南武線稲城長沼駅高架化工事(2012年8月19日取材)

南多摩駅を発車した南武線205系。上下線で高低差があるこの構造も今だけのもの。

南武線稲城長沼駅では現在高架化工事が進められています。8月19日の京王線地下化の取材の際、この工事についても取材してまいりましたので現在の状況をお伝えいたします。なお、前回の調査から7カ月しか経っておらず、全体的な変更点はわずかですので、今回は内容を若干簡略化させていただきます。詳しい事業内容などは今年2月に作成した記事(以下のリンク)をご覧ください。

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南武線稲城長沼駅高架化工事(2012年1月28日取材)(2012年2月3日作成)

■南武線連続立体交差事業の概要



 南武線連続立体交差事業はJR南武線稲田堤~府中本町間(4.3km)を高架化するものです。この区間では鶴川街道、府中街道という2本の幹線道路が交差しており、南武線の踏切を原因として激しい交通渋滞が発生していました。
 工事は矢野口駅~稲城長沼駅東側(第1期区間)と稲城長沼駅東側~府中本町駅(第2期区間)の2つに分割して行われており、前者は2005(平成17)年10月に完成し、8箇所の踏切が解消されました。続く第2期区間の工事は第1期区間完成直後の2006(平成18)年3月から開始され、昨年12月24日に下り線(立川方面)の高架化が完成しました。上り線の高架化は2014(平成26)年春、全区間の工事完了は2015(平成27)年春を予定しています。
 なお、この事業は道路整備の一環として東京都が事業主体となり進められています。第1期区間・第2期区間をあわせた総事業費は約598億円で、その負担の内訳は国が45%(ガソリン税・自動車税などの国庫補助)、東京都が31%、稲城市が13%、JR東日本が11%となっています。

<南武線連続立体交差事業の歴史>
1989年4月 建設省(現・国土交通省)の事業採択
1992年1月 都市計画決定
1993年3月 事業認可
1997年1月 第1期区間(稲田堤~稲城長沼間)着工
2005年10月 第1期区間完成
2006年3月 第2期区間(稲城長沼~府中本町間)着工
2007年3月  稲城長沼駅仮駅舎使用開始
2008年6月  第2期区間上り線(川崎方面)を仮線に切り替え
2009年10月 第2期区間下り線(立川方面)を仮線に切り替え
2011年12月 第2期区間下り線高架化完成(詳細は後述)
2014年春 第2期区間上り線高架化完成予定
2015年春 稲城長沼駅2面4線化完成予定

■現在の状況(2012年8月19日取材)

 昨年12月に下り線が高架化された稲城長沼~府中本町間では地上の旧下り線の線路の撤去がおおむね完了し、上り線の高架橋の建設が開始されています。以下、今回調査した各地点の状況を見ていきます。

●稲城長沼駅
稲城長沼駅の地上ホーム。旧下り線ホームは撤去が完了し、高架橋の橋脚建設が進む。跨線橋は階段が上り線側に移設され、短縮された。 立川方にあった折返し線も撤去され、高架橋の建設が進む。
左:稲城長沼駅の地上ホーム。旧下り線ホームは撤去が完了し、高架橋の橋脚建設が進む。跨線橋は階段が上り線側に移設され、短縮された。(同じ場所の2012年1月28日の様子
右:立川方にあった折返し線も撤去され、高架橋の建設が進む。(同じ場所の2012年1月28日の様子

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 稲城長沼駅は地上に残っていた下り線ホームの撤去が完了し、跡地で上り線ホームの高架橋の建設が開始されました。現在は地面を掘削して橋脚の基礎を構築する工事が進められています。上り線と工事エリアの間には列車との接触事故防止のため背の高いネットが設置されており、内部の様子はあまりよく見えません。なお、稲城長沼駅は現在のところ線路の北側にしか駅舎がないため、駅舎から高架の下り線ホームへ向かうルートとして地上ホーム時代の跨線橋が残されています。下り線側の跨線橋の階段は今後建設される上り線ホームを支障しないよう、階段が上り線の線路に近接する位置に移設されており、跨線橋の長さが従来よりも短縮されています。

