池上梅園&池上本門寺(昨年の取材です)
公開日:2012年03月15日23:56

昨年の3月のことになりますが、東京都大田区にある池上梅園と隣接する池上本門寺を訪問しました。直後に東日本大震災が発生し、記事化するタイミングを逸してしまい、1年が経過してしまいました。現在、ウメの花が見頃を迎えているとのことですので「在庫放出」ということで今回解説したいと思います。
(写真は全て2011年3月6日撮影です。)
■池上梅園
池上梅園は大田区のほぼ中央にある日本庭園です。戦前までは北半分に日本画家伊東深水氏の自宅兼アトリエ「月白山荘」がありましたが、戦争により焼失しました。戦後は築地の料亭経営者である小倉氏が南半分を拡張し、別邸として利用していました。小倉氏の没後は遺族の意志により、庭園として残すことを条件に東京都に譲渡され、1978(昭和53)年に大田区に移管されました。大田区への移管後は区の花であるウメを中心に植林、拡張が進められ、現在は敷地面積が9800平方メートル、ウメの種類が30種・370本(白梅150本、紅梅220本)になるなど充実したものとなっています。また、園内にはウメの他に50本のボタンや、500本のツツジも植えられており、ウメが開花する2・3月以外にも花を楽しむことができます。
<入園料>
大人(16歳以上65歳未満):100円
小人(6歳以上16歳未満):20円
※65歳以上・身障者とその介助人は無料(要証明書提示)
<開園時間・休園日>
開園時間:9:00~16:30(入園は16:00まで)
休園日:2・3月を除く月曜日・年末年始(月曜日が祝日の場合は翌日)
<交通>
都営地下鉄浅草線西馬込駅から徒歩10分
東急池上線池上駅から徒歩20分
路線バス(いずれも「本門寺裏」バス停下車徒歩3分)
●東急池上線池上駅から上池上循環外回り
●JR五反田駅東口から川崎駅行き
●JR大森駅山王口から上池上循環外回り
●JR川崎駅から五反田駅行き

池上梅園は傾斜地をうまく利用して造られている。
池上梅園は吞川(のみかわ)が形成した低地と武蔵野台地の高台の境界部分をうまく利用して作られており、ウメの品種は低地側が白梅、高台側が紅梅とはっきり分かれています。開花の時期は品種や日当たりの良し悪しにより少しずつずれているため、見頃となる期間は通常1月上旬~3月中旬までの長期間にわたります。昨年訪問時も木全体が満開になっているものとつぼみとなっているものが混在していました。なお、今年は特に気温が低い期間が長かったため、全体的にかなり開花が遅れており、3月下旬頃まで見頃となる品種も出てくるものと思われます。



高台側は紅梅中心に植えられている。 ※クリックで拡大



低地側は白梅中心に植えられている。 ※クリックで拡大

高台にある「見晴台」からの風景
高台へ登りきったところには「見晴台」という東屋(あずまや)があります。その名の通りかつては富士山まで見渡せるほどの眺望が得られたようですが、現在の池上梅園の周辺は中小の製造業の工場が立ち並ぶなど都市化が進んでおり、それらの建物に遮られたため以前のように遠くまで見渡すことはできなくなっています。ちなみに、手前を通る高架橋は都営浅草線馬込車両検修場の引き上げ線です。都営浅草線の営業線は押上駅から西馬込駅まで全線が地下となっており、地上に出るのはこの車両基地の部分だけです。
▼関連記事
【速報】都営フェスタ'06in浅草線(2006年10月28日作成)




