこから直径1.8mの鋼管を推進工法で地盤に挿入し、シールドトンネルに重複する鋼矢板を切断・撤去した。撤去のために挿入した鋼管の数は11本、撤去した鋼矢板の重量は25トンに上った。撤去完了後は鋼管を抜き取り、流動化土で埋め戻して工事は完了した。

東品川橋直下の超近接施工
東品川橋直下の超近接施工
(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データ(1989年)より抜粋


2つ目の東品川橋天王洲通りと天王洲南運河の交差地点に架かる道路橋で、東品川トンネルはこの運河の河床の下約20mの深さを通過する。東品川橋は運河中に2つの橋脚があり、その基礎杭の先端はシールド天井から約3.0mと比較的近接している。また、運河の管理者より河川占用幅を最小限にするよう求められた結果、上下線のシールド外面同士の間隔は最も狭いところ(東品川橋A1橋台直下)でわずか60cmとなり、一般的なシールドトンネルでは見られない超近接掘進を行うこととなった。このように近接したシールドトンネルにおいて起こる現象は京葉都心線の西八丁堀トンネルの説明で触れたとおり、後追いするトンネルの掘進により先に出来上がっているトンネルの横方向の圧力が減少し、トンネルが横長に潰れてしまうというものである。これらの特殊な条件への対応策として、東品川橋直下のシールドトンネルには強度が高いダクタイル鋳鉄製のセグメントを用いることとした。実際のトンネルの挙動は後追いのシールド掘進に伴い、最初に反対側へ押されるように変形し、その後シールドの通過完了に伴い近接側に引っ張られ、若干横方向の変形が残るという結果となった。
なお、東品川橋直下の掘進に当たっては橋台・橋脚の沈下を抑えるため、掘削面に与える泥水圧を出来るだけ高くする必要があったが、あまり高くした場合河床を突き破って泥水が噴出(噴発)する可能性があった。このため橋に差し掛かる250m手前で試験的に泥水圧を上げ、地表の隆起量を計測することで噴発の有無を推定することとした。この結果、橋直下では泥水圧を上げても問題ない判断され、限界一杯の0.29MPaに設定して掘進が行われた。

●現地写真(地上)



架け替え工事中の東品川橋(天王洲アイル側) 架け替え工事中の東品川橋(品川シーサイド側)
左:架け替え工事中の東品川橋(天王洲アイル側)
右:架け替え工事中の東品川橋(品川シーサイド側)

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天王洲アイル駅を出た直後にある東品川橋は1967(昭和42)年の建設から40年が経過し老朽化が進んだため、2010(平成22)年12月より4年間の工期で架け替え工事を行っている。架け替えに伴い、天王洲アイル側のA1橋台は拡幅、品川シーサイド側のA2橋台と運河中にあるP1・P2橋脚は全面改築される計画となっており、昨年夏の訪問時は旧橋台・橋脚の解体作業が進められていた。工事に伴い、車道は旧橋の西側、歩道は東側にそれぞれ迂回路が設置されており、迂回路が無い西側の歩道は橋の部分が通行止めとなっている。

▼参考
東品川橋(天王洲通り)を通行の際は、仮橋をご利用下さい|品川区

東品川ポンプ所付近から品川シーサイド駅方面を見る
東品川ポンプ所付近から品川シーサイド駅方面を見る

東品川橋の取り付け勾配がなくなると、天王洲通りは再び平坦な道路に戻る。この付近は依然は純然たる工業地帯であったが、最近は工場が撤退するのと入れ替わりに大型のマンションが次々と建設されており、東京都心の中でも風景の変化が激しい地域の1つである。

品川消防署東品川出張所前のT字路。左には京浜運河を跨ぐアーチ橋が見える。
品川消防署東品川出張所前のT字路。左には京浜運河を跨ぐアーチ橋が見える。

天王洲通りを南下すると、左手に品川消防署東品川出張所が見えてくる。東電の洞道はこの消防署の前にあるT字路の地下にあり、りんかい線のトンネル建設に先立ち、地中に残存している鋼矢板の撤去が行われたが、地上にはその痕跡は見られない。
なお、消防署の脇には京浜運河を跨ぐ人が通行不可能なアーチ橋が架かっている。橋を囲んでいる柵には特に表記類は見当たらないため何の橋なのかは不明であるが、対岸には東京電力大井火力発電所があることを勘案すると、本記事で触れている洞道と発電所を接続する送電線を収容しているものであると考えられる。(大井火力発電所から出る送電線は全て地下に敷設されている。京浜運河対岸で行われている首都高速中央環状品川線のトンネル断面図にもアーチ橋と対応する位置に洞道が描かれており、信憑性は高い。)

大井北埠頭橋が見えてくるとまもなく品川シーサイド駅。陸橋の向こうに品川シーサイドフォレストの高層ビルが見える。 大井北埠頭橋を真下から見上げる。
左:大井北埠頭橋が見えてくるとまもなく品川シーサイド駅。陸橋の向こうに品川シーサイドフォレストの高層ビルが見える。
右:大井北埠頭橋を真下から見上げる。

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品川シーサイド駅の手前では京浜運河を越えて大井埠頭へ通じる大井北埠頭橋の陸橋と交差する。陸橋の橋脚は天王洲通りの車道・歩道とは距離があることから、りんかい線のトンネル建設時には特に防護などは行われていない模様である。この陸橋を過ぎると西側には品川シーサイドフォレストの高層ビルが立ち並ぶ。品川シーサイド駅はこの高層ビル群の東端の地下に設けられている。

●現地写真(地下)
天王洲アイル駅の端から見た東品川トンネル上り線。東品川橋直下のためダクタイルセグメントである。 走行中の下り列車から勾配の変曲点を見る。遠方に見える明かりは品川シーサイド駅。 品川シーサイド駅の端から見た東品川トンネル上り線。
左:天王洲アイル駅の端から見た東品川トンネル上り線。東品川橋直下のためダクタイルセグメントである。
中:走行中の下り列車から勾配の変曲点を見る。遠方に見える明かりは品川シーサイド駅。
右:品川シーサイド駅の端から見た東品川トンネル上り線。

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東品川トンネルは天王洲アイル駅側から勾配が下り→上り→下りと変化しているため、双方の駅を見通すことは出来ない。左の写真は天王洲アイル駅のホーム端から上り線の大崎方面を見たところで、真上に東品川橋があるためダクタイルセグメントを使っていることが確認できる。駅に接する部分は壁面が場所打ちコンクリートになっているが、これは掘進が終わったシールドマシンの部品を除去した後、残ったスキンプレート(マシンの外筒)の内面にコンクリートを巻いたためである。中央の写真は下り列車から勾配の変曲点を見たところで、18パーミルの上り勾配から14パーミルの下り勾配に変化しているため、数字で見るよりもより勾配の変化を確認しやすい。右の写真は品川シーサイド駅のホーム端から上り線の新木場方面を見たところで、発進立坑であるため駅が終わった直後からコンクリートのセグメントが始まっていることが確認できる。

▼脚注
※:従ってシールドマシンのスキンプレートは地中に埋没していることになる。このような廃棄方法はごく一般的に行われている。

りんかい線前面展望・5/7 天王洲アイル→品川シーサイド - YouTube 音量注意!
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