高架の下り線ホームは前回調査時と比べ変化はない。
高架の下り線ホームは前回調査時と比べ変化はない。

 稲城長沼駅は朝夕のラッシュ時に当駅折り返しの列車が多数設定されています。下り線高架化時はこれに対応するため、第1期高架化区間の終点(矢野口~稲城長沼間のほぼ中央)から稲城長沼駅までの高架橋が複線分で建設され、将来上り線となる線路の一部を稲城長沼駅折り返し列車用の中線として使用しています。このため、稲城長沼駅付近の高架橋は上り線の軌道もほとんどが敷設済みとなっており、前回の訪問時からほとんど変化はありません。

●南多摩駅



南多摩駅の地上ホーム。旧下り線ホームが撤去され、高架橋の建設が開始された。 南多摩駅のホームから立川方面を見る。ホームの先にはアーチ橋架設用の足場が設置された。
左:南多摩駅の地上ホーム。旧下り線ホームが撤去され、高架橋の建設が開始された。(同じ場所の2012年1月28日の様子
右:南多摩駅のホームから立川方面を見る。ホームの先にはアーチ橋架設用の足場が設置された。(同じ場所の2011年1月15日の様子

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 南多摩駅も稲城長沼駅と同様に地上の旧下り線ホームの撤去が完了し、跡地で上り線の高架橋建設が開始されています。現在行われているのは橋脚基礎の構築ですが、稲城長沼駅とは異なり、上り線の線路との間には最小限のサイズの柵しか設置されていません。一方、ホームの立川方では主要地方道第9号川崎府中線(都市計画道路多摩3・3・7号)と交差するため、スパンの長いコンクリートアーチ橋が架設される予定となっており、アーチ橋の架設に向けて大型の足場の設置が開始されています。また、地上上り線ホーム北側の作業ヤードにはアーチ橋の架設に使用すると思われる仮設桁が分解した状態で置かれているのを確認できました。

地上上り線ホーム北側の作業ヤードにはアーチ橋の架設に使用するためと思われる仮設桁(画面左端の緑色の物体)が置かれていた。
地上上り線ホーム北側の作業ヤードにはアーチ橋の架設に使用するためと思われる仮設桁(画面左端の緑色の物体)が置かれていた。

高架の下り線ホーム端から川崎方面を見る。左側では上り線の高架橋の建設が行われている。
高架の下り線ホーム端から川崎方面を見る。左側では上り線の高架橋の建設が行われている。(同じ場所の2012年1月28日の様子

 高架橋の建設は地上の軌道を撤去するだけで済む駅間の方が進捗が早く、稲城長沼~南多摩間では既に橋脚が立ち上がり、間もなく床面の構築が始まる模様です。南多摩駅のホーム端からも出来上がった上り線用の橋脚が確認できます。

●南多摩~府中本町間(地上アプローチ部分)
南多摩~府中本町間の地上アプローチ部分(上り列車の前面展望)。線路が地平から高架に上がり始める地点。 その先のスロープ部分。盛土を囲むよう壁が出来上がりつつある。
左:南多摩~府中本町間の地上アプローチ部分(上り列車の前面展望)。線路が地平から高架に上がり始める地点。
右:その先のスロープ部分。盛土を囲むよう壁が出来上がりつつある。

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 南多摩駅を出ると高架橋はすぐに下り勾配となり、多摩川の直前で完全に地上に降ります。この間も地上の旧下り線の撤去が完了し、跡地で上り線の高架橋建設が進められています。地上へ降りる区間の約半分は盛土によるかさ上げとなるため、盛土を囲むコンクリート製のよう壁が建設されています。

▼参考
進めています JR南武線連続立体交差事業_稲城市ホームページ

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南武線稲城長沼駅高架化工事(2011年1月15日取材)(2011年8月2日作成)
南武線稲城長沼駅高架化工事(2012年1月28日取材)(2012年2月3日作成)
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