東京駅復原まもなく完成!(その1:復原工事の現状)
公開日:2012年09月27日21:55

来る2012年10月1日(月)、5年間にわたり復原工事が続けられてきた東京駅丸の内口の赤レンガ駅舎がついに完成を迎えます。今回は2回に分けて完成を目前に控えた駅舎内外の様子と、復原工事完成記念イベントについてお伝えします。1回目の今回は駅舎内外の工事の現状についてお伝えします。
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東京駅赤レンガ駅舎復原工事(2012年6月15日取材)(2012年6月16日作成)
■東京駅赤レンガ駅舎復原工事の概要

復原工事着工前の東京駅丸の内北口
1914(大正3)年に完成した東京駅丸の内口の赤レンガ駅舎は、太平洋戦争中の空襲により3階部分を焼失し、南北両側のドームは八角形の暫定的な形に復旧された状態で現在に至っていました。2007(平成19)年から、この焼失した3階部分を復原する工事が開始されており、来る10月1日(月)の完成を前に現在最後の仕上げ作業が続けられています。この復原工事は外観のみならず、南北両側にあるドーム内部についても創建当時の写真などを参考にして可能な限り復原することになっています。復原工事は既存の材料を極力活用しながら行うことが目標とされており、後述する通り各所でその痕跡を見ることができます。このうち、屋根に使用されているスレート板は以前の八角形屋根から取り外し、宮城県石巻市で洗浄・調査中に東日本大震災に遭い、津波で流出後回収に成功したものも含まれています。
このほか、赤レンガ駅舎は国の重要文化財にも指定されていることから、今後半永久的にその姿を保存・継承していくため、復原工事と並行して基礎部分に地震の揺れをカットする免震装置の組み込みも行われています。この免震装置の組み込みに合わせて2層構造の地下階も増設されており、駐車場、駅施設などに利用される予定となっています。(詳細は今年4月作成の記事、及び昨年12月作成の記事をご覧ください。)
■外装・内装ともほぼ完成

復原工事が完了した東京駅丸の内赤レンガ駅舎の全景(5枚合成)
※クリックで拡大(1500*405px/115KB)
丸の内赤レンガ駅舎は6月訪問時にわずかに残っていた駅舎前方の工事スペースがすべてなくなり、南北の全長に渡り駅前広場からの眺望を遮るものが無くなりました。参考までに着工前の2007(平成19)年5月4日に同じ場所から撮影した写真と比べると、左右のドーム部分の屋根が創建当時の滑らかな曲面に復原されたことが確認できます。駅舎手間の工事用の柵がある部分は工事中に資材や作業員用の詰所が置かれていた場所で、現状では更地となっています。この部分は後述する「トウキョウステーションビジョン」開催の際、観覧スペースとして使用されました。




上段:5年ぶりに真正面から見ることができるようになった赤レンガ駅舎中央の車寄せ。白い石材の部分は色がまだらになっており、新旧の材料が組み合わされていることがわかる。
下段左:車寄せ部分を別角度から。左下は丸の内中央改札口。
下段中央:2007年5月4日の同じ場所。両側の塔屋を見ると3階部分がまだ無いことがわかる。
下段右:車寄せ正面の「東京駅」の石碑も元通りの位置に復元された。
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外装部分の復原工事が完了したことにより、駅舎中央の車寄せの部分にも近づくことができるようになりました。車寄せ部分を間近に見ることができるようになったのは、復原工事着工以来実に5年ぶりのことです。工事にあたっては車寄せ正面の樹木などは一旦撤去されましたが、今回それらは元通りの位置に復元されています。また、車寄せ両側にある塔屋の部分は戦争で焼失した3階部分が復原されました。3階部分は先に工事が完了している北口・南口のドーム部分と同様、壁面の石材がまだら模様になっており、新旧の材料が組み合わされていることが分かります。

完成した丸の内中央改札口。
駅舎中央にある丸の内中央改札口は、今年春頃から6月末にかけて週末を中心に断続的に使用を停止し、内装の仕上げが行われました。完成した丸の内中央口の内部は、壁面や床に大理石をふんだんに用いた豪華な内装で、改札口直前の天井には上階との吹き抜けもあります。また、天井の照明は電球色のダウンライトや間接照明を用いた暖かみのある雰囲気となっています。