園内にある和室・茶室。
左上:和室(8畳間が3室ある) 右上:聴雨庵 左下:清月庵 右下:清月庵では訪問時、茶会が開かれていた。
※クリックで拡大
池上梅園の中には大田区が管理している和室・茶室2棟あります。茶室は2棟あり、それぞれ「聴雨庵」「清月庵」という名称があります。
「聴雨庵」は第88・89代外務大臣などを務めた政治家藤山愛一郎氏が所有していた茶室で、1983(昭和58)年に藤友倶楽部から大田区に寄贈されたものです。白金にあった藤山氏の自宅には3棟の茶室があり、海外からの来賓を招くなど民間外交で多く利用されていました。また、太平洋戦争末期には岡田啓介・米内光政・末次信正の3名を集め、東条内閣打倒に向けた密会が開かれています。「聴雨庵」の名称は愛一郎氏の父、藤山雷太翁の号を「雨田」と称したことに由来しているといわれていますが、確証はありません。
「清月庵」は伊東深水のアトリエを設計した数寄屋建築の設計家、川尻善治氏が自宅に建てた離れです。川尻家は大正時代、池上門前で温室園芸と料理店を営んでおり、その一角に建てられたものでした。その後、マンションの建設により取り壊されることとなりましたが、大田区在住の華道家・中島恭名氏らによる保存運動が起き、最終的に中島氏が買い取り大田区へ寄贈されました。大田区では「清月庵」を池上梅園に移築し、1989(平成がん)年から公開しています。
なお、3棟ある和室・茶室はいずれも予約をしたうえで貸切利用が可能となっており、昨年訪問時も裏千家茶道の茶会が開催されていました。
▼参考
現地配布のパンフレット
大田区ホームページ:池上梅園
■池上本門寺

池上本門寺大堂
池上梅園の南側には日蓮宗の大本山※である池上本門寺があります。
池上本門寺は日蓮聖人が今から730年前の1282(弘安5年)10月13日辰の刻(午前8時頃)、61歳で臨終を迎えた霊跡です。日蓮聖人はこの年の9月に身延山(山梨県)を後にし、病気療養のため常陸の湯に向かう途中の武蔵国池上の郷主・池上宗仲公の館で死去しました。池上本門寺の山号である「長栄山」の名称は日蓮聖人が「法華経の道場として長く栄えるように」との思いで名づけたもので、日蓮聖人の亡き後、池上宗仲公は法華経の字数(69384文字)にあわせた約7万坪の土地を寄贈し、現在の寺の原型が出来上がりました。
池上本門寺の中心にある大堂は太平洋戦争の空襲による焼失後の1964(昭和39)年に復元されたもので、浅草の浅草寺などと同様鉄筋コンクリート造りとなっています。大堂はこれまで2度建て替えられており、初代の大堂は江戸時代初期の武将・加藤清正が1606(慶長11)年に建立した間口25間(約45m)という当時としては大変立派なものでした。この初代大堂は1710(宝永7)年に焼失し、倹約令の影響もあって間口13間に大幅に縮小され2代目の大堂が再建されました。
▼脚注
※日蓮宗の総本山は山梨県にある久遠寺。




左上:池上本門寺仁王門
右上:池上本門寺五重塔
左下:池上本門寺宝塔
右下:隣接する大坊ほ本行寺
※クリックで拡大
池上本門寺の敷地は大変広く、境内にはさまざまな建物があります。
大堂の正面にある「任王門」はやはり戦時中の空襲で焼失しており、現在の門は1977(昭和52)年に復元されたものです。門の前に続く「此経難持坂」(階段)は初代大堂の建立にあわせ、加藤清正公が整備したものといわれています。大堂に向かって右側には五重塔があります。これは1608(慶長13)年に建立されたもので、関東に4基現存する幕末以前の五重塔のうち最古のものとなります。重要文化財に指定されており、2001(平成13)年には解体修理が行われています。大堂の左裏手には赤い壺のような形状をした「宝塔」があります。これは日蓮聖人の臨終の際建立された荼毘所(だびしょ:火葬場)で、現在の建物は1828(文政11)年に建立された2代目です。
このほか、池上本門寺には隣接して日蓮宗の寺院がいくつも存在します。右下の「本行寺」もその1つです。
▼参考
日蓮宗大本山 池上本門寺 home
日蓮宗本山 池上 大坊 本行寺
残念ながらこの3月の週末は毎週悪天候が続いていますが、20日の春分の日は曇りの予報となっています。見ごろを迎えているウメの花を見に出かけてみてはいかがでしょうか?
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カテゴリ:日本庭園の記事

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