全貌を現した赤レンガ駅舎とJPタワー…東京駅再開発2012年春
公開日:2012年04月13日21:45

東京駅では今年完成を目指して現在丸の内赤レンガ駅舎の復原と八重洲口の再開発が進められています。昨年10月の取材から半年以上が経過し、丸の内赤レンガ駅舎の足場が外され復原後の全貌が明らかになるなど進展がありましたので、本日改めて取材を行いました。今回も丸の内・八重洲両側それぞれの状況についてお伝えします。
▼関連記事
東京駅再開発の状況2011年(2011年12月10日作成)
→取材は2011年3月・11月
■全貌が明らかとなった丸の内赤レンガ駅舎


左:復原工事着工前の東京駅赤レンガ駅舎北口。2007年5月26日撮影
右:復原工事着工前の南口、夜のライトアップの様子。2006年11月4日撮影
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東京駅丸の内口に建つ建築家辰野金吾の設計の赤レンガ駅舎は、1914(大正3)年に完成したものです。太平洋戦争中の空襲により3階部分を焼失し、南北2か所あるドーム部分は八角形の仮構造で復旧されていました。これまで何度か解体の危機に直面しましたが、その都度市民による熱心な保存運動が行われ、今日に至るまでその姿を残しています。
2007(平成19)年からは空襲で失われた3階部分を創建当時の形に復原する工事が行われており、外観のみならず、内部の天井・壁面なども創建当時の記録写真などをもとに可能な限り再現される計画となっています。また、この赤レンガ駅舎は国の重要文化財にも指定されており、地震による損傷を防止するため、基礎部分への免震装置の組み込みも行われており、併せて2層構造の地下階が新設され、駅施設や駐車場として利用される計画となっています。
2007年の着工以来地上、地下ともに工事は順調に進んでおり、去る2011年11月には地下への免震装置の組み込みが完了しました。免震装置はアイソレーター(ゴムを重ねた緩衝装置)352台、オイルダンパー(油が入った減衰装置)158台により構成されており、昭和40年代に建設された北口ドーム直下の総武線地下駅部分を含めた駅舎の床下全体に設置されています。また、地上部分では2階部分まで残されている既設のレンガ躯体上に、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)構造により3階部分を増築する工事が完了しており、2011年秋には屋根のスレート板の敷き込みが完了しています。このスレート板の一部は復原工事前に取り付けられていたものを再利用しており、その中には宮城県石巻市で調査・洗浄中に東日本大震災に遭い、津波で流出後に回収されたものも含まれています。


足場が取り外され、全体が見えるようになった東京駅丸の内赤レンガ駅舎。左が北口、右が南口。2枚とも2012年4月7日撮影
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左:駅舎中央部も足場が取り外された。日差しを浴びて銅の飾りが輝く。
右:行幸通りから足場が取り外された東京駅赤レンガ駅舎を見る。2枚とも2012年4月7日撮影
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2012年に入ってからも工事は順調に進み、3月にはいよいよ工事用の足場が取り外され創建当時の姿に復原された駅舎の全貌を見られるようになりました。復原された駅舎は屋根や壁面の装飾類も忠実に再現されており、開業当初の東京駅の名称である「中央停車場」の名に恥じない美しい姿が現代に甦りました。なお、増築された3階部分は鉄筋コンクリートの外壁にレンガを貼り付けたもので、よく観察すると旧来のレンガとの継ぎ目がわかります。この他にも完成間もないため、装飾の金属部分が異様に輝いているなど不自然な部分も多々ありますが、今後年月が経過してある程度表面の風化が進めば目立たなくなるのではないかと思われます。


左:横須賀・総武線地下ホームへ降りる階段部分は内装が完成した。
右:丸の内南口改札口。南北のドーム内は現在も足場で覆われており、復原工事の進捗は確認できない。
2枚とも2012年3月3日撮影 ※クリックで拡大
赤レンガ駅舎の内部は横須賀線・総武線地下ホームへ降りる階段付近の内装が完成した以外は引き続き工事が続いており、丸の内北口・南口のドーム内も工事用の足場や幕で覆われているため、工事の進捗状況を確認することはできませんでした。また、3月4・5・24・25日の4日は丸の内中央口改札を終日使用停止にしたうえで工事が行われており、丸の内中央口脇の改札内に飛び出している赤レンガ駅舎も工事用の幕で覆われるなど駅施設に関連する部分でも工事が活発化しています。


