SL内房100周年記念号(後編)追跡!
公開日:2012年02月15日23:19

2月10~12日に運行された蒸気機関車C61 20が牽引の臨時列車「SL内房100周年記念号」のレポートの続きです。2回目の今回は2月4日(土)の試運転と10日(金)・11日(土・祝)の本運転で撮影した写真を合わせて往路の「DL内房100周年記念号」と復路の「SL内房100周年記念号」の追跡レポートをお届けしたいと思います。列車の運行に関する背景や列車編成については前回の記事をご覧ください。
▼関連記事
SL内房100周年記念号(前編)列車の概要(2012年2月13日作成)
■運行ダイヤ
今回の「内房100周年記念号」は2009(平成21)年と同様、内房線の木更津駅と京葉線の千葉みなと駅の間を往復運転するもので、往路・復路とも途中の姉ヶ崎駅に停車しました。また、両列車とも機関車けん引の客車列車であるため、高架の京葉線と接続する蘇我駅では一般列車が使用している3・4番線ではなく、高架の取り付け勾配が緩い駅西側の貨物列車用の線路を通っており、ここでも運転停車を行いました。運行ダイヤは以下の通りです。
DL内房100周年記念号(9120列車)
木更津 9:59発
↓
姉ヶ崎 10:30着 10:59発
↓
千葉みなと 11:51着
SL内房100周年記念号(9121列車)
千葉みなと 12:57発
↓
姉ヶ崎 13:46着 15:05発
↓
木更津 15:32着
■DL内房100周年記念号

DL内房100周年記念号。2012年2月11日、長浦~袖ヶ浦間にて
※クリックで拡大(1024*768px/145KB)
往路の「DL内房100周年記念号」、復路の「SL内房100周年記念号」ともに駅間の走行写真は2009年までと同じ内房線の長浦~袖ヶ浦間で撮影しました。この場所は平坦で力行運転をしないため蒸気機関車の煙はほとんど出ないのですが、最寄りの袖ヶ浦駅からは1km近く離れており人が少ないことや、周囲はほとんどが畑で影になる物がほとんど無いため過去3回ともこの場所で撮影を行っています。なお、今回はどういうわけか線路脇のススキが枯れた後も倒れずに視界を遮っていたため、2009年まで撮影していた地点よりも若干千葉寄りに移動することとしました。
往路のDL内房100周年記念号はディーゼル機関車(宇都宮運転所のDE10形1752号機)けん引で、蒸気機関車(C61形20号機)は最後尾に連結された状態で引っ張られるという運行方法が取られました。運行時刻は前回(2009年)よりも45分ほど遅くなっていますが、ディーゼル機関車けん引ということで沿線で見物しているのは近隣の住民がほとんどで、通過30分前に着いても撮影場所選びには特に苦労することは無かったようです。しかし、2009年までの運転時に多発した線路内に立ち入っての撮影者対策のため、線路脇の各所には警備員・警察官が配備されており、普段とは違うということを実感することが出来ました。




千葉みなと駅へ向けて静々と走り去るDL内房100周年記念号。2012年2月11日、長浦~袖ヶ浦間にて
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走行中の汽笛の使用は沿線への騒音を考慮してなのか極力控えられており、列車の接近は付近にある踏切の警報音が頼りとなりました。踏切が閉じてから数分※1経つと少数の見物人が見守る中を静々と列車が通過していきます。
▼脚注
※踏切の遮断時間は最速の列車を基準に決められており、今回のDL内房100周年記念号は60km/h程度の低速で走行していたことから、遮断完了から通過までかなりの時間があった。
■千葉みなと駅の様子


