新橋駅改良工事(2012年9月15日取材)

新橋駅3番線に停車中の京浜東北線E233系

JR新橋駅では現在高架橋の耐震補強やコンコース拡張を中心とした大規模改良工事が進められています。今年3月の取材から半年が経過し、高架橋上空には作業用の人工地盤の設置が進んでいます。今回も工事が進んでいる地上側の様子を中心に現在の状況をお伝えします。

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新橋駅改良工事(2012年3月3日取材)(2012年3月26日作成)

■新橋駅改良工事の概要

 新橋駅は山手線、京浜東北線、東海道線、横須賀線のJR4路線と東京メトロ銀座線、都営浅草線、新交通ゆりかもめの3路線が接続する都内の交通の要衝となっています。また、駅の南には2000年代初めに汐留貨物駅跡地を再開発してできた「汐留シオサイト」のオフィスビル群があり、新橋駅の利用者数はJR東日本全体で第7位の243,890人(2011年度)となっています。
 JR新橋駅を構成する構造物は山手線・京浜東北線が明治時代に建設されたレンガアーチ高架橋、東海道線が大正時代に建設された鉄筋コンクリート高架橋、横須賀線が昭和中期に建設された地下駅から成っています。このうち、地上にある山手線・京浜東北線・東海道線の高架橋は建設以来大きな改修が行われていないため、バリアフリーへの未対応や狭隘なコンコースによる混雑といったサービス面での問題が生じています。2014(平成26)年度に予定されている東北縦貫線開業後には、東海道線ホームから上野方面への利用が可能となるため、これの問題がさらに悪化することが懸念されています。さらに、新橋駅付近の高架橋は建設以来一度も耐震補強がされておらず、今後30年以内に高い確率で発生すると予想されている首都圏直下を震源とする大規模地震に対しての脆弱性が危惧されています。これを受け、JR東日本では今年3月に首都圏における地震観測体制の強化と各種設備の耐震性向上を柱とした総額520億円の対策実施を発表しました。新橋駅もこの中に含まれており、耐震補強と合わせて以下のような改良を行うこととされました。

新橋駅の主な改良箇所
新橋駅の主な改良箇所
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1、駅中央の高架橋を改築し、コンコースを一体化
銀座口~烏森口間のレンガアーチ高架橋をスパンの長い鉄筋コンクリート製の高架橋に改築し、駅の南北で別々となっているコンコースを一体化し、混雑緩和を図る。また、SL広場に面した高架橋はレンガアーチのまま残し、文化遺産としての価値を後世に継承する。

2、バリアフリー対応
改築された高架橋部分を利用してエレベータを設置する。また、地下にある横須賀線ホームにも一般利用できるエレベータを設置する。

3、高架橋の耐震補強
現状のまま残す東海道線の高架橋とSL広場に面した京浜東北線のレンガアーチ高架橋は鋼板巻き、一面補強、内面にコンクリート巻き立て等により耐震性を向上する。

4、東海道線ホームの拡幅
東北縦貫線の乗り入れにより新たに東京・上野方面への利用者が発生し、混雑が予想される東海道線上り線のホーム中央110mを最大で0.7m拡幅する。この寸法は道路をまたぐ桁を移設しないで済むギリギリの幅として決定されたものである。また、東海道線ホームの中央に階段・エスカレータを1か所ずつ増設し、混雑緩和を図る。

■作業台は工事終了後大屋根に?
新橋駅構内に掲出されている改良工事のお知らせ
新橋駅構内に掲出されている改良工事のお知らせ
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 3月取材時の記事で新橋駅のホーム上空に作業用の台のようなものが建設されつつあることをお伝えしましたが、その後読者の方よりのこの作業台は将来屋根の一部になるとの情報をいただきました。今回、駅構内に掲示されていたお知らせにこの完成予想図が掲載されているのを確認しました。大屋根は駅のほぼ全長にわたって設置される模様で、現在とはかなり違った雰囲気となることが予想されます。

