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品川シーサイド駅~大井町駅(現地写真) - りんかい線東臨トンネル(24)
公開日:2012年03月08日20:14

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■東大井トンネル 9km076m~10km400m(L=1324m)
▼参考
臨海副都心線工事誌 - 日本鉄道建設公団東京支社2003年9月 188~203・308・309ページ
●概説
→前回の記事を参照。
●現地写真(地上)


左:品川シーサイド駅南側の住宅区画。
右:トンネル上部は区立品川シーサイド公園となっている。 ※クリックで拡大
東大井トンネルの始点である品川シーサイド駅南側の地上は品川シーサイドフォレストの住宅区画となっており、都市再生機構(UR)の賃貸マンション「品川シーサイドビュータワー」が2棟建っている。列車のの振動が建物に伝わるのを防止するため、トンネルの真上には建物は立っておらず、品川区が管理する「品川シーサイド公園」として利用されている。公園は砂を撒いた地面に遊具が数個あるだけの小規模なものである。


左:八潮橋の脇から品川シーサイド駅方面を見る。正面は楽天タワー2号館(住友不動産品川シーサイドビル)
右:同じ場所の反対側。右側には古くから存在する工場も残る。
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品川シーサイド公園の下を半径185mの急カーブを描きながら通過したりんかい線は針路を西に変え、品川シーサイド地区と大井ふ頭を結ぶ八潮橋(国道357号支線)の下に入る。道路の地下には東京電力鮫洲洞道が埋設されており、トンネルは15m前後の離隔を保ちながら並走する。八潮橋はこの付近で地上に降り、都道316号日本橋芝浦大森線(海岸通り)と交差する。八潮橋が地上に降りる地点の北側の沿道には昔から操業している工場が数軒残っており、再開発により高層のオフィスビルに変貌した品川シーサイド地区の中で、かつての工業都市の姿を今に伝えている。

国道357号・海岸通り・都道420号が交差する八潮橋交差点。りんかい線は左から正面右方向へ向かって進む。 ※クリックで拡大(800*600px)
八潮橋と海岸通りが交差する地点は八潮橋交差点という名称になっている。海岸通りは4車線の比較的幅が広い道路であるが、訪問したのは休日の昼間ということもあり交通量はさほど多くはなかった。1989(平成元)年の航空写真を見るとこの付近は工場ばかりだったようであるが、りんかい線開通を機に交通の利便性が向上したことから、現在は写真の通りマンションも多く見られるようになっている。地下のりんかい線はこの付近から上下線のトンネルが2段に重なる構造となる。


左:八潮橋交差点の先は2車線の都道420号となる。右側は帝産観光バスの本社・車庫・社宅。
右:元なぎさ通りと交差する鮫洲公園前交差点。 ※クリックで拡大
八潮橋交差点を過ぎるとりんかい線は都道420号鮫洲大山線の下に入る。この都道420号線は品川区にあるこの八潮橋交差点を起点に目黒区、渋谷区、中野区、新宿区、豊島区を通過して板橋区の仲宿交差点に至る全長22.4kmの非常に長い道路である。しかし、品川区や目黒区内には旧来から存在する幅の狭い道路を指定しただけの区間や現道すら存在しない区間(品川区二葉1丁目~戸越5丁目など)も存在するため、現在「補助26号線」の名称で拡幅や新設が続けられている。この事業区間には用地買収が未完了の場所も多々あるため、完成した部分、用地買収のみが完了した部分、全く未着手の部分など様々な状態が見られる。左の写真は八潮橋交差点の直後の地点で、沿道にある帝産観光バス本社の建て替えにあわせて拡幅分をセットバックしており、空いている土地は暫定的に緑地として利用されている。
八潮橋の次に交差するのが元なぎさ通りという細い生活道路である。この道路はその名の通りかつては海岸線だった場所である。地下には第二鮫洲幹線下水が通っており、りんかい線のトンネルはこれと3.3mの離隔で直交する。右の写真はこの元なぎさ通りと交差する鮫洲公園前交差点で、都道420号線はここから先拡幅用地の取得が行われていないことが分かる。


左:京急本線と交差。
右:京急本線の高架橋を大井町駅側から見る。手前を横切るのは国道15号(第一京浜)。
※クリックで拡大
元なぎさ通りを過ぎると都道420号線の沿道は古くからある住宅街となる。旧東海道と交差すると直後に京急電鉄の青物横丁~鮫洲間の高架橋、国道15号(第一京浜)と相次いで交差する。りんかい線の第二期区間の計画立案時にはもう少し北側で京急本線と交差させ、乗り換え駅を設ける案も存在したが、コストや工期などの面から現在の都道420号線の地下を経由するルートとなり、互いに素通りすることとなった。青物横丁駅からりんかい線の品川シーサイド駅や大井町駅まで歩くことも不可能ではないが、いずれも500m以上離れており利便性はよくない。
京急本線の次に交差するのが東京都心と横浜市中心部を結ぶ国道15号(第一京浜)である。この道路の地下には共同溝が通っており、りんかい線のトンネルは約15mの離隔で直交する。また、りんかい線のトンネルはこの付近から25パーミルの上り勾配となる。