左:千葉みなと駅到着後すぐにDE10のヘッドマークは取り外された。
右:C61側は大混雑。本運転初日は出発式が行われた。千葉みなと駅構内の写真は全て2012年2月10日撮影
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千葉みなと駅は折り返しが可能な2番線(中線)に入線しました。到着するとDL内房100周年記念号をけん引したDE10形には係員が乗り込み、ヘッドマークの取り外しを行いました。こちら側はヘッドマークを撮影する人がちらほら見られる程度で特に撮影に苦労するということはない状況でした。
一方、C61が停まっているホームの蘇我寄りは前回の運転時と同様身動きがとれないくらいの大混雑で、3番線ホームの端には転落防止用のロープを張る係員が並んでいました。なお、本運転初日の2月10日(金)のSL内房100周年記念号は千葉みなと駅で出発式、姉ヶ崎駅で歓迎式、木更津駅で到着式がそれぞれ開催されました。千葉みなと駅の出発式はC61が停車するホーム蘇我寄りで行われ、熊谷俊人・千葉市長、椿浩・JR東日本千葉支社長などが出席しました。

C61 20の側面。(4枚合成)
※クリックで拡大(1713*400px/126KB)
C61形20号機は2011年の復活整備の際、現在の運転方法や安全基準に合わせるための各種改造が施されています。
機関車本体はボイラー外観に大きな変更はありませんが、内部の煙管・蒸気管は腐食が発生していたことからすべて交換されています。また、先輪・従輪は一体圧延車輪に変更され、平軸受となっている動輪には温度を計測するためのセンサーが埋め込まれており、計測データは客車側のパソコンで常時監視されています。また、出力アップのため重油併燃装置が追加されており、炭水車の後ろ半分には重油を積み込むためのタンクが新設されています。さらに、保安装置として運転席にはデジタル列車無線とATS-P/Psが追加されており、古風な外見とは対照的に高い安全性を確保しています。ATS-Pの車上子は先頭の雪かきの背後、ATS-Psの車上子は炭水車中央、列車無線アンテナは炭水車の後部の低い位置に設置されており、正面から見る限りではいずれもほとんど目立たないよう配慮されています。炭水車とボイラーの間にあった自動給炭機(メカニカルストーカ)は運転条件が緩いため不要であることや、腐食が激しく使用不可能であったことから撤去されており、運転席下には大きな空洞がありますが、同様に外からはあまり目立ちません。
なお、このC61 20と旧型客車はともに蒸気暖房(SG)の使用が可能となっており、今回の運転時に初めて使用されています。このため、客車の床下からは時折蒸気や水滴が放出されているのが確認できました。


左:停車中のC61 20を後部から見る。
右:C61 20運転席わきのナンバープレート・表記類
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今回のSL内房100周年記念号での使用に際してC61側に大きな改造は加えられていませんが、過去の千葉県におけるSL運行時と同様運転席脇の所属区所表記板は「千」(千葉機関区)に差し替えられ、隣には行路表が書き込まれた板が差し込まれました。



列車のヘッドマーク・行き先板など。 ※クリックで拡大
列車の前頭に掲げられていたヘッドマークは背景が「DL」が紺色、「SL」が赤色になっている他は共通のデザインとなっています。ヘッドマークの上には狸の顔が描かれていますが、これは木更津駅の近くにある證誠寺(しょうじょうじ)の狸伝説にちなんだものです。この狸伝説は童謡「証城寺の狸囃子(たぬきばやし)」にもなっており、木更津駅の発車メロディーにも採用されています。客車側面の行き先表示は、2009年までとは異なり旧型客車であるため電照式の方向幕が設置されておらず、板をフックで引っ掛ける方式となっていることから、これに合わせた行き先板が制作され全車に設置されました。


左:駅構内のグッズ販売
右:5駅で発売された記念入場券(硬券)。中身は→こちら ※クリックで拡大
本運転が行われた3日間は列車が停車する各駅の改札内コンコースで各種鉄道グッズの販売が行われました。また、千葉みなと・蘇我・五井・姉ヶ崎・木更津の5駅ではSL運行を記念した硬券入場券が発売されました。硬券入場券は千葉みなと・蘇我・姉ヶ崎・木更津の4駅分が2枚ずつの8枚セットで、価格は額面通りの1100円、1日あたりの販売数量は千葉みなと駅が1000セット、蘇我駅と五井駅が500セット、姉ヶ崎駅が2000セット、木更津駅が2120セットの計6120セット(3日間計18360セット)で、SLの形式名「C61 20」にちなんだものとなっていました。
駅構内の空いている柱・壁面にはこの記念入場券のほか、SL運行をPRするポスターが貼れるだけ貼り出されており、2009年と同様JR千葉支社の意気込みが感じられました。



