東急東横線地下化工事&渋谷ヒカリエ開業(2012年4月取材・その2)

副都心線渋谷駅と渋谷ヒカリエの連絡口

■東急東横線地下化工事の概要と現況

前の記事を参照

■副都心線渋谷駅のホーム間通路撤去工事

副都心線渋谷駅に掲げられているホーム間通路撤去工事に関する告知 ホーム間通路撤去工事の様子
左:副都心線渋谷駅に掲げられているホーム間通路撤去工事に関する告知
右:ホーム間通路撤去工事の様子
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 2008年に開業した東京メトロ副都心線渋谷駅は東急東横線との直通に備えて当初から島式ホーム2面4線の構造で建設されており、ホームの管理も東急電鉄が行っています。この副都心線渋谷駅は4線ある線路のうち外側2線のみが使用されており、内側2線の線路上には仮設の通路を設けて大きな島式ホーム1面2線として運用しています。また、横浜方はトンネルが一部未完成となっており、池袋方に延伸用の仮設ホームを設置して10両分のホーム長を確保しています。
 横浜方は未完成部分とコンクリート壁で仕切られていましたが、工事が進んだことから昨年5月より壁を撤去する工事が開始されました。さらにその5カ月後の10月からはホーム間の連絡通路をより簡易的なものに作り替える工事が開始されました。

ホーム間通路の撤去工事に伴い、一部の階段が閉鎖されていた。 池袋方のホーム端もホーム間通路が撤去され、入線列車を真正面から見られなくなった。
左:ホーム間通路の撤去工事に伴い、一部の階段が閉鎖されていた。
右:池袋方のホーム端もホーム間通路が撤去され、入線列車を真正面から見られなくなった。

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 ホーム間通路の改造は従来からある通路と新設する簡易通路を交互に切り替えながら行われています。通路の撤去は池袋方の仮設ホーム部分にも及んでおり、入線列車が真正面から見られることで有名だったホーム端も既に入れなくなっています。また、1回目の取材を行った4月21日は工事個所に近接する一部の階段が使用停止となっていました。
 なお、今回新設された簡易通路は本格的に直通開始に向けた準備開始される夏頃には撤去される予定となっており、それ以降は直接両ホームを行き来することができなくなる予定です。

3番線の終端。壁があった場所は幕になっている。右の扉は工事中のトンネルに通じているものと思われる。 中央2線の終端。壁があった部分は白い幕で覆われており内部の状況は分からない。 4番線の終端。こちらはまだ板が残っている。
左:3番線の終端。壁があった場所は幕になっている。右の扉は工事中のトンネルに通じているもの?
中:中央2線の終端。壁があった部分は白い幕で覆われており内部の状況は分からない。
右:4番線の終端。こちらはまだ板が残っている。

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横浜方の終端にあったコンクリート壁は昨年6月の取材時に既に板で覆われており、今回訪問時は中央2線と3番線の先が白い幕で覆われた状態となっていました。この幕は副都心線開業前の池袋駅(新線池袋駅)でも見られたもので、幕の裏側は既にコンクリート壁の撤去が完了し、代官山駅へ向かうトンネルとつながっているものと思われます。また、3番線のホーム端は天井の一部が取り外され、ドアが付いた部屋のようなものが新設されており、このドアを通じて工事中のトンネルに作業員が時折出入りしている模様です。

▼関連記事
地下鉄副都心線建設状況1・・・有楽町新線の区間(2008年6月2日作成)

地下4階の終端側の階段付近にある作業用の出入口 終端側改札口前の吹き抜けから下の階を見下ろす。地下4階はシャッターが下ろされている。
左:地下4階の終端側の階段付近にある作業用の出入口
右:終端側改札口前の吹き抜けから下の階を見下ろす。地下4階はシャッターが下ろされている。

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 ホームの1フロア上のコンコースの横浜方でもトンネルの接続工事が行われており、階段の脇には作業用の出入口が設置されているのが確認できます。また、改札口前の吹き抜けからコンコースを見下ろすと、終端側は全てシャッターが下ろされて見えなくなっており、裏で何らかの作業が行われていることが確認できます。

