千葉公園の大賀ハス2012

千葉市中央区にある千葉公園では今年も大賀ハスの花が見頃を迎えました。千葉公園の大賀ハスは6年前(Yahoo!ブログ時代)にも1度取り上げましたが、今回はより詳しい解説を加えてお伝えしたいと思います。
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千葉公園、大賀ハスの花が見頃です(2006年7月3日作成)
■2千年ぶりに復活した古代ハス
大賀ハス(古代ハス)は今から60年前に千葉市花見川区検見川で発掘された実から開花をしたものです。1951(昭和26)年3月3日~4月4日の34日間にわたり、、ハス研究の第一人者であった大賀一郎博士と地元住民や近隣の花園中学校・畑小学校の生徒・児童協力の下、東京大学農学部厚生農場(現在の東京大学総合運動場)地下の泥炭層からハスの実を発掘する作業が行われました。そして3月30日、花園中学校の生徒がふるいにかけていた土の中から、1粒の実が発見され、4月6日にはさらに2粒の実が発見されました。
発掘された実は大賀博士の自宅に持ち帰られ、発芽試験が実施されました。3粒の実のうち2粒は発芽後間もなく枯死してしまいましたが、残る1粒は生き残り、9月末には葉を出すなど順調に成長を続けました。そして発掘翌年の1952(昭和27)年4月7日にハス根を掘り出したうえで4節60cm・3節40cm・2節30cmの3つに分根し、発掘場所である東大農場・千葉公園弁天池・千葉県農業試験場にそれぞれ移植されました。このうち、東大農場の物は管理上の都合から、伊原茂氏の自宅に移動され、7月18日ついに開花が確認されました。
出土した実と同じ地層に埋まっていた丸木舟の放射性炭素年代測定(C14法)を行ったところ、約2千年前と判定されたことから、この古代ハスは2千年の時を経て現代に「復活」を遂げたことになります。この古代ハスは大賀一郎博士の名をとって「大賀ハス」と呼ばれるようになり、1954(昭和29)年には千葉県の天然記念物に指定されました。以後、国内外150か所に分根され、友好と平和の使者として親しまれています。千葉市ではその後1993(平成3)年に政令指定都市に移行することを記念して「市の花」に指定されています。
■今年で60周年目の千葉公園の大賀ハス
大賀ハスの花は毎年6月上旬に開花し、開花から25日程度で開花のピークを迎えます。今年は6月3日に最初の花が開花しました。今年は気温が低く、開花のペースは遅めで、7月1日に開花本数が765本とピークを迎えました。現在は最盛期の半分程度の開花本数となっていますが、まだまだ十分楽しめる数を維持しています。
以下は6月26日(火)に取材した千葉公園の大賀ハスの様子です。

千葉公園弁天池のハス田。後方は貸しボートがある綿打池。背後には千葉都市モノレールが走る。
※クリックで拡大(800*600px/118KB)
大賀ハスが植えられているのは千葉公園の南側にある綿打池の北端にある弁天池と呼ばれるエリアです。大賀ハスの花は未明~早朝に花が開き、昼過ぎに閉じます。このため、開いた状態の花を撮影するには午前中に訪れる必要があります。

弁天池の隣に建つ「蓮華亭」。
※クリックで拡大(800*600px/129KB)
弁天池の脇には円形(正確には多角形)の展示施設「蓮華亭(れんげてい)」が建っています。蓮華亭は1992(平成4)年に千葉市が政令指定都市になったこと、1993(平成5)年に大賀ハスが千葉市の花に指定されたことを記念して建設されたものです。「蓮華亭」の名称は1990(平成2)年に大阪の鶴見緑地(大阪市鶴見区・守口市)で開催された「国際花と緑の博覧会」で千葉市が大賀ハスを出展した時の名称「蓮華汀(てい)」にちなんだものです。


左:蓮華亭の内部。木材をふんだんに使用しており、暖かみのある雰囲気となっている。
右:蓮華亭のテラスにある千葉市のシンボルキャラクター「ちはなちゃん」。
※クリックで拡大
蓮華亭は内外とも木材をふんだんに使用しており、自然の暖かみの溢れる雰囲気となっています。天井の最上部にある明かり取り窓は多分割式となっており、外周方向へ向かって開くことも可能です。大賀ハスの開花期間中は蓮華亭内部で大賀ハスに関する写真展が行われています。(なお、7月17日まで蓮華亭で新たに展示する写真の募集が行われています。)
このほか、池に面した蓮華亭のテラスには千葉市のシンボルキャラクター「ちはなちゃん」の人形が飾られています。ちはなちゃんは見てわかる通り、大賀ハスの花をモチーフにしたゆるキャラ(?)で、千葉市の広報資料などで多用されています。
■大賀ハスの開花前後の変化
今回は6年前とは異なり開花の最盛期に訪れたため、開花前の蕾から花が散った後の花托(かたく:花の中心にある実が含まれている突起)が残った状態まで様々な状態の花を見ることができました。ここでは開花前後の時系列順に花の様子を見ていきます。
●0日目(開花前)

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蕾の状態。全体がピンク色になったら開花目前。
●1日目

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開花1日目は4~5時頃に花が開き始めるが、全開せずに8時頃には閉じる。花托の色はまだ薄く、周囲に雄しべが密着した状態。
●2日目

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開花2日目は深夜1時頃から花が開き始め、7~9時頃に全開になる。雄しべは花托から離れ、花托自体も濃い黄色に色づく。
●3日目

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開花3日目は深夜1時頃から花が開き始め、7~10時頃に全開になり、昼頃に閉じ始めるが完全には閉じない。花托は徐々に緑色になる。
●4日目

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開花4日目は8時頃には花が全開となり、花びらが散り始め15時頃までには完全に散る。雄しべの先は黒く変色し、花托の緑色が濃くなる。なお、千葉公園では発掘された当時の大賀ハスの遺伝子を継承・保存していく観点から、他のハスと交雑しないよう花が散った後の花托は池に落ちる前に刈り取っている。
千葉公園の大賀ハス - YouTube
大賀ハスの開花の最盛期は過ぎましたが、まだ1日あたり数百本の開花が見られる状態が続いています。千葉公園の脇を走る千葉都市モノレールでは去る7月8日(日)より新型車両「Urban Flyer 0-Type(アーバンフライヤーゼロタイプ)」の営業運転が開始されました。2千年の時を経て復活した美しい花々と近未来の都市交通をイメージさせる最新のモノレールの新型車両を見に出かけてみてはいかがでしょうか?
※この日撮影した他の写真は筆者のFacebookにてご覧になれます。Facebookのアカウントをお持ちでなくてもご覧になれますのでお時間のある方はどうぞ。
▼参考
千葉市:千葉公園ホームページ・トップページ
千葉市:大賀ハス開花情報2012
千葉市:シンボルキャラクター ちはなちゃんのお部屋
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