ホーム下の柱に掲示されていたポスター各種
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■SL内房100周年記念号
千葉市の市街地をバックに黒煙を上げながら走り出したSL内房100周年記念号。
2012年2月4日(試運転日)、千葉ポートタワー展望室より ※クリックで拡大(600*800px/101KB)
こうして多くの人に見守られながら12:57分、C61 20けん引の「SL内房100周年記念号」は千葉市の市街地の中を黒煙を上げながら発車しました。本運転初日は前述のとおり千葉みなと駅で出発式が行われており、発車と同時に駅近くにある千葉ポートパークで数発の花火が打ち上げられ、SLの出発を祝いました。大都市の中に突如として姿を現した蒸気機関車の姿に人々の視線は釘付けです。


左:蘇我で切り離されたDE10は先に木更津へ帰還
右:(おまけ)内房線209系2100番台。2枚とも2012年2月11日、長浦~袖ヶ浦間にて
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千葉みなと駅は連結・切り離し作業ができないため、DL内房100周年記念号をけん引したDE10は蘇我駅まで最後尾に連結された状態で走行し、蘇我駅での運転停車中に切り離しを行いました。切り離されたDE10は本列車の後を追うようにに蘇我駅を発車し、本列車が姉ヶ崎駅で1時間停車している間に追い越して先に木更津駅に帰還しました。DE10が通過するのと時を同じくして線路脇には多数の見物人が出てきます。

SL内房100周年記念号。通過直前に日差しが回復した。
※クリックで拡大(1024*768px/157KB)
DE10と数本の普通列車を見送った後、汽笛とともにいよいよSL内房100周年記念号が姿をあらわしました。撮影した2月11日は午後になると若干曇り空となり、時折日差しが無くなる場面もありましたが、列車の通過直前になって日差しが回復し、ご覧のとおり過去3回の運転時と同じような走行シーンを撮影できました。往路とは異なり、通過中は沿線で手を振る見物人に応えるように繰り返し汽笛を鳴らしていました。
■木更津駅到着後


木更津駅到着後はC61を切り離す。木更津駅構内は全て2012年2月11日撮影
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今回は長浦~袖ヶ浦間でSL内房100周年記念号を撮影した後木更津駅に向かいました。木更津駅に到着後の列車は整備のためC61が先に切り離され、併設されている車両基地(幕張車両センター木更津派出)構内を往復して駅の南方にある転車台付近まで移動しました。転車台に到着後は石炭や水の補給などを受け、翌日の運転に備えました。


左:駅構内を移動するC61 20。
右:駅南方の転車台に到着後は石炭の補給などを受ける。右のトラックに積まれているのが石炭。
※クリックで拡大
以上が今回のDL・SL内房100周年記念号の追跡レポートとなります。最後に、動画もあわせて撮影しましたのでご覧ください。
DL/SL内房100周年記念号(詰め合わせ) - YouTube 音量注意!
今回のSL運行により、JR東日本が動態保存している蒸気機関車全てが千葉県内を走行したことになります。3年ぶりとなった今回のSL運行。次回はいつ、どの車両が姿を現すのでしょうか?楽しみに待ちたいところです。
▼参考
蒸気機関車C6120復元への道 - JR東日本高崎支社
NHKスペシャル|復活 ~山田洋次・SLを撮る~
この春SL内房100周年記念号が房総を走ります! - JR東日本千葉支社(PDF)
「SL内房100周年記念号」運転を記念してイベントを行います! - JR東日本千葉支社(PDF)
C61 20 - 交友社「鉄道ファン」2011年7月号
国鉄・JR博物館: リニア・鉄道館保存車全ガイド(白川淳・著) - マガジンハウス
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●2012年の運行(今回)
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