カテゴリ:鉄道:建設・工事
新京成新鎌ヶ谷駅周辺の高架化(2012年10月20日取材)
公開日:2012年11月19日22:34

新京成電鉄の鎌ヶ谷大仏~くぬぎ山間では現在高架化工事が進められています。2010年の取材から2年が経過し、全線にわたり工事が本格化しています。今回は仮線切り替えに向けた準備が進んでいる初富駅・北初富駅付近を中心に現在の状況をお伝えします。
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新京成新鎌ヶ谷駅周辺の高架化(2010年6月12日取材)(2010年8月9日作成)
■新京成線連続立体交差事業の概要
新京成線の路線のほぼ中央に位置する新鎌ヶ谷駅は北総線・東武野田線と接続する交通の要衝となっています。1999(平成11)年の東武野田線の新鎌ヶ谷駅開設以降は、駅周辺では鎌ヶ谷市・独立行政法人都市再生機構(UR)が中心となった大規模な区画整理が進められており、2004(平成16)年には駅前にイオンのショッピングモールが完成するなど鎌ヶ谷市の拠点としての整備が急速に完成しつつあります。また、2010(平成22)年には北総線を経由して成田空港に至る成田スカイアクセス線(成田新高速鉄道)が開業し、成田空港・東京都心双方への所要時間短縮が実現するなど、引き続き交通網の整備も進んでいます。
新鎌ヶ谷駅付近の新京成線は地上を走っており、白井市・印西市にある千葉ニュータウンと松戸市を結ぶ国道464号と2度にわたり踏切で交差しています。この2か所の踏切と初富駅南側で交差する県道57号鎌ヶ谷松戸線の踏切は、いずれも1日当たりの自動車交通遮断量が5~7万台時に達する「ボトルネック踏切※」となっており、渋滞の原因となっています。現在、千葉ニュータウンの東端から成田市の間では成田スカイアクセス線に並行する形で「北千葉道路」の建設が進められており、これと接続する国道464号の交通量は今後増大することが予想されています。このため、新京成線鎌ヶ谷大仏~くぬぎ山間3.3kmのを高架化し、上記3か所を含む10か所の踏切を解消することになり、1999(平成11)年に都市計画決定がなされ、2002(平成14)年より工事が開始されています。総工費は約350億円で、国・千葉県・鎌ヶ谷市が約309億円、新京成電鉄が約41億円を負担することになっています。完成は当初、2010年とされていましたが、後述する通り用地買収が非常に難航しており、2017(平成29)年に大幅に延期されています。(このため、総工費も変更される可能性が高い。)
なお、新鎌ヶ谷以南で新京成線と一部並行している東武野田線についても同様の理由から高架化が行われており、こちらは2005(平成17)年までに側道整備を含めすべての事業が完了しています。東武野田線は線路が単線だったことから複線化も同時に行われており、車両の高性能化とあわせてスピードアップが実現しました。
▼脚注
※ボトルネック踏切:1日当たりの自動車交通遮断量が5万台時を超える踏切。(自動車交通遮断量=自動車交通量×踏切遮断時間)
■初富駅・北初富駅の仮線切替準備が本格化
高架化工事は全区間とも元々ある線路の脇に仮の線路を敷設し、本線を移動させた後元の線路の場所に高架橋を建設する「仮線方式」が採用されています。2年前には用地のみが確保されていた初富駅・北初富駅でも現在は仮線の工事が本格化しています。以下、各地点の状況を見てまいります。
●初富駅付近


左:鎌ヶ谷大仏~初富間にある仮線の始点。(下り列車の前面展望)
右:初富駅まで仮線の軌道敷設中。
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津田沼側の仮線の敷設開始地点は初富駅から鎌ヶ谷大仏駅方面に3分の1程度進んだところ(初富3号踏切付近)です。仮線用地は全区間とも上り線(松戸方面行き)の隣に確保されており、初富駅付近は単線分の用地が確保されています。現在は用地買収が完了し、上り線の仮線切替に向けて軌道敷設が急ピッチで行われています。


