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品川シーサイド駅(概説) - りんかい線東臨トンネル(21)
公開日:2012年02月17日22:47

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■品川シーサイド駅 8km970m
▼参考
臨海副都心線工事誌 - 日本鉄道建設公団東京支社2003年9月 18・174~188・352・353ページ
●概説
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天王洲アイル駅から天王洲通りを南下してきたりんかい線は、大井北埠頭橋を過ぎると天王洲通りから少しずつ逸れて西側にある品川シーサイドフォレストの敷地内に入る。この地点にあるのが品川シーサイド駅である。後述する通りインターネットサービス企業楽天の本社前にあることから、「楽天タワー前」の副名称が与えられている。駅の中心は新木場駅起点8km970m地点にあり、トンネルは地下3層構造で、全長は220m(新木場起点8km856m~9km076m)、幅は19m、軌道深さは約30mである。駅の両端は隣接するシールドトンネルの発進立坑となっており、この部分のみ柱が中央1本のみの配置となっている。また、駅の新木場側の上部には品川シーサイドフォレスト地下にある駐車場の連絡路が、大崎側の上部には品川区が設置している700台収容の地下駐輪場がそれぞれ設置されており、地下1階の天井と地面の間の距離(土被り)は12mと比較的大きくなっている。なお、当駅の工事中の仮称は「東品川駅」であった。

品川シーサイド駅の断面図
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3層あるトンネルは隣の天王洲アイル駅と同じく地下1階が改札口コンコース、地下2階が機械室、地下3階がホームという構成になっている。改札口とホームの間は階段2か所、エスカレータ2か所(いずれも上下併設)、エレベータ1か所でそれぞれ連絡しており、新木場側の階段は地下2階の踊り場が若干長くなっている点も同じである。地下3階のホームは10両編成対応で長さは205m、幅は8mとなっており、大崎方面へ向かって5パーミルの下りこう配となっている。地上出入口は駅の両端に2か所設置あり、新木場側のA出入口は階段に加え、地上まで上下のエスカレータを設置している。大崎側のB出入口は同じく階段とエスカレータを併設しているが、スペースの都合でエスカレータは途中から上りのみの設置となっている。エレベータはこれらの出入口とは完全に独立した駅の中央に設置されている。また、これとは別に品川シーサイドフォレスト地下1階に直結する通路(C出入口)が設置されており、当駅の利用者の多くを占める品川シーサイドフォレストの勤務者のほとんどが利用することから、階段に加え上下のエスカレータを設置し、朝夕の通勤時の混雑に備えている。換気塔は駅の中央付近と大崎側の駅端に設置されており、大崎側の物は道路を挟んだ反対側に排気・給気が独立した5個の換気塔が並ぶ独特な構造となっている。
駅本体は開削工法で建設されたが、地下40m付近に分布する江戸川層には高水圧の地下水が含まれており、天王洲アイル駅のような出水事故が懸念された。このため、掘削部分外側には止水性能が高いRC(鉄筋コンクリート)地中連続壁を採用し、江戸川層の下の上総層群に達する約60mまで打ち込むことで掘削範囲を地下水の影響から遮断することとした。この地中連続壁はその止水性や強度の高さを生かして完成後は地下駅本体の一部として利用し、壁の厚みを削減している。本体利用にあたっては新たに構築する地下駅本体との密着性を高めるため、10万本に及ぶジベル筋※を配置し、地中連続壁の表面を超高圧水で荒らしておくという工夫がなされた。また、地中連続壁の壁面には防水剤が塗布されるが、この防水剤が地下駅本体との一体性を損ね、耐震性などに影響を及ぼす可能性があったことから、事前に強度試験を行い問題がないことを確認している。
▼参考
コンクリート除去処理、表面処理、目荒し 工事現場見学会を開催 - JACON トピックス(日本ウォータージェット施工協会)
▼脚注
※ジベル筋:鉄筋コンクリートの構造物を2段階に分けて造る場合に、双方を一体化させるために先に造る部分から突出して設置しておく鉄筋のこと。
■時代の最先端をゆく品川シーサイドフォレスト

再開発開始前のJT品川工場
(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データ(1989年)より抜粋
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品川シーサイドフォレストは日本たばこ産業(JT)の品川工場跡地を再開発してできたオフィスビル群で、りんかい線の品川シーサイド駅も子の再開発事業の一環として新設されたものである。再開発地区全体の敷地面積は約9.6haで、着手当初の計画人口は従業員約1万3千人、居住約3千人であった。開発コンセプトは「杜のみどりの中の街」。再開発地区内の建物は高層マンション2棟、オフィスビル7棟、商業施設1棟となっており、現在は以下のような利用方法となっている。
品川シーサイドビュータワー1・2
2003年に完成した地上30階建てのUR(都市再生機構)賃貸住宅。
品川シーサイドサウスタワー
2004年に完成した地上18階建てのオフィスビル。
入居企業:NTTコムウェア・バンダイナムコホールディングス(管理本部)・山武など
品川シーサイドウエストタワー
2004年に完成した地上18階建てのオフィスビル。
入居企業:三菱総研DCS・プリマハム・バンプレストなど
品川シーサイドイーストタワー
2004年に完成した地上22階建てのオフィスビル・ホテルの複合施設。16~22階がホテルサンルート品川シーサイド。
入居企業:SJI・マーベラスAQLなど
楽天タワー
2003年に完成した地上23階建てのオフィスビルで旧称は「品川シーサイドノースタワー」。楽天は2007年に本社を六本木ヒルズから当地に移転し、以後は全館を貸切利用しているため名称が変更された。
品川シーサイドパークタワー
2003年に完成した地上23階建てのオフィスビル。当初は「パナソニックタワー」と呼ばれた。
入居企業:NTTコムウェア・パナソニック ネットワークサービシズなど
日立ソリューションズタワーA・B
2002年に完成した地上23階(A棟)・地上22階(B棟)建てのオフィスビル。完成当時は「日立ソフトタワー」という名称であったが、日立グループ企業の再編に伴う社名変更により現在の名称に変更された。
なお、楽天タワー・品川シーサイドパークタワー・日立ソリューションズタワーの間の低層部分は「オーバルガーデン」という商業施設になっている。
イオン品川シーサイド店
2002年にオープンした地上4階・地下1階建てのショッピングモール。
このように、現在の品川シーサイドフォレストはIT(情報)やゲーム・アニメ関連の企業が多く入居している。その光景はあたかももう一つの臨海副都心が出現したとも思えるもので、時代の最先端を行くりんかい線の象徴とも言えるだろう。
▼参考
品川シーサイド イーストタワー・ウエストタワー
鹿島:シーサイドフォレスト
オーバルガーデン
楽天が新社屋「楽天タワー」お披露目、無料化した「楽天食堂」など - Impress INTERNET Watch
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