カテゴリ:鉄道:建設・工事
東京メトロ有楽町線豊洲駅改良工事(2012年8月11日取材)
公開日:2012年08月17日22:56

東京メトロ有楽町線豊洲駅は周辺の再開発が進展し、混雑が激しくなっているため、現在改札口・階段の増設を中心とした大規模改良工事が進められています。今年4月にこの工事について調査をしましたが、その後新たに駅の池袋方に新しい改札口がオープンするなど変化がありましたので再度調査を行いました。今回はこの新しい改札口と前回調査していなかった地下3階の池袋寄りで進められている留置線の新設工事を中心にお伝えいたします。
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■豊洲駅の構造と激しい混雑

豊洲駅の1日あたりの乗降客数の推移。赤い点は2007年以降の実績値。
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豊洲駅は1988(昭和63)年6月8日の有楽町線新富町~新木場間開業に伴い新設されました。豊洲駅は3層構造の地下駅で、地下1階が改札口、地下2階が改札内コンコース、地下3階がホームとなっており、地下3階のホームは将来の地下鉄8号線(豊洲~住吉)の分岐に備えて島式ホーム2面で建設されており、現在は外側2線のみを使用しています。開業当初の豊洲駅周辺はIHI(石川島播磨重工業)東京造船所の工場が広がっており、駅の利用者はこの工場の通勤者でほとんどが占められていたことから乗降客数は1日当たり5万人前後となっており、改札口は新木場寄りの1か所のみというコンパクトな設備となっていました。
しかし、有楽町線開業から間もなくしてIHIの工場は閉鎖され、跡地の再開発が開始されました。2000年代に入ると工場跡地には高層のオフィスビルやマンションが次々と完成し、2006(平成18)年には新交通ゆりかもめが延伸開業したことも相まって1日の乗降客数は10万人以上に激増しました。この結果、1か所しかない改札口は昼夜を問わず激しく混雑するようになり、列車到着時はホームまで人が溢れて危険と言われる状態になりました。駅周辺の再開発が現在も続いており、2006年の時点では10年後の2016(平成28)年には1日の乗降客数が19万3千人に達すると予測されました。実際に豊洲駅の1日乗降客数は2005年以降一貫して増加を続けており、昨年度は154,214人(前年比11%増)と2006年当時の予測よりも早いペースで増加しており、最終的には20万人を超える可能性も出つつあります。

駅の断面図と改良箇所
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豊洲駅の改良工事は単純に階段を増設するだけではなく、改札口や地上出入口の増設、それに伴うトンネル躯体の増築など非常に多岐にわたっています。具体的には以下のような内容になっています。
●改札口の増設
現在ある新木場寄りの改札口に加えて駅中央と池袋寄りにも改札口を増設する。
●トンネル増築
池袋寄りの地下1階にトンネルを増築する。この増築部分は新設される地上出入口の通路と改札口の増設スペースとなる。
●階段・エスカレータ・エレベータの増設・移設
改良工事で新設する駅中央と池袋寄りの改札口と地下3階のホームはエスカレータを新設し、直接接続する。また、既存の階段・エスカレータ・エレベータも移設を行い、混雑を平準化する。
●地上出入口の新設・改良
既存の出入口の一部は拡幅したうえでエスカレータを新設する。また、周辺の再開発事業者より地上出入口増設の要望があったことから、池袋寄りに増築されるトンネルを利用して地上出入口を新設する。
階段・エスカレータ・エレベータの新設・移設にあたっては地下2階を経由する案と改札口・ホームを直結させる案の2つが検討・シミュレーションされ、直結させる方が到達時間短縮の効果が高いと判断されたことからこちらの案が採用されました。これによりホームから改札口までの所要時間は現状の半分以下になると予測されています。
また、改良工事着工前の豊洲駅は地下1階と地下2階を結ぶルートが新木場寄りの階段1か所しかなく、列車の到着・発車時はこの部分で10m/s近い強風が発生していました。改良後は地下1階と地下3階を結ぶルートが3か所に増えるため、風速が5m/s以下に低減するという副次的な効果も得られると予想されています。
工事は当初今年春の完成を予定していましたが、東日本大震災などの影響で工事が遅れており、完成時期が1年半遅れの2013(平成25)年9月に延期されています。
■新改札口が完成

6月9日より利用開始となった「ららぽーと方面改札口」。
前回の取材から約1カ月後の2012年6月9日(土)に池袋寄り(1c出入口へ向かう通路の入口付近)に新しい改札口が完成し、利用が開始されました。改札口の名称は「ららぽーと方面改札口」です。新改札口の設備はホーム・コンコースへ向かう昇降設備、トイレ(多目的トイレ付き)、駅事務室・忘れ物取扱所となっています。内装は最近主流の明るい白色のタイルを全面的に使用しており、既設部分と比べると雰囲気の違いは歴然です。