左:初富駅南側にある県道57号線の初富1号踏切。
右:初富1号踏切南側の仮線はの跡地に敷設されている。
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松戸方面に向かって右へカーブすると初富駅に入ります。初富駅の津田沼寄りにある県道57号鎌ヶ谷松戸線の踏切(初富1号踏切)付近は仮線の軌道敷設も大方完了しており、去る2012年10月13日には踏切の遮断機・警報機が仮線側に移設され、横断距離が長くなりました。2010年の調査時にはこの踏切の南側にイトーヨーカドーのディスカウントストアである「ザ・プライス鎌ヶ谷店」(旧イトーヨーカドー鎌ヶ谷店)がありましたが、老朽化を理由に今年4月19日に閉店し、建物はすべて解体済みとなっています。高架化用の仮線はこの建物の跡地を一部利用して敷設されています。



上段:初富1号踏切から初富駅構内を見る。
下段左:同じ踏切から上り線の隣に建設中の仮線を見る。
下段右:仮線用の片面ホームの拡大。
※クリックで拡大
初富駅は島式ホーム1面2線で、下り線の外側にある駅舎とホームの間が構内踏切で結ばれる構造となっています。高架化後もホームは同様の形状となる予定です。現在は上り線の隣で仮線の軌道敷設と仮線用の片面ホームの建設が進められており、ホームについては床面・屋根ともおおむね完成した状態となっています。仮設ホームは現在ある上り線の線路に沿う形で松戸寄りがカーブしており、屋根は津田沼寄りの半分程度のみに設置されています。



上段:初富駅のホーム。右の柵の後ろで仮設ホームが建設中。(同じ場所の2010年6月12日の様子)
下段左:下り線側に建設中の仮設通路。
下段右:仮設通路は現ホーム・線路の下をくぐり、仮設ホームに通じる。
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上り線の仮線切替後も当面の間駅舎は現在のものを使用する予定となっています。このため、現在の駅舎と仮設ホームをつなぐ通路が建設中となっています。仮設通路は駅舎を出た後下り線の線路に沿って駅中央付近まで進み、そこから先は現在線・現ホーム・仮上り線の線路の下をくぐって仮設ホームに通じる構造となっています。通路が地下に入る部分は階段とエレベータが設置される模様です。(本記事作成時点のGoogleマップの航空写真では階段・エレベータシャフトが建設中であることが確認できる。→Googleマップの航空写真)通路と交差する部分の線路・ホームは桁式構造に改築されています。

初富駅の先は2004年に切り替え済みの仮線に合流する。(同じ場所の2010年6月12日の様子)
初富駅の数百m先からは2004(平成16)年に仮線切替が完了しており、初富駅構内で敷設中の仮線はこれに直線状に合流することになります。この部分も軌道敷設・架線設置などの工事が進められており、近々線路の切替が実施されるものと思われます。
●新鎌ヶ谷駅付近

新鎌ヶ谷駅を出発する下り列車。高架橋は前回調査時にほぼ完成済みとなっており大きな変化はない。(同じ場所の2009年2月5日の様子/2010年6月12日の様子)
高架化工事着工前の新鎌ヶ谷駅は北総線に並行して対向式ホーム2面2線があり、両ホームが跨線橋で結ばれていました。この付近は前記した区画整理にあわせて複線分の仮線用地を確保できたため、2004(平成16)年に上下線一括で仮線への切替が実施されました。仮線切替後の新鎌ケ谷駅は島式ホーム1面2線となり、地下に設置された仮設通路で北総線高架下の駅舎と接続されています。高架化完成後も引き続き島式ホームとなる予定です。
駅の両端の高架橋は2010年の調査時にほぼ完成済みとなっており、今回調査時は防音壁が追加された程度の変化にとどまっています。


左:桁の架設が完了した東武野田線の交差部分。(同じ場所の2010年6月12日の様子)
右:松戸寄りの高架橋はまだ未完成。(同じ場所の2009年2月5日の様子/2010年6月12日の様子)
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一方、駅構内の高架橋は2010年の調査時に東武野田線と交差する桁橋やホームと駅舎をつなぐ地下通路との交差地点などに多数の未完成部分が存在しました。今回は松戸寄りのホーム端の一部を除き高架橋の躯体はすべて完成しました。松戸寄りの未完成部分も橋脚の基礎の構築が開始されており、まもなく高架橋本体の工事が始まるものと思われます。
なお、仮線切替前の東武野田線の交差部分は単線分の長さの橋梁となっており、野田線複線化の大きな支障となっていました。このため、野田線複線化の促進の観点からも新京成側の仮線切り替えは急がれ、2004年の切替直後にこの個所を含む野田線船橋~六実間の複線化が完了しています。