▼参考
東京メトロ副都心線との相互直通運転に伴う東横線渋谷~横浜間改良工事 - 東急電鉄
特定都市鉄道整備事業実施状況(2011/11/10)|ニュースリース|東急電鉄
鹿島:KAJIMAダイジェスト:ザ・サイト:(13号相直)東横線渋谷~代官山間地下化工事(土木工事第1工区)
April 2012:特集「都市と鉄道の昨日,今日,そして明日」| KAJIMAダイジェスト | 鹿島建設株式会社
円形・矩形・馬蹄形など多様な断面を掘れるシールド掘進機が完成 - 川崎重工PR誌「Kawasaki News」(PDF)
津守,永持,関,山崎 - 東急東横線渋谷駅~代官山駅間地下化工事の概要 - 地下空間シンポジウム論文・報告集第14巻 - 土木学会2009年1月(リンク先:CiNii)

■渋谷ヒカリエOPEN!




渋谷ヒカリエ。手前を走る銀座線は今後この付近にホームが移設される。
渋谷ヒカリエ。手前を走る銀座線は今後この付近にホームが移設される。
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 東急東横線地下化に合わせて渋谷駅とその周辺では鉄道会社が主体となり、大規模な再開発が計画されています。この第一陣として東急文化会館跡地に建設が進められていた「渋谷ヒカリエ」が完成し、去る4月26日(木)にオープンを迎えしました。渋谷ヒカリエは地上34階、地下4階建の高層ビルで施設の内容は以下の通りとなっています。

B3F~5F東急百貨店「ShinQs(シンクス)」
6・7Fカフェ&レストラン「dining6」「TABLE7」
8Fクリエイティブスペース「8/(はち)」
渋谷区区民サービスセンター・防災センター
9F会議・イベントスペース「ヒカリエホール」
11~16F東急シアター「Orb(オーブ)」(7月18日オープン
オフィスエントランス
17~34Fオフィス


地上1階の渋谷ヒカリエエントランス
地上1階の渋谷ヒカリエエントランス
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 地下3階~地上5階の「ShinQs」は20代後半~40代の働く女性をターゲットにした東急百貨店の新しい業態の施設です。「ShinQs」の名称には「『渋谷(Shibuya)』の街に『輝き(Shine)』をプラスする東急百貨店の新しいお店、Qという文字に『東急百貨店としてお客様との約束を果たしていく』」という意味が込められています。売場面積は約16,000平方メートルで、地下2・3階が食料品、地下1階・地上1階がビューティーグッズ&サービス、地上2~4階がアパレル、5階が各種雑貨というラインナップとなっており、この中には日本初や関東初の出店のテナントもあります。初年度売上目標は180億円で単年度営業で黒字化を図ることとしています。
 6・7階のカフェ&レストランは合計26店舗が出店しており、コンセプトは6階の「dining6」が「“食べる”を楽しむフロア」、7階の「TABLE7」が「“時間”を楽しむフロア」とされています。8階のクリエイティブスペース「8/」は気軽に訪れることができるアートスペースをコンセプトにした多目的施設で、ギャラリー、カフェ、クリエイター向けのオフィスなど7つの施設から成っています。11~16階の東急シアター「Orb」は7月18日にオープンする劇場で、第1弾としてブロードウェイミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」の公演が予定されています。 17階から上のフロアはオフィスとなっており、携帯端末向けゲームの「モバゲー」でおなじみの(かつ、課金方式をめぐって今問題になっている)DeNA(ディー・エヌ・エー)の本社が21~26階に入居しています。

地下3階の副都心線連絡口(15番出入口) 地下2階~4階の吹き抜け(アーバンコア)
2階を貫通するJR渋谷駅・青山方面連絡通路 2階の吹き抜け周囲。リング状のディスプレイが特徴的。
渋谷ヒカリエの内部。
左上:地下3階の副都心線連絡口(15番出入口)(2008年6月の同じ場所の写真
右上:地下2階~4階の吹き抜け(アーバンコア)
左下:2階を貫通するJR渋谷駅・青山方面連絡通路
右下:2階の吹き抜け周囲。リング状のディスプレイが特徴的。

