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越中島駅~隅田川立坑(現地写真) - 京葉線新東京トンネル(11)
公開日:2010年01月08日00:10

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■隅田川トンネル:1km858m38~2km635m08(L=776.70m)
▼参考
京葉線工事誌 580~597・694~704ページ
越中島公務員宿舎受替え工事について 東工25-1(日本国有鉄道東京第一工事局)1974年3月
●概説
→前回の記事を参照
●現地写真
(特記したもの以外は2009年8月16日撮影)

清澄通りと区道144号線の交差点から公務員住宅を見る
隅田川トンネルは越中島駅を出るとすぐにこの10階建の公務員住宅2棟の地下を通る。アンダーピニングが行われた個所は他と同じ状態に埋め戻されており、Yahoo!やGoogleの航空写真を見ても違いを見出すのは困難である。成田新幹線計画時は画面手前の信号機からその後ろにある倉庫にかけて「第3立坑」なる構造物が作られることになっており、実現していれば左の林の部分には換気塔が建っていたはずだ。この換気塔を設置するためと思われる不自然な区画は現在もそのままの状態で残っており、言い方を変えれば数少ない成田新幹線の「遺構」の1つと見ることもできるだろう。

交通公園になっている越中島公園の上段
公務員住宅の裏はすぐに隅田川(晴海運河)となっている。この付近の護岸は京葉線開通とほぼ同時の1990年代初めに高規格堤防(スーパー堤防)整備の一環として親水公園化されており、東側(江東区側)は「越中島公園」という名称がつけられている。公園は川面に近いテラス部分と堤防をなす高い部分の2段になっており、上段はこのように背の低い信号機や横断歩道が設置されている。おそらく近隣の小学校の児童に交通安全教育を行う交通公園として使われているものと思われる。

芝に埋もれたトンネル通過標識(画面中央やや下の黒い物体)
地下鉄と河川が交差する地点には掘削時の事故防止のため、必ずトンネルの埋設を示す標識が設置されるのは総武トンネルのレポートで述べたとおりである。しかし、この越中島公園はこれまで何度も訪れているものの、その標識を見つけることはできずにいた。それは標識が実に特殊な方法で設置されていたからである。
だってこれ、マンホールにしか見えませんから。

標識のアップ。トンネルの埋設位置、深さ、幅などが書かれている。
トンネルの埋設標識は公園の1段目のテラスと2段目の堤防の境目となる斜面の芝生に埋め込まれていたのだ。この時はちょうど芝を刈った直後のようで、「大体この辺りだろう」という地点を重点的に見ることで容易に見つけることができたが、梅雨期のように雑草が伸び放題となれば完全に埋もれてしまい確認は困難であろう。たとえ見えたとしてもそれがトンネルの埋設標識ではなく、マンホールの蓋か何かと誤認してしまうはずだ。
標識は設置が平成になってからと新しいため、総武トンネルとは異なり横書きかつゴシック体で文字が書かれており、数値についても漢数字ではなくアラビア数字が用いられている。周囲が土であるため、四隅にボルトなどは見当たらないがどのように固定しているのか気になるところだ。

標識の脇から隅田川の対岸を見る。トンネルは画面左上のビル2棟の隙間へ向かってまっすぐ進む。

佃島に建つ高層マンション「大川端リバーシティ21」。永代橋より。

中央区側、新川公園から見た夜景。右手の白い塔は中央大橋(1993年開通)。(2007年10月7日撮影)
この地点はちょうど隅田川の流れが晴海方面と浜離宮方面の2方向に分かれる地点で、この2つの流れを分かつように位置しているのが佃島である。この佃島には石川島播磨重工業(現・IHI)の工場が建っていたが、1980年代末期にそれが閉鎖され周辺も含めた跡地の再開発が行われた。その結果誕生したのが有名な三井不動産の高層マンション「大川端リバーシティ21」である。その現代的かつ統一感のある景観は現在も評価が高く、この付近の隅田川はドラマ・CM等の撮影で頻繁に利用されている。(最近の例で有名なのはNHKの朝の連続テレビ小説「瞳」だろう。)本レポートで後述する京葉線の隅田川立坑はこの再開発事業用地の一部を利用する形で設置された。
▼関連記事
勝鬨橋~相生橋・中央大橋 - 昼の隅田川テラスを歩く(1)(2008年3月28日作成)
中央大橋・大川端リバーシティ21・相生橋 - 隅田川夜景《3》(2007年11月13日作成)

ツタの中に辛うじて確認できるトンネル埋設標識
隅田川西側(中央区側)の護岸も「新川公園」という親水公園となっているが、こちらはコンクリート製の古い垂直堤防を一部残した形となっている。こちら側の護岸にも先ほどの越中島公園のものと同じトンネル埋設標識が掲げられている。しかし、この護岸は緑化の一環なのか不明であるが全面的にツタで覆われており、標識はその隙間に辛うじて確認できるといった状態である。あらかじめトンネルの正確な位置がわかっていなければ発見するのは困難だろう。
(つづく)
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