左:復原工事のため3月の一部土日は丸の内中央口の利用が停止されていた。
右:丸の内中央口脇に飛び出している赤レンガ駅舎も足場で覆われた。2枚とも2012年3月3日撮影
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前回の記事でもお伝えしましたが、丸の内赤レンガ駅舎内の施設の概要と完成時期は以下のとおりとなっています。
●駅施設(2012年6月開業予定)
駅舎は3階部分が再構築され、北口・南口のドーム屋根も復原される。また、北口・南口ドーム内には創建当時存在した花飾り、鷲、干支などのレリーフなどが再現される。なお、2012年の完成後は依然と同じく夜間は駅舎全体がライトアップされる。
●JR EAST Travel Service Center(2012年10月1日開業予定)
外国人向けの旅行カウンター(乗車券類の発券業務)・観光案内所・外貨両替所・ATMなどが設置される。
●東京ステーションギャラリー(2012年10月1日開業予定)
復原工事着工前にも存在した施設。「小さくとも本格的な美術館」をコンセプトとし、展示室は2階が創建当時の赤レンガの壁面を生かした内装、3階は現代的な内装で仕上げ、順路の途中では駅構内が見えるようにし、90年を超える東京駅の歴史の移り変わりを肌で感じることができるデザインとする。
●東京ステーションホテル(2012年10月3日開業予定)
復原工事着工前にも存在した施設。内装はヨーロピアン・クラシックスタイルの駅舎外観と調和した重厚感のあるデザインとし、駅の喧騒を忘れさせる落ち着いた空間を提供する。また、現代で求められる情報化(インターネット接続サービス)などにも対応する。客室数は150(ツイン86室、ダブル64室)。
このうち、東京ステーションギャラリーでは10月1日のオープンから翌2013年1月までの予定で東京駅や鉄道をテーマに制作された作品の展覧会「始発電車を待ちながら」が開催されることになっています。また、東京ステーションホテルは5月8日10時より予約受付が開始される予定となっています。
■歩行者用デッキ「グランルーフ」の建設が進む八重洲口


左:ほぼ完成を迎えた「グラントウキョウノースタワー」の増床部分。
右:建設が進む歩行者用デッキ「グランルーフ」。左後ろは「グラントウキョウサウスタワー」。
2枚とも2012年4月7日撮影 ※クリックで拡大
八重洲口では大丸東京が入居していた12階建ての鉄道会館ビルを地上42~43階建ての高層ビル「グラントウキョウノースタワー」「グラントウキョウサウスタワー」と歩行者デッキ「グランルーフ」に建て替える工事が行われています。2007年には「ノースタワー」「サウスタワー」が完成し、翌2008年には大丸東京が「ノースタワー」への移転を完了しています。大丸東京の移転完了後は鉄道会館ビルの解体が進められ、2010年末には工事がほぼ完了しました。その後は歩行者用デッキ「グランルーフ」の建設と「ノースタワー」の低層部分の増築工事が進められています。両施設の概要と完成時期は以下の通りです。
●グラントウキョウノースタワー第2期工事(2012年8月完成予定)
地上13階、地下3階の構造で、全て大丸東京店の増床スペースに充てられる。これにより、大丸東京店の床面積は現在の3万4千平方メートルから4万6千平方メートルに約1.4倍拡張される。なお、去る2012年2月22日にはこの増床部分のうち3フロアに東急ハンズが入居することが発表された。
●グランルーフ(2013年秋完成予定)
地上4階・地下3階構造の歩行者用デッキで、「ノースタワー」「サウスタワー」と駅施設の3つを接続するとともに、デッキの下にはバスターミナル・タクシー乗り場の拡張スペースに充てられる。これにより、以前は事実上飽和状態となっていた駅前広場が拡張され、交通結節機能が大幅に強化される。
「ノースタワー」の増床部分は今回ほぼ完成しており、工事の主体は内装関係に移行している模様でした。また、昨年夏頃に「サウスタワー」側から工事が始まった「グランルーフ」は、今回ロータリーの中央付近まで建設が進んでいました。
■間もなく竣工する東京中央郵便局(JPタワー)
東京駅の再開発とは別に丸の内口では東京中央郵便局の再開発(JPタワーの建設)が進められています。このJPタワーは地上37階建てで、地上8~37階は賃貸オフィス、地下1階・地上1~6階は貸会議室「JPタワーホール&カンファレンス」やJTBのビジネス・文化・観光の交流施設「国際ビジネス・観光情報センター」(仮称)など一般向けの商業施設として活用される計画となっています。東京駅に面した側は1931(昭和6)年に建設された旧局舎を一部残した形となっており、歴史的建築物の保存・活用が図られる計画です。また、地下1階・地上1階の吹き抜けは南北方向に通り抜け可能な構造とし、東京駅と有楽町駅を結ぶ新たなルートとして一般に開放される予定となっています。