左:第一京浜と交差する南品川三丁目交差点から仙台坂トンネルを見る。
右:仙台坂トンネルの上部は生活道路となっている。 ※クリックで拡大
第一京浜を過ぎると都道420号線は急勾配となり武蔵野台地の上へと登っていく。この部分は地下に本線車道を通し、地上に沿道の住宅に出入りするための生活道路を載せる構造となっており、地下の本線は「仙台坂トンネル」という名称になっている。
「仙台坂」という名称は江戸時代に仙台藩伊達陸奥守の屋敷があったことに由来したものであるが、本来の仙台坂は交通量の増大を理由に北側の池上通り(都道421号線)に移転しており、現在仙台坂トンネルが通る旧来の道筋は「旧仙台坂」もしくは「くらやみ坂」と呼ばれている。仙台坂トンネルができたのは1998(平成10)年のことで、古い航空写真を見るとそれ以前は江戸時代から存在する曲がりくねった細い路地しか無かったことが確認できる。また、現在トンネルが通っている土地の一部は隣接する「海晏寺(かいあんじ)」という寺の墓地であったことがわかる。(→仙台坂トンネル付近の1974年の航空写真)


左:仙台坂トンネルが地上に出る地点。左端に見える木造の建物は仙台味噌醸造所。
右:都道421号線(池上通り)と交差する仙台坂上交差点。ここから先は大井銀座商店街。
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住宅地を抜けると仙台坂トンネルが地上に姿を現し、仙台坂上交差点で本来の仙台坂である都道421号線(池上通り)と斜めに交差する。交差点の脇には巨大な木樽が置かれた木造の建物があるが、これは仙台味噌醸造所である。醸造所ができたのは1626(寛永2)年のことで、当初の目的は伊達藩に3千名居るとも言われた武士たちの備蓄食料を確保することであった。わざわざ江戸に自前の醸造所を造ったのは江戸の味噌が甘口であり、東北の辛口味噌に慣れた武士たちの口に合わなかったためとされる。その後は藩だけでは消費しきれず余った味噌を一般にも販売するようになり、1902(明治35)年には「八木合名会社」の名称で法人化され、現在も同じ場所で醸造・販売を行っている。
仙台坂上交差点を過ぎると都道420号線の両側はアーケード付きの「大井銀座商店街」となる。商店街はこの先大井町駅を越えて品川区役所手前まで続いている。りんかい線は引き続きこの道路の地下を進み、大井町駅に到達する。
▼参考
仙台坂|品川区
仙台藩品川下屋敷跡(品川区東大井)|仙台市
仙台味噌醸造所 | しながわ観光協会
のぼりくだりの街(4)旧仙台坂(品川区) 藩士も食した味 脈々:東京新聞 TOKYO Web
東京都味噌工業協同組合 八木合名会社仙台味噌醸造所
●現地写真(地下)


左:品川シーサイド駅ホーム端から見た半径185mの急カーブ。
右:軌道部分のアップ。まくら木の間に見える緑色のフタがスラブを支えるバネが入ったユニット。
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品川シーサイド駅直後のトンネルはりんかい線最小となる半径185mのカーブで進路を南から西へ変える。前述のとおりこの部分は品川シーサイドフォレストの高層マンションに近接しており、特にマンションとの距離が近い上り線については軌道全体をバネで浮かせたフローティングスラブ軌道が採用されている。(下り線は防振まくらぎのみ。)スラブを支えるコイルバネのユニットはレール外側のまくらぎの間に埋め込まれており、丸い緑色のフタが並んでいるのが確認できる。ユニットの間隔はまくらぎ2本につき1個を標準としているが、フローティングスラブ軌道の両端では軌道の硬さが急変しないようまくらぎ1本につき1個のユニットを設置している。なお、急カーブ区間であるため上下線ともカーブ内側のレールに脱線防止ガードが取り付けられている。


左:下り列車の前面展望。品川シーサイド駅直後の急カーブ。
右:25パーミルの登り勾配に入る直前。 ※クリックで拡大
駅間のトンネルは基本的に地上の道路の線形・地形をトレースしており、前半は直角に曲がった後も左右に小刻みに移動を繰り返す。後半は台地に向けて25パーミルで大井町駅の直前までひたすら上るだけとなっている。途中に立坑は無く、トンネルのセグメントもコンクリートのフラットセグメント1種類に統一されているため特筆すべき点は無い。
りんかい線前面展望・6/7 品川シーサイド→大井町 - YouTube 音量注意!
(つづく)
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