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 渋谷ヒカリエは副都心線の地上出入口(15番)やJR渋谷駅と青山方面を結ぶ歩行者用通路も兼用しており、地下3階から地上4階まで巨大な吹き抜け(アーバンコア)が設けられ、その中にエスカレータが縦横に張り巡らされています。また、吹き抜けの周囲には各階にLEDを用いたリング状のディスプレイが設置されており、渋谷ヒカリエの施設内で開催される各種イベントの案内などが放映される予定となっています。
 このアーバンコアのエスカレータと、2階から東口駅前ロータリー上空を経由してJR渋谷駅へ通じる新しい連絡橋は渋谷ヒカリエ本体のオープン前の4月15日に先行して供用を開始しました。これにより、従来使用されていた東京メトロ銀座線脇の連絡橋は廃止となり、今年夏までに取り壊される予定となっています。今後この連絡橋の脇には東京メトロ銀座線のホームが移転してくる予定となっており、渋谷ヒカリエの2階は渋谷駅を通る公共交通機関の重要な結節点として機能することになります。

東口駅前ロータリー上空に完成した渋谷駅~渋谷ヒカリエ連絡通路 連絡通路の内部。白を基調とした明るいデザイン。
左:東口駅前ロータリー上空に完成した渋谷駅~渋谷ヒカリエ連絡橋。JRの駅舎側は一部が仮設となっており、将来の駅舎取り壊しに備えている。
右:連絡通路の内部。白を基調とした明るいデザイン。

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■今後の渋谷駅再開発の行方

 東横線の地下化は「2012年度中」と発表されているのみで、未だに正式な日にちが明らかになっていません。しかし、東急百貨店東横店東館の閉店が2013年3月31日と発表されていることから、それと同時期(つまり、2012年度末)となることが予想されます。東横線地下化完了後は現在の地上ホームの撤去を筆頭に渋谷駅内外の再開発がいよいよ本格化します。再開発は

●東急百貨店東横店の全面改築
●東横線ホーム跡地を利用したJR渋谷駅の拡張(湘南新宿ラインのホーム移設)
●東京メトロ銀座線のホームを東口駅前ロータリー上部に移設
●西口駅前ロータリーの構造変更(通り抜け不可となる)
●東口地下を流れる渋谷川の移設と雨水貯留施設の新設

など駅単体の改築だけにとどまらない、街づくり全体を内包する非常に大規模なものとなっています。全体にかかる期間は実に15年以上に及ぶと予想されており、渋谷の街は今後全く違うものに変化していくことになります。 
 渋谷ヒカリエはゴールデンウィーク直前にオープンしたこともあり、オープンから1週間ほどは連日入場制限がかかるほどの大盛況ぶりとなりましたが、この出来事は渋谷の街が大変革を迎えるほんの序章にしか過ぎません

▼参考
2012年4月26日(木) 渋谷ヒカリエ オープン予定  東急百貨店 新店 「ShinQs(シンクス)」 同時オープン(2011/11/28)|ニュースリース|東急電鉄
「渋谷ヒカリエ」開業日および東急百貨店 新店名称・事業戦略・フロア概要 記者発表会(2011/11/28)|ニュースリース|東急電鉄
「渋谷ヒカリエ」のお知らせ 「渋谷ヒカリエ」の飲食フロアテナントの全店ラインナップ発表 「渋谷ヒカリエ」商業施設、『ShinQs』(シンクス)全店ラインナップ発表(2012/1/18)|ニュースリース|東急電鉄
渋谷ヒカリエ クリエイティブスペース 「8/」(呼称:はち) フロア詳細、開業期コンテンツラインナップ発表!(2012/2/21)|ニュースリース|東急電鉄
渋谷ヒカリエ/Shibuya Hikarie
東急シアターオーブ|TOKYU THEATRE Orb
DeNA、本社を「渋谷ヒカリエ」に移転 4月より新たな福利厚生制度も導入 - [DeNA] 株式会社ディー・エヌ・エー
「渋谷ヒカリエ」開業迫る-駅との新連絡通路、15日供用開始へ - シブヤ経済新聞
「渋谷駅街区基盤整備方針」の公表について/東京都都市整備局

▼関連記事
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