SL広場から建設済みの作業台を見る。
SL広場から建設済みの作業台を見る。

 3月の時点ではまだ鉄骨のみだったホーム中央付近の作業台は今回床面まで完成し、上部にクレーンが載せられました。クレーンはかなり大きなもので、終電後に線路をまたぐ形で資材を出し入れすることを意図していることが考えられます。また、SL広場側のレンガアーチ高架橋は暫定的に駐輪場として使用されていた部分が閉鎖され、まもなく始まる駅中央付近の高架橋の取り壊しに向けた準備が進められています。

山手線ホーム(4・5番線)上空の作業台。 東海道線上り(2番線)・京浜東北線南行(3番線)上空にも作業台が設置された。



左:山手線(4・5番線)ホーム上空の作業台。
右:東海道線上り(2番線)・京浜東北線南行(3番線)上空にも作業台が設置された。

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 3月に鉄骨が設置されていた山手線ホーム上空の作業台はほぼ完成し、今回はその作業台が東海道線ホーム(1・2番線)側まで拡幅されました。作業台の支柱はいずれも将来の屋根の支柱への転用を見越して、床面よりも少し下の位置に左右に分岐する突起が設けられています。前記した完成予想図では駅全体を覆う高い大屋根の下に、各ホームを覆う透明な雨除けが描かれており、この突起は雨除けを取り付けるためのものと思われます。(イメージとしては昨年完成したJR大阪駅の大屋根に近い?)

山手線外回り(4番線)・京浜東北線南行(3番線)ホーム品川寄りに設置された大屋根用の支柱。 東海道線(1・2番線)ホームにも同様の支柱が設置された。
左:山手線外回り(4番線)・京浜東北線南行(3番線)ホーム品川寄りに設置された大屋根用の支柱。
右:東海道線(1・2番線)ホームにも同様の支柱が設置された。

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 作業台が設置されている以外の場所でもホーム上には多数の囲いが新設されており、一部ではホーム床面を貫通して支柱が設置されています。支柱はいずれも作業台の部分と同じ鉄製の円柱で、最上部にはやはり屋根を取り付けるためと思われる突起が設けられています。

工事桁が設置された京浜東北線南行(3番線)の線路。 工事桁の例。正の字形の鉄骨の中央の突起にまくらぎを載せる。
左:工事桁が設置された京浜東北線南行(3番線)の線路。
右:工事桁の例。正の字形の鉄骨の中央の突起にまくらぎを載せる。2012年6月15日、東京駅で撮影。

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 作業台の設置に加え、今回新たに高架橋の改築に向けて京浜東北線南行(3番線)の駅中央付近の軌道が工事桁による仮受け構造に変更されました。工事桁は最近主流の軌道両側に並行して「正」の字型の鉄骨を置き、まくらぎを鉄骨中央の突起に載せる形となっています。この工事桁は新橋駅の南で交差する環状2号線の建設に伴う高架橋の架け替えでも使用されています。環状2号線以降の工事では、工事終了後に桁の周囲をコンクリートで固めることによりそのまま完成時の桁橋として流用することが多くなっており、新橋駅でも同様の方法がとられる可能性があります。

烏森口側の高架下。前回と比べて大きな変化はない。
烏森口側の高架下。前回と比べて大きな変化はない。

 高架下については銀座口側は引き続き店舗跡の撤去工事が続いており、烏森口側は高架橋の耐震補強が続いているなど前回と比べて大きな変化はありません。また、地下の横須賀線ホームはエレベータの新設が予定されていますが、こちらも現在のところ支障物件の移転を含め工事は一切行われておらず、いつ出来上がるのかは不明となっています。横須賀線ホームは東京駅や新日本橋駅と異なり、全長が開削工法で建設されたものではないため、エレベータが設置できる場所がかなり限られており、設計に時間がかかっているのかもしれません。

▼参考
大川,坂本,山後 - 新橋駅改良計画 - 日本鉄道施設協会誌2011年3月号45~47ページ
東海道線新橋駅改良工事の着手について - JR東日本プレスリリース(PDF)
首都直下地震に備えた耐震補強対策等の着手と地震観測体制の強化について - JR東日本プレスリリース(PDF)

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新橋駅(概説) - 総武・東京トンネル(19)(2008年8月8日作成)
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新橋駅改良工事(2011年3月26日取材)(2011年8月21日作成)
新橋駅改良工事(2012年3月3日取材)(2012年3月26日作成)
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