左:ららぽーと方面改札口から地下2階コンコース・地下3階ホームへ降りるエスカレータ。
右:エスカレータの利用開始に伴い、地下2階の内装も一部リニューアルされた。
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新改札口の昇降設備はエスカレータのみとなっており、各ホームへ直通するエスカレータと地下2階の改札内コンコースへ向かうものの2種類が設置されています。ホームへ直通するエスカレータは各ホームとも上下1基ずつ設置されていますが、ホームの幅が狭いため片側は1人乗りの幅が狭いタイプとなっています。2面あるホームが仮設の渡り板で接続されているため、1番線(新木場方面行き)側を上り専用、2番線(池袋方面行き)側を下り専用として運用しています。なお、地下2階の一部はこのエスカレータの近傍のみ内装が一部リニューアルされています。
■豊洲始発列車用「3番線」を新設?


左:ららぽーと方面改札内の案内板。数字の「2」の部分は全てシールになっている。
右:池袋方面ホームへ向かうエスカレータ入口の案内板。シールの下に「3」の文字が見える。
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改良工事完了後はこれまで未使用だった地下3階の中2線は軌道を敷設したうえで留置線として使用することが着工当初より発表されています。しかし、4月の取材時に新改札口の完成予想図に計画にはなかった「3番線」という表記があるのを発見し、このうち1線は乗降可能なホームとして使用するのではないかということをお伝えしました。
今回、実際にオープンした改札内の案内板を確認したところ、池袋方面行きホーム(2番線)へ向かう案内板は全て数字の「2」の部分がシールとなっており、その下に「3・4」の数字が隠されていることが判明しました。したがって、4月の記事で予想した通り、これまで軌道が敷設されていなかった地下3階ホームの中2線のうち池袋方面行き側は豊洲始発列車の乗車用ホーム「3番線」として使用されることがほぼ確定的となりました。




左上:池袋方面行きホーム端から池袋方面に向かうB線の線路を見る。片分岐から両渡りに改修された。
右上:池袋方面ホーム端からA・B線間にある引上げ線を見る。引上げ線は2線に増設された。
左下:新木場方面行きホーム端からA・B線間の引上げ線を見る。
右下:引上げ線増設前の様子。2006年7月2日撮影
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こちらは前回は調査しなかった地下3階ホームの池袋寄りにある引上げ線の状況です。元々この部分は将来の地下鉄8号線の折り返し用に引上げ線を2本設置するスペースが確保されていましたが、改良工事着工前は豊洲止まりの列車は設定されていなかったため新木場方面(A線)側のみ引上げ線が敷設されており、本線との接続部分もY字に分岐・合流する単純な形状となっていました。


豊洲駅の着工前の配線図(左)と工事中(現在)の配線図(右)
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今回の改良工事では未敷設だった池袋方面(B線)側にも引上げ線が新設され、本線との接続部分もA・B線側ともに両渡り分岐(シーサスクロッシング)に改修されました。中2線の軌道はホーム側にそのまま延長可能な構造となっていますが、現段階では軌道敷の上にホーム同士を結ぶ渡り板が設置されているためホーム手前で軌道が途切れた状態となっています。

B線(現2番線、将来4番線)のATC出発標識(左)とB線側の軌道敷(将来3番線)の池袋側にある同形状の板(右:ビニールで隠蔽?)
将来3番線となるB線側の中間ホームの池袋寄りには引上げ線から進入する際に使用する入換信号機に加え、黒い正八角形の板が設置されているのを確認しました。B線側を見ると同じ位置に同形状のATCの出発標識(第一出発)が設置されていることから、この黒い板は3番線から池袋方面に出発する進路を示す標識である可能性が高いと考えられます。

完成後の豊洲駅の配線図。2番線は留置線となるか降車専用ホームとなるか現時点では不明。
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現時点で設置されている案内板からは新2番線(新木場方面ホーム側の中線)の扱いについては知ることができません。このため、当初計画通り留置線として使用される可能性と降車専用ホームとして使用される可能性の2通りが考えられます。ただし、新木場方面ホームの新木場寄りは将来住吉方面に向かう地下鉄8号線が有楽町線新木場方面行きの線路を上越しする形で分岐することを想定して1番線側が低くなっており(参考写真)、新2番線を降車用ホームとした場合新木場側はホームの左右で高低差が付く特殊な形状となります。
完成時はどのような形態となるのでしょうか?今後も調査を続けたいと思います。
▼参考
「東京メトロ有楽町線豊洲駅における駅改良計画について」地下空間シンポジウム論文・報告書第14巻67~74ページ - 土木学会
「現場から 副都心線開業後の取り組みについて」 - Subway(日本地下鉄協会報) - 43~46ページ
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