左:一度取り壊された旧局舎の中央部も元通り復元された。2012年4月1日撮影
右:旧局舎が残されているのは駅前ロータリーに面したごく一部となっており、背後はすぐに高層ビルがそびえ立つ。2012年4月7日撮影
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JPタワーの建設は2008年から開始されており、旧局舎は駅前ロータリーに面した一部を除きすべて取り壊され、跡地で高層棟の建設がすすめられました。今回、高層棟は外装・内装ともほとんど完成しており、3月訪問時は内部の照明の点灯試験が行われていました。また、2010年訪問時に駅前ロータリーに面した旧局舎の中央部が取り壊されたことを確認していますが、今回この部分は元通りに復元されていることを確認しました。中央部分の1階は取り壊し前には存在しなかった通路らしきものが確認できることから、完成後は高層棟へ向かう通路の一部として使われるものと思われます。



左上:総武地下コンコースに接続するJPタワー前地下広場。
右上:地下広場は総武線地下駅コンコースと2か所で接続している。右へ進むと京葉線東京駅。
下:JPタワー前地下広場内の全景。3枚とも2012年4月7日撮影
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JPタワーは丸の内駅前ロータリーの地下にある横須賀線・総武線東京駅のコンコースと地下広場を介して直接接続します。JPタワー本体の竣工は今年5月の予定ですが、この地下広場は去る2012年3月17日より先行して供用が開始されています。地下広場は総武地下駅の換気塔を取り巻くように設置されており、総武地下駅のコンコースとは2か所で接続しています。コンコース内の壁面にはショーケースが数か所設けられており、5月31日まで公益財団法人新聞通信調査会主催の写真展「関東大震災と東京の復興-定点観測者としての通信社-」が開催されています。(この写真展は今年2月に新丸ビル前で開催されたもので、好評だったことから今回JPタワー前地下広場で追加開催となった。)


左:JPタワー前地下広場のショーケース内にある地下広場の模型
右:地下広場内では写真展が開催されている。2枚とも2012年4月7日撮影
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左:丸の内南口前に新設されたエレベータ(撮影時は工事中)。JPタワー前地下広場へ通じる。2012年3月3日撮影
右:総武地下駅の換気塔脇に新設されたJPタワー前地下広場用の換気塔。2012年4月7日撮影
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地上の丸の内南口前にはこのJPタワー前地下広場に直接抜けられるエレベータが新設されました。また、駅前ロータリー内にある総武地下駅の換気塔(南部換気塔)脇にはこの地下広場の空調や換気に使用する小型の換気塔が新設されました。換気塔は曇りガラスとステンレスのルーバーを組み合わせた現代的なデザインで、土台部分には地下広場での火災時に消火用水を供給する連結送水口も設置されています。
東京駅の再開発は当ブログの開設時より調査を継続している事業の1つです。今年はそれらの事業が一気に竣工を迎え、東京駅の姿は激変することが予想されます。今後も引き続き事業の推移を調査・報告してまいります。
▼参考
東京駅が街になる Tokyo Station City
鹿島:東京駅丸の内駅舎保存・復原工事
東京駅丸の内駅舎保存・復原工事の着工について - JR東日本(PDF・2007年5月8日発表)
東京駅丸の内駅舎保存・復原工事及び八重洲口開発第2期工事について - JR東日本(PDF・2011年9月6日発表)
東急ハンズ - ニュースリリース「東急ハンズ東京店(仮称)を2012年秋に出店 ~開発進む東京ステーションシティ内、大丸東京店増床部分に3フロア~」(2012年2月22日発表)
「JPタワー(仮称)」の計画概要について - 日本郵政(2010年5月28日発表)
プレスリリース「「JPタワー(仮称)」の建物名称・竣工日の決定及び東京中央郵便局・ゆうちょ銀行本店等の移転・オープンについて」-ゆうちょ銀行(2012年1月27日発表)
日本郵政グループ「JPタワー(仮称)」内 「国際ビジネス・観光情報センター(仮称)」の 運営・プロデュース事業を受託 - JTBニュースリリース(PDF・2011年1月26日発表)
「JPタワーホール&カンファレンス」(2013年春開業予定) 4月2日(月)より利用予約受付を開始 - 株式会社コングレ・ニュースリリース(PDF・2012年4月2日発表)
東大震災写真展|写真展「関東大震災と東京の復興」|新聞通信調査会
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