左:未完成部分の高架橋断面。上部にはホームの基礎が設置済みとなっている。
右:高架下には階段の基礎が設置されている。
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完成した高架橋の上には島式ホームの基礎がすでに完成しています。また、高架下をよく見ると駅中央付近に斜めに設置されたコンクリートの板のようなものが見えることから、階段本体の設置も始まっているものと思われます。
●北初富駅付近


左:北初富駅の駅舎。
右:北初富駅のホーム。仮線切替が近いため、案内板類は古いフォーマットのままとなっている。
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北初富駅は北総線に並行して対向式ホーム2面2線があり、津田沼寄りに橋上駅舎を持つ構造となっています。1979(昭和54)年の北総線第一期開業から1992(平成4)年までは当駅と北総線新鎌ヶ谷駅の間に連絡線が設けられ、北総・新京成両社間で相互乗り入れを実施していました。(乗り入れ終了に伴い連絡線は撤去済み。)橋上駅舎の出入口は線路両側にありますが、高架化の対象になっているため施設の手直しは最小限にとどめられており、エスカレータは上り線側の駅出入口の1箇所のみ設置で、エレベータは駅出入口・ホームともに未設置であるなどバリアフリー化は未達成となっています。また、駅構内は複数人分の座面が1枚の板となったベンチ、古いフォーマットの案内板、首都圏では今や絶滅寸前となった永楽電気製の案内放送など昭和時代の雰囲気を色濃く残しています。


左:津田沼寄りの道路を挟んだ場所に建設中の仮設ホーム。左奥に途切れた高架橋が見える。手前の踏切は国道464号。
右:道路から建設中の仮設ホームを見る。左側のホームに沿って高架橋の橋脚も一部建設済みとなっている。
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高架化後の北初富駅はホームの形状は変わりませんが、位置は現在よりも津田沼寄り(国道464号・市道4号の踏切を挟んだ反対側)に移設されます。これは新京成線が北初富駅の松戸寄りで北総線の高架橋の下をくぐるため、高架から地上に線路を降ろすスペースを確保する必要があるためです。
現在は買収が完了済みの用地を使って仮線切り替えに向けた準備が進められており、津田沼寄りには仮設ホームがほぼ完成済みとなっています。仮設ホームは対向式ホーム2面2線の構造となっており、新鎌ヶ谷駅付近と同様に上下線一括で仮線切替が実施される模様です。また、2面あるホームのうち、下り線用となる現線路側のホームには、高架橋の橋脚の一部が食い込む形で構築済みとなっています。

北初富駅の先も仮線用地が確保済みとなっている。
北初富駅の松戸寄りはカーブしながら北総線の高架橋の下を斜めに交差して松戸方面に向かいます。この部分も仮線用地の取得が完了し、更地化されています。

渋滞する国道464号の踏切(北初富1号踏切)。左の個人商店が問題の物件。
北初富駅付近は現在も駅前の仮線用地にある個人商店が断固として買収に応じず、仮線切替ができない状態が続いています。このため、千葉県では土地収用法の適用に向けた手続きを開始しており、10月には事業認定に向けた説明会が実施されました。事業認定が行われてもなお地主が買収に応じない場合、最終的には強制執行により移転・家屋の撤去が行われることになります。
鉄道の連続立体交差事業は排気ガス問題がある道路建設などとは異なり、環境上の大きなリスクは少ないため比較的穏便に進めらるのが常でした。これまでいくつもの鉄道の高架化・地下化や道路建設を見てきた筆者ですが、ここまでこじれてしまったのを見るに、何か別の理由(政治・金銭の問題や買収の交渉に関して不誠実な対応)があったのではないかと勘ぐりたくなってしました。2010年の記事でこのような事態に至ることを予期しましたが、ほぼその通りになってしまったのは残念なことです。
▼参考
新京成線連続立体交差事業 - 鎌ヶ谷市(PDF/1099KB)
鎌ケ谷市役所【都市整備課】
新京成線(鎌ヶ谷市)連続立体交差事業再評価(第18回千葉県県土整備部所管国庫補助事業評価監視委員会)(PDF/1638KB)
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