左:改札内に飛び出している赤レンガ駅舎の一部。この部分も創建当時の形に復原された。(同じ場所の2012年3月3日の様子)
右:壁面にある「赤煉瓦ドーム」の銘板。床面は免震化に対応して伸縮継目が設置された。2枚とも2012年7月7日撮影
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丸の内中央改札口脇の改札内(中央通路)には赤レンガ駅舎の一部が飛び出しています。この部分についても復原工事の対象となっており、2011年頃から全体が幕で覆われた状態となっていました。復原工事は元々平屋構造だったことから、床下への免震装置組み込みと窓枠・屋根の整備程度となっており、外見上の大きな変化はありません。免震装置の組み込みに伴い、駅舎周囲の床には伸縮継目(エキスパンションジョイント)が設置されています。(伸縮継目の設置理由や原理については6月作成の記事を参照。)


左:総武線・横須賀線地下ホームへ向かう階段もリニューアルされ、正面には大画面のプラズマディプレイが設置された。2012年7月7日撮影
右:同じ場所の工事中の状態。2009年5月9日撮影
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丸の内中央口の脇(先ほどの駅舎とは反対側)には赤レンガ駅舎内部を貫通して総武快速線・横須賀線の地下ホームへ向かう階段・エスカレータ(通称「総武大階段」)があります。この部分も今回の復原工事に合わせて大幅にリニューアルされました。階段の正面にある壁面は曇りガラスとなり、外光を取り入れられるようになり、その中央には動画広告を流すことができる超大型プラズマディスプレイが設置されました。


左:総武大階段を下りたところ。正面に見えるのが6月にオープンした「グランスタ」の増床部分。
右:中央地下通路に面してオープンした「グランスタ」の増床部分。2枚とも2012年7月7日撮影
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地下1階の総武大階段の脇では「駅ナカ」のショッピングモール「GRANSTA(グランスタ)」、銀の鈴広場(待ち合わせ場所)、八重洲地下中央口へ通じる中央地下通路が分岐しています。赤レンガ駅舎は復原に合わせて地下フロアが増築されたことから、その部分を利用する形で丸の内側に「GRANSTA」のエリアが拡張されました。この増床部分は今年6月28日にオープンしています。


左:丸の内北口ドーム。(同じ場所の2007年5月4日/2010年8月14日/2012年4月21日の様子)
右:丸の内南口ドーム。(同じ場所の2006年3月15日/2011年10月9日の様子)
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赤レンガ駅舎の北口・南口のドーム部分は今年春の時点で外装のほとんどが完成しており、ほとんど変化はありません。北口前では今回床面のタイルの仕上げが行われており、仮囲いの中からは石材を切断している音が盛大に響き渡っていました。


左:ドーム入口にある庇(ひさし)。既存の木製の庇の先端にガラス・金属板でできた屋根を付加している。
右:南口ドーム内部。足場は取り外されたが、2階より上の天井は10/1の竣工まで幕で隠蔽される。
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6月訪問時は工事中だった南北両ドームの入口前の庇(ひさし)も今回ほぼ完成となっていました。出来上がった庇は既存の木製の庇を一部撤去して、その先端に強化ガラス・金属製の化粧板でできた屋根を追加した構造となっており、今回追した部分は鉄製の支柱で支持されています。また、既存の木製の屋根の支柱は複雑な曲線を多用した美しい金属製の装飾に交換されています。
ドーム内部は6月訪問時に残っていた足場などがすべて撤去され、着工前の広々とした空間に戻っています。ドーム中央の2階より上の天井は引き続き白い幕で隠された状態となっており、内部を見ることはできません。この白い幕は来る10月1日(月)の赤レンガ駅舎グランドオープンに合わせて除去されます。
引き続き「その2」の記事では9月22・23日に開催された東京駅復原工事完成記念イベント「トウキョウステーションビジョン」の模様と今後の東京駅のイベントの予定などをお伝えします。
その2「トウキョウステーションビジョン・今後の予定」を見る
▼参考
東京駅が街になる Tokyo Station City
東京駅 (Tokyo Station) - 東京都千代田区 - 鉄道、駅 | Facebookページ
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カテゴリ:東京駅復原・再開発の記事

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